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2008/04/10

『月の扉』 石持浅海

月の扉 (光文社文庫) Book 月の扉 (光文社文庫)

著者:石持 浅海
販売元:光文社
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乳幼児を人質に取ったハイジャック犯の要求は唯ひとつ

警察署に留置されている石嶺孝志を指定した時刻までに連れて来ること

さぁ、いっしょに行こう

名作!!!!!!!!!

何度読んでも素晴らしいと感じることのできる作品。惜しまずに使います“名作”という言葉を。

本作は『心臓と左手』で再登場を果たした座間味くんが登場した記念すべき1冊。まだ独身だった座間味くんが彼女(後の嫁)と乗り込んだ飛行機で起こったハイジャック事件。彼女(後の嫁)を守ることだけを考えていたはずなのに、ハイジャック犯にあれよあれよと担ぎ出され、いつの間にか機内で起こった殺人事件の真相を究明することに。

正直に申し上げれば、ミステリとしての難易度は低いです。座間味くん、初めて扱う事件だから勝手が分からないのかな?なんて余計な心配をしちゃうくらいです。でも、本作の主題はそこではないんですよね。殺人の裏に必ず存在する“憎悪”や“悪意”という醜い感情を、正反対の“美しさ”でもって描く。文庫版帯に書かれている「かつて、こんなに美しいミステリーがあっただろうか」なんて、名紹介文だと思います。名作には名紹介文を。美しい。

しかも、殺人事件が解決された後にも怒涛の急展開が。本作が名作たる所以はここだと思っておるのですが、頁を捲る手を止めて「マジで?」って呟かずにはいられません。「えっ?えっええっ??」って云ってる間に終焉を迎えてしまうのですが、その余韻にしばらく浸れます。素晴らしい。

作品ラストの一文には、もうゾゾゾッとしますよ。座間味くんの最後の一言にちょっとだけ眼を潤ませてしまう私は、すっかり『月の扉』の世界にのめり込んでしまっていたようです。座間味くんを変えた何かが、私をも変えてしまったかのような。

石持氏お得意のクローズド・サークル。クローズド・サークルだからこそ起こりうる探偵と犯人(ハイジャック犯をも含む)の心の交流がとにかく美しい。最後のあの瞬間、座間味くんが感じたのは絶望か羨望か。

とにかく読んでもらいたい1作。惜しげもなく使います“名作”という言葉を。

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