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2007/04/06

『となり町戦争』 三崎亜記

となり町戦争 Book となり町戦争

著者:三崎 亜記
販売元:集英社
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知らぬ間に、ひっそりと忍び寄る…戦争の影。

決して掴むことの叶わない戦争の姿。戦争の狂気。

現実と戦争との乖離を描いた第133回直木賞候補作。

初めまして!作家、強化週間ラストは三崎亜記氏。代表作は読まない…とか云いながら超代表作に手を付けてしまいました。でも、『失われた町』も直木賞候補だし、デビューして間もないのに代表作しか残していない三崎氏。すごい。

でも、なんだかモヤモヤする~!

結局、最後まで戦争の姿を掴むことができずに終了。恒久平和を成文化した憲法を持つ唯一の国・日本。そんな平和ボケした(とか書いてますが、初めてこの“恒久平和”の概念を知ったときに鳥肌が立ちました。日本が世界に誇れる数少ないもののひとつだと思ってます。)私たちに、戦争の狂気をゆっくりと静かに語りかける一作。

おもしろい発想おもしろい設定だと思うし、三崎氏が本作でどんなことを伝えたかったのかどんなところを狙ったのかもわかるのだけれど…やっぱり物足りない。いきなり「となり町を戦争おっぱじめます!」って云われて、その戦争を主導するのがお役所で、それが行政サービスの一環ですって云われても…戦争の結果に自治体の発展が望めるようには思えないよ、どうしても。

文庫版にボーナストラックとして収録されている「別章」を読んで、その思いはさらに強くなりましたし。企業と仲良くするために、うまい言い訳つけて中央から財源を奪うために、そんなお金のにほいのする戦争。それって一体誰のため?お金のために市民(この場合、町民か)尊い命を犠牲にして、潤うのは誰だ?

いま私が書いたようなことが、今まさにこの瞬間に世界で行われているという現実。それを平和ボケした私たちに気付かせたいという主題ならば…ちょっと本作は優しすぎると思った。戦争を非現実性的なものとして感じながらも、日常生活の延長には必ず戦争があるというディレンマ。そういったものをよりリアルに感じさせたいならば、もっと直接的な表現が必要だと思います。あのやさしい緩やかな作品からは、そこまで切実な思いを感じきれなかった。残念。

終始曖昧な表現、曖昧な結末。読者がそこから何を読み取るか、どう読み取るか。読者の力を試しているかのよう。読者に委ねる姿勢をとるならば、リアルな物語展開を敷き作中にどっぷり引き込ませておいて、終焉だけを曖昧に、突き放してみせたほうが良かったのではないかと。曖昧なままでは曖昧な感覚しか残らないのではないでしょうか?

愉しい読書タイムを提供していただきました。いつもより真面目なレビューがその証拠。でも、映画化のキャスティングは微妙だと思う…。

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コメント

私は好きです しかし最後まで読者が全員「だからなんで戦争してるんだ?」って思いながら読んでると思うと面白いな〜と思って読んでましたけどね 映画の配役は微妙も微妙と、わたくしも思いまする

投稿: きりり | 2007/04/06 03:29

☆きりりさん☆
愉しめなかったわけではないのですよ~。好きか嫌いかで分ければ、好きな方に分類されるのですが…レビューで書いたような雰囲気にしてくれたら(個人的に)もっと愉しめたのにぃ!という残念さの現われなのです。
しかし、あのキャスティングは…超微妙!!もっと若いふたりをイメージしてたんですよねぇ。原○知世では無い。決して無い。

投稿: まじょ→きりりさん | 2007/04/06 23:09

映画の予告を見て、「おぉぉ~! これは面白い設定ではないか~!」と思いました。ですが、結局、戦争は起こらないんですか~(涙)面白そうなネタだぞ!っていきまいて終わった感じなんですか?

投稿: Cozy | 2007/04/07 09:33

☆Cozyさん☆
戦争は確かに始まっていて、敵地から逃走を図る…みたいな箇所もあるのですが、あくまでも“見えない戦争”というものが主題になっているようなんですよねぇ。
「いつ明かされる?いつ尻尾を掴むことが出来る?」みたいな(私のような)読み方をしていると、読了後「アレ?」と思うかも…。でも、作品として(デビュー作なのに)完成されていると思いますよ!

投稿: まじょ→Cozyさん | 2007/04/08 12:44

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