« 『ゴールデンスランバー』 伊坂幸太郎 | トップページ | 『工学部・水柿助教授の解脱』 森博嗣 »

2008/09/12

『ラットマン』 道尾秀介

ラットマン Book ラットマン

著者:道尾 秀介
販売元:光文社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

-俺は正しいことをした

時を経て蘇る父の声

父の声は僕の背中を押した

幼少の頃に背負わされた癒えない傷。もう道尾氏のお家芸と言っても過言ではない。本作『ラットマン』を読んでそう思いました。

両親に可愛がられ、惜しまれながら命を落とした姉。最後に「-俺は正しいことをした」と言い遺し息を引き取った父。ふたりの死から眼を背け、遺された唯一の息子からをも眼を背けるようになった母。誰にも言えない秘密を背負ってしまった僕。バラバラになった家族、バラバラになった心、そして…バラバラになりつつある仲間。そんなものが『ラットマン』では描かれております。

その痛みがミステリ(トリック)と絶妙に絡み合ってくるんだから…道尾氏素晴らしい。重たい主題の連続なのですが、その語り口、物語の展開はスムース。『ラットマン』読了に費やした時間は2時間弱といったところでしょうか?

ミステリとして読者を世界に導いてくれるからでしょうか。提示される謎はただひとつ…誰が彼女を殺したのか。けれど、ひとつしかない謎も見方を変えれば「ラットマン」のように、いくつもの解に分裂して。その分裂が読者の「騙された!」に、読了後の爽快感に繋がります。至福。

最初から最後まで、タイトル『ラットマン』からぶれない作品。もし、いろんな要素を混ぜ合って『ラットマン』から主題を離したとき…それはただの重たい作品に成り下がるとき。それをさせない、ぶれることなく最後まで読者を導いてゆく、道尾氏の筆力は素晴らしい。

でもやっぱり、『背の眼』『骸の爪』の真備庄介シリーズが読みたいの。

|

« 『ゴールデンスランバー』 伊坂幸太郎 | トップページ | 『工学部・水柿助教授の解脱』 森博嗣 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/38084/23600161

この記事へのトラックバック一覧です: 『ラットマン』 道尾秀介:

« 『ゴールデンスランバー』 伊坂幸太郎 | トップページ | 『工学部・水柿助教授の解脱』 森博嗣 »