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2007/12/27

『隠蔽捜査』 今野敏

隠蔽捜査 Book 隠蔽捜査

著者:今野 敏
販売元:新潮社
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東大以外は大学じゃない。

国家公務員Ⅰ種試験に合格し、官僚として、キャリアとして、我が道をただひたすら進む竜崎に訪れる危機。

竜崎は自ら信じる道を進むことができるのか。それとも?

「このミス!2008」第4位にランクインした『果断』がとっても面白そうで、つい手に取ってしまった『隠蔽捜査』。少し前の自分なら面白いと思えなかったであろう警察小説ですが、横山秀夫に嵌まってからはこの手の作品が読みたくて読みたくて仕方が無い。とにかく読んで良かった『隠蔽捜査』。初っ端からお勧めです。

同期入庁のキャリアからも「変人」と噂される竜崎。自分がキャリアであることを強く意識し、家庭も家族も顧みることの無い彼を、最初は嫌な奴だと思ったんですよ。でも、読み進めるうちに「そうじゃない」と。彼には彼なりの理論がある。その理論が自分の保身や利益のためだけにあるのなら、ただの鼻につく奴なんですが…彼の理論はちょっと違うんですよね。自分がキャリアたるのは、正義を貫くがため。世の中にはキャリアにしかできないことがあり、地位が上がるにつれて増えてゆく権力が欲しい、なぜなら世を(警察組織)を正しい方向に導きたいから…って、いまどきこんな風に考える人間居ないってばさ。

そんなゴーイング・マイ・ウェイ官僚の前に立ちはだかるのが、警察の不祥事と家族の不祥事。警察組織を正しく導かんとする彼には、その不祥事を揉み消そうとする他のキャリアが許せない。不祥事を「揉み消しなんてしねぇで、開口一番に謝っちまおうぜ!」という彼の主張は、リスクを最小限に抑えることを目的とした「危機管理」なのですが…そんな風に腹を括れる人間はそうそう居ない。しかも、同じ理論で家族の不祥事も揉み消し(せっかく本作のタイトルが『隠蔽捜査』なんだから、隠蔽って言葉を使えば良いのに…)もしない彼。なぜなら、片方を揉み消してしまうことで、彼の正義の理論は破綻してしまうから。彼の意識はその破綻を許すことができないんですね。

信じる道を進めために、自ら後退することを望んだ、そんな男の物語がこの『隠蔽捜査』です。『果断』は竜崎が後退した先での事件だって言うんだから…『果断』を読まずに何を読む。幼なじみで憎しみの対象であった伊丹と和解(?)したことで、どんな変化が竜崎に訪れたのか。気になる。

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