『ひらいたトランプ』 アガサ・クリスティ
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ひらいたトランプ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) 著者:アガサ クリスティー |
ブリッジを終えたとき、シャイタナ氏は死んでいた
パーティの参加者は全部で8名
その役割は…4名の探偵と4名の犯罪者
「洋モノが読みたい」(んまっ!)と思い立ち、既にカオスと化している本棚から最初に救出された洋モノがこの『ひらいたトランプ』でした。先日再読した篠田真由美『angels 天使たちの長い夜』でこの作品について触れていたので、これも何かの巡り合わせだろうとそのまま読書に入ったのですが…やっぱりクリスティは最高だ。
まずはクリスティから読者に対する挑戦文。
これは例のエルキュール・ポアロの自慢の手柄話である。しかし彼の親友ヘイスティングズ大尉は、ポアロから、この話を手紙で知らされ、非常に単調だと思った。
読者のみなさんは、果たしてどちらの意見に軍配をあげるであろうか。
ですよ。もちろん私は前者(ポアロ)に軍配を上げるわけですけれども。ヘイスティングズが云うように終盤までは単調な事件なんですが…単調だからってつまらないとは限らない。それは作中で取り扱われるブリッジについてもそう。私はブリッジの経験も無いしルールすら知らないけれども、知らないからと云って作品そのものを楽しめないとは限らない。うん、クリスティ(と訳者)の筆力ですね。
あっ、この挑戦文にはちょっとした叙述トリックも含まれておりますね!
そして終盤、単調から脱却した物語は二転三転。4人の容疑者のうち誰が犯人なのか、読者はわからなくなる。ポアロが執拗に迫っていた人物が犯人とは限らない。最も怪しいと思っていた人物が犯人とは限らない。もちろん最も怪しくないと思っていた人物が犯人だなんて…そんなことをクリスティがするとでも?
とにかく満足な一冊。『アクロイド殺し』がクリスティのベストだという個人的意見は変わらないけれど、『ひらいたトランプ』も大好きです。
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