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2009/03/22

『秋期限定栗きんとん事件』 米澤穂信

秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫) Book 秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)

著者:米澤 穂信
販売元:東京創元社
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小市民を貫くべく選択した別れ

小市民を貫くべく選択した彼女

小市民を貫くべく選択した…告発

ようやく上下巻出揃いましたので、意気揚々と読書。上下分冊での出版には大人の事情が透けて見える厚さですが…内容は栗きんとんの如くどっしり。高校2年の秋から高校3年の夏に亘り、連続放火魔を追いかけた物語。

当初『秋期限定モンブラン事件』だったはずが、いつの間にやら『秋期限定マロングラッセ事件』となり、結局は『秋期限定栗きんとん事件』に落ち着いた本作。もちろんマロングラッセと栗きんとんの違いはわかりません。でも、相変わらず小山内のチョイスするスイーツは美味しそうだ。

今回『上巻』は小鳩くんの新しい彼女をメインに据えて。「あたたかな冬」で演じた座席争奪戦については…私もよくやります地下鉄での座席奪い合いあぁ小市民たる証。あの局面を「こうした思考の過程を、仲丸さんはわかってくれるだろうか」「あ、ラッキー」と描く米澤氏は巧いと思いました。決定的な相違。

そして、その相違がさらに顕著な「とまどう春」。仲丸さんの兄貴宅に押し入った泥棒。この一件の顛末…素敵です。不動産屋から帰った兄貴を迎えたのが「泥棒」であった、という結末を言い当てることは小市民でも充分可能だと思うのですが(物語には山が必要ですからね)、泥棒が室内に侵入した理由を言い当てるのは…仲丸さんがひいてしまうようなことなのでしょうか?私だったら興奮してしまうだろうに。小市民代表ならここはひくべき?うーん、難しいな小市民。

そして『下巻』。一連の連続放火魔事件は「情報操作で片がつく」と云い切った小鳩くん。どんな柴崎麻子っぷりを披露してくれるのかと思いきや…地味!地味!!いや、もとより情報操作とは地味なもので、派手な情報操作は情報操作ではなく公開捜査なわけですが。大変だったろうに、五日市くん。

でも、そんな五日市くんが最後に寄せたコラムは印象的でした。「友達が大騒ぎするのが面白かった」というコメントは辛辣ですね悪意の塊だ寒気がします。小山内さんにもこてんぱんにやられたのに…不憫。しかし米澤氏巧いな、と思ったのは、「籠絡とか懐柔とかはぼくの専門じゃない。そういうのは…」と小鳩くんに言わせておいて、実際に小山内さんのその手際の良さを後に披露してくれること。瓜野くんクラスの小市民なら罠にかかるわ、そりゃ。

というわけで、なかなか愉しませていただきました『秋期限定栗きんとん事件』。やっぱり小山内さんは黒い。「恋とはどんなものかしら」なんてフィガロってる場合じゃないです、「他愛ない」なんて発する機会私には一度も巡ってこないだろうな…ははは。小鳩くんと小山内さんの関係がどう終幕するのか『冬期限定』が愉しみ。ところで冬のスイーツってなんでしょうね?炬燵でみかんでしょうか?

秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6) Book 秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)

著者:米澤 穂信
販売元:東京創元社
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コメント

前2作が面白かったので、新刊でせっかく読んだのに、見事にはずしました。

ジョーと小山内さんの新しい恋人のくだりがメインに据えられていて、推理する部分がほとんどなかったのにも残念。
そんなところ興味ないしー。

瓜野さん、せっかく物語の語り手になったくせに、ボコボコにされてしまうのがちょー可哀想でした。

投稿: Cozy | 2009/05/04 09:01

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