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2008/04/12

『セリヌンティウスの舟』 石持浅海

セリヌンティウスの舟 (カッパノベルス) Book セリヌンティウスの舟 (カッパノベルス)

著者:石持 浅海
販売元:光文社
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ひとつの舟となり、心を通わせ合った僕たち

そんな僕たちが遭遇した巨大な嵐

それは…心通い合ったはずの友人の死

本作『セリヌンティウスの舟』を以って“プチ石持浅海祭”は終了でございます。既読未レビュー作品を読みますレビューしますという主旨の祭ですので、本作もその対象となってしまうわけで…

読む価値あるのか?って出来ですけれど(ぼそり)

本作は『扉は閉ざされたまま』の次に発表された作品で、あの衝撃と感動と興奮がまた味わえる!と喜び勇んで頁を捲った私は、大変な肩透かしをくらったものです。だって「仲間と共に友人の死の真相を解き明かす。しかもディスカッションのみで」なんて主旨の作品、『扉は閉ざされたまま』を連想するなっていうほうが無理。

まぁ、その真相が度胆抜かれるほど上等なものだっていうのなら、話は別なのですが。本作も名作に成り得る資質は充分に有ったと思っています。「自殺だと思われていた友人の死が実は他殺だったとしたら?もしも他殺なら…犯人はこのメンバの中」だなんて、素敵なシチュエーションじゃないですか。ここからおもいっきりテレビネタバレレビューにします。ネタバレせすに毒吐くなんていう芸当は私には無理でした。

もし、本作の結末が「友人の死はやっぱり他殺だった」っていうものなら、名作になったと思うんですよね。読者もそれを望んでいたと思いますし。けれど、「やっぱり自殺でした。しかも、自殺後に仲間たちが再度結束できるかどうかジャッジする判定員まで用意した上での、覚悟の自殺でした」ってなんですか?ミステリ読者って、人間が書けてなくても構わないから超弩級の物理トリックか、思わず膝を叩くような叙述トリックをかまして欲しいと思っている人たちなんですよ(超偏見ですね!!)。そんな読者に「心の通い合い」ミステリを読ませてどうするんだ?と。

しかも、そんなシチュエーションで心の繋がりが深め合えるとは思えないのですが。一度疑ってしまった相手と、その後もうまくやってゆけるものでしょうか?しかも、登場人物たちは結局議論を投げ出そうとしたわけで。投げ出して得た結末というのは、心にしこりを残すのでは無いかと?

この世に壊れないものなんて無いと思います。それが人と人の繋がりであるなら尚更。だったら、その壊れゆくものに思いを馳せれば良い。「自分は死ぬけれど、残す人たちにはずっと壊れないままいて欲しい」なんて、どれだけ自己満足?

『走れメロス』とのリンクも巧くないですしね。取って付けたような印象。個人的にあのメロス解釈が、一番不要だったと思っております。超無理矢理感満載!素材が悪くないだけに、残念な結末になってしまった一作。だから、同じ趣向の作品で名作を生み出して欲しいと個人的に期待していたりします。

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