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2010/02/18

『嘘をもうひとつだけ』 東野圭吾

嘘をもうひとつだけ (講談社文庫) Book 嘘をもうひとつだけ (講談社文庫)

著者:東野 圭吾
販売元:講談社
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動機も疑わしい点も、自分にはないはずなのに

さり気なさを装い、何度も現れるこの刑事は…

その眼になにを見ているのだろうか?

どんとこい阿部ちゃんで『新参者』がドラマ化されると聞いたので。再読してみました加賀恭一郎シリーズ短編集『嘘をもうひとつだけ』。このタイトル、まじょ。的スキスキタイトルベスト10に入ります。いや、他の9つ云えって云われても困るんだけど…森博嗣が多いかもだけど。

収録されているのは5つの短編。基本的に…倒叙形式?加賀恭一郎と犯人とその身内みたいな人しか出てきません。でも、犯人がぺらぺら自分の犯行を語るわけでもないので…読者にもサプライズが残されているところがさすが東野圭吾!ってところでしょうか?

実はタイトルが大好きな癖に、表題作はそんなに好きではない。というか、「傑作!」とブラボーできる作品はないと思うんですよね。でも、なぜか印象に残る。どの作品も(再読したのは5年ぶりくらいじゃないかと思うんですが)どんなトリックが使われていて、どんなミスリードが用意されていて、どんな結末を迎えるのか。しっかり記憶に残されておりました。

もし収録作中でベストを挙げろと云われたら…間違いなく「狂った計算」なんですが。このミスリードは見事だと思います。突然現れた少年の水鉄砲が最後に回収される様も見事…って、「突然」って書いちゃってるよ自分。違和感感じたってことじゃない?とにかく、「おっ!」っと声を上げたくなる良作です。

あとは「友の助言」も好きかな。これは加賀恭一郎の人となりを知ることができるという意味で貴重です。加賀がいつまで経っても独身なのは、過去の失恋を引きずっているのもあるかもしれませんが(しかも複数回/笑)加賀の視線は鋭過ぎるんですよ。「必要があると思った時に、そうするだけだ」は加賀の弁ですが、本当にそうでしょうか?全ての人間に、全ての証拠に、全ての言葉に、疑いを。そんな気迫ある加賀恭一郎を阿部ちゃんには演じて貰いたいと思います。

自分が彼此10年以上思い浮かべていた加賀恭一郎像とはちょっと違うことは内緒です。

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2010/02/15

『フラグメント』 古処誠二


あれは事故死なんかじゃない

親友の死、震災、崩壊した地下駐車場

極限状態に渦巻く、それぞれの思惑

『少年たちの密室』を読んでからもう10年もの時間が経とうとしているのですか…早いな。どのくらい加筆修正がなされているのか(さすがに)判らなかったけれど、夢中で読んだ『フラグメント』が久しぶりのレビュー作。

とはいっても。正直、良作ほどレビューってのは書き辛くって。なぜなら「読んでください」としか云えないから。どんな言葉よりもどんなレビューよりも、読んでもらうことが一番。そして「読んでください」と云いたい、云える作品です。書かれている主題はとても重たいものだけど。

崩壊した地下駐車場に残されたのは、親友の死に疑惑を持つ少年。少年はこの大地震、この閉鎖空間を「好機」と捉える…親友の死の原因を解き明かすための好機。なぜならそこには、親友に死をもたらした、その切欠を作ったと考えられる不良グループのボスが居たから。

けれども。少年が直面したのは親友の死の原因などではなく…その、不良グループボスの死。光源なしの地下駐車場。一寸先も闇、そんな言葉がぴったりの状況で、誰がどこにいるのかも判らない状況で。誰が、どうやって、一撃で。彼を殺したのか。パニックになる仲間たちを鎮めるために、謎がひとつひとつ丁寧に検討され、解きほぐされていく様は、実にロジカルです。

この作品には二段階の解決があって。二段階目の結末に光を見るか影を見るかは読者次第だと思うけれど。唐突に出てきた名古屋の都市計画の件が妙に心に残る。なにも変わらないかもしれないけれど、もしかしたら、稀な例として、なにかが変わるかもしれない。そう信じてはいけないだろうか。そう想像してはいけないだろうか。

「しかし想像はできる。できなければ人間じゃない」

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