« 2008年10月 | トップページ | 2008年12月 »

2008/11/20

『カンナ 飛鳥の光臨』 高田崇史

カンナ 飛鳥の光臨 (講談社ノベルス タS- 24) Book カンナ 飛鳥の光臨 (講談社ノベルス タS- 24)

著者:高田 崇史
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

伊賀忍者の末裔と現役東大生巫女という最強タッグを従えて

QEDの高田崇史が贈る歴史アドベンチャー

デビュー10周年待望の新シリーズ

待望かどうかは分かりませんが、高田崇史の新シリーズです。言いたいこと言わなくてはならないことが多すぎるので、いきなりネタバレレビュー(猛毒)宣言して良いですか?

えーっと、QEDはどうした?

あと3作で終焉を迎えるというQEDシリーズ。タイトルも題材も決まっていると仰るのならば、まずQEDを終わらせてから始めて欲しかった新シリーズ。しかも、新シリーズの主人公・鴨志田って!?まさか『QED 諏訪の神霊』で新シリーズへの布石を既に打っていたとは。厳密に言えば『諏訪の神霊』で登場した鴨志田氏の弟が新シリーズ主人公なんですが。確かにいきなり忍者の末裔とか出てくるなんておかしいとは思ったんだよ。

そして、最近の高田作品ではお約束になりつつある

殺人事件発生

殺人事件とは全く関係無く、寺社仏閣へと出向く主人公一行

主人公一行薀蓄三昧

主人公、全く意図せず推理せず勝手に事件解決

という流れは健在。謎を解くという行為がミステリ小説の定義ならば、確かに(聖徳太子の)謎を解き明かそうという動きがあるのでミステリやもしれないが…

だったら殺人事件なんて起こさなければ良いのに

殺人事件がオマケだもんなぁ。でもまだ主人公が事件の解決ステージに居るだけましなのか。前にタタル一行とは全く関係ないところで勝手に事件解決した小説を読んだ気がするもんな。あのときは事件が起こったことすらタタル一行には知らされなかったんじゃなかったかしら。

さらに痛いのが、そのオマケ殺人事件が実にお粗末だということ。久しぶりにこんなトリックを堂々と真面目に使ったミステリを読んだよ。何十年前に流行ったトリックですか?何十年前かのミステリでもこのトリックはワトソンが提示するような阿呆トリックに分類されるのでは?心理トリックも絡めての活用なら許容できなくもないむしろ好きな部類だが…このメイントリック1本で最後まで引っ張りましたよね。ある意味凄い。

気が付けば随分と毒を吐きましたが、ミステリとして本作を読むとどうしてもこういう感想になるのではないかと。歴史解説小説として読むならもちろん面白いです。QEDよりも難易度が落ちているような気がします。少なくともよく知らない神々は登場しませんでしたし。教科書に登場するような有名な人物だけで物語が進むので歴史薀蓄部分を読むのはそんなに苦痛に感じませんでした。ところで、聖徳太子に関する検証ってこれで終わりじゃないですよね?シリーズ通して聖徳太子を追いかけるんですよね?シリーズは4作で終わるんですよね?だって、4枚集めてご朱印帳…欲しい。いま使っている明治神宮のご朱印帳も可愛くて大好きなんですが。

とりあえず、物語冒頭に登場したおみくじカップルがタタル♥奈々だったに違いないと妄想することで怒りを鎮めることに致します。まさかQEDメンバがゲスト出演すらしないとは思わなかったんだよ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008/11/19

『タイムスリップ明治維新』 鯨統一郎

タイムスリップ明治維新 (講談社文庫) Book タイムスリップ明治維新 (講談社文庫)

著者:鯨 統一郎
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

1860年にタイムスリップしてしまった女子高生・うらら

うららが現代に帰る方法は唯一つ

明治維新を成立させること

『タイムスリップ森鴎外』を読むことなしにいきなり読んでみました『タイムスリップ明治維新』…まさかキャラクタ引継ぎのシリーズモノだったとは。でも大丈夫、この時代は私のストライクゾーンだから♥(なにが大丈夫なのかさっぱりわからん)

「新撰組が好き♥」とか言うともう腐女子丸出し、似非歴史スキーだと罵られても好きなんだもんしょうがないじゃんと開き直り。まぁ、本作は主題が明治維新なので新撰組は脇役扱いせざるを得ないのですが。歴史を正しに行ったのに、新撰組(幕府)勝たせちゃったらどうしょうもない。

というわけで、1860年から明治維新が成るまでの8年間を駆け抜ける1冊。なので、もちろん内容は薄いです。要所要所は押さえてありますけれども。しかし、本作のメインテーマ「明治維新の黒幕は誰なのか」でございますが…『邪馬台国はどこですか?』の宣伝じゃないですか!?いや、コロコロと自説を変えても困るのですが。それにしたって(苦笑)

でも、歴史の本流支流の概念やヒストローム値なんかはなかなか練りこまれていて面白かったです。リンカーンが日本にやってきたりするとだだ上がりするヒストローム値。なんかもう10超えててもおかしくないじゃないかと思ったり思わなかったり。

明治維新って何ね?教科書なんてロッカーロッカー。なにこのミミズ文字下手くそ!という方は是非本作で楽しく歴史を学んでいただけたら。歴史は楽しむのが一番。某高田氏のQEDはどうも読めんという方はこちらを。

本作を読んで中村半次郎の高感度だけが妙に上がったことだけ、ここに記しておきます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008/11/18

『蒼い千鳥 花霞に泳ぐ』 高里椎奈

蒼い千鳥花霞に泳ぐ―薬屋探偵妖綺談 (講談社文庫 た 95-8) Book 蒼い千鳥花霞に泳ぐ―薬屋探偵妖綺談 (講談社文庫 た 95-8)

著者:高里 椎奈
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

「学校に行ってみたいのです」

秋がまだ火冬と名乗っていた頃

自分が“人と違ってないか”ばかりを気にしていたあの頃

やっぱり表紙の学ラン(右)は座木でしたか

見間違いかと思ってたんですよ。それなんて罰ゲーム?とか思ってたんですよ。だってコスプ…皆まで言うまい。

というわけで、異色も異色、超異色作にも関わらず正式な色付き薬屋シリーズ第8弾。今回はリベザルはお休み、秋がまだ火冬と名乗っていた頃の、座木がギリギリ高校生に見えなくもない頃の、つまりは過去のお話です。

座木好きの私にとって至福の1冊。いまの(現代の)座木よりもこの頃の座木の方が柔軟性に富んでいると思ったのは私だけでしょうか?成長して頭堅くなったのか、ジョークの腕は落ちた模様です座木。幼き座木の世界は秋が全てで、そんな秋(あっ、今回は火冬か…面倒臭いから秋で良いや統一)から離れ、異種たる人間の学び屋に通うことを望んだ座木。座木の悩みは“人間らしく”“学生らしく”振舞えているか否か。

“人間らしい”“学生らしい”そんなことを気にして生活をすることが既に“人間らしく”“学生らしく”無いことになかなか気が付かない座木。そんな座木の凝りを解してくれたカウンセラー・橘が今回のお気に入りでしょうか。どこかで再登場してくれないだろうか橘。でも、本作って何年前の物語なんだろう…1994年って、そもそも現代(通常)は何年の物語として書かれているわけ?リベザルが日本にやってきて何年って書いてあったっけ?えっ?、もしかして薬屋って相当未来の話?

今回は解決編に突入するまでは相当面白く読ませていただきました。解決編は走馬灯のように過ぎ去ってゆきました=今回もよう解らんかった。いや、解ってはいるんだけど「だから?」って感じなのよね。そもそも蜘蛛兄弟の存在って必要だったんだろうか?唐突に登場したティエンに「???????」大量生産。そんな伏線ありましたか?また自然とナナメ読みしました?

個人的には座木が何故あそこまでの信を秋に置くのか?を解決して欲しいので、この程度の遡りでは不十分なのですが…それでも座木好きな私。嬉しい1冊でございました。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2008/11/17

『ヴァン・ショーをあなたに』 近藤史恵

ビストロ・パ・マルにようこそ

絶品料理に舌鼓を打ちながら

シェフの名推理に耳を傾けてはみませんか?

『タルト・タタンの夢』に続く「パ・マル(悪くない)シリーズ」の第二弾です。

今回は料理メインというより、“パ・マル”に働く人々(主に三舟シェフ)にスポットを当てた一作だったでしょうか。それでもやっぱりお腹が空いて食事を挟んでしまったんですけれどね!!

正直申し上げますと、本作はあまり心惹かれる短篇がなくって…『タルト・タタンの夢』よりもミステリ度減りましたよね?そのかわりに従業員の秘密や趣向、昔話が明らかになったわけですが…物足りない。ギャルソンの彼とソムリエの彼女に艶っぽい話が訪れるわけでもなく。物足りない。

そもそも艶っぽい話を求めて読んだ作品ではないので。ので、「氷姫」や「天空の泉」は厳しかった。ついでに言うなれば収録作の中でベストだと思っている「マドモアゼル・ブイヤベースにご用心」だって艶っぽく無くたって。マドモアゼル・ブイヤベースは何者なのか?って展開で充分だったのに。

あら、知らないうちに辛口。でも、“パ・マル”の料理はいつだって美味しそう。一度で良いから味わってみたいという思いは変わらないのです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008/11/16

『あなたに不利な証拠として』 ローリー・リン・ドラモンド

あなたに不利な証拠として (ハヤカワ・ミステリ文庫 ト 5-1) Book あなたに不利な証拠として (ハヤカワ・ミステリ文庫 ト 5-1)

著者:ローリー・リン・ドラモンド
販売元:早川書房
Amazon.co.jpで詳細を確認する

アメリカ探偵作家クラブ最優秀短篇賞を受賞した「傷痕」をはじめとした

5人の女性警官を主人公とする10の短篇を

そこにあるのはリアル

『あなたに不利な証拠として』というタイトルが秀逸すぎて、読んでみたい読んでみたいと思いながら2年。文庫で並んでいるのを見てついつい購入ようやく読めました。

『あなたに不利な証拠として』というタイトルが秀逸すぎて、どんな内容なのかはさっぱり知らず。本作を知ったきっかけが「このミス」だったので、ミステリなんだろうなとは思っておったのですが…あれ?ミステリ?本作ってミステリ??

ミステリ小説=謎を解くという行為が描かれた小説、だと思っているので個人的には本作はミステリじゃないという判断なんですが…私のミステリ小説定義狭すぎます?アメリカ探偵作家クラブ最優秀短篇賞を受賞した「傷痕」が一番ミステリらしい作品だと思いましたが、結局どちらが真実が解らない(もちろんキャシーの中では結論は出ているのですが)ので、ミステリではないのではないか、と。でもアメリカ探偵作家クラブ最優秀短篇賞なんですよねやっぱり私の定義は狭すぎるのか。

「男らしい」「性別詐称」「生まれるとき性別間違ったでしょ」としばしば言われる私ですが、本作に登場する女性たちにはとてもとても敵いません。凄い。個人的にはキャサリンが好きです一番格好良い。でも、惚れない。何故なんだろう、彼女たちが抱えるものは重すぎるから?

池上冬樹氏の文庫版解説を読んでなるほど!と思った一節があったので引用を。

物語では、キャサリンがどのように事件と関わり、どのように射殺したかを振り返る。それだけである。十八頁、およそ三十枚の短篇なのに、まるで長編のように重く深い。

なので、読むにはとても気力が必要です。彼女たちが抱えているものと同じくらいの。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008/11/15

『ガーディアン』 石持浅海

ガーディアン (カッパ・ノベルス) Book ガーディアン (カッパ・ノベルス)

著者:石持浅海
販売元:光文社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

私にはガーディアン=守護者が居る

私に危害を加えるものには制裁を

私に殺意を覚えるものは…死を?

『耳をふさいで夜を走る』に続く石持浅海アナザーワールド。今回はガーディアンという特殊な存在を主題に据えて、母と子2つの物語を。

設定自体に違和感を感じることはなかったのですが…一段組に違和感。もうニ段組ノベルスは流行らないのでしょうか?同じ厚さでも圧倒的に少ない内容量、でも値段はいっしょなんだから騙された気分です。薄くて安くて良いじゃない。ハードカバ的扱いにしたいならハードカバで出してくれ頼む。

まぁ、本作がハードカバ向きの作品かっていうと微妙なんですが。前半の「勅使河原冴の章」は(きっと)ミステリです。メインの謎は2つ。何故彼は死んだのか?彼女を狙ったのは誰なのか?何故彼は死んだのか?については動機(?)当てになるのではっきり言ってどうでも良いのですが(しかも真相がわかることは一生ない)、もう一方についてもとても丁寧に描かれているので推理する暇もないですわからないでか。

そして後半「栗原円の章」…これはミステリじゃないよね?そして、ガーディアンと私のハートフルな物語でもない。なんだろう、いくらガーディアン=守護者とはいえこんな存在が自分の傍にあったら怖いと思うのですが。「おじいちゃんに護られて恥ずかしくないような人間になる」って確かにそうですが、いくら慈悲の心を持っていたって、恐怖という感情を知らない人が立派な人間になれるものでしょうか?

というわけで、「勅使河原冴の章」は愉しんで読みました。「栗原円の章」は頭を捻りながら読みました。石持作品=ミステリだと思って読まないことをそろそろ覚えなくてはならないのでしょうか?寂しいですね。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008/11/13

『探偵小説のためのエチュード「水剋火」』 古野まほろ

探偵小説のためのエチュード「水剋火」 (講談社ノベルス フJ- 4) Book 探偵小説のためのエチュード「水剋火」 (講談社ノベルス フJ- 4)

著者:古野 まほろ
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

私は帝都から逃げてきた

なぜなら私は人殺しだから

陰陽師探偵が解き明かす謎とは…私の罪なの?

『天帝のはしたなき果実』でメフィスト賞を受賞し、私を失踪に至らしめた古野まほろ氏。そんな古野氏が「探偵小説のための」と冠したミステリを書いているらしいという噂を耳にしたのが半年前。ようやく手に取ることができました『探偵小説のためのエチュード「水剋火」』。

あっ、やっぱり天帝の世界観は引っ張るんだ…

事件が起こるまでの100頁、やっぱり古野氏とのお付き合いはまだ早かったか荷が重かったかと悩む。突然大きくなる文字にも頭を抱え、突如現れた百鬼夜行に手を振り、このノリで古野氏にも手を振ってしまおうか思案。やれ陰陽師だアウシュビッツだフルトヴェングラーだと云われてピンと来ないのは、私が『御矢』『孤島』から敵前逃亡したせいなのでしょうか?けれど、トリアタマ世界代表の私が『御矢』『孤島』の内容をいつまでも覚えていられるとは思えん。やっぱり不親切設計認定でよろしいのでしょうか?

ミステリとしてはバッキバキの物理トリックをかましてくれたので満足。挑戦状も挿入されてましたし。けれど、挑戦状手前までの記述で「おっし、推理すんぞ!」と思う人間がどれだけいるのか謎。だって、情報があからさますぎるよ。ミスリードのために用意された情報を私はお見かけすることができませんでした。あぁ、この記述、絶対推理のパーツに必要なんだろうなぁ…っていうか無理矢理必要な情報盛り込んでる感満載!?ってな感じです。

あれですかね、ト書き風にするのは最近の流行りなんでしょうかね?人間の描写とか!風景背景の描写とか!ワトソン役の内面とか!そういうので読者を誤認させようよ。ト書き(=人間の台詞)で書かれてしまうと「この情報は読者に公開しておかないとフェアじゃないので、わざわざ云わせてます」感がビンビンに伝わってくるよ。

というわけで、バッキバキの物理トリックにも関わらずトリック&犯人(人間の方)が解ってしまいました。物理トリックで(特に頭を使うことなく)犯人が解ったのって、本作が始めてではなかろうか…。

とりあえず、次の『探偵小説のためのヴァリエイション「土剋水」』を読むかどうかはまだ未定。そのまえに挫折した『御矢』『孤島』を読んだほうが良いかしら。でもまた失踪したくない…。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008/11/12

『本当は知らない』 高里椎奈

本当は知らない<薬屋探偵妖綺談> (講談社文庫) Book 本当は知らない<薬屋探偵妖綺談> (講談社文庫)

著者:高里 椎奈
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

ネットから消えた人々を追うシャドウ

病院から消えた人々を追う座木&リベザル

ふたつの道が交わったとき…その先に居るのは秋

薬屋シリーズ、タイトルに色の付いていない作品は異色作。「どうして本作が異色作なんだ?」と思考して…そうかこれはミステリじゃないんだ。そう思ったら「本当は知らない」と言った秋の裏が読めたような気がした。

あくまでそんな気がしただけだけれど

シャドウの追う道、座木&リベザルの進む道。ふたつの道が交わる過程はミステリらしい美しさ。シャドウと座木の会話が噛み合わないところなんて笑みが。

本作は薬屋シリーズ主要キャラ全員集合で、総和なんて無理矢理登場させた感満載。それでも直也の再登場と、秋&ゼロイチ&剴&斯波の妖怪(悪魔)仲良しっぷりは嬉しかった。

そんでもって秋の「本当は知らない」発言。そうするに人間が妖怪を利用したのか、妖怪が人間を利用したのかってことなのだけれど。本作は色の付かない異色作。一応私は薬屋シリーズにミステリを求めているのであって、これまでの色の付いた薬屋シリーズでは人間の犯す罪(殺人)を援護する形で妖怪が登場…あくまで妖怪は人間との共存を目指しているんですよ汚いのは汚れているのは人間なんですよというスタンスで作品が書かれていると思っていたので…本作はいつもの逆、妖怪が人間を利用したってことなのではないかと思ったり。だからこその異色作ってことで、どうでしょう?

そういえばなぜだか急に、警察を辞めた葉山のその後を思い出しました。この後の作品も読了した過去がある模様。本作、あまりに始めましての展開だったので、ちょっと心配になったんです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008/11/11

『パラダイス・クローズド』 汀こるもの

パラダイス・クローズド THANATOS (講談社ノベルス ミI- 1) Book パラダイス・クローズド THANATOS (講談社ノベルス ミI- 1)

著者:汀 こるもの
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

本格に殴り込んで来た生意気な新人(by有栖川有栖)

美少年双子を引き連れて

第37回メフィスト賞受賞作

 消化すべく比較的新しいものから。有栖川有栖氏の紹介文を読んで期待でいっぱいだった本作。

メフィスト賞らしい一作でございました

ぶっ飛んでるキャラ設定やら、本格を愛していながらも斜に構えた態度とか。西尾維新以前か以後かって聞かれれば以後の作品だとは思いますが。

嵐の孤島、クローズドサークルで起こった密室殺人事件。これぞ本格!という舞台設定の中描かれているのは「彼は犯人ではないよ。だって使用人が犯人だなんて二十則違反だもの」みたいな、本格風刺。痺れます。そもそも、双子が探偵(&死神)だなんて、十戒に正面から喧嘩売ってるようなものではないですか(笑)

というわけで、「ノックスの十戒」「ヴァン・ダインの二十則」を一読した後に取り組むと楽しみが倍増するかもしれない本作。というか、本格ミステリを愛してきた人間なら絶対楽しめる一作。

作中の薀蓄に若干辟易しますが(当方ナナメ読み)まぁ、解決に全く無関係というわけでもないので、お好きな方はどうぞ。作者の汀こるもの氏の趣味を垣間見れます。コーラルをコラールと読み違えて、何度か千秋真一がタクトを振っている様が頭を過ぎったことは内緒。

個人的には探偵が○○拒否をしたときに、「このまま本当に作品終わったら面白いなぁ問題作」と思ってにやりとしました。国家一種、回収ご苦労。でも、犯人もまさか○○拒否されるとは思わなかっただろうなぁ。きっと自白がスムースに進むものと思われ。だって、本格ミステリの犯人は、自分が上位の存在であることを自慢したくて自慢したくて仕方が無いんだもの。ほら、本格風刺。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2008/11/10

メフィスト賞一覧

備忘録のために打ち出してみたら…こんなに未レビュー作品があるとはっ!?未レビューどころか未読作品も18作。目下のノルマ決定。

レビュー消化  29/51

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008/11/09

『甘栗と金貨とエルム』 太田忠司

甘栗と金貨とエルム Book 甘栗と金貨とエルム

著者:太田 忠司
販売元:角川書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する

「だ、か、ら、あんたがあたしのお母さんを探すのよ」

親父が残したのはボロイ探偵事務所と生意気な依頼人

高校生探偵・甘栗晃、最初の事件

「最初の事件」とか書いたわりに続編は出ておりません。出る予定があるのかも不明。でも、なかなか面白かったので是非。

太田忠司氏曰く、目指したのは「ロスマクではなくリューイン」とのこと…

ハードボイルド疎くてすみません

ロスマクが『さむけ』のロス・マクドナルドなのはなんとなく想像できるんですが…リューイン?ごめんなさいすぐにはピンと来ない私もまだまだね。

ということで、ハードボイルドについて殆ど無知な私にとって“ハードボイルド=煙草・酒・女・意味なしジョーク”って感じなので(笑)飲酒喫煙が法律で禁止されている高校生が主人公のハードボイルドってどんな感じなのだろう、と。

廃業確実の甘栗探偵事務所に持ち込まれた依頼は「母親探し」。依頼人は ブロンドの美女…ではなく、くそ生意気なガキ。依頼料はウイーン金貨一枚。ハードボイルド作品なので、「この謎を解かないと前には進めないぞ、げへへ」みたいな展開にはならず。むしろ歩けども喋れども話を聞けども、解決への見通しは立たず…みたいな展開です。

でも、最後にはちょっとしたどんでん返しも用意してくれていて。この程度のどんでん返しはハードボイルドのお約束なのでしょうか?ハードボイルドモノって○○誤認ネタが案外多いような気がする。「真相はずっと眼の前にぶら下がっていたのに、俺はここまでなにをしていたんだ」的自嘲が必要?

読み易い文体、暖かい雰囲気が太田氏らしい。甘栗探偵の次の事件も読みたいです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008/11/08

『九マイルは遠すぎる』 ハリイ・ケメルマン

九マイルは遠すぎる (ハヤカワ・ミステリ文庫 19-2) Book 九マイルは遠すぎる (ハヤカワ・ミステリ文庫 19-2)

著者:ハリイ・ケメルマン
販売元:早川書房
Amazon.co.jpで詳細を確認する

「九マイルもの道を歩くのは容易じゃない

まして雨の中となるとなおさらだ」

貴方はこの言葉からなにを推理しますか?

あまりにも有名すぎるあまりにも秀逸すぎるタイトル『九マイルは遠すぎる』。高校生の頃、本作を読んだときにはその良さがよくわからなかったのごめんなさい。屋敷が傾いてたり、屋敷が十角形だったり、30人くらい被害者が居たりする小説ばっかり読んでいた弊害?でも、いまならわかるこの良さが。

『九マイルは遠すぎる』はニッキィ(ニコラス・ウェルト教授)と郡検事の“わたし”が、ああでもないこうでもないと主に“わたし”をからかいつつ、謎を墓暴きの如く掘り出してきては解決するシリーズ短編集。

この「謎を墓暴きの如く掘り出してきては」ってのがポイント。あまりにも有名な表題作「九マイルは遠すぎる」はニッキィの

「たとえば十語ないし十二語からなる一つの文章を作ってみたまえ」
「そうしたら、きみがその文章を考えたときにはまったく思いもかけなかった一連の論理的な推論を引きだしてお目にかけよう」

という挑発(?)から、すべてが始まるという秀逸すぎる物語。“わたし”が作った十一語からなる文章が、どんな論理的な推論を生み出すのか…は読んでのお楽しみ。

そんなわけで。事件すら、謎すら発生していない無から、ニッキィと“わたし”の掛け合いによって事件が、謎が形作られる。もちろん派手さはないけれど、じわっときますこの良さは。

表題作以外なら「おしゃべり湯沸かし」が好き。隣室で鳴った湯沸かしの音から事件を捏造して(笑)解決までしちゃう。しかも、終わりのユーモアも黒い。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008/11/02

『もう誘拐なんてしない』 東川篤哉

もう誘拐なんてしない Book もう誘拐なんてしない

著者:東川 篤哉
販売元:文藝春秋
Amazon.co.jpで詳細を確認する

ひょんなことからヤクザの娘を誘拐することに

この狂言誘拐は成功するのか?

そして、ヘタレ大学生と女子高生の未来は?

「烏賊川市シリーズ」でも「鯉ヶ窪学園探偵部シリーズ」でもない、きっとシリーズ化には至らないであろう『もう誘拐なんてしない』が本日のレビュー作品です。

狂言誘拐かつドタバタユーモア作品といえば、貫井徳郎氏の『悪党たちは千里を走る』を思い出さずにはおれないのですが、本作は『悪党~』を2割…いや3割くらい面白くなくした感じです(ってずいぶん毒吐いたな)

狂言誘拐ものの面白さは「狂言誘拐の成功」→「仲間の裏切り」→「裏切った仲間を成敗してくれる!」だと思うのですが、本作は「狂言誘拐の成功」→「仲間の裏切り」→「どこからともなく他殺死体がっ!!」なんですよね。いやぁ、いまだかつて死体が登場してこんなに驚いた作品があっただろうかいやない。「ミステリだと思って読んでたのに死体が出てこないどころか事件すら起きない」ってのも驚きますが、今回はミステリだと思ってなかったので。

しかし、本作の帯はなかなか挑戦的です。引用。

「騙されたと思って、この本を冒頭30ページまで読んでみてください(立ち読みでOK)。」

続きが気になって最後まで読まずにはおれないでしょう…みたいなことが書かれているのですが、昨晩20ページまで読んだところで寝てしまってごめんなさい。でも、そこまで引き込まれる出だしではないと思う、よ?

というわけで、相当量の毒吐きましたが、東川篤哉氏らしいユーモアに溢れた一作。狂言誘拐に何の意味もないところとか、東川作品らしくて好きです。ミステリとしても(ミステリだと思ってなかったので度胆を抜かれましたが)なかなか上質だと思います。(ミステリだと思ってなかったので)さらっと読み飛ばしていた部分にいくつか伏線張られてたかと思うと悔しい。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2008/11/01

『ダリの繭』 有栖川有栖

ダリに心酔し、ダリを愛した男が死んだ

象徴であるダリ髭までもが消え

火村は幻想から真実を救い上げることができるのか?

「ダリ?誰それ?」という方(あまりいらっしゃらないと思うが)も、表紙を見れば一目瞭然の素晴らしさ。

異質な殺人現場。けれど、残された謎は至ってシンプル。誰がダリ社長を殺したのか?

新情報が出るたびに、新証言が出るたびに、二転三転する犯人候補。正直、捜査陣が踊らされている感が強かった。ひとつひとつ可能性を潰していって、最後に残ったものが真実。しかし、残された真実は“あの有名な台詞”のように意外性のあるものではなく。

本作には理論の飛躍はありません。最後に火村に舞い降りた夢のお告げ(?)は飛躍と呼べるほどのものではないです。関係者の誰でもないのなら、殺人を計画した者はもう彼しか居ないのです。最後の最後まで事件の筋が読めない(読ませない)作品。それが私のこの作品に対する評価です。

やっぱり作家アリスは短編の方が好きです。正直長かった。それでも最後まで読めたのは火村♥アリスの新婚さんごっこのお陰でしょうか()新婚さんネタ多すぎだろうよ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2008年10月 | トップページ | 2008年12月 »