« 『魔女の死んだ家』 篠田真由美 | トップページ | 『千里眼 ミドリの猿 完全版』 松岡圭祐 »

2009/02/22

『水没ピアノ 鏡創士がひきもどす犯罪』 佐藤友哉

水没ピアノ―鏡創士がひきもどす犯罪 (講談社文庫) Book 水没ピアノ―鏡創士がひきもどす犯罪 (講談社文庫)

著者:佐藤 友哉
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

まだ見ぬ“紘子”を夢想する青年

“奴”から伽耶子を守ろうとする少年

妹に殺されるのを待ち望む家族

鏡創士が全てを引き戻す

鏡家サーガ第3弾『水没ピアノ』が本日のメニュー。今回の主役は『フリッカー式』にも登場した鏡家次男・創士。引用癖のある次男がなかなか好きだっただけに、なかなか愉しみにしていたのですが…なかなか読み終わらずなかなか難儀な1冊でした。

3人の男性の視線で紡がれる物語。携帯バッテリー裏のシール貼りを生業とする青年、全ての不幸を相手取ろうとする少年、壊れた家族から文字通り逃げ出そうともがく画家。三者三様の物語をひとつに纏めてみせるのはもちろん鏡創士なのですが…読了後「で?」。

創士はなにをしたかったのでしょう?彼女が大切だった?彼女をあのような姿に変えてしまった原因を排除したかった?それって本当に彼?彼女のお兄さんを殺したのは確かに彼だけれど、彼女に恐怖を味あわせた殺人鬼は彼だけれど、彼をあんな風に壊してしまった原因を初瀬川研究所に求めることも可能なわけで、その意味では彼も被害者で。そもそも原因なんて探ってどうなるの?それって奴に敵対する行為を変わらなくてよ?奴にはどうやっても届かないから、身近な原因で妥協した?

鏡家サーガの愉しみ方はキャラクタの壊れっぷりを堪能することなのだと思いますが、その壊れっぷりが痛々しくて愉しむどころではない私はやはり佐藤友哉氏は向かないのでしょうか?バラバラに思えた物語を集約してゆく様は素晴らしいと思いましたが…壊れたものを元通りにすることはやはり不可能なのでしょう。なにも残らなかった読了後。

もっと全ての作品が絡み合って、1作1作読み進める度に”鏡家”を見渡せるような理解を深めてゆけるような趣向としてくれれば良いのに。少なくとも『水没ピアノ』では他の兄妹の情報を入手することはできなかったのが残念です。

|

« 『魔女の死んだ家』 篠田真由美 | トップページ | 『千里眼 ミドリの猿 完全版』 松岡圭祐 »

コメント

はじめてお邪魔します。

佐藤友哉もそうで、多くのメフィスト賞作家に共通することだと思うのですが、作者が味わった孤独や苦痛や悪意をストレートに表現してきますよね。そこに共感できるかどうかが楽しめるかどうかのポイントな気がします。

佐藤友哉の自意識は、まじょさんも好きという浦賀和弘に似ていると思います。
行き過ぎた自意識。そこに共感できるかどうか。共感できなくとも、恐怖や苦痛を感じられれば、この小説はある人には娯楽になるのだと思います。

『水没ピアノ』は少年期の青春の苦痛や孤独が伝わってきて、とても切ないです。読後感はやっぱり最悪という(笑)

投稿: tuna | 2009/02/23 20:45

☆tunaさん☆
はじめまして。コメントありがとうございます!
>作者が味わった孤独や苦痛や悪意をストレートに表現してきますよね
確かに。それが小気味良く響く作家と、そうでない作家が居て。孤独や苦痛や悪意を言葉遊びで煙に巻いて綺麗事に見せかけるか、大掛かりな仕掛けの中に仕舞い込んでしまうか、どうやっても綺麗事には出来なくて正直に吐露してしまうか。
前者は西尾維新氏、中者(こんな言葉はあるのか?)浦賀和宏氏、佐藤友哉氏は後者の作家ですよね、だから佐藤友哉作品の読了後は苦しい。
うーん、真剣に考えてしまいました。機会を与えてくださってありがとうございます!こんなくだらないブロ愚ではございますが、またご来場&コメント下さると幸いです。お待ちしておりますっ!!

投稿: まじょ→tunaさん | 2009/02/23 22:17

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/38084/28297447

この記事へのトラックバック一覧です: 『水没ピアノ 鏡創士がひきもどす犯罪』 佐藤友哉:

« 『魔女の死んだ家』 篠田真由美 | トップページ | 『千里眼 ミドリの猿 完全版』 松岡圭祐 »