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2009/01/31

『町長選挙』 奥田英朗

町長選挙 Book 町長選挙

著者:奥田 英朗
販売元:文藝春秋
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「いらっしゃ~い」

今日も陽気なお出迎え

あれ?貴方、どこかでお逢いしたことありませんでしたっけ?

『イン・ザ・プール』『空中ブランコ』に続くトンデモ精神科医・伊良部シリーズの第3弾。今回は4件の治療を敢行しておるのですが…あれ?どっかで見たことあるような聞いたことあるような?

いつも私の頭を悩ませるのが、「伊良部の行為は治療か?悪ふざけか?」という命題なのですが…どうなんでしょうか?『空中ブランコ』のレビューでは

本作を読んで確信しました。
伊良部の行為は治療でも悪ふざけでもなく…本気だと。

なんて書いた私ですが、今回は表題作「町長選挙」以外は治療行為に見えるな。逆にちょっと怖い。

さらに残念だったのは、この伊良部シリーズは程度の差こそあれ「私もちょっとこの気あるな…」と読者に思わせるところだと思っていたのですが、今回それがちょっと薄かったような。ナベ○ネの「死が怖い」は若い読者では実感が伴なわないし、ホリ○モンの「ひらがな忘れる」はそもそも良く判らないし(あっ、でも漢字忘れるのといっしょか)、女優の(モデルは誰なんでしょう?白木だから黒○瞳さんですかね?)「老化に逆らえ!痩せたい!」に至っては思わない女性の方が少数派だと思うし。ちなみに私は疾うに諦めの境地です。このワガママボディめっ!

まぁ、本作の主旨は風刺だったんでしょうから。

そうすると表題作「町長選挙」の主旨が読めなくなるな。政治家のお食事券(byTRICK)について書きたかったわけじゃないだろうし、伊良部の老人受けが書きたかったわけじゃないだろうし。治療らしい行為も見当たらなかったので、単なるドタバタコメディと化していたような…私の読み込みが甘いのでしょうか?

ごめんなさい今回はちょっと残念だったので、第4弾に期待して!

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2009/01/30

『探偵伯爵と僕』 森博嗣

夏休み

次々と消えてゆく友達と新しい出逢い

はじめての冒険

なぜか密林のアフィリが非表示だったので、今日はセブンアンドワイのアフィリにしてみました。1500円以上送料無料なのはどちらも共通ですが、密林はメール便の確率が高いのが玉に瑕。なので、本はあまり密林では買わなかったりする。

って、レビューしなさいよ貴女。

今日のメニューはミステリーランドとして配本された森博嗣『探偵伯爵と僕』。個人的ミステリーランドベスト3に入る1作。ちなみに残りの2作は『いつか、ふたりは二匹』『ラインの虜囚』ですね。『怪盗グリフィン、絶体絶命』も捨てがたいのですが。

「かつて子どもだったあなたと少年少女のための」と銘打たれたこのミステリーランドには時々まったく少年少女のために書かれていない作品が紛れ込んでいるのですが(笑)森先生がここまで少年少女のための作品が書けるとは思ってませんでした。森先生の文章は綺麗だけれど、解かり易さに軸足が置かれているとは思っていなかったので。むしろ、付いてこれる奴だけ付いて来いのスパルタだから。

だから、まるで本当に、主人公たる新太くんが夏休みの日記(宿題)として物語を綴っていると言われたら信じてしまいそうな文章に嬉しい誤算。心なしか漢字が少なかった気がするのは木の精?

そして、なによりも誰よりも、伯爵について。再読の今回、私は伯爵がどんな人間でどんな立場でなにを目標としているか知っているから。だから、恥ずかしながらラストで眼を潤ませてしまった。犯人を追い詰めた伯爵が一体なにを思ってその手を強めたのか、その手を弱めたのか。初読よりも再読の方が数段良いと感じた箇所。

そして、最後におまけ的に明かされる○○トリック。別に読者を騙そうと用意されたものでは無いから、トリックとは呼べないかもしれないけれど。けれど、それを明かされたとき本気でゾクッとしたし、森先生は凄いと心底思った。きっと、正しく物語を紡いでいたら伯爵の言う「人間の醜さ」「社会の未熟さ」が全面に押し出された、少年少女のためとは言えないような物語が出来ていたと思うから。確かにそれはいつかは知らなくてはならないことだけど。けれど、もう少しモラトリアムを…だって、今は夏休みなんだもの。森先生がそう言っているように感じた。

ミステリーランド版(新書版)の山田章博氏の挿絵が好きだったので、文庫版には挿入されていなくて残念。そうそう、チャフラフスカさんは東京オリンピックで活躍した体操選手ってことでOKなのでしょうか?

探偵伯爵と僕 (ミステリーランド) Book 探偵伯爵と僕 (ミステリーランド)

著者:森 博嗣
販売元:講談社
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2009/01/28

『トリプルプレイ助悪郎』 西尾維新

トリプルプレイ助悪郎 (講談社ノベルス) Book トリプルプレイ助悪郎 (講談社ノベルス)

著者:西尾 維新
販売元:講談社
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トリプルプレイのスケアクロウ

一回の盗みにつき三人殺す

維新×流水、JDCトリビュート!!

失踪中に読んだ(らしく)未レビューだった本作。大好きなJDCと西尾維新がコラボしたJDC トリビュート『トリプルプレイ助悪郎』が本作のメニューです。

本作は比較的、西尾維新色の強い作品に出来上がっておりましたね。JDC読んでいる、というよりは西尾維新を読んでいる、と言った方が正しいと思いました。西尾維新らしい遊び心満載。

総著作数53冊、総文字数が一体どのくらいかなんて考えたくもない髑髏畑百足の小説には誤植が一切ない。そんな、完璧人間・緒川○まきもびっくりな髑髏畑百足の最後の小説を廻って、ふたりの娘、執事、編集者、探偵、怪盗が裏腹亭に集まる。『あかずの間』の前に陣取った探偵…にも関わらず、扉は開かれていないにも関わらず、室内で見つかった他殺死体。そして、犯行声明。

果たして怪盗・スケアクロウは如何にして最後の小説を奪っていったのか。もちろん西尾作品ですので、ありきたりな結末は用意されておらず。西尾作品では珍しい(初めての?)「読者への挑戦状」付き。確かに、挑戦状にも書かれているように、殺人事件の真相と最後の小説については解けるかもしれない。けれど、あまりにも堂々と張られた伏線に気付ける読者はどのくらいいるのだろうか。そういえば、石崎幸二氏『あなたがいない島』レビューのときに、このトリックについて言及してますね…まさかお眼にかかれるとは思っておりませんでした単なる冗談だと思っていたので。

今回もオリジナルJDC探偵で登場したのは龍宮のみですか。西尾氏は龍宮がお好き?私は龍宮が大好きです。あぁ、JDC読みたくなってきた。でも、本棚に陣取るあのピンクの背表紙を眺めるだけでやる気が無くなっちゃうんだごめんね龍宮。

人間は誰しも小説の登場人物。けれども、それは、誰かに操られているわけではなく。いつでも、いつまでも、作者は自分で居たいものです。

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2009/01/27

『火村英生に捧げる犯罪』 有栖川有栖

火村英生に捧げる犯罪 Book 火村英生に捧げる犯罪

著者:有栖川 有栖
販売元:文藝春秋
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これは火村英生に捧げる犯罪だ

とっておきの探偵に

きわめつけの謎を

ようやく読むことができました火村&アリスシリーズの新刊『火村英生に捧げる犯罪』。タイトルは秀逸、内容は…有栖川作品に多いですよねタイトルが秀逸すぎてパターン。

8つの短篇・掌篇が収録された本作。趣向やトリックは様々。これまでの短編集以上にバラエティに富んだ1作だったことは間違いなし太鼓判を押します。

個人的に好みだったのは「あるいは四風荘殺人事件」。これもまたタイトルが秀逸。「あるいは」が良いですよね、「あるいは」が。内容もまた趣向が凝らされていて。アリス&片桐の癒し系コンビが火村の元に持ち込んだ、とある殺人事件。まるで推理小説のように閉ざされた山荘で、まるで推理小説のように雪密室に彩られた謎を、まるで推理小説のように“名探偵”と“警部”が手を組んで解決する…はずだったのだが。長編でもいけるんじゃないかと思った本作、館モノと呼ぶのが相応しい、有栖川作品初の館モノか!?

あとはやっぱり掌篇が好きで。有栖川氏の作品は短ければ短いほど良いなぁ(失礼発言)「鸚鵡返し」が良い。そんなしょーもないトリック仕掛けるなよ(笑)と犯人の肩に手を置きたくなる1作。「悪意と善意の顛末」はタイトルが好き。内容は…コナソの2時間スペシャルかと思った(こんな阿呆な犯人居たんだ、の意)1作。

では、短篇はと言いますと…「長い影」は綺麗にまとまってましたね動機が自然。時効の停止なんていう社会派(?)ネタを有栖川氏が書くとはおもっておりませんでした。社会派とうよりベタネタか?そして表題作「火村英生に捧げる犯罪」と「殺風景な部屋」ではアリスが活躍。茅野&森下に密かに莫迦にされるアリスが可哀想ですが(ただし、すべて真実)火村がアリスを連れまわすのには何か理由があるはず。きっとたぶんね。

というわけで、タイトルがなによりも秀逸だった本作。有栖川作品は掌篇が大好きなんだけれど…たまには長編が読みたい。国名シリーズで長編、いっちょよろしくお願いします。

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2009/01/26

『未完成』 古処誠二

アンフィニッシュト (文春文庫) Book アンフィニッシュト (文春文庫)

著者:古処 誠二
販売元:文藝春秋
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自衛隊内から忽然と小銃が消え失せた

決して表沙汰にはできない難問に

立ち向かうのは…もちろんあのふたり

またもやアフィリ非表示。『UNKNOWN』と違い、こちらは文庫化されていないのですね。『少年たちの密室』が先に文庫化されてみたり(ちなみに文庫化された際の改題が『フラグメント』)…どういう大人の事情なんでしょう気になる。

1/27追記:『未完成』も『アンフィニッシュト』と改題し文庫化されているという情報を頂戴しました!ご指摘いただいた通りすがりさん、ありがとうございました!!

そんなわけで朝香二尉&野上三曹シリーズの第2弾にしていまのところ最新作です。もうこのふたりの活躍は拝めないのでしょうか。残念。今回ふたりが挑む謎(問題)は小銃の消失。それも“ついうっかり”などではなく(それはそれで大問題なのだが)明らかに悪意を持って。銃撃訓練中に、ほんの1~2分、飛来するヘリコプターに眼を向けた隙に消えた小銃。誰が、なぜ、どんな目的をもって小銃を消してみせたのか。

本作の主題は小銃の消失(ミステリ)ではなく、天国に一番近い島に見ることの出来る(縮小された)民族問題。非常にデリケートな題材。この『未完成』あたりから古処氏の作風に大きな変化が現れたと云っても過言ではないと思います。少なくとも『UNKNOWN』は自衛隊内で起こったミステリが主題でしたもの。

そうは云ってもここはミステリブロ愚ですので、ミステリについて語ります。うーん、やっぱり小粒と云わざるを得ない。そもそも、犯人たちの目的がここ(小銃の取得)ではないから仕様がないのですが。小銃が消失することで、調査班の朝香二尉が動くことで、なにかが変わることを期待して。それは事件を複雑にした影の協力者にも同じことは云えて。だから犯人は、犯人であることを指摘されても逃げない隠さない、むしろ悪いことをしたとも思っていない。あれ?これってミステリ??

重苦しい…いや、私たちが受け止めなくてはならない主題に正面から立ち向かえる方にはお薦めの1作。ちょっとミステリでも読みたいわ、という方にはお薦めできない1作。でも、いつかは読んで欲しい1作。

個人的には朝香二意尉が所有しているというカノン砲が気になります(下ネタじゃねーかよ!!)

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2009/01/25

『日曜日の沈黙』 石崎幸二

『ミステリィの館』へようこそ

これから行われる推理イベントでは

来木来人の死にまつわる謎と究極のトリックを

探していただきましょう

消化すべく、なんとか見つけました『日曜日の沈黙』。まさか“本棚に並べなくても良いだろうBOX”にぶち込まれているとは思わなんだ…いや、正しかったのか?

本作では殺人事件は起こりません。『ミステリィの館』と銘打ったホテルの推理イベントがその舞台。イベントの主旨に沿って(偽の)死を迎えてゆくゲストたち。けれど、この死はあくまでも「来木来人の死にまつわる謎」と「究極のトリック」を見つけ出すための鍵にすぎない…石崎&ユリ&ミリアは主催者の用意したダミーの解答にひっかかることなく、真相を手にすることが出来るのか!?

という内容なのですが…まさかこのネタでメフィスト賞受賞できたとは驚き。2作目か3作目でやるようなネタじゃないかと思うのですがいかがでしょう?なぜかラストは小奇麗にまとめちゃって…石崎さんが真顔でそんな甘い台詞吐いたら、笑い死にするわ。

そもそも、石崎さんとユリ&ミリアの出逢いがあんなに唐突なものだったとは。謎を追いかけるうちに意気投合(?)して…という展開ならまだしも、あんな無茶苦茶な逆ナン(笑)状態だったとは。トリアタマが脳内から抹消した事実。

それでも、3人の掛け合いとミステリに対する風刺はデビュー作から変わらず。「おまえ計算速いな。西之園萌絵か」あたりはどこかで読んだ気もしますけれども(高田崇史氏の千波くんシリーズだったように記憶)。上書き保存しちゃうお馬鹿な警部の件なんかが好きです。

とにかく、石崎さんの凄さが全く伝わってこない本シリーズですが、まだまだ読みたいたくさん読みたい。でも、『袋綴じ事件』から『首鳴き鬼の島』まで5年もかかったという前科があるからなぁ…次の新刊は2013年でしょうか?いやいやいや、是非期待を裏切ってくださいね!!

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2009/01/24

『ドッペルゲンガー宮』 霧舎巧

ドッペルゲンガー宮―“あかずの扉”研究会流氷館へ (講談社文庫) Book ドッペルゲンガー宮―“あかずの扉”研究会流氷館へ (講談社文庫)

著者:霧舎 巧
販売元:講談社
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≪あかずの扉≫研究会へようこそ

この研究会では≪あかずの扉≫の真相を、歴史を、真贋を

調査し、壊さずに開けてみせます

そこからなにが飛び出すかは…おたのしみに

消化すべく再読。まだ半分にも到達していないんですかさくさく読み進めているような気がしたのは錯覚か…受賞作レビュ。

メフィスト受賞作の中でも新本格の色合いが特に強い、霧舎巧氏の≪あかずの扉≫シリーズが本日のメニュー。とんと新作が発表されておりませんが…あと2~3作は続きます設定も決まってます、みたいなことを霧舎氏が仰った(書いた)ものを読んだことがあるような気がするのですが。このトリアタマの捏造でしょうか。

なんてったって、このトリアタマは『ドッペルゲンガー宮』の印象も捏造してましたから。

あれ?こんなに読み難かったっけ?

あぁ、毒吐いたまた毒吐いちゃった。でも、「名探偵、皆を集めてさてと云い」の前に棄却した意見(推理)の再登場率高すぎる。しかも、文章が下…むにゃむにゃ…なので、その推理が棄却されたのかグレーのまま維持されたのかよーわからんのですよ。

いろんな要素詰め込みましたミステリ愛!は充分に感じるんですけれど。館モノ、モチーフに『そして誰もいなくなった』、W名探偵にお馬鹿なワトソン。双子トリックに入れ替わり、毒殺刺殺絞殺のオンパレード。動機も異常。主だったミステリ要素は全て収められていると云っても過言ではないかと…それらが喧嘩しないとは限りませんが。

館に仕掛けられたトリックはかなり大胆ですよね。なんてたって『斜め屋敷の犯罪』に出てくる「流氷館」と同じ名前を持つ館ですしね!!そして、そのトリックを解いたのはジョーマエさん…この≪あかずの扉≫シリーズは登場人物多くってしんどいんですけれど、それぞれにしっかりと役割が振られていて要らない人間がいない。そのあたりに霧舎氏の信念を感じます。あっ、でも集められた10人の方は誰が誰だかさっぱりわからなかったので…捨て駒感満載。ニンゲンガカケテナイ。

そんな私はカケル♥ユイの恋愛模様が楽しみで楽しみで。2番目同士の恋、素直になれないふたりが可愛いですね。

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2009/01/22

『ウェディング・ドレス』 黒田研二

ウェディング・ドレス (講談社文庫) Book ウェディング・ドレス (講談社文庫)

著者:黒田 研二
販売元:講談社
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陵辱を受けた花嫁×交通事故死した花婿

姿を消した花嫁×三股をかけられていた花婿

平行する世界が交差したとき、真相は明らかになる

消化すべく再読。

やっぱりこうじゃないとクロケン!!

驚嘆の魔術師(トリックメーカー)・黒田研二、なんて(ノベルス)背表紙あらすじに書いてありますが(笑)本作の出来は「これからクロケンのことをそう呼んでもいいかも」なんてちょっとだけ思わせる素敵作です。

メフィスト受賞作を新本格度合の強い順に並べたら、もしかして1位に輝くのでは?と思った本作。対抗馬は『ドッペルゲンガー宮』か『真っ暗な夜明け』か?第12~16回受賞作はどう見ても本格ミステリ作家育てるべく力入れてみましたラインナップですね。

そんな新本格ミステリ『ウィディング・ドレス』。仕掛けられているのは○○トリック。物語は花嫁サイド、花婿サイドに分かれて交互に進み…あれ?明らかにおかしい。ふたりの供述が噛み合わない。どちらかが嘘を吐いているようにも思えないのに。つまりはなにかの前提がズレている…そしてズレているのは。

どの前提がズレているのか、は比較的簡単にわかるはず。丹念に、頁を捲る手を一度止めて、じっくりと考えればきっと全てが見渡せるはず。面倒臭いから基本やらないと思いますが(笑)

作中に登場する物理トリックは正直「どうよ?」っていう出来なんですが。むしろ爆笑の出来なんですが。このあたりに往年のクロケンバカミススピリットを感じます。あぁ、デビュー作からこんなことやってたのかって(笑)無理ではないけれど、いくら興奮していたとはいえ…見間違えるだろうかパラパラ。こんなバカトリックしか用意していないのに他人を事件に巻き込もうとか思った犯人の過信が笑える。

でも、メフィスト受賞作のなかでも一、二を争う本格度合なのは間違いないかと。あと、クロケン作品のなかでも一、二を争う出来ではないかと。クロケンの初期作品の方が好き、と言わしめる原動力になってます。うん、良いミステリだ。

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2009/01/21

『夜の光』 坂木司

夜の光 Book 夜の光

著者:坂木 司
販売元:新潮社
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私はスパイ、コードネームはジョー

私には3人の仲間が居て

皆、それぞれの戦場で闘っている

スパイ小説かつ青春小説、えっそれってどういう新ジャンル?と思った坂木司氏の新刊『夜の光』。読んでみて納得、これはスパイ小説かつ青春小説だわ。

普通に学生生活を謳歌していたならば、決して集うことのなかった4人のスパイ。本当ならば自分独りで自分の戦場で、孤独な闘いを続けるはずだったのに。天文部に入ってみようと思ったがばかりに…出逢ってしまったじゃない本当の仲間に。

それぞれが、それぞれに、悩みを抱えて。それは家族のことだったり、定まらない自分であったり、恋だったり。スパイ同士は決して自分の戦場のことを語らない戦況を尋ねたりもしない。けれど、一番辛いときに一番しんどいときに、狙い定めたかのように援護射撃をしてくれるから。それはつまらないジョークだったり、美味しい野菜だったり、薫り高き珈琲だったり。

そして、4人のスパイを遙か彼方から照らす夜の光。何億光年か先に存在した星を静かに眺めているうちに、また頑張ろうって思えるから。まだ闘えるって思うから。だから4人は集う星の下に夜の光に。

坂木司氏らしいミステリもテイストとして残されてはいるのだけれど。この作品の良さはそこではないと思うから。(個人的には「スペシャル」のピザの謎が好き。よくできている私もいつかやってみたい)

ゲージの軽いノリと、ジョーの丁寧な訂正が好き。ギィが珈琲を淹れるたびに私は手元のマグカップを口に運んでいたし、ブッチの作る野菜なら食べても良いと思った。偏食の大家たる私が。そして、田代のような話のわかる教師がこの世に居るわけないと哀しくなった。

実は私もスパイ業を営んでいて。私にも同じ戦場で闘う仲間が居ることを再確認して、ちょっと笑った。

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2009/01/20

『暁天の星』 椹野道流

暁天の星―鬼籍通覧 (講談社文庫) Book 暁天の星―鬼籍通覧 (講談社文庫)

著者:椹野 道流
販売元:講談社
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死者の声を聞く仕事

法医学教室に迷い込んだヤクザ医師

彼は死者の声を聞くことができるのか?

ミチルンこと椹野道流嬢の鬼籍通覧シリーズ、初めましてです。『メフィスト 2009年1月号』に収録されたQEDトリビュート「薬剤師とヤクザ医師の長い夜」にて薀蓄薬剤師と対峙することとなったヤクザ医師・伊月崇の物語。

物語の舞台は法医学教室。司法解剖を行う教室…と言えば通りが良いのか?死者の声を聞く~なんてあらすじ紹介をしましたが、トゥルーコーリングとは違います。もっと現実的な…

現実的な??

なぜ、彼あるいは彼女は死ななくてはならないかったのか。どんな手段によって死はもたらされたのか。物言わぬ体にメスを入れ、その答えを聞く。新人歓迎会とばかりに、次々と運び込まれてくる死体に…なんとなく無視し難い共通点が。捜査は警察の仕事だけれど、その仮説は一笑されるような信じ難いものだから。だから、ヤクザ医師は死者の声を聞くものとして、独自の捜査を開始する。単なる自己満足かもしれないけれど。

なんとなくですが、法医学という「(死体に現れる)事象物象が全て」である教室が舞台なだけあって、現実的な結末に落ち着くんだろうなぁと思っていたのですが…

まさかのホラー!!

堂々たる結末で、流れに身を任せれば違和感を感じる隙を与えないのですが…

まさかのホラー!!

大事なことなので2回言いました。もし、この謎に現実的な結末を持ってこれたら名ミステリになったと思う。そのくらい謎が魅力的。魅力的だからこそ…不思議は不思議のままにしたいと思ったのでしょうか椹野道流嬢。

まさかのホラーではありましたが(3回目)シリーズとして、とても魅力的だと思いました続きも絶対読む。そういえば、たったいま偶然にもCMが流れたので知ったのですが、今クールドラマ「ヴォイス」の舞台も法医学教室なんですね。

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2009/01/19

『書物狩人』 赤城 毅

書物狩人 (講談社ノベルス) Book 書物狩人 (講談社ノベルス)

著者:赤城 毅
販売元:講談社
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国を、政治を、歴史を揺るがしかねない稀覯本を

合法非合法問わずに入手する書物狩人

さぁ、貴方はどんな本をご所望で?

なんとなくファンタジー小説だと思い込んで嫌煙していた本作ですが、

まさかこんなにも現実的、即物的な小説だったとはっ!

もちろんファンタジー要素は含まれておるのですが…SILABがこの世に存在しないとは誰にも言い切れない。そんな、なんとも不思議な感覚に襲われる一作『書物狩人』が本日のメニューです。

フランス語で狩人を意味する“ル・シャスール”と呼ばれることを好む書物狩人・半井優一。体系や顔立ちに特質すべき点はなく、典型的な日本人であるにも関わらず…彼は常に人の眼を集める。それは、見事としか言いようの無い、銀と見紛うような白髪の所為。染めているようには見えないから…どんな精神的ショックが彼の髪をそうさせたのか。

そんな秘密めいたル・シャスールを探偵的役割に据え、4冊の稀覯本をめぐる物語を集めた本作。どの作品も、どの稀覯本も、どの歴史も、有りそうで無さそうでもの凄く魅力的。ケネディ暗殺の真相を握る1冊の教科書、存在してはならない第五福音書、ナポレオンの旧蔵書に散逸した中国の歴史書…そんな有りそうで無さそうな4冊の稀覯本を廻って張り巡らされる罠、暗躍、推理。

なぜ依頼人はその古書を望むのか。依頼人がル・シャスールに本当のことを言っているとは限らない…むしろ偽りを告げていることの方が多く。そして、そういった人間は悪事に手を染めていることが殆どで。そんな人間に稀覯本を渡してしまって、世界を揺るがすような歴史を変えてしまうような1冊を渡してしまって良いものか。そんなドキドキワクワクを読者に与えてくれる素敵な作品。

ファンタジーだと誤認したまま、読む機会を失わなくて良かった。そう思った素敵作。お薦め。

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2009/01/18

『黒影の館』 篠田真由美

黒影の館 建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社ノベルス) Book 黒影の館 建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社ノベルス)

著者:篠田 真由美
販売元:講談社
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一切の消息を絶った桜井京介

蒼と深春は京介を取り戻すべく

彼の過去を…禁断の扉を開く

ついにラス一となった建築探偵シリーズ、ついに桜井京介の過去が明かされましたが…

やっぱり篠田女史、ハードル上げすぎたよ!!

前作『一角獣の繭』にてこんなレビューを書いた私。

シリーズ序盤から匂わされつつも明かされなかった京介の過去。一体“桜井京介”とは何者なのか?次巻、遂に明かされる??ここまで引っ張ってきて『原罪の庭』を越える名作じゃなくっちゃ、許さなくてよ!!!(かなりハードル高いな。でも、篠田女子自らハードル上げてるからさ…)

確かに異質にして異端。やはり人間ではなかった桜井京介。でも、『原罪の庭』クラスの名作がくるに違いないと思っていた私にとっては物足りなさが残る。

義父の死によって、再び日本へと舞い戻ってきた神代宗。自分は義父になにもしてやれなかった、なにも返してやれなかったと自責の念に駆られる神代の前に現れたのは、門野貴邦。門野の口車に乗せられ神代が向かった“地図にない場所”には、邑を支配する一族とあやうい美貌と知性を湛えた少年、そして殺人事件が待ち構えていた。訳も解からずに一族の住まう屋敷に連れ込まれた神代は、美しいステンドグラスに見惚れるかのように、自分の立ち位置を確認するかのように、過去と現代に起こった複数の殺人事件の謎を追う。

『黒影の館』はこんな物語です。隠しても隠しきれるものではないので言っちゃいますが、上記あらすじの“あやうい美貌と知性を湛えた少年”というのは桜井京介です。ちなみに屋敷内での名は久遠 叡(アレクセイ)。

驚いたことにしっかりミステリです。館モノです。本格の風味、あると思います。正直、神代さんと京介の出逢いや行く末が気になってミステリどころじゃないので、犯人が誰であろうとどうも良いのですが(酷い)意外性、あると思います。犯人のこれまでの言動を見れば、動機も理解できる。でも、篠田女史が読んでもらいたいのはそこじゃないと思うから。

じゃ、どこ読んでもらいたいのかというと…

肝心なとこ書いてないですよね!!

『原罪の庭』はミステリ部分はもちろん、石になりかけていた蒼をどうやって取り戻すか、蒼の成長と心の繋がりを描いた部分が秀逸で号泣で名作だったわけですが。本作にはそういった部分皆無じゃないですか。神代さんがアレクセイをどうしてそこまで助けたいと思ったのか…読み取れない。アレクセイは確かに可哀想だったけれど、存在しない人間と変わらなかったけれど、でもきっとあのまま生きてゆくことはできた。それがアレクセイの望んだ形ではなかったにせよ。

もちろん、義父を喪ったばかりの神代さんにとって贖罪の意味もあったのだと思う。あんなに愛してくれた義父に、最後まで礼すら言えなかったなにも返してやれなかった。その後悔を、愛された経験のないアレクセイを愛してやることで払拭する。きっとそういうことだったのだと思うのだけれど…なぜか読み取れなかった書かれてました?

感動巨編が来る!と勝手に思い込んだ私が悪いのでしょうか?面白かったんです建築探偵ここ最近酷い作品が多かったので久しぶりに満足のゆく作品が読めて嬉しいんです。でも、やっぱり物足りない。次回が本当のラスト。感動巨編は次回作までお預け。蒼&深春、頑張れ。

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2009/01/17

『さいえんす?』 東野圭吾

さいえんす? (角川文庫) Book さいえんす? (角川文庫)

著者:東野 圭吾
販売元:角川書店
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理系作家・東野圭吾が

理系視点で綴る

理系エッセイ集

『ちゃれんじ?』を念頭に置いて読み始めたので、意外とまじめなことが書いてあって(失礼)びっくりした覚えのあるエッセイ集、『さいえんす?』が本日のメニューです。通勤本としてちょいすしたのですが、行って帰ってこいで読めてしまった。

『さいえんす?』はタイトルからも判るとおり、東野氏が雑誌などに投稿した理系エッセイを集めた1冊。どのテーマも簡潔にまとめられているので読み易いです。1エッセイ1分くらいで読めるのではないかしら?(1分は言い過ぎ?3分?カップラーメン?)でも、そんな親切設計の本作でも…どうしても読むのが苦痛だった1篇が。

その名も「堀内はヘボなのか?」というプロ野球・巨人軍について書かれたエッセイなのですが(本作は2005年発行でございます)、数字がね数字が踊っているわけですよ!得失点差や防御率を用いてデータ分析を試みているのですが、私が野球に興味ないことを差し引いても読めない苦痛だ!「超理系殺人事件」を思い出した…やっぱり私は生粋の文系だ、うん。

なので、「理系はメリットか」には「YES」と答えます。

そうそう、本作で一番グッときた一文は「滅びるものは滅びるままに」の

あなたのDNAが保存されていて、人類滅亡後に何者かによって、あなたのクローンが復活させられたとする。
彼あるいは彼女は、果たして幸せだろうか。

ですね。絶滅種を復活させるべきか否か、について書かれたエッセイですが、最後のこの一文にゾクッとしました。凄い説得力のある一文。凄い。

そして、「本は誰が作っているのか」。読書が唯一の趣味で読書が大好きで人生の10分の1くらいの時間は読書に費やしている私にとっては、切実な問題です。このエッセイも最後の一文が重い。

図書館やブックオフを利用することを、まかり間違っても「賢い生活術だ」と思ってもらいたくない。そう考えることは、出版業界を支えている購買読者たちへの、とんでもない侮辱である。

薄給なので読みたい本全てを新刊で買うことはできませんが、それでも出来る限り頑張ります。だからどうか、本よ絶滅しないで。

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2009/01/16

『ダブ(エ)ストン街道』 浅暮三文

僕の彼女を見かけませんでしたか?

っていうか、ここはどこですか?

さっきからどうも迷っているような気がするんですけれど

消化すべく再読に勤しんでおります。それにしてもなぜこうもアフィリの表示されない絶版(?)本ばかりなんだメフィスト賞。

というわけで、本日のレビューは第8回受賞作『ダブ(エ)ストン街道』です。メフィスト賞受賞なのにノーミステリオールファンタジーという1作。でも、好きなんだよなぁこの淡々とした感じが。

アトランティスよろしく、謎の大陸として名高いダブ(エ)ストン。どこにあるのか、どうやって行けば良いのか、そこにはなにがあるのか、全ては霧の中。けれども僕はそこに行かなければならないんだ。なぜならそこには僕の彼女が居るから。酷い夢遊病のタニア(彼女)よ、どうか僕が迎えに行くまでそこに居て。本作はそんな物語。

ダブ(エ)ストンに棲む人たち(熊にハンギョジンに王様に、もっこりタイツの英雄に幽霊船に)は皆、生きてから死ぬまで…いや死んでからも迷っていて。五里霧中、一寸先は霧。それはきっと私たちの人生といっしょで。私たちはずっと迷い続けてる。意識してか無意識にかは知らないけれど。

郵便配達員・アップルがすごく好青年で。初読の際、アップルの正体を知ってタニアに逢って…そこに運命を感じました。うん、やっぱり好きだわ『ダブ(エ)ストン街道』もっと評価されても良いと思うなぜに絶版。

個人的には王様とピエールが大好きなんだけれど。頑張れピエール絨毯巻き取れ巻き取れ!!あと蝶ネクタイ熊さんも好きよ。ガオー!!

ゆるゆるしたいときにお薦めの1作。念押ししますが、

メフィスト賞受賞作ですが全くミステリではありませんのでご注意ください。

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2009/01/15

『誰が疑問符を付けたか?』 太田忠司

誰が疑問符を付けたか? Book 誰が疑問符を付けたか?

著者:太田 忠司
販売元:幻冬舎
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“鉄の女”と畏れられる京堂景子警部補の秘密

それは…ツンデレ?

主夫があざやかに解き明かす8つの疑問符

いま思えば景子さんのアレはツンデレだったんだなぁ…『ミステリなふたり』の発売って何年前ですか?ハードカバで出たのが2001年ですか。そのころには“ツンデレ”なんて言葉ありませんでしたね。ツンデレのはしりか?そんな8年ぶりの京堂夫妻シリーズ『誰が疑問符を付けたか?』が本日のメニューです。

警察署長すらも一瞥で退職に追い込み、抵抗した暴力団員をプロレスラー顔負けの技で行動不能にし、現場で彼女に睨まれれば刑事生命をも絶たれると噂される、愛知県警の“鉄の女”最強警部補・京堂景子。そんな彼女には大いなる秘密、唯一の弱点が。それはイラストレーターにして主夫、愛しの旦那様・京堂新太郎にメロメロ(古い)であるということ。

主夫・新太郎の作る家庭料理に舌鼓を打ちながら“鉄の仮面”を脱ぎ捨て、その日起こった不思議な事件を語る。それは死体といっしょに大量のぬいぐるみがぶら下げられた殺人事件であったり、死体にハマチが盛られていたり、死体が女装をしていたり。けれど、主夫・新太郎はそんなおかしな装飾に目を奪われたりしない。いつも新太郎は冷静沈着に解決への糸口を見つけ出す。それはなぜ?だって、新太郎の目はいつも景子(最強の妻)に向けられているから♥(ってのは冗談ですが、このふたりはラヴラヴです)

ミステリとしての難易度や捻りはそんなに高く(多く)ありません。一風変わった事件を取り揃えてはおりますが、小説として他作品と比較するならレベルはノーマルでしょうか。怪人とか少年少女探偵団とかは登場しないので。あくまでも景子のツンデレぶりとか、新太郎の良夫ぶりを楽しむ1冊かと。

個人的には「京堂警部補に知らせますか?」が好きかしら…ってツンデレ妻、登場しないですね。“鉄の女”唯一のウィークポイントが同僚とニアミス(ニアミスどころか捜査協力)というこのハラハラドキドキ感が良いです。ミステリとしてのまとまりも一番あったように思いますし。

ミステリといえば、本作のタイトル『誰が疑問符を付けたか?』は別に短篇のタイトルではないんですよね。収録されている8つの作品、すべての末尾に「?」が付いてはおりますが…どんな意図でこのタイトルを付けることになったのか知りたい。なにか伏線でもあるのだろうか?と勘ぐってしまう。ミステリスキーにとっては興味の惹かれる、なかなか美しいタイトルだと思います。

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2009/01/14

『UNKNOWN』 古処誠二

アンノウン (文春文庫) Book アンノウン (文春文庫)

著者:古処 誠二
販売元:文藝春秋
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国防最前線に仕掛けられた盗聴器

盗聴器を仕掛けた犯人の目的とは?

メフィスト賞受賞の自衛隊ミステリ

消化すべく再読。知らぬうちにタイトルを微妙に変えて出版社すら変えて文庫化していたとは。個人的に『アンノウン』より『アンノン』の方が好きなんですけれど。ちなみに私が所有しているのはノベルス版なので、もし文庫版に加筆修正があっても対応していないので悪しからず。

この『UNKNOWN』がメフィスト賞を受賞したときに「初の自衛隊ミステリ」ということで一部のミステリスキーの間で話題になったように記憶しておるのですが、いまやミステリを放り出して自衛隊(戦争)モノというジャンルで一旗上げた感のある古処氏。すっかり直木賞候補の常連ですし。申し訳ないことに候補作は一作も読んだことないのですけれど。

本作は、自衛隊内に突如として現れた盗聴器が「いつ、どこで、だれが、なにを、どうやって」仕掛けられたのかを探る物語。ついでに「どうして」も付け加えることもできるかもしれませんが…動機は本人にしか、その組織に所属している人間にしかわからないから省きましょうか。だけど、それにしても、私は本作の犯人を浅はかだと思う。一般の会社(組織)にも往々にしてこういったことはありますが(なんせそれで転職をした私が言うのだから間違いない)だからといって犯罪まで犯すほどのことか?正義ってなぁに?少なくとも、同じ境遇に置かれたことのある私でも、犯人が抱いた動機を理解することはできなかった。

というわけで、本作はロジック重視で読みましょう。「いつ、どこで、だれが、なにを、どうやって」これを常に念頭に置いて。ミステリの難易度は決して高くないので、すぐに犯人の動きはトレースできるかと。ここでポイントとなるのは「いつ」でしょうか。盛大なネタバレになるので遠回し表現ですが、あの瞬間を狙う=既に犯人は自衛隊員ではないと思うんですよね。だから、先程(上記)考察したようなくだらない理由で犯行を犯せる。やっぱり正義ってなぁに?と思ってしまうわけです。

そういえば、『UNKNOWN』に登場するメロンタワーですが、私は高校生のころアレを「たまねぎ」と呼んでおりました。私の見ていた「たまねぎ」がメロンタワーかどうか定かではありませんが、もしそうなら「たまねぎ」の下には最先端レーダー基地が埋まってたのか…格好良いな。そうそう、格好良いといえば基地司令のことを「雲の上の人」ではなく「成層圏に達してしまわれた人」と呼ぶセンスは相当格好良いと思います。

あと、朝香二尉は私の好みど真ん中です♥エリート自衛官♥制服♥♥

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2009/01/13

『カンナ 天草の神兵』 高田崇史

カンナ 天草の神兵 (講談社ノベルス タS- 25) Book カンナ 天草の神兵 (講談社ノベルス タS- 25)

著者:高田 崇史
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

行方不明になった幼馴染の足跡を辿って

向かったのは九州・天草

天草四郎に秘された謎を解く

話題沸騰、歴史アドベンチャーシリーズと帯に書かれておりますが、どのあたりで話題沸騰なのでしょうかいまいちピンと来ません。どうしてもQEDの縮小版、簡易版にしか思えない「カンナシリーズ」。一段組だし文献からの引用少ないし…いや、決して引用だらけの「えっ?これってただの書き写し?」ってのが良いと言っているわけではないのですが。

今回の主題は「天草四郎」。このあたりはQEDでは取り扱わない分野なので(QEDは古代に古代に行きたがるから)新鮮。メインの謎は「天草四郎はなぜ長男なのに“四郎”なのか」「どうして幕府はキリシタンたちをひとり残らず殲滅したのか」「島原の乱と一般に言われているけれど、この戦いは“乱”だったのか“一揆”だったのか」といったところでしょうか?

「なぜ長男なのに“四郎”なのか」については「茶屋四郎次郎」よろしく茶屋四郎さんとこの次郎(次男)みたいな意味かな?と思ったのですが(天草四郎さんことの時貞くん的なね)、この点は巧いこと(?)物語と絡めて提示してくれましたでしょうか。まぁ、冒険活劇は特に求めていないわけですが。そもそも忍者の末裔と言われても…いや、本当にそういう方々が居るのかもしれないので全否定はしませんが。

この「カンナシリーズ」はなにをやりたいのでしょうか?まさかと思いますが、ミステリをやりたいわけじゃないですよね?えっ、だって、今回またしても「警察がちょっと時間かければ解けちゃう程度」の難易度でしたし。過去との因果?それを全面に押し出したいのなら、もっと作品に深みを加えてくれないと。しかも、意味不明に主人公一行が襲われる図式も前回といっしょ…伊勢の海女だからって生体活性反応力をギリギリまで落として(脈を沈めて)30分潜ってられるって…。

本作で一番楽しめたのは徳川将軍(家康、秀忠、家光、綱吉、吉宗)のフィボナッチ数列もどきでしょうか。この発想は素晴らしいと思った。

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2009/01/12

『しらみつぶしの時計』 法月綸太郎

しらみつぶしの時計 Book しらみつぶしの時計

著者:法月 綸太郎
販売元:祥伝社
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ロジックの申し子が織りなす

ロジックだらけの

ロジックコレクション

法月綸太郎のノンシリーズ短編集。1998年~2008年という10年間分の仕事…これだけが全てだとは思わないけれど、さすが遅筆で有名・法月綸太郎。

10の作品が詰まっておりますが、異色作もいくつか。異色作は本当に異色作で(『猫の巡礼』を指しております)えっ?なにこれ?状態なので脳内から消し去るとして…やっぱり私が一番好きなのは表題作「しらみつぶしの時計」でしょうか。

「しらみつぶしの時計」は1分ずつ異なる時を刻む1440個の時計から、正しい時を指す時計をロジックで見つけ出せ!というもの。タイムリミットは6時間。どうしてこんな状況に陥ってしまったのか…なんてことは瑣末。そんなことを考えている暇があったら、さっさとロジックを展開しなさい!ってなもんです。読んでいる間中、「ひゃっほう!ロジックひゃっほう!!」と思っておったわけですが、最後の駄洒落にやられました。駄洒落なんだけど、カメラに揚々と時計を差し出す絵を想像したら…ちょっとゾクッとしました。ちなみに「自分だったら…」と置き換えて読んでみましたが、全く見付けられる気がしませんでした文系万歳!

あとは「使用中」「ダブル・プレイ」「四色問題」あたりが個人的好みに該当しますでしょうか…ってやっぱり本格ミステリ寄りですね。「ダブル・プレイ」を読みながら「法月作品に他にも○○殺人を扱ったものあったよなぁ…綸太郎もので」と思ってはみましたが…思い出せるわけが無くなんてったってトリアタマ。「四色問題」は本家(地図塗り分け)とほとんどリンクしていないのが悲しかったですが(卑猥な語呂合わせシリーズとは巧いことリンクしてたとは思います)タイトルの付け方として秀逸だと思いました。

そういえば「盗まれた手紙」はなんとなくグリフィンシリーズに通じたものがありますね。法月流ハードボイルド。けれど「幽霊をやとった女」は実はあまり好きじゃなかったりする罠。

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2009/01/11

『長く短い呪文』 石崎幸二

呪い

果たしてそんなものがこの世に存在するのか

石崎&ユリ&ミリアシリーズ第3弾

『あなたがいない島』が相当おもしろかったので、そのまま再読してしまいました本作…蛇足だったか?

前作でユリ&ミリアの子分(?)になり、ミステリ研に入部(入研っていうのかしら?)したまみちゃん。今回はそんなまみちゃんが厄介事を持ち込みます。「わたしには呪いがかけられています」そう書き残してさった友人。その友人を追って、またもや孤島へと乗り込んだ奇天烈三人衆。果たして石崎&ユリ&ミリアは「呪い」を科学的に解き明かすことはできるのか!?

まず、本作の読みどころは「ミリア日本史講座」です。前作も瞬殺ミリアで楽しませてくれましたが…ミリアは力ありますね。「710すごいよ平城京」はいつの間にか「日本の館もの(ミステリ)発祥」に、「小野妹子」はいつの間にか「日本最初の叙述トリック」に、「鎖国」はいつの間にか「日本全部が密室(ミステリ)」に…やるなミリア!!

そして、今回は石崎さんにも一本取られた!今回も田舎の祖母を殺害して孤島に乗り込むことにした壁際サラリーマンですが、まさかこんなこともあろうかと「ばあさんは双子ってことにしてある」とは!まさに双子トリック!!ユリの「やっぱ石崎さんはすごいわ。家族計画がしっかりしてるわ」にも笑かしていただきました。

そうそう肝心のミステリ部分、なにを「呪い」と定義しているかについては解り易いかと。けれど、「犯人はなぜそんなことをしたのか」についてはねぇ…動機じゃないですか?はっきり言ってどうでも良い。動機なんてその人(犯人)にしかわからない。だから、本作はミステリ(推理小説と言い換えた方が良いかしら)とか言えないと思ったり思わなかったり。

そういえば、石崎さんが「科学の子」だとは思いもよりませんでした。変態の子じゃないんだ。

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2009/01/08

『あなたがいない島』 石崎幸二

無人島サバイバル生活

持ち込めるものはひとつだけ

さぁ、貴方ならなにを持ち込みますか?

こんなにおもしろいのに絶版扱いって!?文庫化しなさいよ文庫化!!

というわけで、石崎&ユリ&ミリアシリーズ再読です。本当は 消化すべく『日曜日の沈黙』を探したのですが発見できず…引越しのどさくさにまぎれて消滅した模様。

でも、本作『あなたがいない島』の方が好きだったように記憶してるし!石崎&ユリ&ミリアシリーズ(長いな…)はこの3人の掛け合いが売りなのですが、もう最高です。最初からユリ&ミリアには遠慮なんて欠片も存在しませんでしたが、第2弾はさらにその上をゆく出来。

何度が爆笑させていただいた「瞬殺のミリア、古典ミステリネタバレシリーズ」がとにかくお薦め。クリスティの超有名作をお読みになったことのある方なら、このウイットなジョークを解ってくださるかと。むしろ、未読の方はこの素敵なジョークを楽しめないなんて損。読んでからいらっしゃってください、と入場をお断りしたい気分です。

そして、石崎さんってもの凄く出来た人間だよなぁなんでセクハラなんてしちゃったんだろう壁際どころか壁に喰い込んじゃってるんでしょ手取り20万円か結構もらってるじゃん、とか思ったり思わなかったり。その心の広さに改めて驚かされた一作。まぁ、友だちができて嬉しいのか。

そしてミステリ。3人の掛け合いに紛れて目立ちませんが、なかなか優秀だと思うのですが。「この心理学研究イベントの意味は?」「持ち物がひとつに限定されている理由は?」「ひとつ、またひとつと持ち物が消えてゆくのは何故?」そして、「殺人犯人は誰?」。全ての疑問が綺麗に解決されてゆく様にうっとり。

さらに「事件解決だ!」と思っていたらエピローグでもやってくるんだから。なかなかやるな石崎幸二氏。純粋なミステリ部分の解決は石崎(登場人物の方)にしっかり任せるあたりも憎い演出だと思います。

ところで、やっぱり今回もユリとミリアの読み分けはつきませんでした。ユリとミリアの名前を全て入れ替えて文庫版発売してみませんか?

まさに誤植トリック。

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2009/01/07

『予告探偵 木塚家の謎』 太田忠司

予告探偵―木塚家の謎 (C・NOVELS) Book 予告探偵―木塚家の謎 (C・NOVELS)

著者:太田 忠司
販売元:中央公論新社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

バカミス中のバカミス

あの予告探偵が帰ってきた!

KING OF バカミスとして大絶賛させていただきました(笑)『予告探偵 西郷家の謎』の続編です。天に届かんとするほどの徳と神のごとき英知を持った尊ぶべき人間・摩神尊が帰ってきました。折り返しの「著者のことば」が素敵。

ベタなくらい古典的なミステリがお好きな方
腰が抜けるくらいおバカな話でも許せる方
傲岸不遜で傍若無人な探偵に我慢できる方
ワトソン訳がとことん情けなくても大丈夫な方
どうぞ、この本を開いてください

って(笑)もちろん全てに合致する私は開かせていただきましたよ本作を。

前作のネタがあれなので(笑)二番煎じは通用しないとは思っておりましたが、比較的まともな作品がきて逆にびっくり。5つの短篇が収録されておるのですが、そこに少しだけ秘密が…って短篇の題名読み上げるだけで丸判りなのでネタバレにならないですよね、5人の木塚君が登場します。しかし、摩神尊はひとり。摩神尊とは何者なのか?が本作の主題です。

でもまぁもちろんご期待通り、まともな(論理的なと言い換えた方が良いだろうか)結末は用意されておりませんのでご安心を。ちなみに、収録されている5つの短篇=5つの謎(殺人事件)なのですが、こちらもまともな結末は用意されておりません。頁数の都合なのか、推理は非常お粗末です。素材自体は悪くないと思うのですが、全て摩神尊の思いつきで解決してみました…というか、警察がちょちょいと現場検証すれば判ってしまう程度の謎なんですよね。まさに傲岸不遜で傍若無人といった感じ。

なので、あくまでバカミスを読む優しい気持ちで本作を開いてあげてください。そうすれば、「それなりにまともな作品じゃないか」という方向で楽しめるのではないかと。

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2009/01/05

『『クロック城』殺人事件』 北山猛邦

「クロック城」殺人事件 (講談社文庫 き 53-1) Book 「クロック城」殺人事件 (講談社文庫 き 53-1)

著者:北山 猛邦
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

現在、過去、未来

世界の終焉に拓かれる新しい道

メフィスト賞受賞作

消化すべく再読。私が所有しているのはノベルス版なのですが…文庫版表紙気持ち悪いですね売り上げ落ちませんか?

北山作品はその独特な世界観が売りですが、提供されるその世界が完成されていないような気がして実は苦手です。北山氏の脳内ではきっと美しい完成形が示されているのかと思いますが…行間読めない想像力欠如の私ではそこまで察することができません。ごめんなさい。

そんなわけで『クロック城』。現在、過去、未来、3つの時計が3つの時を刻む終焉の城が殺人事件の舞台。謎を時明かすは南深騎、<ゲシュタルトの欠片>を封じることのできる<真夜中の鍵>候補…ってすっかりファンタジー。

ミステリ的にはなかなか上質です。ロジック重視。犯行機会があるか犯行可能かどうか、それが犯人指摘の決め手であり、全てです。異なる時を刻む3つの時計と聞いただけで本格ファンはトリックを見破ってしまいそうですが、まぁご愛嬌ということで。こういう大掛かりなトリックは好きです。

でも、世界観が(まだ言うか。いや、それだけ残念だったってことです)。嵌まる人は嵌まる、大好きな人は大好きだと思います。私ももう少し完成形に近づくことができればきっと大好き。第2作目で『クロック城』の続きを、完成形に近づく道を拓いてくれていれば…と今でも思います。

そんなことを言って、北山作品では『瑠璃城』が一番好きなのですが。あの世界観は素晴らしいと思いました(ミステリ的には…ごにょごにょ)

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