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2009/02/28

『漆黒の王子』 初野晴

漆黒の王子 Book 漆黒の王子

著者:初野 晴
販売元:角川書店
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砂の城の哀れな王に告ぐ

私の名はガネーシャ

王の側近と騎士達の命を握る者

『水の時計』が素敵だった初野晴氏。読みたい読みたいと思っていながら…フォント小さめ2段組400頁超に挑む前から心が折れて、手を出せていなかった『漆黒の王子』。表紙に違わず重苦しい1作。それでも、全体像把握できなかったけど、おもしろかった。

「上側の世界」と「下側の世界」。ふたつの世界、ふたつの物語を交互に描き、ひとつに纏め上げる。正直申し上げて、ひとつに纏まった世界を私は見通すことができなかったのだけれども。“王の側近と騎士達の命”を狙った人間とその意図は汲み上げることができました。その手法も、その武器も認識しました。そして、王の世界が破綻してゆく様も目撃しました。

けれど、ひとつだけ理解できなかったこと。それはガネーシャが暗渠で過ごした時間、出逢った人々、出逢った≪王子≫…それは実際にあった出来事なのか、そうでないのか。ガネーシャが意識を失っていた数時間の間に見た夢に過ぎないのか。脅迫メールに潜ませた≪王子≫≪時計師≫≪ブラシ職人≫…をなぞるように、彼らの人生を夢に見たのか。けれど、その割りに彼らと過ごした時間と思い出はリアルで。

あの場所には廃棄物不法投機に関わったホームレスの死体が埋められている。あの場所には彼らの無念が漂っていたから…その無念を偶然とはいえ晴らす形となったガネーシャに共鳴したのか。こうしてレビューしながらも考えているのですが…わからない。ただ、ガネーシャの時計の歩みは酷く遅かった。それだけは事実。

ちなみに帯に「超本格ミステリ」と銘打ってありますが、誇大広告です。むしろ「ミステリ」と書くことで読者層が狭められてしまうので取り払った方が良いのでは?と思ったり思わなかったり。終盤に突如現れた水樹の友人が、いきなり暗号解読(?)からカーチェイスまで始めたときには苦笑しました。

『水の時計』もそうでしたが、初野氏は「幸福の王子」が好きなのでしょうね。オマージュ。

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