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2007/03/24

『女王様と私』 歌野晶午

女王様と私 Book 女王様と私

著者:歌野 晶午
販売元:角川書店
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デブでオタクでひきこもりな上に…ロリコン。

そんな私が出逢った天使、いや女王様は12歳の少女。

女王様を救えるのは、そう私しかいないのだ。

“普段の精神状態なら絶対に手に取らないであろう”とまではいかないまでも、手に取らないケースの方が多い歌野晶午氏。歌野氏の作品は『葉桜の季節に君を想うということ』以来ですので…5年ぶりくらいでしょうか?『葉桜』は有名すぎるあのトリックしか記憶にないのですが、『葉桜』より(個人的に)おもしろかったかもしれない本作『女王様と私』です。

本作はデブでオタクでニートでひきこもりで、さらにロリコンというオプションまで付随したアイタタタな44歳独身中年が主人公です。最初は「この主人公はまぁ、25歳くらいのアイタタタな人なのかな?」と思っていたのですが、44歳とは…堂に入っております。そんなアイタタタな僕が出逢った女王様も、20歳過ぎの綺麗なねーちゃんかと思いきや…12歳の天使。物語の序章も序章で明らかになるその設定に度胆を抜かれました。

そして幼き女王様が抱える悩み(オナ小元オナクラ同級生連続殺人事件!)を解決しようと躍起になるオタク中年が、まんまと迷い込んでしまう罠。この罠、途中まではリアリズム、途中からはファンタジーな創りとなっております。でもまぁ、許容範囲かと。なんたって、最初から「○○」と断りが入ってますからね!ファンタジーな設定でオタク中年が肉薄する連続殺人事件の真相…このあたりはしっかりミステリです、たぶん。

しかし(ここからネタバレします)オタク中年の「○○」が這入りこんだのは、物語がファンタジー的恣意に歪められたあたりからかと思っていたのですが、まさか最初の最初から「○○」だったとは。どれだけ壮大な「○○」やねん!私も腐女子として○○を操作するのは容易いですが(もう趣味の域です)、あそこまで自由にアズユーライクに○○するテクは持ち合わせておりません。しかも、連続殺人事件まで起こそうとは!!伊達に何十年間もひきこもってないですね~。天晴れ。み、見習わなきゃ。

そんな「○○」も章を代え「○○」へと強制終了させられるわけですが、そこで待ち構えるオチも良かった。こういう肩透かし、好きです。「○○(最初の章)」の中にしっかり「○○(最後の章)」世界が反映されていて、読者に情報が届いている点もおもしろい。

まったく期待していなかった(なんせ『女王様と私』というタイトルからSMチックな甘美な作品か、同性愛を描いた恋愛小説だと思っていた)ため、ミステリとの思わぬ出会いに嬉しさを…って、歌野晶午氏はミステリ作家ですから!でも、『葉桜』よりは本当に私好みの作品でした。

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コメント

こんばんは。
歌野さんは、むかしよく読んでましたが少し離れていました。
久しぶりに手に取ったら、またすごい設定でしたね~。
『葉桜』より気に入られたみたいですね。愛情(?失礼)が伝わってきました。
ネタバレ怖さで私は深く書けませんでしたが、読ませていただいてすっきりしました。
こちらへのコメントはネタバレオーケーですよ(笑)。
TBさせていただきました。

投稿: 藍色 | 2007/03/30 03:34

☆藍色さん☆
こんばんは!
こういうやんちゃな設定好きなんですよねぇ。デブでオタクでひきこもり…なんて、若者の役どころを年期が違うんだ!とばかりに中年オヤジに当ててくるところがやんちゃ。しかもロリコン…向かうところ敵無しじゃないですか。
ネタバレレビューは難しいですよねぇ。私も何度ネタバレ被害に遭ったことか。テンプレートがコレなもんで、ドラック方式も取れないため、いつも苦心しております。
でも、ネタバレレビューは読了後の方には概ね好評なので嬉しい限りです(笑)

投稿: まじょ→藍色さん | 2007/03/31 23:23

グーグル検索より失礼いたします。
読み終わったばかりで今ちょっと脱力しているのですが「葉桜」よりもこちらの方が好きな方もいらっしゃるのですね!本当に人の意見は千差万別ですね。
私も「なるほど」と思ったのですがもう少し短かったらよかったと思います。同著の「ハッピーエンドにさよならを」にも引きこもりの話があって本当に社会の暗部を描くのが好きなんだな〜と感じました(笑)

投稿: クラセイ | 2016/05/05 14:12

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