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2008/10/27

『妃は船を沈める』 有栖川有栖

妃は船を沈める Book 妃は船を沈める

著者:有栖川有栖
販売元:光文社
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船乗りは船に女性の名をつけるという

けれど、ここに船を沈める魔性の女がひとり

火村英生は船を沈めることなく、岸まで辿り着けるのか

「船を沈める」「妃(=女)」『セイレーンの沈黙!?』と思ってみて、それは作家アリスの作品名だったと気付く。そんな執筆ペースの早い学生アリスの作品『妃は船を沈める』が本日のメニューです。

本作はひとりの“魔性の女”を巡る2つの中編を幕間を挟んで繋ぎ合わせた異色長編。ジェイコブズの名作『猿の手』をモチーフに据えつつ、描かれるのは現実的な幕引き。もちろん幕を引くのは火村英生。

今回、新キャラが登場しましたが、彼女(あっ、彼女って言っちゃった!?)の火村英生観には鋭さを感じます。特にネクタイの件。火村が臨床犯罪学者として殺人犯を追いかけるのには理由があり、その理由こそ最大のミステリですが…本作、少しこの件に踏み込んだ?それともミスリード??

さて、ここからネタバレします。この警告文も久しぶり。

個人的に、お妃様が犯人って納得ゆかないんですが、皆様どうですか?「猿の手」側で限りなく黒だった彼女を捕らえられなかった→「残酷な揺り籠」でリベンジという構図も解らなくはないですが。彼女はいつまでも“魔性の女”で有り続けて欲しかった。火村が“あの女”と言ったら彼女みたいな展開までは期待しないから(笑)

殺人犯は火村の手にかかると(その謎解きに多少の無理があっても)自然と罪を認める…なんて記述が多用されておりましたが、「残酷な揺り籠」の火村の推理はやっぱり弱いと思います。読了後に「そうだったのか!」と膝を叩けなかった。そして、火村が犯人をどう追い詰めるべきか悩んだ理由も解らず。だって、彼女はもう“魔性の女”じゃなくなってしまったのに。“ただの女”が犯した犯罪なら、これまで充分に暴いてきたじゃない。

どうも納得のゆかない終焉。幕間と『猿の手』論争が面白かったと書いたら怒られますか?

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「猿の手」に願をかけた、というオカルティックな話をベースに、 殺人事件をめぐる、謎めいた女性と犯罪学者との攻防。 SFでもないしオカルトでもないし、どっちつかずなミステリーが、 私的には中途半端だったような…。 なんかこう、容疑者たちにしろ犯罪学者にしろ推理作家にしろ、 登場人物がみな淡々としているというか... [続きを読む]

受信: 2008/11/09 17:52

» 『たちの悪い話』 バリー・ユアグロー [*モナミ*]
ほんとにタチの悪い話ばかり。 ほんの2、3ページの短いお話ばかりなんだけど、どれもタチ悪い。 ダークだとかじゃなくて、ほんとタチ悪い。 こんなにタチの悪い話を、よくもこれだけ思いつけるなんて、 この作者はやっぱり性格がヒネくれてるんだろうか? と思わずにいられないくらいタチ悪い。 どんなに努力しても報われず、善意は踏みにじられ、 好意は悪意で返される。 貧しい人は貧しいままで、いじめられっ... [続きを読む]

受信: 2008/11/14 21:21

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