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2009/02/28

『漆黒の王子』 初野晴

漆黒の王子 Book 漆黒の王子

著者:初野 晴
販売元:角川書店
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砂の城の哀れな王に告ぐ

私の名はガネーシャ

王の側近と騎士達の命を握る者

『水の時計』が素敵だった初野晴氏。読みたい読みたいと思っていながら…フォント小さめ2段組400頁超に挑む前から心が折れて、手を出せていなかった『漆黒の王子』。表紙に違わず重苦しい1作。それでも、全体像把握できなかったけど、おもしろかった。

「上側の世界」と「下側の世界」。ふたつの世界、ふたつの物語を交互に描き、ひとつに纏め上げる。正直申し上げて、ひとつに纏まった世界を私は見通すことができなかったのだけれども。“王の側近と騎士達の命”を狙った人間とその意図は汲み上げることができました。その手法も、その武器も認識しました。そして、王の世界が破綻してゆく様も目撃しました。

けれど、ひとつだけ理解できなかったこと。それはガネーシャが暗渠で過ごした時間、出逢った人々、出逢った≪王子≫…それは実際にあった出来事なのか、そうでないのか。ガネーシャが意識を失っていた数時間の間に見た夢に過ぎないのか。脅迫メールに潜ませた≪王子≫≪時計師≫≪ブラシ職人≫…をなぞるように、彼らの人生を夢に見たのか。けれど、その割りに彼らと過ごした時間と思い出はリアルで。

あの場所には廃棄物不法投機に関わったホームレスの死体が埋められている。あの場所には彼らの無念が漂っていたから…その無念を偶然とはいえ晴らす形となったガネーシャに共鳴したのか。こうしてレビューしながらも考えているのですが…わからない。ただ、ガネーシャの時計の歩みは酷く遅かった。それだけは事実。

ちなみに帯に「超本格ミステリ」と銘打ってありますが、誇大広告です。むしろ「ミステリ」と書くことで読者層が狭められてしまうので取り払った方が良いのでは?と思ったり思わなかったり。終盤に突如現れた水樹の友人が、いきなり暗号解読(?)からカーチェイスまで始めたときには苦笑しました。

『水の時計』もそうでしたが、初野氏は「幸福の王子」が好きなのでしょうね。オマージュ。

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2009/02/27

『鏡姉妹の飛ぶ教室 <鏡家サーガ>例外編』 佐藤友哉

鏡姉妹の飛ぶ教室 (講談社ノベルス) Book 鏡姉妹の飛ぶ教室 (講談社ノベルス)

著者:佐藤 友哉
販売元:講談社
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鏡一家の隠し玉

三女と四女を襲う飛ぶ教室止まった世界

鏡家サーガ例外編

あれ?佐藤友哉氏に対する評価を変えねばならない気がする。前作『水没ピアノ』に頂戴したコメント返信で

孤独や苦痛や悪意を言葉遊びで煙に巻いて綺麗事に見せかけるか、大掛かりな仕掛けの中に仕舞い込んでしまうか、どうやっても綺麗事には出来なくて正直に吐露してしまうか。
前者は西尾維新氏、中者(こんな言葉はあるのか?)浦賀和宏氏、佐藤友哉氏は後者の作家ですよね、だから佐藤友哉作品の読了後は苦しい

とか書いた私なんですが…

西尾維新化してる!?

途中から西尾維新が鏡家サーガをトリビュートした作品かと錯覚しました。『テロル』で一戦離脱→復帰してからの佐藤友哉氏はこの作風なのか。ふうん。

というわけで、『鏡姉妹の飛ぶ教室』が本日のメニュー。鏡姉妹=三女・佐奈と四女・那緒美が主人公…例外編と銘打ってあるのはなんでだ?正統派鏡家サーガじゃないか。物語の舞台は、大地震により液状化現象が起こり地中に埋まってしまった中学校…やっぱり正統派鏡家サーガじゃないか。

殆どの生徒が死に絶える中、残されたのは「選ばれるべくして選ばれた」生徒たち。鏡姉妹だったり、裏財閥・祁答院一家だったり、典型的弱者だったり、痛みというものを知らなかったり、復讐を糧に生きていたり、闘牛だったり、闘牛士だったり。あれ?人間じゃないものを挟んだような気がしますが気のせいでしょう。弱者同盟の皆様は、その被害者妄想被害者意識負の連鎖を聞いていると物語が進まないので、盛大に鬱陶しかったのですが、本当は本来は彼らが一番真っ当だったんだろうに。

とにかく「生き残るべくして生き残った」メンバが闘って、下剋上して、放棄して、恋愛して、憑依して、さらに未来を生きるべく助け合う物語。物語を紡ぐは小気味良い西尾維新的言葉遊び。これまでの作品と比べて格段と読み易くなってますし、エンタメ度は格段と上昇しているのですが…佐藤友哉氏らしさはどこに?本当に西尾維新を読んでいる感覚でした。これを脱皮と呼ぶのが適当なのか、埋没と呼ぶのが適当なのか。でもきっと、愉しむことができた私にとっては脱皮なのでしょう。

そして、兵藤くん&佐奈のピュアラブには心動かされました。兵藤くん可愛いな本当、じゅる。そんな兵藤くんとデートに出掛ける佐奈…ラストの展開がまさか。まさか、まさかの『フリッカー式』再び。ある意味「昔からこうだったんだ」と納得なのですが…公彦はこの事実を知らなかったということでオーケイなのでしょうかね?でもやっぱりあれが2体目(3体目)だとすると『フリッカー式』の表記はおかしいような気がしますね。確認して無いけど(笑)

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2009/02/24

『千里眼 ミドリの猿 完全版』 松岡圭祐

千里眼 ミドリの猿 完全版―クラシックシリーズ〈2〉 (角川文庫) Book 千里眼 ミドリの猿 完全版―クラシックシリーズ〈2〉 (角川文庫)

著者:松岡 圭祐
販売元:角川書店
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突然の宣戦布告

CSS2ミサイルが日本を捉える

きみも、緑色の猿を見たのかい?

恥ずかしくてカミングアウトできずにいた「千里眼シリーズを読んだこと無い」。カミングアウトして良かったこんなに無茶展開の奇天烈小説だと思ってなかったんだよおもしろい!私が読んでいるのは「完全版」、どうやら旧シリーズとは別物も別物な様子ですが、旧シリーズもここまでおもしろかったのでしょうか?本当に読書人生を無駄にするところだった危ない危ない。

それにしても、

まさかの「つづく」

おいおいおい、まだ『千里眼 運命の暗示』は購入してないんだよ!CSS2ミサイルはいまもなお日本に向いているというのに!!最寄の本屋さんはつい先日閉店してしまったし…愛用していたのに。ガッテム!!

というわけで、前作『千里眼 完全版』にてF15からジャンボジェットに飛び移るという超人ハルクぶりを披露してくれた岬美由紀でございますが、本作も吃驚人間健在です。今回は岬美由紀云々よりも国民全員で飛び上がってご覧よ地震起こるぜ大国がやってくれました。すげー。この展開はすげー。有り得ないと断言できないだけにすげー。

野口官房長官の緊急会見と、航空自衛隊の防衛網配備指示のシーンが好きです。岬美由紀を影で支える2人のオッサン。このふたりが『運命の暗示』でもっと活躍してくれることを望む。そして、活躍間違いなしのあと2人…『千里眼』で岬美由紀とタッグを組んだ蒲生と、初登場・嵯峨敏也。当然『催眠』も読んでいない私は、嵯峨敏也登場時に「絶対こいつは悪だ」確信したものです。病室とチョコレートの件でかなり株上げちゃって…本当にごめんなさい悪人呼ばわりしてごめんなさい。

とりあえず物語が終焉を迎えていないので、ここまで大きく広げた風呂敷をどう畳むのか畳めるのかが気になります。もっと突っ込んだ感想は後編にして次回作『運命の暗示』で。

そうそう、本作のなかでグッときた箇所を引用。個人的メモ。

この世に、英知で解き明かせないものなどない

だから

同じ地面に足をつけている人間同士。だから僕らにも、きっと手が届く

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2009/02/22

『水没ピアノ 鏡創士がひきもどす犯罪』 佐藤友哉

水没ピアノ―鏡創士がひきもどす犯罪 (講談社文庫) Book 水没ピアノ―鏡創士がひきもどす犯罪 (講談社文庫)

著者:佐藤 友哉
販売元:講談社
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まだ見ぬ“紘子”を夢想する青年

“奴”から伽耶子を守ろうとする少年

妹に殺されるのを待ち望む家族

鏡創士が全てを引き戻す

鏡家サーガ第3弾『水没ピアノ』が本日のメニュー。今回の主役は『フリッカー式』にも登場した鏡家次男・創士。引用癖のある次男がなかなか好きだっただけに、なかなか愉しみにしていたのですが…なかなか読み終わらずなかなか難儀な1冊でした。

3人の男性の視線で紡がれる物語。携帯バッテリー裏のシール貼りを生業とする青年、全ての不幸を相手取ろうとする少年、壊れた家族から文字通り逃げ出そうともがく画家。三者三様の物語をひとつに纏めてみせるのはもちろん鏡創士なのですが…読了後「で?」。

創士はなにをしたかったのでしょう?彼女が大切だった?彼女をあのような姿に変えてしまった原因を排除したかった?それって本当に彼?彼女のお兄さんを殺したのは確かに彼だけれど、彼女に恐怖を味あわせた殺人鬼は彼だけれど、彼をあんな風に壊してしまった原因を初瀬川研究所に求めることも可能なわけで、その意味では彼も被害者で。そもそも原因なんて探ってどうなるの?それって奴に敵対する行為を変わらなくてよ?奴にはどうやっても届かないから、身近な原因で妥協した?

鏡家サーガの愉しみ方はキャラクタの壊れっぷりを堪能することなのだと思いますが、その壊れっぷりが痛々しくて愉しむどころではない私はやはり佐藤友哉氏は向かないのでしょうか?バラバラに思えた物語を集約してゆく様は素晴らしいと思いましたが…壊れたものを元通りにすることはやはり不可能なのでしょう。なにも残らなかった読了後。

もっと全ての作品が絡み合って、1作1作読み進める度に”鏡家”を見渡せるような理解を深めてゆけるような趣向としてくれれば良いのに。少なくとも『水没ピアノ』では他の兄妹の情報を入手することはできなかったのが残念です。

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2009/02/21

『魔女の死んだ家』 篠田真由美

魔女の死んだ家 (ミステリーランド) Book 魔女の死んだ家 (ミステリーランド)

著者:篠田 真由美
販売元:講談社
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美しく咲き誇るしだれ桜の下、

倒れゆく「おかあさま」

「おかあさま」を撃ったのはこのピストル?

ミステリーランド再読フェア中にも関わらず、うっかり「ペル○ナ3」に手を出してしまい、就寝前数分と地下鉄通勤中にしか読書タイムを設けていないので、更新スピードが鈍化しております。ミステリーランドなんて1時間半もあれば読めるのに。ぺさんをクリアするまで(あと50時間もプレイすればクリアできると思います)ご容赦くださいまし。

さて、篠田真由美女史の『魔女の死んだ家』が本日のメニュー。ミステリーランドであることを意識し過ぎた所為か、平仮名と漢字の割合がおかしくないですか篠田女史?すっごい読み辛かったのですけれども。「『すうはいしゃ』は漢字じゃなくって『螺旋階段』は漢字かよ!」みたいなツッコミに忙しくって、内容よく覚えておりませんのおほほ。

とりあえず『すうはいしゃ』を従えた『魔女』もしくは『女王陛下』の死の真相を辿る物語。叙述トリックもどきが仕掛けられておりましたけれども…伏線があからさま過ぎるので感想は特にありません。ミステリとして読んでみた感想も特にありません。死ぬ必要はあったのか?守り通すことはできなかったのか?とは思いますけれども。

それよりも前髪で顔を隠した青年が桜井京介ではないか?とか思ってしまったことの方が。桜井京介にしては話が長く、毒舌も控えめで、親切心あふれ過ぎかな?とは思いましたが、いわくつきの洋館と桜井京介はセットですからね。篠田女史もHPで名前なしの登場人物が現れたら桜井京介である可能性を疑え!なんて仰っていたし…でも、年代については考えてなかったわ。古めかしい感じはするけれども。

というわけで(どんなわけだ)更新滞ります。ぺさん頑張ります。

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2009/02/19

『魔王城殺人事件』 歌野晶午

魔王城殺人事件 (ミステリーランド) Book 魔王城殺人事件 (ミステリーランド)

著者:歌野 晶午
販売元:講談社
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「レジドラ」って知ってる?

いま人気のゲームなんだけど

そのね、最終決戦の場“デオドロス城”が

僕の町にはあるんだ

「かつて子どもだったあなたと少年少女のための」ミステリーランド再読中フェア。同時平行的に歌野晶午も再読中フェア。となると必然的に本日のメニューは決まるわけで。

本作『魔王城殺人事件』はタイトルから丸判り、殺人事件がその主題です。でも、主人公は名探偵じゃない。“51分署捜査1課”の面々=5年1組第1班の5人のメンバがこの作品を動かします。彼らの町には“デオドロス城”と呼ばれる不気味な洋館があって。小学生=冒険大好き不法侵入?そんなもの「犬が迷いこんじゃって」「サッカーボールが飛び込んじゃって」でなんとかなるわい!と意気揚々と忍び込む彼ら。けれど、彼らはその行為を悔やむことになる。

だって、死体なんて見つけてしまった日には。

おぉ、ミステリだミステリだ。けれど、ここからが歌野晶午氏のミステリーランド。普通なら“51分署捜査1課”が小学生ながらに死体消失トリックの謎を解き、犯人へと続く道筋を辿る…というお約束展開が待ち受けているのですが、

本作はそういった過程はすべてスルー

いや、それが現実というものです。どこの世界に警察の捜査会議にバリバリ参加する小学生が居る?居るわけないじゃない。というわけで、彼らはある情報をもたらす事で事件解決に貢献しますが…貢献した瞬間に月日は過ぎてもうすっかり犯人逮捕です。逮捕劇?んなもん知らねー。

でも、死体消失トリックなんかは奇天烈刑事・ヒデ兄が解説してくれるので(小学生サービス)ご安心を。これを解かねば犯人を追い詰められないぜ!という類のものではないので、解けなくても支障ないですし。犯人逮捕にも支障ないと思う。いつも思うのですが、どうして犯罪に見ず知らずの他人を巻き込めるのでしょうか?人の口に戸は立てられないのに。

というわけで、本作を読む少年少女にしてみたらもっと“51分署捜査1課”に活躍してもらいたいんじゃないか?と思った1作。大人にしてみたら妥当なんですけれどね。

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2009/02/18

『禅定の弓』 椹野道流

禅定の弓 鬼籍通覧 (講談社ノベルズ) Book 禅定の弓 鬼籍通覧 (講談社ノベルズ)

著者:椹野 道流
販売元:講談社
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新人刑事・筧兼継が初めて任された事件…

動物連続殺害事件!?

でも、事件に大小なんてない

命に大小なんてないんだから

さくさく読み進めております、法医学教室オカルトファイル。今日もフォントを少し大きくしてみましたが、本作もオカルトではない。どちらかと云うとミステリ、どちらかと云わなくてもミステリ、歴としたミステリなんですが…

ミステリを求めていたはずなのに、
ミステリを読まされると物足りないなんて

ミステリの難易度の問題です。『暁天の星』『無明の闇』はその難易度が高く、「これがミステリだったら名作」状態だったのですが(だからこそのオカルトオチなのかもしれませんが)本作の難易度は普通どころかジュブナイル並みです。いや、伏線の張り方次第だと思うのですよ、張り方次第ではミステリとして上質なものになったと思うのですが…この展開で犯人が○○○だとわからないわけがない。

既にオカルトファイルですらなく、伊月崇成長の物語でもなく、立ち位置はすっかりBL小説。今回も思わず突っ込まずにはおれないBL要素を披露したく。まずね、「誰かと(他人と)いっしょに過ごすのが苦手」と云って叔父の家を出ることにした伊月ですが…

だからって筧と同棲してどうする

叔父にはまだ血の繋がりがあるのに、筧は全くの他人なのに。しかも、龍村に筧を紹介するときに「(俺の)ツレ」って…

伴侶を紹介するときの言葉よね?

別に筧と漫才コンビを組んでいるわけではないので。ししゃも(猫)は愛娘呼ばわりだし。うーん、この展開は凄いな。男性読者&婦女子(not腐)の皆様がこの展開を読んでどう思うのか聞いてみたい。

全く内容に触れていないな。今回は解剖シーンも少なかったですしね、メインの解剖はうさぎさんだったし。でも、この鬼籍通覧シリーズの解剖に対するスタンスは決して派手なものじゃないから。伊月の言葉を借りるなら「すげえ地味な仕事で、一生懸命やったって報われない」仕事で、テレビドラマのように「難解な事件の解決に貢献する」ことなんて無くって。それが真実で現実なのだろうと思う。でも、必要な仕事。

とりあえず次の『亡羊の嘆』で出版されている分は読み終わりですね。でも、これからも追いかけてゆきたいナイスシリーズです。

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2009/02/16

『そして名探偵は生まれた』 歌野晶午

そして名探偵は生まれた (祥伝社文庫 う 2-3) (祥伝社文庫 う 2-3) Book そして名探偵は生まれた (祥伝社文庫 う 2-3) (祥伝社文庫 う 2-3)

著者:歌野 晶午
販売元:祥伝社
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「雪の山荘」「孤島」「館」

ミステリファンなら垂涎モノの

密室トリックを召し上がれ

文庫化したばかりとは知らずに読んだ歌野晶午氏による密室トリック短編集。歌野晶午氏の代表作はもう『葉桜』で決まりかもしれませんが、『葉桜』よりももっともっと本格本格した作品の方が私は好きです。『葉桜』はもう、あのワントリックしか覚えておりませんの。

本作は「雪の山荘」「孤島」「館」というミステリのミステリによるミステリのための舞台に用意された3つの密室を主題に。個人的好みは圧倒的に「館」モノ=「館という名の楽園で」なんですが。この「館という名の楽園で」は良いですねミステリスキーの夢が詰まっております。ミステリ好きが高じて、ミステリに登場するような、ミステリにしか向かない生活に支障をきたすような「館」を造った冬木。探偵小説研究会のメンバを召集して、「館」にまつわる“いわく”を披露して、半ば無理矢理に推理ゲームに巻き込んで。もちろん提示される謎は美味。スケールが必然的にでっかくなるんですよね「館」モノって。堪らないです。

あとの2編は…普通?「生存者、一名」はミステリというよりサバイバルホラーかと存じます。表題作「そして名探偵は生まれた」は「えっ?いつ名探偵生まれた??」という出来でしょうか。名探偵風刺として読むのが宜しいかも。

歌野晶午作品はアグレッシブ過ぎて、どうもそのスタイルを掴みきれない。『葉桜』みたいな大作があったり、『密室殺人ゲーム王手飛車取り』みたいな性悪腹黒ミステリがあったり、本作のような本格があったり。でも「新本格ムーブメント」出身だもの、やっぱり本格本格ミステリミステリした作品に期待したい。

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2009/02/14

『千里眼 完全版』 松岡圭祐

千里眼 完全版―クラシックシリーズ〈1〉 (角川文庫) Book 千里眼 完全版―クラシックシリーズ〈1〉 (角川文庫)

著者:松岡 圭祐
販売元:角川書店
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あらゆる宗教を支配下に置き、国教となることを目指す

無差別テロ集団のテロ行為に立ち向かうは

ひとりの…女性臨床心理士

恥ずかしくて云えなかった「千里眼シリーズを読んだこと無い」をようやくカミングアウトできたので、おおっぴらに「千里眼シリーズ」に手を出せます。興味はあったが知識はないので、「千里眼シリーズ」がどんなジャンルに分類されるかも知らなかったのですが(なんとなくオカルトめいたバイオレンス小説だと思っていた)、まさかの自衛隊アクション小説とは!?これは嬉しい誤算。

今回、私が購入したのは「クラシックシリーズ」と銘打たれた大幅改稿版なのですが、このクラシック(旧)シリーズと新シリーズにはどんな違いがあるのでしょうか?どれから読んでも大丈夫!みたいなことが書いてあるのでクラシックシリーズを順々に→読了後新シリーズへと移行してゆこうと思っているのですが…もしベストな読み方があるのならご教授ください。

さて、「千里眼シリーズ」の主人公・岬美由紀。興味だけはあったので、実写化イメージキャラに釈お酌が選ばれたことだけは知っていて。だからなのか無意識かもしれないけれど、岬美由紀を脳内で追いかけるときは(私は物語を脳内で映像化して読むので、詳細や伏線を覚えられないトリアタマなんです)釈お酌の姿に自動変換されておりました。でも、ぴったりだったと思う。

まぁ、ドラグシュートの原理(どんな原理なのかは知らない)でF15からジャンボジェットに飛び移ることが可能かどうかは別として。人間技ではないですね、蘭姉ちゃん(by コナソ)かと思いました。でも、臨床心理士としての岬美由紀よりも、二等空尉としての岬美由紀の方が魅力的だったし無理を感じなかった。人のコンマ何秒の表情の変化を見つけて、そこから心理を見透かして…愉しい?確かに、彼女のカウンセリングで救われた子がいたけれど。でも、二等空尉としてパイロットとして救った彼女たちの命の方が、岬美由紀に充実感を与えたような気がします。個人的見解ですけれど。

なので、これからも毎話毎話自衛隊が絡んでくれると良いな、と思った「千里眼シリーズ」。まぁ、自衛隊サイドにしてみれば毎話毎話F15撃ち落されてたら堪らないんですけれど。でも、パトリオットの活躍も見てみたい気がする。

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2009/02/13

『隻手の声』 椹野道流

隻手の声―鬼籍通覧 (講談社ノベルス) Book 隻手の声―鬼籍通覧 (講談社ノベルス)

著者:椹野 道流
販売元:講談社
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法医学教室期待の新人・伊月崇

いま彼が嵌まっているもの

寝ても覚めても…オンラインゲーム

法医学教室オカルトファイル=鬼籍通覧シリーズ第4弾『隻手の声』が本日のメニューです。

オカルトファイルを最大フォントにして強調してみましたが、今回は驚くことにオカルトじゃない。ただ、ミステリでもないので…どう分類したら良いのだろう。今回の主題は“傷を負う子どもたち”。「私がお父ちゃんのホンマの子供やったら、お金ようけもらえるて。なーんも心配なくなるて」なんて褪めたこと云わなくて良いのに。ママのしあわせを壊したくないから内縁の夫に暴力を振るわれることを秘密になんてしなくて良いのに。愛情を注がれる妹に嫉妬なんてしなくて良いのに…我慢さえしなければ、あんな最悪な事態に陥ることも無かったのに。

うーん、この展開ならばオカルトの方がマシ…とか思っちゃった私は悪でしょうか。やっぱりミステリ脳なんだ、文学系は合わないんだ、生まれ育った環境だから仕方無いんだ、うんうん。なので、物語として面白くなかったわけではないんだけど、物足りなさが残る本作。こうなったら

BL要素で擬似満足を

と云わんばかりに。今回のX文庫版は表紙からしてヤヴァイです。アフィリが表示できないのが非常に残念です。挿絵も凄いんだから、45頁とかもうBL以外の何物でもない。

とにかく、どんどんBL要素の増している鬼籍通覧シリーズ。でも、タイトル『隻手の声』とラストの伊月&ミチルのやりとりは、これまでのどの作品よりもしっくりきました(悪く云えばクサカッタ!)。このふたりの連携も、BL要素と同じくらいのスピードで増してるんですよね?ミチルン?

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2009/02/12

『虹果て村の秘密』 有栖川有栖

虹果て村の秘密 (ミステリーランド) Book 虹果て村の秘密 (ミステリーランド)

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
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父親は刑事、自分は推理小説家になりたい僕と

母親は推理小説家、自分は刑事になりたいユーと

夏休み、ふたりが出遭った事件とは?

ミステリーランドもコンプ出来てないよなぁ、それどころか『銃チョコ』以来は新刊チェックすら忘れてた、あら北村薫はアリスモノなの?読まなきゃ、っていうか殆ど配本進んでないじゃない!と思ったとか思ってないとか。今日は有栖川有栖氏のミステリーランド第2回配本『虹果て村の秘密』をレビュー。

『虹果て村の秘密』と題しておきながら、「虹の麓には宝物が埋まっている」を使った冒険ものか?と思わせておきながら、密室殺人モノの本作。行間の広さや文字の大きさは児童向けですが、内容はきっと児童向けではない。だって、その推理はロジカル。

物語の主人公は「父親は刑事、自分は推理小説家になりたい」僕と、「母親は推理小説家、自分は刑事になりたい」ユーと。男の子と女の子、ふたりの小学生探偵が大人の力を借りながら…最後の最後は自分たちの力だけで…殺人の罪を告発する物語。

虹果て村には、ある意味お約束とも云える「殺人事件など扱ったことはございません」駐在さんと、新米(イケメン)刑事休暇中が居て。土砂崩れで警察の介入が遅れる中(古典!)虹果て村内部に「犯人を見つけてやろう」と思っていた人物は彼ら2人しかおらず。彼らは推理小説家になるために、刑事になるために、夢を叶えるために、よく動き、よく観察し、よく考えていたから…だから少し(いや、かなり)非現実的だけれど、事件を解決した賛美は彼らのものに。

大人が読むと少し物足りない内容でしょうか?ロジックの道筋は犯人と対峙したときに明かされますが、ある意味「天啓」のような閃きに近いものだったので、その道筋ができあがる過程が見事に抜けているのが残念(むしろ一方は寝ておった)。犯人を怪しむべき契機はきっと「あれ?」と思います。「えっ、この人、云ってることおかしくね?」系ね。

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2009/02/11

『エナメルを塗った魂の比重 鏡稜子ときせかえ密室』 佐藤友哉

エナメルを塗った魂の比重<鏡稜子ときせかえ密室> (講談社文庫) Book エナメルを塗った魂の比重<鏡稜子ときせかえ密室> (講談社文庫)

著者:佐藤 友哉
販売元:講談社
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コスプレする少女

カニバリズムの少女

ドッペルゲンガーに遭った少女

『フリッカー式』に続く、鏡家サーガ第2弾『エナメルを塗った魂の比重』が本日のメニュー。本作の主人公は予言者にして突き刺しジャック、鏡一家の次女・鏡稜子です。

舞台は稜子の高校生時代に遡り。鷹乃羽高校二年B組に所属する異質な少女たち。カニバリズム、コスプレ、虐められっ子、女王様…そして鏡稜子。それぞれの少女たちが、それぞれの視線で、それぞれの生の為に、それぞれの物語を進めていたはずだったのに。まさかの世界崩壊。

まさかの前作からのネタ引っ張り。このサーガ(シリーズ)とは云っても別の設定で別の舞台で別の演技を演じてくれるものと思っていたのに。根幹は同じ、根源は同じ、すべては件の所為。

カニバリズムの描写とか虐めの描写とか、「これ読まなきゃ駄目なんだろうか?」と思わせる箇所も多くって。それが後々重要なファクターとなるのならまだしも…ほぼユヤタンの趣味ではなかろうか「やっぱり読まなくても支障なかったね」状態。

ただ、王田さんの職業は良かった。なぜ依頼者は彼女が浦野宏美に成り代わることを死の時点で知っていたのか(だって、宏美の写真がメールに添付されてきたのよね?)が謎だけれども。あれ?もしかして件?

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2009/02/10

『モダンタイムス』 伊坂幸太郎

モダンタイムス (Morning NOVELS) Book モダンタイムス (Morning NOVELS)

著者:伊坂 幸太郎
販売元:講談社
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徴兵制の布かれた未来の日本

変わったようで変わらない未来の日本

検索から、監視が始まる

雑誌「モーニング」で連載されていた本作。読み進めている際に感じた「『ゴールデンスランバー』の対のような作品だな」という感想は強ち間違っていなかった模様。『ゴールデンスランバー』は逃げる物語、本作『モダンタイムス』は追いかける物語…いや、システムから逃げているのか?

本作は『魔王』で描かれた未来の日本から、さらに50年後が舞台。カセットテープやビデオテープは既に化石扱い、ジョン・レノンも「誰それ?」。そして、人は知らないことに出遭ったとき、わからないことがあったとき、まずは「検索する」。そして、監視が始まる?

「播磨崎中学校」「個別カウンセリング」「小林友里子」共通点の見出せない、むしろ「これって重要?」みたいな組み合わせで検索をかけると…集団陵辱の主犯(赤穂浪士の討ち入りだ!)にされたり、自殺に追い込まれたり、失明させられたり、指を切り落とされそうになったり。浮気をして妻に脅迫されるよりも納得がいかないだってただ検索しただけなのに。

もうひとつ物語を動かすのに物語に巻き込まれるのに有効な検索語は「安藤商会」。安藤ってどっかで聞いたことあるな…『魔王』だ『魔王』だ「消灯ですよ」。兄を失い不思議な能力に目覚めた弟と可愛らしい嫁の、その後の人生を本作では垣間見れます。弟が手に入れた能力が強力で、その使い方如何によっては世界を征服することも、独裁者になることも、皇帝になることだってできたかもしれないのに。でも、それをしなかった弟。あくまで「人のためになること」を「人を救うこと」を、そのためにお金を使うことを選んだ弟。

弟の選択した「ノーガード戦法」を実は私も支持していて。もちろん私みたいな小市民はノーガードどころか、パソコンにいろんなセキュリティソフトをインストールしては「これでネットショッピングを存分に愉しめる」と微笑むような小心者なんだけれども。でも、情報を操る掌握するなんて無理。だから監視が始まったのだから。情報を操るのが無理なら…人を操れば良い、人を脅せば良い、人を殺せば良い。

伊坂幸太郎らしいエンタメ小説とは云えない本作。でも、ちょっと背筋に冷たいものが奔る。私はもう監視の対象になっているのではないか?ある日突然「勇気はあるか?」と声をかけられるのではないか?(「ロマンはどこだ?」なら3分お付き合いしたい)私は歯車のシステムの一部なのではないか?少しでもそう思ったら…伊坂氏は満足なのだろう。

最初はかなり印象の悪かった嫁・渡辺佳代子。彼女は本当に夫を愛していた。

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2009/02/09

『壷中の天』 椹野道流

壷中の天―鬼籍通覧 (講談社ノベルス) Book 壷中の天―鬼籍通覧 (講談社ノベルス)

著者:椹野 道流
販売元:講談社
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私は間違いなく、この眼で死体を見た

私は間違いなく、この手で死体を触った

なのに、なぜ、死体は消えた?

ミチルンこと椹野道流嬢の鬼籍通覧シリーズ第3弾『壷中の天』が本日のメニューです。えーっと、本作は

法医学教室オカルトファイル

なので、その結末は非科学的、オカルト、ホラーです。なぜこのようにフォントを最大にして宣言しておくかというと、そうでもしないと自分を騙せないからです。いつも思う、

この謎に論理的な解決をもたらせたら最高のミステリになるのに

と。というわけで、『壷中の天』で提示される謎は死体消失です。

いつもは解剖のシーンから始まるのですが、本作は死体消失が主題ですので解剖は行われず。ただ、偶然とはいえ現場に遭遇し、まさに温かい死体と対面したから…その行方はどうしても気になるわけで。

本作は大阪と兵庫、ふたつの法医学教室が舞台となっていて。新キャラがナチュラルに登場したのですが、ミチルとの関係はどういった?私はアフィリに表示してあるノベルス版ではなく、X文庫版で本作を読んでいるので、

挿絵がどうもBL風味でして

普通なら伊月とミチルがくっつくところなのでしょうが、どうも伊月は筧とくっつけようとしているようで(伊月も筧も男性)読書中に幾度か苦笑が漏れました。ノベルスで読めばここまでBL風味を感じることはないのかもしれませんが…挿絵の力って偉大。

って、話が脱線しましたね。でも、結末について書くべきことは特になく。これがミステリなら「トリックがどうした」「伏線がどうした」って書けるのですが…オカルトは作者の匙加減でどうとでもなっちゃうから。決して批判しているわけではないのですが…本当に書くことがない。せめて論理的な結末のなかにひとつだけオカルトを残してくれるような書き方をしてくれたら…きっと、もっと、ゾクッとできるだろうに。いつもそう思う。

まだ本シリーズの主題や意図を理解できているとは云い難く。もうちょっと読めば…判ってくるのかな?そう願います。

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2009/02/08

『MOMENT』 本多孝好

MOMENT (集英社文庫) Book MOMENT (集英社文庫)

著者:本多 孝好
販売元:集英社
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死ぬ前にひとつ願いが叶うとしたら

貴方はなにを願いますか?

死の瞬間、その刹那、なにが見えますか?

『MOMENT』はハードカバ2冊(サイン本と読書本)と文庫(通勤本)を所有しているというなんとも勿体無いお金の使い方。本多氏の懐が少しでも暖かくなってくれれば本望、そして新しい物語がひとつでも多く生まれてくれたら感激、それくらい愛して止まない本多孝好氏の作品『MOMENT』が本日のメニューです。

いまでも本多氏のベストは『MISSING』の「瑠璃」だと疑わない私ですが、『MOMENT』も好き。キャラクタという意味では『MOMENT』の僕は『真夜中の五分前 side‐B』の捻くれた彼と同じくらい好きです。そういえば、本多氏の作品で主人公の名前を思い出せるものって無いかも(『MOMENT』の僕が神田だってことも、いま確認するまで思い出せなかった…トリアタマ)。

本作は病院の清掃夫に身を窶した僕が、貰いすぎた報酬を返済すべく働く4つの物語。死ぬ前にひとつだけ僕の出来る範囲で貴方の願いを叶えましょう…その中でその刹那、浮き彫りにされゆく生と死の肖像。個人的には復讐とか脅しとか、そんなものとは無縁の、ただただ意味のないただただスマートな会話がその場を支配する「FIREFLY」が好みでしょうか。

価値のない人間なんていなくって、価値のない人生なんてなくって。最終的にそれを判断するのは自分だから…そんなわけないじゃない。表題作「MOMENT」の言葉が印象的。

自分の勝手な事情で、自分で勝手に死にたいのなら、自分が関わったすべての人の同意を取り付けるべきです

なにも考えていないように見えて、常に冷静であるように見せて、いつくもの死を見送っておきながら、むしろいくつもの死を見送ってきたからこそ、生まれることのできた言葉…そんな印象を持った印象的な言葉に同意したい。

『MOMENT』にはもうひとつ物語があって、それは読書が大好きな私たちみたいな人種には死と同義かもしれない物語で。必殺仕事人は登場しないけれど、本作よりも少し未来が見える物語も是非とも堪能ください。

もうひとつの『MOMENT』はこちら

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2009/02/07

『蝉の羽』 高里椎奈

蝉の羽―薬屋探偵妖綺談 (講談社文庫) Book 蝉の羽―薬屋探偵妖綺談 (講談社文庫)

著者:高里 椎奈
販売元:講談社
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死体から生える植物

向日葵が見下ろす死体

響き渡る蝉の声

再読中の薬屋探偵シリーズ第10弾。どうしていつもいつも

ちゃんと読んでるのに置いてけ堀に遭うのだろう?

今回も途中から「( ゜Д゜)ポカーン」となってしまいました。えっ?そんなの初耳なんですけど!?と思ったこと…数えるのも面倒臭くなるほど。とことん相性悪いのでしょうか、薬屋探偵シリーズ。

今回は色の付かない異色作。この異色作の定義がいまだに解らないのですが、「人間が妖怪を利用する」のか「妖怪が人間を利用する」のかの違いなのでしょうか?今回は「妖怪が人間を駆逐する」「妖怪が人間を支配する」だったように思います、本人にその木はなくても…ナチュラルにネタバレ。

そういえば、本シリーズの年代を特定できる記述がありましたね。

「一九九四年、住民転移完了。(ダム計画が中止され)売り出したのがそれから五年後の二十三年前」

1994+5+23=2022年のお話だったんですか、本作。主人公3人は妖怪なので、人間とは違う時間軸で生きているとはいえ…あれ?舞台を未来に設定した理由はどこに?もしかして、これが異色作たる所以?って、座木が高校生だった『蒼い千鳥 花霞に泳ぐ』は色付き正統シリーズだからこの説は違うか。

とりあえず(相性悪いようですが)第1部完結まではちゃんと読みたいと思っております。いろんな伏線がきちんと回収されますように。秋は何者か?とかもう必須。

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2009/02/06

『伏魔殿』 松岡圭祐

毎年ひとりの男が神人になる

神人は裸で2万人の男たちのなかへ

群集の先にあるのは…真実?

「千里眼シリーズ」でお馴染みの松岡圭祐氏ですが、

私、はじめましてなんですよ(汗)

いまさら「読んでません」とか云うの相当恥ずかしいんですけれど。でも、そろそろ「千里眼シリーズ」に挑戦してみようと思って。その前に松岡氏の他作品で慣らしておこうと思って。ちょっとリサーチこいたところ総じて評判の高かった本作『伏魔殿』に挑戦してみました。

ラスト50頁くらいまで「あぁ、本作は中年の中年による中年のための懐古物語なんだ…裏表紙の“推理エンタテイメントの傑作!”はガセか」と思っておった私ですが、

ごめんなさい、侮ってました松岡氏

そうかそうかそうくるか。正直、死の世界や神人や祭には興味がなくって(それが全てだ)でも、榎木という男には、その思考には大変興味が湧きました。狡賢い、詐欺師でしかないかもしれないけれど…榎木は生きる力を持っていたんだと。だから、生きるために必要な道が、真相が見えたのだと思う。

「あれ?この人必要?」と思った澤村刑事が意外にも最後まで活躍してくれて、松岡氏の懐の広さを感じた次第。ただ、(文庫版のみの仕様なのかいつもなのかは不明ですが)短いセンテンスが改行無しに、ぎっちぎちに詰め込まれているのは若干読み辛いかも。個人的好みに過ぎませんが。

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2009/02/04

『ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!』 深水黎一郎

ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ ! (講談社ノベルス) Book ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ ! (講談社ノベルス)

著者:深水 黎一郎
販売元:講談社
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読者が犯人

眉唾モノのトリック

それが…ついに成立したと言ったら貴方は信じますか?

消化すべく、今日は初読。

えっと…

犯人は私だぁぁぁぁぁぁぁぁ!?

とかフォント最大にして叫んでおけば良いのかしら(毒)

本作は眉唾も眉唾、ミステリ界最後にして最強の不可能トリック“読者が犯人モノ”に真っ向から勝負した1作です。いろいろ云いたいことはあるのですが…

成立していると云えるかもしれない

そのためには、とある前提をまるっと丸呑みしなくてはならないんですけれど。ネタバレ必至でレビューを続けますが、自らの(稚拙な)文章が不特定多数の人間に読まれることで精神(体)に偏重をきたし、死に至る…ってそんなのアリですか?トリック成立の根幹に、いきなり殴り込みをかけてみました。ご本人がそうだと云うならば、そうかもしれないのですが…もう少し読者に「あるかも」と思わせる仕掛けを混ぜ込んで欲しかった。

もちろん、超能力研究の第一人者・古瀬博士の件がそれに該当するのでしょうが。あの種類の超能力(サイ能力)って、発信者と受信者が居てなんぼだと思うのですが如何でしょうか?もちろん香坂は超優秀な受信者なのでしょう。けれど、発信者(新聞を読む不特定多数の人間)は超能力なんてマスターしていない。えっ?誰しもが奥に仕舞い込んでいる古い脳にその発信装置が眠っているって?それってどこかで証明されましたっけ?

作者である深水氏の書きたかった主題取り組みたかった主題はもう充分すぎるほど理解しているつもり。どんな結末に落ち着くんだろう、「読者が犯人」なんて放り出して香坂の事件に終始してしまうんだろうか、このポエムに意味はあるのか…いろいろ心配しながらも楽しい読書をさせていただきました。だから、成立しいていると云えるかもしれないことは認めます。

「読者が犯人」のトリックが正しくいちゃもん付けられる隙もなく成立してしまったら、きっとミステリ界は終末を迎えてしまうと思う。だから、いつか来てしまうかもしれないその日まで、こういうチャレンジスピリットに溢れた作品を読み続けたいと思います。

ところで、『ウルチモ・トルッコ』ってどういう意味ですか?

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2009/02/03

『無明の闇』 椹野道流

無明の闇―鬼籍通覧 (講談社文庫) Book 無明の闇―鬼籍通覧 (講談社文庫)

著者:椹野 道流
販売元:講談社
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ミチルの法則その1

「続くときは同じような解剖ばかり続く」

でも…解剖なんて本当は無い方が良いんだ

『暁天の星』に続く鬼籍通覧シリーズ第2弾です。前回、

まさかのホラー!!

を2回言った私ですが、そもそもこの鬼籍通覧シリーズって「法医学教室奇談(オカルトファイル)」なんですね。ホラーで当たり前、もちろん第2弾もホラーです。

今回は先輩医師ミチルにスポットを当てて。ミチルの哀しいトラウマを癒すことを主題に。前回のように「法医学者の立場から事象を正しく検証し、警察の捜査に介入する」なんていう展開にならなかったのが少し残念ですが。あくまでもオカルトファイルですからね(ミステリでは無かったのが相当悔しい模様…だって凄く魅力的な謎が提示されているのに)。

1件目2件目と赤ちゃんの解剖が続き…心が痛くなりました。けれど、医師が勝手に解剖記録を改竄する(死因を捻じ曲げる)ことが如何に思い上がった行為であるか…あまりにも重要で重大なことをルーキー・伊月に判らせるあの場面は凄く印象的で良かった。死体に口なし生者のこれからの人生が大事、なんてこと無い。誰しもが平等。そうじゃなきゃ、殺人を犯した加害者(生者)が被害者(死者)よりも守るべき存在だってことになっちゃう。

本作のオカルトな部分には興味がないので(おいっ!)事件の幕引きについては特に触れることはなく。それよりも、私が今回手にしたのがX文庫版(アフィリは講談社文庫版)だったので、挿絵が挿入されているのですが…国試に合格し晴れて医者となった伊月に筧が花束を持って駆けつける場面!!

これなんてBL??

珈琲噴出しそうになったよ。私の脳内イメージでは、筧刑事はイトノコ刑事みたいなナリなので、あの挿絵の筧刑事はスマートすぎる。そして、花束を渡されたほうの伊月よ…頬を染めないでくれ。

ノベルスよりは文庫版の方が持ち運び易い読み易い、という理由で文庫版を購入したのですが…これはちょっと考えものだな地下鉄で読めないじゃないか。ぎゃふん。

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2009/02/02

『フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』 佐藤友哉

フリッカー式<鏡公彦にうってつけの殺人 > (講談社文庫) Book フリッカー式 <鏡公彦にうってつけの殺人 > (講談社文庫)

著者:佐藤 友哉
販売元:講談社
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佐奈が…妹が死んだ

自殺だなんて嘘、佐奈はあいつらに殺されたんだ

だから、復讐してやるのさ

こんな歪んだ感情、俺にはうってつけだろう?

消化すべく再読。実は佐藤友哉氏の作品は本作『フリッカー式』と『クリスマス・テロル』しか読んだことが無く、『クロスマス・テロル』のあまりのテロルっぷりに辟易して「さようなら」した経緯があります。なので、鏡家サーガと呼ばれる一連の壊れっぷりについては特筆できない今日のレビュー、先に謝っておきます申し訳。

久方ぶりに読んだ『フリッカー式』。以前よりは…愉しめたと思うむしろ続きを(鏡家サーガを)読みたいとさえ思った。本作はメフィスト賞受賞作なのですが、ミステリではなくエンタメ作品ですよね?如何にして人間は壊れるか、如何にして壊れた人間は創られるか、壊れた人間の思考は如何にして繋がるか、そんな物語。

再読前に覚えていたのは「スパイクとビシャスみたいね」という台詞が存在するということだけ。佐藤氏はアニメやゲームが相当お好きみたいですね、半分くらいネタ元不明でした。

読んでいて感じたのは、「メフィスト受賞作だ!ひゃっほい」と思ってよむ読者に優しくない作品だよな、ということ。2009年に生きる私はこの作品に続きがあること(鏡家サーガの序章であること)を知っているけれど。けれど、この作品だけを発売日に手にした人は怒濤の「?」に襲われるわけで。しかもこのあと続編が出るのかどうかわからず、伏線が回収されるのかわからずに。まるで物語のなりかけを、作者の脳内を覗かされたような、創作ノートをうっかり拾ってしまったかのような、そんな感覚に陥らせる作品。一見の読者に優しくない作品。

だからの「絶筆宣言」だったのだと思うのですが。それにしても佐藤友哉氏の復活は見事でしたよね。佐藤氏が世に出てくるのが早過ぎたのか、佐藤氏が世に順応したのか。復活以降の作品を読んでいないので判断つかないのですが。

とりあえず、2月には『青酸クリームソーダ』 が発売になるのもなにかの縁。鏡家サーガ、読んでみます。

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2009/02/01

『彼女は存在しない』 浦賀和宏

彼女は存在しない (幻冬舎文庫) Book 彼女は存在しない (幻冬舎文庫)

著者:浦賀 和宏
販売元:幻冬舎
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私が彼女と向き合うたびに思い出すものは、

夕方の横浜駅と、オービタルの『ハルシオン』と、

貴治が演じたバズ・ライトイヤーだった。

私のオールタイムベスト10

にグイッと喰い込んでくる浦賀和宏『彼女は存在しない』が本日のメニューです。『時の鳥籠』と迷ったのですが、あの厚さのノベルス本を通勤のお供に据えるのはどうかと…でも『天帝のはしたなき果実』をノーカバーでお供に据えている男性と車輌を同じくしたことがあるな。あの男性の読書癖を聞いてみたい。

というわけで、奇才・浦賀和宏の本領発揮。安藤直樹シリーズは積極的にはお薦めしないけれど、この『彼女は存在しない』はもう積極的にお薦めしちゃう。

読め!読むべきだ!!

って、命令になってるからすみません。でも、そのくらいお薦めです。騙されたと思って騙されながら読んでください。作中のエログロは浦賀作品には必須なので、そこだけ眼を瞑ってくださると嬉しい。

ふたりの人物の視点を交互に切り替えて進む物語。いま5行くらいあらすじを書いたのですが、うっかりネタを割りそうになりました。ネタを割らずにレビューを書こうレビューを書こうとすればするほど、ネタを割っている罠。本作には『こわれもの』指定が必須です。とりあえず文庫版裏のあらすじを丸写ししよう。こんなこと、このブロ愚始まって以来だわ。

平凡だが幸せな生活を謳歌していた香奈子の日常は、恋人・貴治がある日突然、何者かに殺されたのを契機に狂い始める……。同じ頃、妹の度重なる異常行動を目撃し、多重人格の疑いを強めていた根本。次々と発生する凄惨な事件が香奈子と根本を結びつけていく。その出会いが意味したものはー。

バズ・ライトイヤーが物語の良いところでモノローグ的に登場するのが最高なんですよね。バズなのに綺麗。もの凄く綺麗。綺麗といえば表紙も。「なぜこんな陰湿な作品に、こんな爽やかな表紙を?」と最初は思っていて欲しい。最後まで読めばこの表紙の良さがわかるはず。

私はこの作品をミステリとは捉えていない節があって。いや、もうどこをどう切り取ってもミステリでしかないのだけれど…でも、私はいつも本作を恋愛小説だと思って読んでいる。既読の方からは「頭、大丈夫ですか~?」って聞かれてしまいそうだけれど(苦笑)主題は重いし、グロいし、救えないけれど、最後と表紙のあの爽やかさは異常だと思うんだ。

できれば、あまり頭を使わずに、流れに文章にまかせるままに読んでもらいたい作品。あと、登場する浦田先生は浦賀ではないと思って読んでもらいたい(笑)浦田先生、あの作品で新人賞って凄いね斬新だわ…

って、また知らないうちにネタ割ってる!?

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