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2008/05/03

『インシテミル』 米澤穂信

インシテミル Book インシテミル

著者:米澤 穂信
販売元:文藝春秋
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時給1120百円のアルバイト

ただの誤植?もしかしてドッキリ?

もし本当なら…どんな危険なアルバイト?

矢野龍王『極限推理コロシアム』を思い出さずにはおれなかった本作。男女数人を監禁し、施設内で殺人ゲームを行わせるという趣向でございます。いつ自分が被害者になるかわからない、この瞬間にも誰かが殺されているかもしれない、生きて帰りたいのなら犯人を指摘しなくてはならない。そんな極限状態に追い込まれた人間心理と、クローズド・サークル内で起こる事件の面白さを愉しむのが相応しい読み方かと。

そんなわけで冒頭から登場する“12体のインディアン人形”“十戒”“名作ミステリへのオマージュを込めた武器”…垂涎モノですねっ!個人的に各人が受け取ったメモランダムの内容がおかしいので(『まだらの紐』を象徴する武器は火かき棒じゃない)そこになんらかのトリックが含まれていると推察したのですが、単なるネタバレ配慮だったという罠。

2日目にルール説明がなされた後、大迫&箱島コンビが「黙っていれば1800萬手に入るのに、殺人を犯そうとする阿呆は居ないよね?」と確認した(同意を取った)際に、全員の武器をばらして攫えて金庫室にぶち込まなかったのかが、一番気になったのですが。自分がこの場に居たら提案するだろうなぁ、と。これを拒否する=殺人を起こす気満々ってところだと思うのですが。まぁ、武器詐称した人間も居たので結局は通用しない手だったのですが。

暢気なにーちゃんだと思っていた主人公が名探偵に豹変してみたり、名探偵候補だった安東が3の倍数で阿呆になってみたりと(違っ!)、キャラクタが変化する趣向も愉しめました。どいつもこいつも一筋縄ではゆかない=誰でも犯人足りえるということ。最後の方は、もう誰が犯人だろうがどうでも良くて(えっ?)主催者にどうやって一泡噴かすかに興味は移ってしまったのですが。

しかし、「空気の読めないミステリ読み」って言葉は良いですね。まだ何も起こっていないのに状況証拠だけでビビリまくる奴に、ミステリ読みであるが故に武器捏造して目的を達しようとする奴、そして参加者に「この殺人ゲーム、面白いでしょう?」と趣向を押し付ける主催者。もし私がこの場に居たら、まさしく「空気の読めないミステリ読み」だったでしょうし。ミステリ読みは自分の知識をひけらかすのが好きですし(私、筆頭)。

そうそう、この『インシテミル』の英語副題は『THE INCITE MILL』になるようですが、INCITE=刺激する、MILL=珈琲豆をひくミル、であるならば個人的意訳は“引っかきまわす”ですね。まさにミステリは読めても場の空気が読めない奴等が引っかきまわしたが為に起こった悲劇。タイトルまでもが深いです。イン○ルの某キャッチコピーとか思い出してる場合じゃないです。でも、あのコピーは歴史に残る名コピーだと思いませんか?

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コメント

タイトルはそうい言う意味ですか 面白いですね 気がつかなかった
私も1800万で充分です 私も提案するでしょう でも違う意見の奴絶対いるよな〜 最後に探偵になっちゃう彼はシリーズものっぽい豹変で好きなキャラです

投稿: きりり | 2008/05/03 12:09

☆きりりさん☆
タイトルは超意訳なんですが、案外マッチしているのではないかと自己満足。
この作品は米澤氏のこれまでの作風とそぐわなくて、「これ本当に米澤作品?」と何度か表紙を見返してしまいました。主人公が暢気なのは米澤氏らしいのですが。米澤氏にとってはかなりのチャレンジだったことでしょう。でも、ミステリ読みをにんまりさせるネタてんこ盛りで、愉しかったです。また、米澤氏でこんな作品が読みたい!

投稿: まじょ→きりりさん | 2008/05/03 17:02

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