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2013/01/29

『バイバイ、ブラックバード』 伊坂幸太郎


多額の借金を背負い、<あのバス>に乗せられることになった主人公が五股をしていた五人の女性にお別れを言うお話、それがこの『バイバイ、ブラックバード』です。

五股と聞くだけで「なにこの女の敵!」と罵られそうな主人公ですが…決して憎めません。作中、何度も描写されるのですが、この主人公・星野一彦は「計算してない」んですよね。よーし、五人の女とうまいこと付き合ってやろうとは決して思ってないし、ましてや、女から金を騙し取ってやろうとも思ってない。純粋に五人の女を同時に好きになってしまった、選び切れなったという正直者の優柔不断男なのです。

そしてそんな優柔不断男が<あのバス>から逃げたりしないようにとお目付け役を言い遣ったのが「身長180センチ、体重も180キロ、趣味は人の嫌がることをすること」の怪獣女・繭美なわけですが…この繭美がマツコ・デラックスで変換されなかった人は果てしているのでしょうか?もうね、繭美がマツコに見えてくるくらいマツコ・デラックスなわけですよ。このマツコも憎まれ口を叩く割に憎めないキャラクタなんですが、とにかくこのマツコと主人公と別れを切り出される女性の掛け合いがまさに伊坂ワールドです。

個人的にはふたりめ、バツイチ子持ちの霜月りさ子とのお別れが好きかな。名刺交換のくだりと、サンタクロースが辞書から消えてないところがとてもとても好きです。あたたかくなるよね。

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2013/01/28

『折れた竜骨』 米澤穂信

『折れた竜骨』、ようやく読むことが出来ました。このミス2012で第二位だったという前情報しかなかったため、登場人物表のカタカナ名前を見て吃驚。カタカナ名前を覚えるのが本当に苦手な私は、物語終盤まで誰が誰だかさっぱり状態。この点だけは個人的にマイナスかなあ。

けれど、本作は登場人物がカタカナ名前であること(西洋であること)に意味があるんですよね。なんてったって剣と魔法(魔術)のファンタジーミステリなのですから!ヨーロッパに位置するソロン諸島、その領主を襲った暗殺騎士の走狗(ミニオン)とは一体誰なのか?が本作の主題ですが、これの舞台を日本にすることは…出来なくはないけどかなりイメージ違ってきますよね。

というか、本作を読む為に必要なのはその世界観を受け止めること(ファンタジーをファンタジーとして楽しむこと)なんですよね。ラスト、領主殺しの犯人を消去法で告発するわけですが、このときに「これまで説明(描写)されてきた世界観」ってのが超重要になってくる上に、その描写の仕方が巧い。物語の中盤、ソロン諸島は呪われたデーン人に襲撃され戦闘行為が始まるのですが、キャラクタたちの活躍とともに重要なキィが明かされていくという憎い演出です。

そしてラスト、探偵役が犯人を告発する演出も憎い。堪りません。

このミス2位が納得の1冊でした。個人的にはひとつわからない点があって、エピローグで主人公が皆とお別れをするシーン、あるキャラクタが「そうでしょう、アミーナ・ローレントの娘?」と言うのですが、
言われた主人公=アミーナ・ローレントなので、そのまた「娘」ってのがピンと来ないのです。「お嬢さん」って意味かしら?それとも「・(中黒)」じゃなくて「、」が正しくて「そうでしょうアミーナ、ローレントの娘?」と読むのが正しいのかしら。この点だけは解決せず、すっきりしない幕引きだったかな。

東京創元社の『折れた竜骨』特設ページはこちら

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2013/01/26

『彼女が追ってくる』 石持浅海


『扉は閉ざされたまま』『君の望む死に方』に続く碓氷優佳シリーズ、第三弾です。

犯人視点で描かれた本作。追ってくる「彼女」とはもちろん優佳…かと思いきや、追い掛けてくるのは被害者である「彼女」です。ダイイングメッセージ、死者が握るカフスボタン、なぜ「彼女」は犯人を示さないそのカフスボタンを握ったのか。その謎が物語の主軸になります。

が、もちろん優佳の推理のとっかかりはそんなところにはありません。『君の望む死に方』のレビューにも似たようなことを書きましたが、優佳の推理は「思い込み」が強くて強引なんですよね。確かに犯人の供述にはおかしな点があったかもしれない。でも、その発言があった瞬間に犯人を特定してしまえるほどの情報だったかと言えば「?」です。ネタバレになりますが、全ての女性が丁寧にスキンケアして寝るとは限らないからね!

まぁ、そんな強引さが推理…もしくは探偵役には求められているのかもしれません。探偵役など一生務めることのないだろう私にはわからないことですけれど。

そうそう、殺人の動機ですが(本作も)全く共感できないものでした。これについては優佳も「興味ない」的なことを言っていたのでまるっと同意しておきます。そもそも、感情なんてものは千差万別、十人十色、誰とも同じにはなれないし誰ともわかり合えないものですから、共感なんてものは不要なのでしょう。

ところで。表紙中央の彼女(おそらく犯人)が黒木メイサにそっくりだと思うのですがどうでしょう?黒木メイサと言えば何年か前に『扉は閉ざされたまま』が映像化されたときに優佳を演じてましたよね。あれ、観てみたいなあ。

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2013/01/25

『道化師の蝶』 円城搭

芥川賞を受賞した際に某SNSで絶賛されていたので読んでみた本作。

やっぱり純文はよーわからん。

正直、これしか感想ないです。きちんと文字を追いましたし、書かれている内容は理解したと思うんですけど、最終的に「で?」ってなっちゃうんですよね。その先(行間、書かれてないもの)を読めよってことだと思うのですが、その労力をかけるほどの魅力を感じられなかったので。読んで、それだけ。

やっぱり純文はわからん。

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2013/01/24

『龍神の雨』 道尾秀介

不遇な、なんて一言で済ませて良いのかわからないほど不幸な2組の兄弟が、雨の日に起こし起こされた事件について描かれている本作。読んでいてとても気分が落ちました。

2組の兄弟(正確には兄弟と兄妹)がどんな境遇にあり、どんな苦悩を抱えて生きているのかにかなりのページが割いてあり、そこに道尾氏の「読ませる技術」「物語に引き込んでいく手腕」が乗っかってもう重たい重たい。半分まで読んだところで「ハッピーエンドは有り得ない。ハッピーエンドに持っていく方法が見つからない」と茫然としましたとも。

そして迎えたエンディング…に、まさかの展開。またしても世界が逆転する感覚を味あわせていただきましたとも!これまで白だと思っていたものが黒になる快感。これが私が道尾作品に求めているもので、本作もしっかりと答えてくれました。っていうか、道尾氏すげえ。そして、犯人気持ち悪い。

ラスト、犯人が残した一言の答えはわからないまま、世界がもう一度ひっくり返る可能性がそこにはあるけれど。それは読者の望む展開にしたら良いのだと思います。現実的には首の索条痕に生活反応があるかどうかで答えは出るのだと思いますが…ってネタバレ?

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2013/01/23

『ぼくが探偵だった夏』 内田康夫


「かつて子どもだったあなたと少年少女のための」ミステリーランドですが、本作はあの浅見光彦少年が主人公とあって「かつて子どもだった」私が大喜びで読ませていただきました。

軽井沢で過ごす夏、妖精の森を抜けた先にある緑の館、そこで見た犯罪のにおいがする光景。その謎に浅見光彦少年が挑むわけですが、まぁハラハラさせられましたとも!子どもの好奇心と冒険心を舐めちゃいけませんね。そして、それを描くのがとてもお上手です内田氏。

ミステリというよりは冒険譚なので、大掛かりなトリックが用意されていたり複雑な人間関係が描かれているわけではありません(浅見光彦シリーズには有りがちだけどね!)でも、浅見光彦がどんな少年時代を過ごしたのか、彼がどんな少年だったのかを知りたい方は2時間も掛からずに読めてしまいますので、ぜひ。

というか、光彦ぼっちゃまが可愛くて、もう。

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2013/01/22

『貴族探偵』 麻耶雄嵩


貴族探偵というタイトルから「気障な金持ちぼっちゃまが道楽で探偵をするお話でしょ?」との推測を持って読み始めた本作。その推測はあながち間違いではなかったけれど、本作に登場するおぼっちゃまはさらにその上を行っておりました。

まさか召使に全部推理させるとは…!

さすが麻耶、その発想はなかった。本作には5つの殺人が収められているのだけれど、ミステリとしてはどれもこれもシンプル。大掛かりなトリックもなく、探偵(正確には召使だけれど)が脚で捜査し犯人を追い詰めるなんていう展開もなく、シンプルとしか言いようのない謎が並びます。

第3話、「こうもり」を除いては。

いや、「こうもり」だってそんなに仰々しいトリックを使っているわけではないのです。トリックとしてはありがちというかアンフェアというか。でも、「アンフェアだ!」と読者に言わせない工夫が作中に為されているんですよね。そして、それがすごい。どんな工夫なのかを書いてしまうと楽しみが半減どころか2/3はなくなってしまうので書きませんが、私はその工夫に気付いた瞬間「ええええええ!?」と声を上げてページを遡りましたとも。

最後まで御前様の素性がわからないのが残念ですが、それはきっと蛇足と言うものでしょう。

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2013/01/21

『at Home』 本多孝好

愛して止まない本多孝好氏の「家族」をテーマにした作品集です。

描かれている家族の形は4つ。もちろんどの家族も「絵に描いたようなしあわせな家族」であるわけがなく、むしろそんな家族は世界のどこにもないのだと思いますし、そんな家族があったならそれはそれで異常なことだと思うのですが、とにもかくにも「普通とは違う」「歪さ」を自覚しながらも家族として生きている「家族」の物語なのです。

個人的なベスト、ラストのシーンで嗚咽が止まらなくなったのが表題作の「at Home」。どんな家族なのか…を詳らかにしてしまうとネタバレ以外の何物でもなくなってしまうので避けますが、ラスト、お父さんが土下座するシーン、その言葉にぶわっと涙が溢れました。家族の繋がりとは血の繋がりなのか、絆の繋がりなのか、記憶(想い出)の繋がりなのか…人によって解釈は様々だし、正解なんてないのだけれど、敢えて言いたい。あの5人は家族だ、と。そして、そんなことお前に言われなくてもわかってるよ、と返ってきそうな「at Home」がたまらなく好きです。

ところで。私が持っているハードカバーの装丁は黄色ベースのものなのですが、現在は違うタイプ(↑)に代わってしまったのですね。本多孝好と書かれた見慣れないものはなんでも買ってしまいそうになるので、この装丁チェンジは私にとってトラップ以外の何物でもありません()

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2013/01/20

『密室殺人ゲーム・マニアックス』 歌野晶午

『密室殺人ゲーム王手飛車取り』 に続くシリーズ第3弾。笑えないほど不謹慎な題材はそのままに、味付けを変えて読ませてくれるのはとても嬉しいのだけれど、やっぱり第1弾を読んだときの「なにこれやべぇえぇぇえぇぇええ」感は出ませんよね、仕方ない。

そして、本作には気に掛かることがもうひとつ。ノックスの十戒「未発見の毒薬、難解な科学的説明を要する機械を犯行に用いてはならない」に抵触しているような気がするの。もちろん作中で釈明(?)は為されているのだけれど、現実的に今の科学では不可能なトリックが使われている=他の方法があるわけで。それを「出題者が正解判定を出したので、ゲームとしてはこれで終了」で済まされると肩透かしをくらった気分になります、残念。

さて、次の「密室殺人ゲーム」はどんな趣向を凝らして読者を愉しませてくれるのか。次が気になる大好きなシリーズです。

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