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2008/05/28

『天帝のはしたなき果実』 古野まほろ

天帝のはしたなき果実 (講談社ノベルス) Book 天帝のはしたなき果実 (講談社ノベルス)

著者:古野 まほろ
販売元:講談社
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天帝がこの世に堕としたはしたなき果実を

齧ってしまったが運の尽き

さぁ、矮小な人間の行進を御覧あれ

ついに禁断の果実に手を伸ばしてしまいました…古野まほろ氏“天帝三部作”。京極夏彦級の、これで殺人犯せますよね?と云わんばかりの、総頁2000越えのこの三部作と私はどうお付き合いをすれば良いのか。もういっそのこと枕にして…管理人行方不明の暁には天帝の裁きが下ったものと推察ください。

というわけで、エスプリと云えなくもないルビの洪水に戸惑うばかりであった冒頭。途中からはルビを追うことは諦め、それどころか意味を反芻することも諦め、雰囲気だけ掴めれば良いや読みになってしまった本書。古野氏だって、読者がすべてを理解してくれるとは思ってないでしょう…それは傲慢というもの。とにかく、ルビの洪水から逃るるべくノアの箱舟に乗船できた読者だけが終末に到達できる、“読者を選ぶ”作品が本作かと。

でも、その選ばれた読者が到達する終末(頸草館高校七不思議の件から一連の○○まで)があれでは…完全に蛇足だったと思うんですよね。その直前(アンコン)までは本格ミステリだと断言できたのに。空想科学劇なんて誇示し過ぎの絵空事。あれをやるなら、絵空事の日本帝国についてもっと饒舌に語ってくれないと。バックグラウンドが解らないと理解のしようが無い。読者置いてけ堀。

個人的には嫌いじゃないんですよ!三部作、きっちりお相手するつもりですし。でも…『果実』(個人的)蛇足ネタを『御矢』『孤島』まで引っ張られたら辛い。あくまでもあのメンバで本格ミステリやりますっ!ってのを希望…ナントナクムリッポイデスネエエソンナキハシテイタンデス。

揃いも揃って超高校生級という類友キャラ設定は個人的ツボなんですが。ここまで突き抜けてるとある意味清々しい。中途半端に賢いふりをする(私のような)中途半端な人間が居ないだけ安心感と安定感があります。彼らはマイノリティだけれど、彼らが形成する矮小な世界の中ではマジョリティだから。マジョリティは民主主義の原則です。マイノリティの私はもうなにも云うまい。

『果実』を読了するのに休日まるまる使った私が、『御矢』『孤島』まで読了するのに幾日費やすのか。ブロ愚更新が滞った暁には、やはり天帝の裁きが管理人に下ったと…以下略。

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2008/05/27

『チョコレートゲーム』 岡嶋二人

チョコレートゲーム (講談社文庫) Book チョコレートゲーム (講談社文庫)

著者:岡嶋 二人
販売元:講談社
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息子が死んだ。しかも殺人犯の汚名を着て

思えば眼を見て息子と話したことなってあったのだろうか

だから…俺は息子の無実を信じる

ノベルス刊行は昭和60年…名作は名作、良い作品はいつ読んでも良い、というお手本のような一冊でした。

殺人犯の汚名を着て死んでいった息子。その汚名を晴らす、否、無実を信じて不徳の父親が立ち上がる。唯一の手掛かりは『チョコレートゲーム』。息子が、その同級生たちがひた隠しにする『チョコレートゲーム』とは一体どんなゲームなのか?本当に息子は無実なのか?真犯人は誰?

描写や用語の古さは当たり前として、この主題、現代でも充分に通用しますよね。自分の子どもについて何も知らない知ろうとしない親。子どもを失って、事件に遭遇して、初めて気が付く…俺は今まで何をしてきたんだ?と。むしろこの作品が出版された1985年より、現代の方が扱う主題として正しいような気すらしてきました。岡嶋二人、さすが!!

そして唯一の手掛かり『チョコレートゲーム』。どんなヤヴァイゲームかと思いましたが、かなり現実的。中学生にして、社会というものがどれだけ汚いものか思い知らされるなんて…不憫な仔たち。でもまぁ、自分たちで蒔いた種ですしね。自分たちで回収してください。殺人以外の方法で。この殺人は舞台が中学校だったから起こった事件なんだろうなぁ、と思います。中学生のゲームだったから、途中の逃げ道が見つからず、殺人まで一直線に向かってしまった。子どもは残酷ですから。

それにしても、文庫版の表紙はいただけないですね。『チョコレートゲーム』がなんたるか、ヒントが出ちゃってます。それが本作の醍醐味だと思ったのですが…私だけ?

とにかく、良い作品は年月を経ても良い。岡嶋二人の作品を読むといつもそう思います。いつの時代も子どもが、親が、抱える問題は根っこのところで同じ。ミステリ読者が求める謎だって、いつの時代も同じ。何十年経ってもミステリを読んでいたいと思った一作でした。

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2008/05/26

『四神金赤館銀青館不可能殺人』 倉阪鬼一郎

四神金赤館銀青館不可能殺人 (講談社ノベルス) Book 四神金赤館銀青館不可能殺人 (講談社ノベルス)

著者:倉阪 鬼一郎
販売元:講談社
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金赤館と銀青館

互いにいがみ合い憎しみ合う二つの館で

千畝将軍の命日に起こる殺戮の嵐

「袋小路と笑わば笑え。これも新本格だ!」という著者のことばが痛い。タイトルだけはまごうことなき新本格なんですがね。

新本格に必要とされる要素は存分に詰まっているのですが。館とか叙述トリックとか密室殺人とか。でも、どれもこれもが中途半端なんですよ。なによりも中途半端なのが叙述トリック。叙述トリックってのは、読者に悟られないようにするからこそ旨味があるのであって。序盤のト書き描写は読んでいて痛かったです。

そして、場面描写が…いかん、また毒吐くところでした。でも、何が起こったのかわからない箇所がままありました。ト書き描写の所為と云い切ることのできない頻度で。えっ?今、誰か死んだ?みたいな。

倉阪氏はこの作品でなにが書きたかったんだろう?犯人当て…じゃないよね?血の匂いをぷんぷんさせた犯人なんか居てどうする。叙述トリック…でもないよね?あの阿呆みたいな序盤の展開がミステリ○○○だと気が付かない読者がいるわけない。少なくとも、倉阪氏の著作を手に取る読者の中には。じゃあ、館トリック…なわけない。だって、本作の中で最もバカミスな箇所じゃないですか!?あっ、そうか、動機か…って私の中で最もどうでも良い部分!!

うーん、深いですねぇ。ナナメ読み1時間読書じゃなかったら怒り狂うところでした。倉阪氏は殆ど読んだこと無いのですが、50冊近い作品の中に名作もあるんですよね??今度は作品の評価を調べてから挑んでみることにします。合掌。

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2008/05/25

『青年のための読書クラブ』 桜庭一樹

青年のための読書クラブ Book 青年のための読書クラブ

著者:桜庭 一樹
販売元:新潮社
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薄絹のようなヴェールに包まれたお嬢様学校で

ひっそりと、その存在すら忘れられた

読書クラブ

ミステリスキーであって文学スキーではない私は、本作で引用されているような王道文学とお付き合いしたことは無く。けれども、その素敵引用にミステリ道を逸れてしまいそうになる『青年のための読書クラブ』が本日のレビュー。

舞台は薄絹のようなヴェールに包まれたお嬢様学校。政治家の娘が生徒会に、スター性のある華やかな容姿の娘が演劇部に、ニコンを構えゴシップを狙い撃つインテリヤクザが新聞部に所属し政権争いを繰り広げる中、世の喧騒から逃れるようにナポレオン・アパートでひっそりと過ごす読書クラブ。華やかな世界から遠ざかり、客観性を保持するから見えるものがある。読書クラブのクラブ誌は、学校が隠滅した過去の大事件を綴ったたったひとつの正史。

そんな正史(クラブ誌)で明らかになる真実は、実に阿呆らしくユーモアに溢れていて。王道文学から選りすぐられた引用が、これまた素晴らしい。「マクベス」の台詞が実生活の中ですらすら口から出てしまう女子高生がいたら閉口ですけれども。

本作は起こる騒動を愉しむだけでなく、騒動を語る言葉遊びを如何に愉しめるか…読者の力が試されている作品かと。文学の世界に傾斜し、文学と現実の世界の境目が解らなくなった、世間知らずのお嬢様たちが織りなす新しい文学。いや、そこに居るのはもうお嬢様ではなく青年なのだけれども。

女の世界を書かせたら最早、右に出るものは居ないかもしれない桜庭嬢。男性読者は桜庭作品を読んで何を思うのか。やっぱり女は解らない?これだから女は?でも、「男はバカのくせに頭のいいふりをするけど、女は頭がいいのにバカのふりが出来る」ことをお忘れなく(ライアーゲームからの引用だったりする)

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2008/05/24

『あいにくの雨で』 麻耶雄嵩

塔へと続く一筋の足跡

裏切り者へと続く仕組まれた道筋

「俺たち親友だろ」

久しぶりに読んだ本格ミステリ。やっぱり私はミステリ畑で育った人間だと実感。ミステリ小説は人間が書けてない?上等です。でも、本作は

殺人事件よりもクリークの活動に興味を覚えてしまった

なんて本末転倒な心意気。いやぁ、私もクリークの一員になりたいです。クリークとは(高校)生徒会運営をスムースに執り行うべく設置された調査機関(スパイ)の名称なんですが…

そんな発展した生徒会が有ってたまるものか

少なくとも我が母校には無かったはず…無かったよね?会長?(私信)都会の高校ならいざ知らず、ど田舎の高校で謀略戦を繰り返してどうする。井の中の蛙状態に陥ること必至。まぁ、ミステリ小説は人間が書けてなくてなんぼですから。

というわけで、本作『あいにくの雨で』は高校生が主人公(探偵)。高校生が殺人事件に首を突っ込む契機と云えば、もちろん“友情”しかないわけで。本作の主題は“友情”と“裏切り”、そして“孤独”かと。

親友の周りで次々と起こる殺人事件。悩み苦しみ痩せ衰える親友を救うべく、立ち上がる主人公。けれど、主人公の前には問題が山積みで。そして、死体も山積みで。真相に近づく度に増えてゆく死体。高校生たる主人公の生活に、土足で踏み込んで来る侵入者=裏切り者。

麻耶作品らしい舞台の切り替えにあたふたしていると、ラストの急展開っぷりに付いてゆけなくなる。本作は冒頭で(メインの)密室トリックが明かされるという斬新な手法を取っているので、トリックに頭を悩ませる必要は無いのですけれども。あまりにも死体の数が多過ぎて、あまりにも人の死があっさりし過ぎていて、あまりにも登場人物全員が救われなくて。あまりにも麻耶作品。

犯人は誰か…なんてあまりにも些事。むしろ「こいつが犯人じゃなかったらビビる」的展開。けれど、ミステリを読んだという実感を十二分に得ることのできた良書。麻耶祭が始まりそうな予感。

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2008/05/23

『ZOKU』 森博嗣

ZOKU Book ZOKU

著者:森 博嗣
販売元:光文社
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意味なき悪戯に命をかける“ZOKU”と

ZOKUの企てを阻止すべく動く“TAI”

さぁ、より仕様も無いのはどっちだ?

あれ?こんな中身の無い作品でしたっけ?

『ゾラ・一撃・さようなら』をてっきり「ZOKU」シリーズの続編だと思っておった私は、『ZOKU』と『ZOKUDAM』を再読しようと手配をしていたわけで。『ゾラ』が続編でないことを知っても、手元に残った2冊をそのまま返却するのは勿体無いと思ってしまった私は、根っからの貧乏性なわけで。とりあえず再読してみた私の脳裏に真っ先に浮かんだのが冒頭の呟き(の割りにフォントがでかい)なわけで。

トリアタマの私はラストに用意された仕掛けしか覚えておらず。あの仕掛けはなかなか好きだったので、『ZOKU』には好印象を持っていたのですが…今は森作品特有の意味なし(ジョーク)にお付き合いできる心の余裕が無いみたいです、私。

というわけで、もう書くことが無くなってしまった。そうねぇ…ロミ・品川は私の中で“外見=各務亜樹良 中身=香具山紫子7割+瀬在丸紅子3割”って感じなんですが、皆様いかがですか?しこさんのノリと、紅子さんの女王様を足し合わせるとあんな感じになるのではないかと…まぁ、どうでも良いのですが。

ただ、意味のないことに精力を傾けるという姿勢は凄く好きです。でも、精力を傾けた瞬間にそこには意味が生じてしまっていますよね。あら、矛盾。人間は自分の行為に何らかの(重大な)意味を持たせようとする生き物だから、本当に無意味な行為を取ることはできない。でも、生きるという行為そのものが無意味なのでは?

そんなことをほんの少しだけ(10秒くらい?)考えさせられた一作。この10秒こそ無意味な10秒であったのかもしれませんね。とりあえず、本作を読むのに費やした数時間が無意味で無かったことを祈りつつ。

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2008/05/19

『先生と僕』 坂木司

先生と僕 Book 先生と僕

著者:坂木 司
販売元:双葉社
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「よかったらバイトしない?時給の高さは保障するよ」

恐がり妄想家大学生とミステリ大好き中学生

そんなふたりの出逢いは…えっ?これってナンパ?

アフィリを表示させるべくタイトルである『先生と僕』を入力したら…卑猥なビデオのアフィリが山のように出てきました(汗)でも、決して卑猥な作品ではありません。坂木司らしいハートフルな日常の謎モノ、それが本作『先生と僕』でございます。

大学生と中学生。この組み合わせを「先生=大学生、僕=中学生」だと考えるのは純文学の世界だけ、本作で描かれる関係は「先生=中学生、僕=大学生」です(いや、こっちだって定石と云えば定石なんですが)。そして僕が教わるのはミステリ、(できれば)人の死なないミステリ。

最も好みだったのは表題作「先生と僕」でしょうか。書店に並ぶ雑誌に立てられた怪しげな付箋。付箋に書かれた電話番号にコールすると…えっ?古本屋??古本屋に対する嫌がらせに過ぎないのか。それとも、その付箋にはなにか重大な秘密が隠されているのか?この謎はなかなか面白い。そして、先生(探偵)たる隼人くんのロジカルな思考も素晴らしいです。

タイトルが秀逸なのは、文句なしで「額縁の裏」ですよね。ギャラリー詐欺の手法を暴く作品に付すタイトルとして、相当レベルが高い。中身は…怪しいでしょ明らかに。いつも冷静で大人びた先生が、ちょっとだけ見せる素顔がめんこい一作。

そして、作中で隼人くんが二葉さんに薦める(できれば)人の死なないミステリが秀逸ですね。古典作品ばかりなので、読み落としている作品も数点ありましたが…どれも名作です。「挿絵と旅する男」とかまた読みたい。この『先生と僕』に取り掛かる前にこの名作たちを読むのも一興かと。

坂木氏はもうシリーズを擁しないのでしょうか?ノン・シリーズの短編集も上質な作品ばかりで嬉しいのですけれど。あっ、坂木氏の長編っていうのも読んでみたいですね!!

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2008/05/18

『平成関東大震災』 福井晴敏

平成関東大震災--いつか来るとは知っていたが今日来るとは思わなかった-- Book 平成関東大震災--いつか来るとは知っていたが今日来るとは思わなかった--

著者:福井 晴敏
販売元:講談社
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いつか来るとは知っていたが今日来るとは思わなかった

けれども、来てしまったからには…なんとしてでも生き延びるべし

大震災を生き抜く智恵と勇気の物語

自衛隊モノが読みたいなぁ…と思って向かった福井晴敏の棚。そこで見つけた本作『平成関東大震災』。福井氏、こんな作品も出版していたんですね…知らなかった。

いつか来るいまにも来る明日にも来ると云われている平成関東大震災。大震災が来たら東京はどうなってしまうのか、どう行動するべきなのか。それを本作はこんなスタンスで描いております。以下引用。

本書は極めて深刻な事態を描きつつも、ひたすら状況に振り回される雑念だらけの主人公に寄り添い、必死になればなるほど可笑しさが滲み出す彼の行状に焦点を当てた。

でも、その日が来てしまったら、状況に振り回されるしかないと思うんですよ。主人公たるサイヤクさんに付き纏っていた解説男のように、冷静にデータを参照したりなんて出来ない。だから、状況に振り回されつつも必死になるしかない。

とまぁ、基本シュミレーションのマニュアル本なのですが、ラストには福井節が炸裂。福井作品的オヤジが感動をくれます。自分だけが助かれば良いだなんて思わないで。自分が生き残った意味を見出して。自分に出来ることを出来る範囲でやってみて。そんな暖かいラスト。

DAISも市ヶ谷も登場しませんが、殺人事件が起こせるような厚さもありませんが、福井氏らしい一冊。四川省地震で世の注目が集まっている今、本作を読んでみるのも良いと思います。いつか来るその日のために。

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2008/05/17

『バラ迷宮』 二階堂黎人

複雑怪奇な6つの殺人事件を解き明かすは

気品に満ちた巻き髪の名探偵

その名も…二階堂蘭子

当ブロ愚で二階堂蘭子シリーズをレビューするのはこれが初めてですか…なんか意外ですね。でもまぁ、蘭子と黎人が義兄妹だという設定すら忘れるくらいのご無沙汰ですから。蘭子って、どうして二階堂家の養女になったんでしたっけ?どの作品でそのあたりの事情が描かれているんでしたっけ?トリアタマが憎い。

というわけで、本日のメニューは二階堂蘭子シリーズの短編集『バラ迷宮』。前回読んだのは高校生の時ですので…もちろんトリアタマの私が内容を覚えているわけが無く。初読の気持ちで読めました。

個人的に一番好みだったのは「変装の家」でしょうか。殺人事件の犯人は故意に事実を捻じ曲げようとするものですが、本作はこの捻じ曲げが無理なく見事にスムースに行われた一作。人差し指のほんの少しの動きだけで、真相は闇の中へ。

「ある蒐集家の死」も好きです。ミステリ作品と云えば“殺人事件発生→探偵役員出勤→探偵が皆を集めて「さて」と云い”がお約束の順序ですが、本作は“探偵が皆を集めて「さて」と云い”からのスタート。その後、現場の状況や登場人物が紹介されるのですが、そのあたりの描写に無理や唐突感がなかったので。あとは二階堂蘭子という名探偵が、謎や殺人事件に対してどんな矜持を持っているのかも分かる。「犯人がそれで観念するのなら、方法は別に何でもかまわないわけじゃない」なんて、事実を故意に捻じ曲げるのは犯人だけでは無い宣言ですもの。

他の作品は蘭子の推理云々というより、その雰囲気を愉しむべきかと。本当に蘭子はおどろおどろしい雰囲気の作品が良く似合う名探偵。久しぶりに奇怪な怪人が登場する長編モノも読みたくなりました。『人狼城の恐怖』は無理だとしても。蘭子が二階堂家の養女になった件が描かれた作品はどれだったかしらね。

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2008/05/16

『ゾラ・一撃・さようなら』 森博嗣

ゾラ・一撃・さようなら Book ゾラ・一撃・さようなら

著者:森 博嗣
販売元:集英社
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「探していただきたいものは、古い美術品です」

突如現れた美女からのオファー

これを受けなきゃ…ハードボイルドじゃない

是非ともシリーズ化していただきたい一作

デイヴィッド・ハンドラーのホーギーシリーズを読んでいるかのような錯覚に陥ったハードボイルドな一作。森博嗣のこんな作品が読みたかったの!という夢が叶った一作。シリーズ化は無理だってわかっていても(森先生、長編はあと15作しか書かないって断言してるし)願わずにいられない一作。それが本作『ゾラ・一撃・さようなら』でございます。

主人公は頚城悦夫、その職業は探偵。薄暗いBarで怪しげな美女と待ち合わせ。そして美女が求めるは…“天使の演習”

キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

エンジェル・マヌーヴァですよ、エンジェル・マヌーヴァ。“天使の演習”という文字を眼が捉えた瞬間、いろんな可能性が頭の中を過ぎる過ぎる。まずは主人公の頚城悦夫=愛しの保呂草さん♥を疑ったね。そして時代考証へ。「『魔剣天翔』から『捩れ屋敷の利鈍』の間か?」とか「もしや保呂草さんってば『捩れ屋敷』の後、さんざん堪能して売り飛ばした?」とか「まさか『魔剣天翔』の前ってことは無いよね!?」とか。煩悩煩悩。

とにかく“天使の演習”と聞いて、ピクっとしてしまう方にお読みいただきたい一作。そして、ハードボイルドがお好きな方も。正直申し上げると結末に目新しいものはなく、先は読めちゃいます。でも、結末以外が素晴らしい。まさに森節炸裂。

そうそう、『夏のレプリカ』に登場したあのお方もさりげなーく登場しておりましたね。あの衝撃のラストの後、彼がどんな生活を送っていたのか。それを少しだけ窺い知ることができるかと。きっと、この物語の後も同じような先に引き取られ、同じような生活を送っているのでしょう。書き取ってくれる人が居ないから、すべては彼の中で風化して。

物語が閉じられた後、保呂草さん並みに女ったらしな主人公(えっ?)の隣に座るのは誰なのか。女が切れないから良い男なのか、良い男だから女が切れないのか。誰にも打ち明けられない秘密を持った男に惹かれてしまうのが女の性ってやつですか?でも、女だって「A secret makes a woman woman」ですのよ(by 名探偵コナン)

私は「内容が無いのがハードボイルドの証明」だと考えている節があるので、この“全く内容について触れないレビュー”こそ私がこの作品をハードボイルドだと思った証拠かと(すみません、言い訳です)でも、最近読んだ森作品(講談社ノベルスまで含めて)の中で最も好みな一作でした。

ところで、講談社ノベルス『カクレカラクリ』のあとはXシリーズでなくGシリーズなんですよね?『目薬αで殺菌して』って、一体どんな作品?

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2008/05/15

『本からはじまる物語』

本からはじまる物語 Book 本からはじまる物語

著者:恩田 陸
販売元:メディア・パル
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私たちの大好きな「本」或いは「本屋」を主題に

18つの物語が集い、羽ばたく

大好きな本多孝好氏が寄稿しているというので手に取ってみた一冊。直木賞やら芥川賞受賞した大御所も軒並み参加しておりまして、かなり豪華なラインナップ。ただ主題を「本」或いは「本屋」に限定してしまうと…似たような作品が顔を合わせて「あちゃ~」となっちゃうこともあるわけで。

個人的ベストだったのは贔屓目を抜きにして(声を大にして)本多孝好氏の「十一月の約束」でした。先日レビューした『Story Seller』「作風変わりましたね」なんて申し上げたのが嘘のような本多節炸裂、素敵な物語でございました。『Story Seller』で熱望した「不思議を不思議のまま」、むしろ不思議なことなどなくそれが自然で自明なことであったかのように閉じられた物語に「そう、これが読みたかったのよ」と嬉しさが。主人公の少年も良い具合に捻くれていて、本多作品らしさに溢れておりました。

二階堂黎人氏の「白ヒゲの紳士」にはシリーズキャラクタの水乃サトルが登場しましたね。このトリック(?)を使った作品は他にもありましたので、目新しさはありませんでしたが(しかも、もう一方は家族愛を主題にしたハートフルな作品)サトルはやっぱり奇人変人として本屋でも認定されているのだと納得。あと、サトルが叫んだ「ユーレカ!」ってなんですか?宇宙人との交信?

有栖川有栖氏の「迷宮書房」は某古典へのオマージュを込めて。有栖川氏のショートショートが大好きな私。収録作の中で最もユーモアに溢れていたと思います。そして、私がこの「迷宮書房」に迷い込んだらと妄想してみる。私ならどんなオーダーをするのか…きっと「これまで出逢ったことのないような驚きとトリックに溢れたミステリ」とかうっかりオーダーしちゃうんだろうな。そしてえらい目に遭うんだ。

そうそう、私は純文学畑の人間でないので、本が飛んだり、本屋での些細な一コマ系の作品の良さがさぱーり解りませんでした。すみません。想像力に乏しくて。特に些細な一コマ系は「なにが哀しくて他人の(どうでも良い)頭の中を覗かねばならんのか」とか思っちゃいました。自分でも駄目な仔だと思います、本当に。

あっ、石田衣良氏の「23時のブックストア」は結構好きかも。好きな作家を10人挙げて、そのうちの7人が重なるような方とお近づきになってみたいという欲求は良く良く理解できるので!

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2008/05/14

『ひらいたトランプ』 アガサ・クリスティ

ひらいたトランプ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) Book ひらいたトランプ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

著者:アガサ クリスティー
販売元:早川書房
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ブリッジを終えたとき、シャイタナ氏は死んでいた

パーティの参加者は全部で8名

その役割は…4名の探偵と4名の犯罪者

「洋モノが読みたい」(んまっ!)と思い立ち、既にカオスと化している本棚から最初に救出された洋モノがこの『ひらいたトランプ』でした。先日再読した篠田真由美『angels 天使たちの長い夜』でこの作品について触れていたので、これも何かの巡り合わせだろうとそのまま読書に入ったのですが…やっぱりクリスティは最高だ。

まずはクリスティから読者に対する挑戦文。

これは例のエルキュール・ポアロの自慢の手柄話である。しかし彼の親友ヘイスティングズ大尉は、ポアロから、この話を手紙で知らされ、非常に単調だと思った。
読者のみなさんは、果たしてどちらの意見に軍配をあげるであろうか。

ですよ。もちろん私は前者(ポアロ)に軍配を上げるわけですけれども。ヘイスティングズが云うように終盤までは単調な事件なんですが…単調だからってつまらないとは限らない。それは作中で取り扱われるブリッジについてもそう。私はブリッジの経験も無いしルールすら知らないけれども、知らないからと云って作品そのものを楽しめないとは限らない。うん、クリスティ(と訳者)の筆力ですね。

あっ、この挑戦文にはちょっとした叙述トリックも含まれておりますね!

そして終盤、単調から脱却した物語は二転三転。4人の容疑者のうち誰が犯人なのか、読者はわからなくなる。ポアロが執拗に迫っていた人物が犯人とは限らない。最も怪しいと思っていた人物が犯人とは限らない。もちろん最も怪しくないと思っていた人物が犯人だなんて…そんなことをクリスティがするとでも?

とにかく満足な一冊。『アクロイド殺し』がクリスティのベストだという個人的意見は変わらないけれど、『ひらいたトランプ』も大好きです。

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2008/05/13

『ブラックペアン1988』 海堂尊

ブラックペアン1988 Book ブラックペアン1988

著者:海堂 尊
販売元:講談社
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外科医の道を歩み始めたばかりの世良

世良が直面した医療の実態は思っていたよりも過酷で汚くて

けれども…その先にあるものを知りたくはないかい?

田口&白鳥シリーズの番外編と云える本作ですが…

番外編にするのは惜しい!
むしろこちらを本編に!!

ってくらい素敵な作品でございました『ブラックペアン1988』。1988年の東城大学医学部付属病院を舞台とした本作で描かれるのは、絶大なる権力を持った佐伯教授の下、考えることを放棄し腑抜けと化した外科医たちの姿。そこに颯爽と毒舌を従えて登場したのは…我らが腹黒たぬき・高階権太、その人であります。

誰にも若かりし頃というのはあるわけで。高階病院長はもちろん、黒崎教授・藤原さん・ネコ・ジュネラルルージュ・ガンガントンネル魔人・グッチー(あれ?動物はさんだあたりから変な呼称がずらずら)と主要キャラ総出演でございます。それだけでもう、田口&白鳥シリーズ好きには堪らないのに…作品そのものが読者をグッと惹き付けて離さないっていうんだから。脱帽。

個人的に涙腺緩ませちゃったのは、矍鑠とした癌患者・小川さんのシーンです。「世良先生、これに懲りずに、いいお医者さん、に、なって下され」なんて台詞、まともには読めない。いやもう、まさかここで泣くとは自分でもびっくり。そして、世良のこの経験が伏線となり、後にまた素晴らしい台詞&展開が待ち受けていようっていうんだから。侮れません。

そして、小天狗&悪魔が怒号を飛ばしながら必死に止血作業に取り組むシーンも好きです。あれだけでっかい口を叩いておきながら(とくに小天狗)術野に神が光臨するまで止血することのできなかった2人。世良だけでなく、この2人にとってもこの日は忘れられない幾日かの一日になったのだろうなぁ、と。

ちなみに本作中で一番笑ったのは、同じシーンのヒラ麻酔医が佐伯教授に毒を吐いたシーンです。

こんな過去こんな日々があったからこそ、高階病院長と藤原さんを毒を吐き合えるのだし、高階病院長と黒崎教授はいがみ合える。同じ術野を囲むということは、互いの信頼関係を確かめ合うということ。表に現れてこない彼らの胸の中の信頼関係をフィルターにして、今の関係を再確認してみたら…これまでの既出作品をもっと面白く読めるかもしれない。そんな風に感じた『ブラックペアン1988』でございました。

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2008/05/12

『ナナフシの恋』 黒田研二

ナナフシの恋~Mimetic Girl~ (講談社ノベルス クM- 7) Book ナナフシの恋~Mimetic Girl~ (講談社ノベルス クM- 7)

著者:黒田 研二
販売元:講談社
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不審なメールに誘われて集まった6人のクラスメイト

なぜ、自殺を図った彼女が私たちにメールを送ってきたのか?

6人が“友人とは云えない彼女”の自殺の真相に挑む

久しぶりにクロケンを読みました…が、どうも辻村深月『冷たい校舎の時は止まる』を思い出さずにはおれない展開。でも、結末が「まさしくクロケン!」というバカミス一歩手前だったので一安心。

ナナフシは草食性の昆虫で、木の枝に擬態し自らの命を守る。そのナナフシのように自らの姿を消すことに長けていたクラスメイトが自殺を図った。彼女は今、病院のベッドの上で意識を失ったまま。なのに、彼女の名前でクラスメイトたちに送られてきたメール。このメールの発信者の意図は?彼女の自殺の原因とは?という主題です。

自殺した彼女がいかに姿を消すことに長けていたか、クラスメイトだった自分たちが如何に彼女に注意を払っていなかったのか、彼女はどんなことを考えていたのか。そんなことを中心に進められる議論は、微妙で不要?でも、タイトルにもある「ナナフシ」は真相に辿り着くのに必須でございます。

ここから一瞬ネタバレします。この作品にはこのネタしかないので、うっかり読んでしまうとこの作品を読む意味がなくなりますので注意。

だからって、自分を凶器に見立てて突き落としてくれっていうのはどうかと思いますけれども。突き落としちゃう奴も突き落としちゃう奴ですけれども。

まさにクロケンらしいラスト。このラストはクロケンじゃなきゃ書けないと思う(決して悪く云っているつもりはない)。青春真っ盛りの彼女がこの選択をしたという点に痛さがあると思います。その意味で青春小説なのかもしれない。

でも、やっぱりクロケンの初期作品の方が好きです。初期作品の方が本格ミステリスピリットに溢れてましたよね?そんなクロケンスピリットに溢れる本格を私は待ち望んでおります!

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2008/05/11

名探偵コナン「戦慄の楽譜」

劇場版 名探偵コナン 戦慄の楽譜(フルスコア) [DVD] DVD 劇場版 名探偵コナン 戦慄の楽譜(フルスコア) [DVD]

販売元:小学館
発売日:2008/11/19
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GW恒例行事となりつつある妹君とのコナン劇場版鑑賞。今年もいい歳した大人ふたりが子どもたちに囲まれて鑑賞してまいりました。今年の劇場版タイトルは「戦慄の楽譜(フルスコア)」…戦慄と旋律を掛けてる?

タイトルからして丸解りですが、今年の主題は「音楽」です。似非フルート吹きの私としては、フルートが殺人予告という重要な役割を果たしたことにご満悦(えっ?)でも、子どもたちにマイナスイメージを持たせた代償として、フルートの演奏シーンくらいは挿入して欲しかった(フルートの音色を聴きたいだけでしょ?)。というわけで、フルートの胴管部が残されたレッスン室での大爆発から今年の劇場版はスタート。

ツッコミポイントは色々あるのですが、今年の劇場版を適切に表現したコメントがあるのでそちらからご紹介しようかと。

「テレビの延長線みたいで、映画らしくねぇなぁ」
           by 私の後方で鑑賞していた中学生男子

そうなのよね。今年はコナンがジャンボジェットを操縦したり、女子高生が素手で鮫と闘ったりはしないのです。大爆発があるのですが、それで登場人物が戦々恐々とするわけではなく(それどころか音楽に聴き入っていたり)物語は推理をメインに据えて淡々と進みます。まぁ、ミステリスキーとしてはそちらの方が嬉しいわけですけれども。

でも、その場合はミステリとしての難易度が重要になってくるわけで。今年の劇場版キャラは8名…そのうち自らが命を狙われていて明らかに違う!という方がおられますので、消去法でもいけるかと。しかし、今年の犯人の動機はどうなんでしょうねぇ?物事の重要性は人ぞれぞれなので「無し」と決め付けるわけにはゆきませんが、その動機で憎き相手は殺せても無差別大量殺人に踏み切ろうと思えるかどうか。もはやテロリストですよ。

さて、ここからは劇場版子ネタを割って割って割りまくるネタバレレビューです。未だ劇場版を御覧になってない肩は注意が必要かと。

まずは、コナンとソプラノオペラ歌手のデュエット110番でしょうか?プッシュホンは規定周波数の音を組み合わせてコールするので、その周波数(音)を正確に再現できれば人間の声であってもコールすることは可能…なんてのは大昔のバラエティ番組でよく取り沙汰されておりましたが、それをコナンでやるとは!だって、

コナン=極度の音痴で有名じゃないですかっ!?

しかも、いつのまにか絶対音感を身に付けておられるし。絶対音感をお持ちであれば、組織のボスに辿り着くメールアドレスが「七つの子」であると即答できたのではないかと思ったり思わなかったり。だって、哀ちゃんがコナンに送ったリコーダメッセージ「SHOOT」はマトリックス的(笑)に理解したわけですし。

やっぱり愛ですか?

だって、相棒発言が今回もありましたからねぇ。ぐふふ、相棒、ぐふふ(変態)このリコーダメッセージのシーンが、今回の劇場版のベストシーンだと思っております。

でも、劇場版を観て久しぶりにパイプオルガンの音色が聴きたくなりました。私の棲む政令都市にもパイプオルガンを所有する音楽ホールがあるのですが、そこのパイプオルガンのパイプの数は4976(ヨクナル)本だそうです。というわけで、コナンは4976本近いパイプの中から、

起爆装置の設置されている1本を特定した

わけですね。やっぱり名探偵たるものパイプオルガンの調律くらいできないと。

そして、劇場版13弾の決定おめでとうございます。来年の劇場版は黒の組織との直接対決でございますかっ!?

劇場版でコナン最終回

とか止めてくださいね。いや、最終回を止めろと云っているわけではないです。むしろ「早く新一に戻せ」と思っております。劇場版最終回なんて、客寄せ以外の何物でもないので止めていただきたい。ファンに対してアンフェアなので。

「名探偵コナン・戦慄の楽譜」サウンドトラック Music 「名探偵コナン・戦慄の楽譜」サウンドトラック

アーティスト:サントラ,赤池優,木村聡子
販売元:株式会社ビーグラム
発売日:2008/04/16
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2008/05/10

『首無の如き祟るもの』 三津田信三

首無の如き祟るもの (ミステリー・リーグ) Book 首無の如き祟るもの (ミステリー・リーグ)

著者:三津田 信三
販売元:原書房
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大好きな長寿郎様のお役に立ちたくて

長寿郎様をお守りしようと思って

でも、僕は首無様から長寿郎様をお守りすることはできなかったんだ

間違いなく刀城言耶シリーズのベストですね!

と断言しても良いものか。この作品のために『厭魅の如き憑くもの』『凶鳥の如き忌むもの』を読んだ身としては、どうも釈然としないものが残るのですが…とにかくミステリとして最高の出来でした『首無の如き祟るもの』。

山間の邑。邑を支配するのは一守、二守、三守の連合による秘守家。これまで微妙な中庸を保ってきた三家連合に空けられた風穴。それは、一守家長男にして次期当主たる長寿郎の首無死体。花嫁候補の首無死体までもが長寿郎の死を彩る中、秘守家では次期当主を指名するべく喧々轟々の争いが。すべては邑を秘守家とは別の方法で、呪いで、支配してきた首無様の仕業なのか?それとも10年前井戸に落ちて命を落とした長寿郎の双子の妹・妃女子の怨念か?

と、作品紹介してみましたが、最後に「その謎を解くは…刀城言耶」と書けないのが哀しいところです。というわけで、ここからネタバレレビューと相成ります。真相をズラズラ並べ立てますので、未読の方は間違ってもスクロールされませんように。是非とも自分の手で眼で真相まで辿り着いて欲しい名作ですから!

ラストに登場したあの男、絶対ヨキ坊ですよね!

あの男が刀城言耶でないと云い切る根拠は特にありません。強いて云うならば「そうであってくれた方が面白いから」でしかない。でも、あのラストを「罪を犯した者同士が、自分の手がどのくらい汚れているかを告白する場」として定義すると、ストンと落ちてくるものがあるんですよね。

ミステリに幾度と無く登場してきた“首無死体の問題”に民俗学の仰々しさをミックスして、とんてもない新解釈が生まれたのも素晴らしいと思います。“首無死体”の王道といえば、人物の入れ替え。本作で為されている行為も人物の入れ替えに違いないのですが…

まさか10年の時を越えて行われた入れ替え

だと、誰が予想できたでしょうか?長寿郎(男)とか長寿郎(女)という表記は、常時であるならばちょっと笑っちゃうような表記なのですが、読んでいるときはもう没頭しちゃって興奮しちゃって、全く気になりませんでした。この赤子入れ替えの真相が男(探偵役)から示されたときにパーッと視界が拓けた感覚が未だに忘れられません。どんなに入り組んで絡み合った謎でも、たったひとつのポイントを明かしてやるだけで、クリアになる。絶対に解けない紐を前にしていたのに、手品師がハンカチーフを掛けた次の瞬間には、それが解けてしまっていた。そんな類の驚きです。

しかも、入れ替えは一度だけではありませんからね。長寿郎(男)と長寿郎(女)、長寿郎(女)と毬子、毬子と江川蘭子、江川蘭子と高屋敷妙子、そして刀城言耶とヨキ坊。とことん入れ替えに拘った、渾身の一作。これだけ入れ替えに拘ったんだから「やっぱりラストの男はヨキ坊じゃなきゃ!」とたった今、改めて思いました。

とにかく、ミステリとして上質上級な一冊。民俗学部分にいつもなら苦痛を感じるのですが(呪われる!)本作は事件事件の連続で、そこまで気になりませんでしたし。ミステリ8:民俗学2といったところですか?そして、三津田氏の新刊は『山魔の如き嗤うもの』…中盤で友情出演した刀城言耶が向かった邑で起こった事件ですよね?(未確認です)ついにやんごとなき神社の跡取り・阿武隈川先輩がメインキャラとして登場するのかと思うとワクワクです。

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どうしよう泣きそうだ

スレイヤーズが新シリーズで復活って!?

新シリーズのタイトルは「スレイヤーズ REVORUTOIN」
しかも、主要キャラの変更なし、ゼロス様まで登場するって…はぁはぁ(悶絶)
まさかこんな日が来ようとは思っておらなんだ。

公式サイトはこちら

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2008/05/08

小説新潮別冊『Story Seller』

Story Seller (ストーリーセラー) 2008年 05月号 [雑誌] Book Story Seller (ストーリーセラー) 2008年 05月号 [雑誌]

販売元:新潮社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

この雑誌を編集した方とお友達になれると思ふ

凄い豪華な執筆陣。夢の共演といっても過言ではない。そんな素敵な一冊を紹すべく、今日は一作ずつレビューを。

「首折り男の周辺」 伊坂幸太郎
本屋大賞受賞第一作は“首折り殺人請負人の周辺で生きる人々”を描いた作品。伊坂的“改心の物語”でございます。本屋大賞を受賞したって直木賞を受賞できなくたって、伊坂節は決してブレることはないのですが…どこか物足りない。その理由を探ってみて、伊坂短編は連作で読みたいのだと気付く。伊坂短編集に収録されている短編たちは、ひとつひとつが完成されていながらも、通して読むことで新たな意味や印象が浮かび上がってきますよね。そんな“新しさ”や“改まり”を欲しているのだと。だって、長編や連作でもいけそうなんですもの、この作品。風合としては『ラッシュ・ライフ』に近い感じで出来上がるのではないかと。でも、伊坂らしい“改心の物語”にやっぱり快心の笑みを浮かべてしまうのです。

「プロトンの中の孤独」 近藤史恵
思わぬところで『サクリファイス』の番外編に出逢えました。この『Story Seller』を注文した時点ではまだ『サクリファイス』未読であったため、全くノーマークだった近藤氏。嬉しい誤算。本作はエースになるべく産まれてきた男・石尾と、石尾の名アシスト名女房であった赤城の若かりし頃を描いた一作。あの石尾にこんな頃があっただなんて、ちょっと意外。石尾の想いの深さ大きさに感動させられた後だけに。そして、この少ない枚数でロードレースの駆け引き清々しさ泥臭さを伝える近藤氏の筆力はさすが。『サクリファイス』の後編がいまから愉しみです。

「ストーリー・セラー」 有川浩
有川氏が恋愛エッセンスをふりかけに重い主題で真っ向勝負を挑んだのが本作「ストーリー・セラー」です。最初は有川氏らしい甘い恋愛小説かと思ったんですが…ラストまで読んで少しだけ鬱状態になりました。ので、卑怯にもその辺りには一切触れずにレビューを。本作の個人的お気に入り台詞は「心の中、レイプされてるって言ったら分かってもらえるかなぁ」なんですが…なんて生々しい台詞がお気に入りなんだ。でも、あの状況下で出てくるこの台詞はもの凄く秀逸です。こういう言葉選びが出来る有川氏が好き。そして、激怒するおっさんの霊が光臨した作中の彼女も。私は「最初っから私は何にも持ってないんだ!」なんて啖呵は切れないから。

「玉野五十鈴の誉れ」 米澤穂信
実は初めましての“バベルの会シリーズ”。下地が無いので(バベルの会がどんな如何わしい会か解らないので)米澤氏が作品に潜ませているだろう主題や狙いを察することが出来ず残念。テイストとしては…ホラーですよね?妄信や妄信にえも云われぬ恐怖を感じてしまう私。五十鈴のあの行動がタイトルにある「誉れ」であるならば、あの行動を「誉れ」として取れる人間は、もはや人間では無いのでは無いかと。感情を殺して“無”になったら、もうその時点で人は人で無くなり、唯の物質ですよね。物質に為ってまで守りたい「誉れ」を持たない私には、その感情はまさしくホラーです。

「333のテッペン」 佐藤友哉
佐藤氏の名前を見かけるたびに「あの絶筆宣言は何だったのだ?」とか思ってしまう私は腹の黒い仔です。でも、本作は収録作の中で唯一ミステリですよね。タイトルの「333」とは333mの高さを誇る東京タワーのこと。東京タワーのテッペンに突如現れた他殺死体の謎…うわぁ、美味しい垂涎設定。本作に登場した探偵は佐藤氏の既出キャラクタなのでしょうか?主人公の土江田の過去も、なかなか気になります。アナタハイッタイナニヲシデカシタンダ?でも、個人的に一番愉しめた(感動した)のは、あとがき(?)の筆者コメントだったりする罠。

「光の箱」 道尾秀介
私はこの作品に“ミステリを装った恋愛小説である”という判定を下したのですが、皆様はいかがでしょうか?心の開き方を知らない少年と少女の恋愛小説。サンタクロースが届ける「光の箱」に収められたクリスマスの奇跡を添えて。箱と聞くと“パンドラの箱”を思い浮かべずにはいられないワンパターン思考を持つ私ですが、最後に残された希望を失わなかったからこそ人間は生きてこれたというあの逸話が、この作品には存外ぴったりくると思います。

「ここじゃない場所」 本多孝好
一番愉しみにしていた本多氏の作品…なんですが、作風変わりましたね。本多氏の魅力は言葉選びと行間にあると信じて止まない私ですが、行間を読ませることもなく書き込まれている感情感情感情。そんなに丁寧に感情を解説してくれなくとも良いですから!って正直思っちゃいました。もっと流れるような美しさが本多氏の作品には有ったように記憶しているのですが。この作品に登場した“四人組とアゲハの物語”を現在進行形で執筆中だったからでしょうか?ほら、アウトプットしているうちに浮かんでくる設定をいつの間にか書き込んでいたことによって情報過多になった、とかいうオチで。四人組の能力に現実的な解釈が為されているのも残念に思いました。多少の無理が生じたとしても、不思議を不思議のまま処理して欲しかった。本多氏の初期作品にはそういった不思議能力を持った人間が多く登場してましたよね。でも、こんな風に酷評していても、やっぱり本多氏の作品が大好きです。新作を読めただけで幸せな気持ちになれるって嬉しい。私にとって本多氏はそういう作家です。

うわぁ、冗長なレビューに自分でもうんざり。でも、本当に「よくこれだけのメンバを集めることが出来ましたね!お疲れ様です!!」と伝えたくなるような一冊。第二弾の刊行も愉しみにしております。

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2008/05/06

『レヴォリューション NO.3』 金城一紀

レヴォリューション No.3 Book レヴォリューション No.3

著者:金城 一紀
販売元:角川書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する

脳死寸前の偏差値を持つオチコボレ男子校

でも、世界を変えるため=偏差値の高い可愛い女の子と出逢うため

今日もゾンビーズは死闘に挑む

ギョーザ大好き!!

あぁ、もう大好きだゾンビーズ。青春時代にこの作品に出逢えていたら、もっと違う時を過ごせたんじゃないかって、後悔と羨望にいつも苛まれる一作。私のオールタイムベスト10『レヴォリューション NO.3』が本日のレビュー作です。

岡田○一×堤○一×金城一紀のSPトリオで映画化された「フライ、ダディ、フライ」を御覧になったことのある方も多かろうと思いますが、本作はその「フライ、ダディ、フライ」でワイワイ騒いでいた男の子たちが主人公の青春小説です。彼等の通う男子校は脳死と判断される程の偏差値しかない上に、殺しても死にそうにないメンバが揃っているから…とゾンビと呼ばれ周囲に眼を逸らされるような存在。けれど、彼等は決してめげない。優秀な(偏差値の高い)者と優秀な者が結ばれ子供を産み、その優秀な子供たちが優秀な世界を造るのを喰い止めようと精一杯もがく彼等。だって、彼等は残念ながら偏差値が高くなるような遺伝子を持ち合わせていなかったから。産まれたときからハンデを背負っている自分たちが、そんな世界で勝てるわけ無い。だから、勝てる世界を造ろうよ!という物語。

というのは建前で(笑)単に女の子と愉しい・気持ち良いことをしたいだけなんですが。そんな彼等が近隣の超お嬢様学校の学園祭に乗り込むまでを描いたのが表題作でもある「レヴォリューション NO.3」です。超厳戒態勢のお嬢様学校に乗り込むべく、ああでもないこうでもない云いながら作戦を立てる彼等。その作戦の阿呆らしさったら青春です。でも、今年はなかなか良い作戦が思い浮かばない。なぜなら、彼等のリーダーたるヒロシが居ないから。ヒロシとの友情を背に、上へ上へと階段を駆け上るシーンでは思わず涙が。数頁前では「ギョーザ大好き!!」なんて叫んでいた莫迦丸出しの彼等が、あっという間に感動の世界へ私たちを連れて行ってくれるんですから…素晴らしい。

そして、ヒロシの幻影から逃れるべく走って走って走るのが「ラン、ボーイズ、ラン」。ゾンビースシリーズお馴染みの史上最弱のヒキを持つ男・山下がやっぱり引いてきてくれたカツアゲ事件から物語は始まります。ヒロシに逢うべく沖縄へ飛ぶための軍資金120万円を見事にカツアゲされ、その犯人探し&再度の軍資金稼ぎに精を出すゾンビーズ。自殺を試みる山下をみんなで乱暴に励ます様や、就職が決まってようがもしかしたら警察に捕まることになろうが「おもしろい」ことに向かって全力で走る彼等が最高です。

「異教徒たちの踊り」は少しミステリテイストも織り交ぜて。ギョーザ大好きに勝るとも劣らない名言がここにも登場するのですが…

「グラサン外せやぁ!」

はもう何度読んだって爆笑で、いつも息が出来なくなります。あぁ、阿呆らしい青春だ最高だ。もうこの「グラサン外せやぁ!」だけでもうお腹一杯満足です。その上、ミステリとしてもなかなか上質。優秀な人間が廻す世界で土俵で、優秀な人間に彼等が一矢報いる夏休みが描かれた本作。彼等はいつだって異教徒のように踊るのを辞めない忘れない。

とにかく大好きな一作。もっともっとたくさん読みたい。彼等の一員になったような気分を味あわせて欲しい。ついでに、映画化も希望。「フライ、ダディ、フライ」のキャスティングがなかなかだったので、是非あのメンツで。特に山下がぴったり過ぎて、思い出すだけで笑えます。ゾンビーズ、大好き!!

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2008/05/05

『夢見る黄金地球儀』 海堂尊

夢見る黄金地球儀 (ミステリ・フロンティア 38) Book 夢見る黄金地球儀 (ミステリ・フロンティア 38)

著者:海堂 尊
販売元:東京創元社
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8年ぶりに現れたチューリップハット

彼から発せられた「ジハード・ダイハード」

それは…僕らの冒険の合図

う~ん、微妙

微妙と云うか駄作?やっぱり海堂氏の本領は医療ミステリで発揮されるわけで。奇人変人役のガラスのジョーも白鳥ほどキャラ立ちしておらず。いろいろ微妙な『夢見る黄金地球儀』が本日のレビュー作。

ぼったくりフィリピンバーを8年前に潰して以来、消息を断っていたガラスのジョーが桜宮市に帰ってきたのがすべての契機。「ジュース飲まない?」くらいの軽い調子で発せられた「一億円欲しくない?」。作戦の骨子は桜宮水族館深海館に鎮座する黄金地球儀を戴くこと。けれど、ガラスのジョーが参加する作戦がスムースに進むわけがなく…。

ミステリというよりは単なるドタバタコメディ。あれ?これもミステリ・フロンティアから刊行されたんですよね?ミステリ・フロンティアについてそろそろ本気で考えるべきではないかと思っております、個人的に。

そのドタバタもテンポが無いんですよね。とにかく冗長。ラスト数ページでひっくり返そうとするのですが、そこまで至るのにもの凄くエネルギィ使うので、もうどうでも良かったり。ここまでズルズル付き合わせておいて、どんでん返しがなかったらむしろ驚くわ!ってなもんです。

この作品の愉しみ方は、田口&白鳥シリーズとのリンクを発見して喜ぶのが正しいのかも。『ナイチンゲールの沈黙』に登場した小夜ちゃんのその後とか、オープン初日をコンビナート火災によって水をさされたショッピングモール(『ジェネラル・ルージュの凱旋』参照)とか。さらに、これから起こるであろう出来事まで公開されておりまして。桜宮病院火災(『螺鈿迷宮』参照)の跡に立てられたガラスのお城が破壊されていたり、社会保険庁が解体されていたり(絶対、ロジカルモンスターが関係してると思うんだ)。

これからの海堂氏の活躍を愉しみに…ということで。たまにはこんな作品もあるでしょう。

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2008/05/04

『サクリファイス』 近藤史恵

サクリファイス Book サクリファイス

著者:近藤 史恵
販売元:新潮社
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「引きます。ついてきてください」

これが僕の役目

エースが勝ってくれれば、それで良い

おんもしろかった!!

このミス5位、本屋大賞2位は伊達じゃないです。読了後、1時間半の間いっしょに駆け抜けた満足感でいっぱいになれました。そんな素敵作品『サクリファイス』が本日のメニュー。

舞台は自転車ロードレースの世界。アシストとしてエースを助け勝利に導くことを喜びとする男の物語。脚光を浴びることは無いけれど、エースが勝利を得たときの充足感を求めて男は自転車を漕ぐ。

そんな男の耳にある日囁かれたエースの黒い噂。それは“後輩潰し”。自分を越えようとする後輩を許さない、事故に見せかけて選手生命を絶たれた者も。エースたる彼は、エースたる自分の役割やアシストされる重みを知っていると思っていたのに。信じていたのに。憧れていたのに。

生贄や犠牲という意味を持つサクリファイス。この『サクリファイス』というタイトルがまさにぴったりの一作です。もちろんそれは、自分を犠牲にしてエースと勝利に導くアシストのことだけでなく。エースに纏わる“黒い噂”の真実を、その想いが明かされたラストにはちょっぴり感動してしまいました。エースを陰で支えたアシストたる男(主人公)だからこそ、知ることのできた真実。これはもう、ネタバレなし、とにかく読んでもらいたい一作です。

ロードレースの世界にもすんなり…どころかグングン入ってゆけます。近藤氏はデビュー当時からロードレース作家ですか?ってなくらい、しっくり。帯の「気付けば新聞のテレビ欄をめくり、ロードレースの中継を捜していました」という紹介文なんて、まさに頷き。ロードレース、見たくなりますよね。その世界にちょっとだけでも、片足だけでも踏み入れたくなりますよね。

そんな心を熱くさせる一作。このミス5位、本屋大賞2位は伊達じゃない。

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2008/05/03

『インシテミル』 米澤穂信

インシテミル Book インシテミル

著者:米澤 穂信
販売元:文藝春秋
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時給1120百円のアルバイト

ただの誤植?もしかしてドッキリ?

もし本当なら…どんな危険なアルバイト?

矢野龍王『極限推理コロシアム』を思い出さずにはおれなかった本作。男女数人を監禁し、施設内で殺人ゲームを行わせるという趣向でございます。いつ自分が被害者になるかわからない、この瞬間にも誰かが殺されているかもしれない、生きて帰りたいのなら犯人を指摘しなくてはならない。そんな極限状態に追い込まれた人間心理と、クローズド・サークル内で起こる事件の面白さを愉しむのが相応しい読み方かと。

そんなわけで冒頭から登場する“12体のインディアン人形”“十戒”“名作ミステリへのオマージュを込めた武器”…垂涎モノですねっ!個人的に各人が受け取ったメモランダムの内容がおかしいので(『まだらの紐』を象徴する武器は火かき棒じゃない)そこになんらかのトリックが含まれていると推察したのですが、単なるネタバレ配慮だったという罠。

2日目にルール説明がなされた後、大迫&箱島コンビが「黙っていれば1800萬手に入るのに、殺人を犯そうとする阿呆は居ないよね?」と確認した(同意を取った)際に、全員の武器をばらして攫えて金庫室にぶち込まなかったのかが、一番気になったのですが。自分がこの場に居たら提案するだろうなぁ、と。これを拒否する=殺人を起こす気満々ってところだと思うのですが。まぁ、武器詐称した人間も居たので結局は通用しない手だったのですが。

暢気なにーちゃんだと思っていた主人公が名探偵に豹変してみたり、名探偵候補だった安東が3の倍数で阿呆になってみたりと(違っ!)、キャラクタが変化する趣向も愉しめました。どいつもこいつも一筋縄ではゆかない=誰でも犯人足りえるということ。最後の方は、もう誰が犯人だろうがどうでも良くて(えっ?)主催者にどうやって一泡噴かすかに興味は移ってしまったのですが。

しかし、「空気の読めないミステリ読み」って言葉は良いですね。まだ何も起こっていないのに状況証拠だけでビビリまくる奴に、ミステリ読みであるが故に武器捏造して目的を達しようとする奴、そして参加者に「この殺人ゲーム、面白いでしょう?」と趣向を押し付ける主催者。もし私がこの場に居たら、まさしく「空気の読めないミステリ読み」だったでしょうし。ミステリ読みは自分の知識をひけらかすのが好きですし(私、筆頭)。

そうそう、この『インシテミル』の英語副題は『THE INCITE MILL』になるようですが、INCITE=刺激する、MILL=珈琲豆をひくミル、であるならば個人的意訳は“引っかきまわす”ですね。まさにミステリは読めても場の空気が読めない奴等が引っかきまわしたが為に起こった悲劇。タイトルまでもが深いです。イン○ルの某キャッチコピーとか思い出してる場合じゃないです。でも、あのコピーは歴史に残る名コピーだと思いませんか?

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2008/05/01

DVD「図書館戦争」

図書館戦争 【初回限定生産版】 第一巻 DVD 図書館戦争 【初回限定生産版】 第一巻

販売元:角川エンタテインメント
発売日:2008/08/06
Amazon.co.jpで詳細を確認する

死ぬほど愉しみしていた小牧♥毬江の「恋ノ障害」が

テレビ未放送DVD3巻特別収録

ってどういう…。石田小牧の「もう子供に見えないから困ってるよ」はマネーを投入しないと聞けないってことですか…3巻だけ購入しようか本気で検討中(全巻は買えません。だってお財布に千円しかない貧乏娘…社会人とは思えん)

とりあえず、初回限定生産版特典の有川氏書き下ろし短編ブックレットの詳細が知りたいです。内容如何によっては…買っちゃう?買っちゃったら全部欲しくなっちゃうよ?

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