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2008/03/02

『不気味で素朴な囲われた世界』 西尾維新

不気味で素朴な囲われた世界 (講談社ノベルス ニJ- 20) Book 不気味で素朴な囲われた世界 (講談社ノベルス ニJ- 20)

著者:西尾 維新
販売元:講談社
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奇人三人衆、そして静かなる人払い令

本物を眼の当たりにし、自分が偽者であることを自覚する日々

ついに壊れた時計が動き出す

1ヶ月に亘る放置プレイからの復帰第1弾レビューは、『きみとぼくの壊れた世界』と同じ世界観を成す本作『不気味で素朴な囲われた世界』…タイトルを覚えるのも一苦労です。

本作の主人公は名前に一本筋を通す男、串中弔士。日常を揺るがすような、日常が非日常に至るような、そんな瞬間を待っている中学1年生。奇人変人に囲まれ、自分が“偽者”であることを強く強く意識する日々。そんなある日、愛すべき姉が殺されるという非日常が唐突に襲い掛かって…という物語。

本作で探偵を務めるのは『きみとぼくの壊れた世界』で探偵役を務めた病院坂黒猫の従姉妹・病院坂迷路。「目は口ほどにモノを言う」を地でゆく、決して脚色でなく嘘のように「一言も喋ることのない」探偵役です。もう、どんな人間なのか想像することもできません。迷路(黒猫と区別の為こう呼ぶ)の台詞はすべて主人公たる弔士が代弁してくれるのですが、このあたりに叙述トリックが用意されているのではないか?と個人的には疑いました。ある意味この読みは外れていなかったと言えるかもしれない、本作。

時計台を使った物理トリックは、小串(弔士の姉)の体を下方にひっぱるほど○○が下に向くのであれば、狂った時間は4時間半以上になるのではないか?と思ったり。でもまぁ、なかなか面白い物理トリックだと感じました。まさに「思いついたらやらずにはいられない」系のトリック。

本作はこの手の風刺が効いた作品でしたね。「思いついたらやらずにいられない」が推理小説家からすれば「思いついたら(このネタで1本)書かずにいられない」になると読み替えてみたり。現在のミステリ界に警鐘を鳴らす…とまで大袈裟なものではありませんが、なかなか鋭い思考だと思いました。

そして、本作で尤も優れているのが…事件の動機なんですよ。実際の犯人たちの動機はちょっと弱いのですが(いくらコントロールされていたからって、そんなに簡単に一線を越えることはできない…と、本作の趣向を理解した上で言いたい)、黒幕(?)の動機が最高なんですよね。これなら頷ける。「好きな人といま以上に接近したいから」「好きな人がこちらを振り向いてくれなくて苦しくて」そんな理由で人は殺せないかもしれないけれど、黒幕が持っていたこの動機なら…殺せるかもしれない。そう一瞬でも読者に思わせる力強さがあったと思う。

そうそう、黒猫の再登場も嬉しかったです。やっぱり意味も無く饒舌な探偵役の方が私は好きです。

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コメント

おかえりなさい まじょ。さん 化け物語で久々読んだ西尾維新 こちらも未読なので早速読みたいです 私は1週間放置だったんですがすでに1週間前の本すら忘れている..

投稿: きりり | 2008/03/02 17:54

☆きりりさん☆
ただいまですっ!無事、放置プレイ終了宣言レビューがお送りできて良かった。一安心です。
発売になっていると思って本屋さんに行ったら、見事に発売延期となっていた苦い思ひ出『零崎曲識の人間人間』がついに今月発売ですね!もう、ものっそ楽しみです♪

投稿: まじょ→きりりさん | 2008/03/04 00:14

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