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2009/02/10

『モダンタイムス』 伊坂幸太郎

モダンタイムス (Morning NOVELS) Book モダンタイムス (Morning NOVELS)

著者:伊坂 幸太郎
販売元:講談社
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徴兵制の布かれた未来の日本

変わったようで変わらない未来の日本

検索から、監視が始まる

雑誌「モーニング」で連載されていた本作。読み進めている際に感じた「『ゴールデンスランバー』の対のような作品だな」という感想は強ち間違っていなかった模様。『ゴールデンスランバー』は逃げる物語、本作『モダンタイムス』は追いかける物語…いや、システムから逃げているのか?

本作は『魔王』で描かれた未来の日本から、さらに50年後が舞台。カセットテープやビデオテープは既に化石扱い、ジョン・レノンも「誰それ?」。そして、人は知らないことに出遭ったとき、わからないことがあったとき、まずは「検索する」。そして、監視が始まる?

「播磨崎中学校」「個別カウンセリング」「小林友里子」共通点の見出せない、むしろ「これって重要?」みたいな組み合わせで検索をかけると…集団陵辱の主犯(赤穂浪士の討ち入りだ!)にされたり、自殺に追い込まれたり、失明させられたり、指を切り落とされそうになったり。浮気をして妻に脅迫されるよりも納得がいかないだってただ検索しただけなのに。

もうひとつ物語を動かすのに物語に巻き込まれるのに有効な検索語は「安藤商会」。安藤ってどっかで聞いたことあるな…『魔王』だ『魔王』だ「消灯ですよ」。兄を失い不思議な能力に目覚めた弟と可愛らしい嫁の、その後の人生を本作では垣間見れます。弟が手に入れた能力が強力で、その使い方如何によっては世界を征服することも、独裁者になることも、皇帝になることだってできたかもしれないのに。でも、それをしなかった弟。あくまで「人のためになること」を「人を救うこと」を、そのためにお金を使うことを選んだ弟。

弟の選択した「ノーガード戦法」を実は私も支持していて。もちろん私みたいな小市民はノーガードどころか、パソコンにいろんなセキュリティソフトをインストールしては「これでネットショッピングを存分に愉しめる」と微笑むような小心者なんだけれども。でも、情報を操る掌握するなんて無理。だから監視が始まったのだから。情報を操るのが無理なら…人を操れば良い、人を脅せば良い、人を殺せば良い。

伊坂幸太郎らしいエンタメ小説とは云えない本作。でも、ちょっと背筋に冷たいものが奔る。私はもう監視の対象になっているのではないか?ある日突然「勇気はあるか?」と声をかけられるのではないか?(「ロマンはどこだ?」なら3分お付き合いしたい)私は歯車のシステムの一部なのではないか?少しでもそう思ったら…伊坂氏は満足なのだろう。

最初はかなり印象の悪かった嫁・渡辺佳代子。彼女は本当に夫を愛していた。

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モダンタイムス (Morning NOVELS)作者: 伊坂 幸太郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/10/15メディア: 単行本 モダンタイムス 特別版 (Morning NOVELS)作者: 伊坂 幸太郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/10/15メディア: 単行本 漫画雑誌「モーニング」に連載された伊坂幸太郎の小説。特別版は漫画連載時の挿絵がついているとのこと。 内容はどっちでも同じ。 「魔王」の続編で、インターネット検索を中心として、得体の知れないモノに人人... [続きを読む]

受信: 2009/02/15 21:34

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