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2010/02/15

『フラグメント』 古処誠二


あれは事故死なんかじゃない

親友の死、震災、崩壊した地下駐車場

極限状態に渦巻く、それぞれの思惑

『少年たちの密室』を読んでからもう10年もの時間が経とうとしているのですか…早いな。どのくらい加筆修正がなされているのか(さすがに)判らなかったけれど、夢中で読んだ『フラグメント』が久しぶりのレビュー作。

とはいっても。正直、良作ほどレビューってのは書き辛くって。なぜなら「読んでください」としか云えないから。どんな言葉よりもどんなレビューよりも、読んでもらうことが一番。そして「読んでください」と云いたい、云える作品です。書かれている主題はとても重たいものだけど。

崩壊した地下駐車場に残されたのは、親友の死に疑惑を持つ少年。少年はこの大地震、この閉鎖空間を「好機」と捉える…親友の死の原因を解き明かすための好機。なぜならそこには、親友に死をもたらした、その切欠を作ったと考えられる不良グループのボスが居たから。

けれども。少年が直面したのは親友の死の原因などではなく…その、不良グループボスの死。光源なしの地下駐車場。一寸先も闇、そんな言葉がぴったりの状況で、誰がどこにいるのかも判らない状況で。誰が、どうやって、一撃で。彼を殺したのか。パニックになる仲間たちを鎮めるために、謎がひとつひとつ丁寧に検討され、解きほぐされていく様は、実にロジカルです。

この作品には二段階の解決があって。二段階目の結末に光を見るか影を見るかは読者次第だと思うけれど。唐突に出てきた名古屋の都市計画の件が妙に心に残る。なにも変わらないかもしれないけれど、もしかしたら、稀な例として、なにかが変わるかもしれない。そう信じてはいけないだろうか。そう想像してはいけないだろうか。

「しかし想像はできる。できなければ人間じゃない」

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