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2007/03/31

『背の眼』 道尾秀介

背の眼 Book 背の眼

著者:道尾 秀介
販売元:幻冬舎
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被写体の背中に浮き上がる二つの眼。眼を背負った者たちは、不可解な自殺を遂げる。

霊はこの世に存在するのか?

霊現象探求所所長・真備とホラー作家・道尾が挑む、美しく哀しいミステリ。

「このミス2007」第3位に『シャドウ』を、17位に『向日葵の咲かない夏』を送り込んだ道尾秀介氏とは本作が初めまして!以前から読みたい読みたいとは思っていたのですが、どうにもお名前を思い出せなくて(大きな声では云えませんが…地味じゃないですかお名前が)なかなか手にする機会を持てなかったのですが、伊坂幸太郎氏を特集しております「ダヴィンチ4月号」で小特集が組まれていたのをきっかけに頭に叩き込みました、お名前を

幻冬社第5回ホラーサスペンス大賞を受賞した本作ですが、民俗学(ホラー担当?)とミステリが融合した素敵作品に出来上がっております。『背の眼』の紹介ページで「京極夏彦を踏襲する…」といった記事を読んだのですが、京極とはちょっと違うような。彼は妖怪だもの。

民俗学とミステリの融合で思い出すのは『民俗学者 八雲樹』(ドラマ版八雲は我等がミッチー王子!!)なのですが、あのドラマは若干アイタタタ感が漂っていましたからね。ミッチーは天然キャラじゃないよ!ナイフより切れなきゃ!!でも、『背の眼』のテイストとしてはあんな感じ。

しかし、新たなる名探偵の登場じゃないですか?

もろ好みです真備庄介。科学的観点から霊的現象を分析する彼。アンチオカルティズムかと思いきや、その本心は本物の心霊現象に出遭いたいから。その理由がまた泣かせます。女性と見間違われるほど眉目秀麗な彼ですが、私の脳内ではなぜか某作品(QED)の毒草師と同じナリに変換(映像化)されていて嫌だ。

物語は真備の同窓生であり、ホラー作家の道尾秀介が心霊現象に遭遇することから始まります。貴重な友人からの頼みであるのと同時に、探していた本物の心霊現象に出遭えるかもしれないと重い腰を上げる真備。美しい山間の風景と美しい川の麓で彼らが出遭った真実とは?

まぁ、ミステリとの融合とか(私が)云っている割に推理パートは殆ど無くって、真備がコネを使って入手してくる情報とか突然の出会いとかを足し合わせていって、結末があるといった感じなのですが。でも、ラストの亮平少年の告白は胸が熱くなりました。真備、良かったね。貴方の探しているものは、貴方のすぐ側にあるってさ。

というわけで、期待以上でした道尾秀介氏。こりゃ、『シャドウ』と『向日葵』はどれだけの名作なんだと期待が高まります。真備庄介シリーズ第2弾『骸の爪』も今月発売されたばかり。これからの読書生活が愉しくなりそうです。

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2007/03/29

『チョコレートコスモス』 恩田陸

チョコレートコスモス Book チョコレートコスモス

著者:恩田 陸
販売元:毎日新聞社
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舞台の上には魔物が住んでいる。

その魔物に魅せられたふたりの少女。

天才と“呼ばれる”少女と天才少女。奇跡の舞台はいま幕が開く。

まさに…

恩田陸版「ガラスの仮面」!!!

「ガラスの仮面」新刊は未だか未だかと、半ば諦めの境地に陥っておりました私。いやぁ、こんなところで「ガラスの仮面」を読むことができるとはっ!(←違うから!きっと恩田氏もそんな読み方じゃ不本意だから!!)でも、読めば読むほど「ガラスの仮面」だった本作。

恩田陸氏とはちょっと距離を置こうと決めた(合わないかもしれないと思っている)私でしたが、“『チョコレートコスモス』は「ガラスの仮面」らしい”という評判を聞いていてもたってもいられなくなりました。「よ、読まねば。この作品を読まずして何を読む!」という強い意志を持って頁を捲ると…出た!北島マヤが居た!!

もうねぇ、佐々木飛鳥(主人公)という文字は北島マヤに、東響子(ライバル)という文字は姫川亜弓に自動変換されるから不思議です。私は物語を自動的に映像化して読む癖があるのですが(右脳左脳という記事に詳しい)、動く彼女たちはまるっきりマヤと亜弓さんの姿をしておりました。超、愉しかった!!!

マヤ(違う!いま自然にキーを打っていて自分でもびつくり)飛鳥の演技を始めて目の当たりにした仲間たちの反応。まさに雷に打たれたような、突風が吹き荒れたかのような、「この子は天才かもしれない」という心のざわつき。まさに月影先生がマヤを見つけたときの反応そのままです!役に入り込むときの飛鳥のつぶやき…まさにマヤの「ブツブツブツブツ」そのままじゃないですか!!そして、天才子役から天才女優へと変貌を遂げる“努力家”のライバル東響子は亜弓さんの生き写し!!!この作品を「ガラスの仮面」と呼ばずしてなんと呼ぶ!!!!

はぁ、興奮してしまいました。でも、この『チョコレートコスモス』を読んでも「ガラスの仮面」のオマージュどころかそのまんまじゃん!という不快感は感じませんでした(さっきから“そのまま”を連呼しておりますが、決して悪意を持ってのことではない)。なんでだろ?こんなに同じなのに。愛しの“紫のバラの人”が出てくる出てこないの問題ではないんだよなぁ。思わぬところで「ガラスの仮面」の新刊が読めたという感動でもない(笑)なんだか不思議。好きです『チョコレートコスモス』。

この続き、描かれるのでしょうか?すんごい読みたいすんごい読みたい。飛鳥と響子の対決がどんなものになるのか。幕が開くまでにどんな紆余曲折があるのか。ふたりはどんな風に火花を散らしあうのか。飛鳥はその最大の欠点を克服することができるのか。

なんだか、『チョコレートコスモス』のレビューになっていないような気がしますが、あらすじが知りたい方は是非「ガラスの仮面」をどうぞ。とにかくおもしろい。『夜のピクニック』に並ぶ恩田氏の代表作になりそうな予感。そして、このまま「ガラスの仮面」42巻まで徹夜一気読みを敢行してしまいそうな予感。

ガラスの仮面 (第42巻) Book ガラスの仮面 (第42巻)

著者:美内 すずえ
販売元:白泉社
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2007/03/28

『新本格魔法少女りすか3』 西尾維新

新本格魔法少女りすか3 Book 新本格魔法少女りすか3

著者:西尾 維新
販売元:講談社
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“六人の魔法使い”を片っ端から倒し、最終目的へと近づくべく旅に出た彼等。

しかし、彼等を待ち受ける試練!試練!!試練!!!

ラストを目前に、物語は加速する。

ココログメンテに負けず、なんとか更新できました『りすか』最新作。長時間メンテをきっかけにネッ闘逃亡する負のジンクスは解消できた…かも?

さて、『りすか3』は3作の短編が収録されているのですが、その様はまさに連作短編集。魔法使い魔法使い魔法使いの3連コンボです(あっ、あっさり倒された一人がカウントされていて、魔法使い封じはカウントされていなかったり。正確でしょ?)。今回も設定は無茶苦茶ですが(キズタカが大人過ぎる件についてはもう慣れました)とにかく読ませる。1時間一気読みです。

収録されている作品の中で最も好みなのは「夢では会わない!!」なのですが、それはすべてきずなさんの力です。きずなさん、好きだなぁ。きずなさんは魔法使いでは無かったはずなのに…というツッコミは夢オチで回避でしょうか?でも、きずなさんならあのくらいやってのけそう。キズタカパパも魔法使いを素手でぶっとばすくらいのことは普通にやってのけそうだし。キズタカパパも好き。キズタカったら、ファザコンなんだから。

そうそう、魔法使い封じの彼は良い味出してましたね。部屋を出て、携帯に電話を寄越してきたときの性悪な彼が好きです。基本的に笑顔で性悪なことやってのける人が好き。絶対魔法封じの期間は14日じゃないよ。長いか短いかは知らんが、絶対14日じゃないさ。

本作で明らかにされたニャルラトテップの“箱舟計画”でございますが、そのくらいのことニャルラトテップ自身はできんのか?という疑問が今更ですが浮かびます。だって、りすかを創り出したのがニャルラトテップ自身なんだからさ。“六人の魔法使い”はりすかを成長させるための捨て駒、という読者の裏(?)をかいてきた本作ですが、さらにその裏を読んでみようと妄想してみる。

りすか&キズタカの物語の次巻で最終回。「ファウスト」誌上ではこの続きが掲載されたのでしょうか?「ファウスト」はノーチェックなのですが…来年あたりに4巻が読めることを期待。しかし、最後にはニャルラトテップまで…辿り着くんだろうな。是非、ニャルラトテップ=キズタカパパ的な驚きの結末を!!

しかし、唯の感想文に成り果てておるな。このレビューは読んだ人にしかわからん。す、すみません。

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2007/03/27

『震度0』 横山秀夫

震度0 Book 震度0

著者:横山 秀夫
販売元:朝日新聞社
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大震災の朝、N県警を襲った激震。

警務課長の失踪は事故か事件か?

保身と野心が渦巻く県警幹部の密室劇がいまここに開幕。

“おもしろい本がどうしても読みたくなったときのストック”として大事に大事に暖めておいた横山秀夫氏の作品にとうとう手を付けてしまった…そんなに『暗黒館』ショックは根深いのか、自分。でも、

やっぱり最高です、横山作品。

横山作品にハズレなし。この確信がより一層強いものとなりました。本作『震度0』は、警務課長の失踪をトッピングにした警察内部のどろどろ権力闘争のお話です。こういうどろどろ野心劇は主に女性の得意とするところなのですが、なかなかやります男性陣。

この密室劇の主役は警視正6名。キャリア2名、準キャリ1名、ノンキャリ3名が繰り広げる駆け引き!裏切り!!足の引っ張り合い!!!嗚呼、なんて心地良い響きなんだ。ちなみに、私が心のどこかで応援してしまったのはコドモ部長=キャリアの冬木警視正です。

もう、警務課長(不憫・不破氏)の失踪そっちのけで、誰がこの権力闘争に勝利するのかに熱中してしまいました。選挙違反摘発?ソバージュの女?ノン!ノン!ノン!!もはや“失踪の真相”ではなく“闘争で勝ち残るためのツール”に化してしまった情報たち。情報をどう活かすか、どう操るか。6名の警視正たちの“遊び場”と化してしまったN県警。でも、そんな彼らを嘲笑うかのように常に流れるものがある…それはテレビです。

テレビで流れる阪神淡路大震災の情報。激震と云われるマグニチュード7。多くの死者を出した惨劇が彼らには…見えない。“情報”で遊んでいたつもりが、“情報”に遊ばれる彼ら。そして、“最も大切な情報”=被災し苦しむ人たちの今がすっぽり抜け落ちる。なんて哀れ。

そんな哀れな密室劇にも終わりが訪れる。終焉をプロデュースするのは権力闘争からも失踪劇からも中庸を取り続け、自らの職務を全うした1人の警視正。誰がカーテンコールのベルを鳴らしたのか…どうぞお楽しみに。

やっぱり最高、横山作品。読者を引き込む・読ませる力は『クライマーズ・ハイ』に匹敵するかも。でも、感動は無かった。あまりに哀れで滑稽で。“情報”は活かすもので踊らされるものではない。本当に大切なものは今しなくてはならないことは、すぐ側にあるんだよという教訓。

何度でも云いましょう、横山作品ハズレなし。

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2007/03/26

『間宮兄弟』 江國香織 

間宮兄弟 Book 間宮兄弟

著者:江國 香織
販売元:小学館
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-だって間宮兄弟を見てごらんよ。いまだに一緒に遊んでるじゃん-

とっても仲良し間宮兄弟。

好きなものも女性に縁の無いところも、いつでも一緒いまでも一緒。

観てないけれどあのキャスティングは絶妙!と思っている映画「間宮兄弟」。“観る前に読む”を鉄則としている私は、DVDを楽しく鑑賞する為に手に取りましたよ、原作『間宮兄弟』。

繰り返しになりますが、私は江國香織氏が苦手です。江國氏の作品は狂気を孕んでいて怖い。この『間宮兄弟』もコメディタッチでハートフルな仮面を被っておりますが、登場人物の行動をよくよく観察してみて…怖いから!

まずは間宮兄弟…まるっきりストーカーじゃないですか!?普通はレンタルビデオ屋のバイトの姉ちゃんを自宅には誘いません。そして、間宮弟に至っては人妻を完全ストークしてます。その人妻も、旦那の気持ちを取り戻す為に楽しかった頃の写真を送りつけてます。ホラーです。その旦那の浮気相手も「はやく離婚が成立すればいいと思うわ」と当事者なのに他人事のように笑います。これから殺人でも犯すのか?って位の恐怖です。

でも、これって、私たちがいざその場面に遭遇したら、自分でもやっちゃうかも?っていう恐怖なんですよね。そんな人間の狂気を切り取るのが巧い、普段私たちが隠している部分を暴くのが巧い。それが江國香織氏の作品です。

そんなホラーテイストさえ除けば、間宮兄弟の日常はとてもとてもチャーミング。ふたりが「おもしろ地獄」と称するジグソーパズルに熱中する様や、同じクロスワードパズルをどちらが先に解けるか勝負している様などは、思わずにやり。こんな兄弟も素敵だなって。現実世界でお付き合いするかって聞かれたら「NO!」ですけれど。

そんな兄弟の日常が再現されているであろう映画「間宮兄弟」。繰り返します、キャスティングは絶妙。恋愛云々はスキップするとして、間宮兄弟が楽しく遊ぶ様を楽しく拝見したいものと思います。

間宮兄弟 スペシャル・エディション (初回限定生産) DVD 間宮兄弟 スペシャル・エディション (初回限定生産)

販売元:角川エンタテインメント
発売日:2006/10/20
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2007/03/25

『富豪刑事』 筒井康隆

富豪刑事 Book 富豪刑事

著者:筒井 康隆
販売元:新潮社
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捜査会議に参加するどこか…いや間違いなく場違いな男。

彼はそう…大富豪だったのだ。

大富豪でなければ考えつかない捜査方法で、犯人を追い詰める!

いまさら感満載。避けて通っていたわけでもないのに、機会が無かった『富豪刑事』レビューです。深○恭子ちゃん主演のドラマ版は観たり観なかったりだったのですが、彼女の場合“富豪”というよりは、貴金属をまとったお惚けさんといった風情で、ちょっと苦手でした。“俗世のことは存じ上げませんの”感は充分に伝わってきましたが。

というわけで、原作の神戸くんは男性。1本8,500円の葉巻をふかし、キャデラックを乗り回すナイスガイです。富豪のイメージが古すぎるのは、昭和59年に出版された作品だから仕方無いとしても…嗚呼、お近づきになりたい。「世の中金じゃない」という言葉は本質を捉えていないとまでは云わないまでも、95%くらいの確立で世の中お金だと思っている私。長いものいは巻かれろ、お金に巻かれたいまじょ。なのでした。

さて、肝心のミステリ部分。いやぁ、素敵ですねぇ喜久右衛門様。大助が神戸家の財産を捜査の(世の中の)為に使いたいと申し出たときに咽び泣く喜久右衛門様が大好きです。もう、このシーンを読みたいが為に読み進めると云っても過言ではないです。そして、使うならとことん使えとばかりに、超悪ノリする喜久右衛門様がさらに好き。

喜久右衛門様の悪ノリ加減がいちばん好みなのは「密室の富豪刑事」。犯人追い詰めるために会社ひとつ立ち上げますか?子飼の部下たちをその会社に送り込み、やるならとことんやるぜ!とばかりに黒字にしてしまう(資産を増やしてしまう)そのおバカ加減が好きです。

「富豪刑事のスティング」はミステリらしい作品でしたねぇ。突然読者への語りが挿入されるあたりもメタ的手法でしたし。ただ、神戸君にしてみたら、たかだか500万円のために子供の誘拐を企む犯人の気持ちなんてわからないのでしょうね。まぁ、突然500万円が空から降ってきたら間違いなく拾いますけれども。

というわけで、またドラマ版にもチャレンジしてみようかな?と。ドラマ版でいちばん印象に残っているのはミッチー(及○光博)のエンディングテーマだという罠なのですが…。

富豪刑事 DVD-BOX DVD 富豪刑事 DVD-BOX

販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ
発売日:2005/08/05
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2007/03/24

『女王様と私』 歌野晶午

女王様と私 Book 女王様と私

著者:歌野 晶午
販売元:角川書店
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デブでオタクでひきこもりな上に…ロリコン。

そんな私が出逢った天使、いや女王様は12歳の少女。

女王様を救えるのは、そう私しかいないのだ。

“普段の精神状態なら絶対に手に取らないであろう”とまではいかないまでも、手に取らないケースの方が多い歌野晶午氏。歌野氏の作品は『葉桜の季節に君を想うということ』以来ですので…5年ぶりくらいでしょうか?『葉桜』は有名すぎるあのトリックしか記憶にないのですが、『葉桜』より(個人的に)おもしろかったかもしれない本作『女王様と私』です。

本作はデブでオタクでニートでひきこもりで、さらにロリコンというオプションまで付随したアイタタタな44歳独身中年が主人公です。最初は「この主人公はまぁ、25歳くらいのアイタタタな人なのかな?」と思っていたのですが、44歳とは…堂に入っております。そんなアイタタタな僕が出逢った女王様も、20歳過ぎの綺麗なねーちゃんかと思いきや…12歳の天使。物語の序章も序章で明らかになるその設定に度胆を抜かれました。

そして幼き女王様が抱える悩み(オナ小元オナクラ同級生連続殺人事件!)を解決しようと躍起になるオタク中年が、まんまと迷い込んでしまう罠。この罠、途中まではリアリズム、途中からはファンタジーな創りとなっております。でもまぁ、許容範囲かと。なんたって、最初から「○○」と断りが入ってますからね!ファンタジーな設定でオタク中年が肉薄する連続殺人事件の真相…このあたりはしっかりミステリです、たぶん。

しかし(ここからネタバレします)オタク中年の「○○」が這入りこんだのは、物語がファンタジー的恣意に歪められたあたりからかと思っていたのですが、まさか最初の最初から「○○」だったとは。どれだけ壮大な「○○」やねん!私も腐女子として○○を操作するのは容易いですが(もう趣味の域です)、あそこまで自由にアズユーライクに○○するテクは持ち合わせておりません。しかも、連続殺人事件まで起こそうとは!!伊達に何十年間もひきこもってないですね~。天晴れ。み、見習わなきゃ。

そんな「○○」も章を代え「○○」へと強制終了させられるわけですが、そこで待ち構えるオチも良かった。こういう肩透かし、好きです。「○○(最初の章)」の中にしっかり「○○(最後の章)」世界が反映されていて、読者に情報が届いている点もおもしろい。

まったく期待していなかった(なんせ『女王様と私』というタイトルからSMチックな甘美な作品か、同性愛を描いた恋愛小説だと思っていた)ため、ミステリとの思わぬ出会いに嬉しさを…って、歌野晶午氏はミステリ作家ですから!でも、『葉桜』よりは本当に私好みの作品でした。

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2007/03/23

『東京奇譚集』 村上春樹

東京奇譚集 Book 東京奇譚集

著者:村上 春樹
販売元:新潮社
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不思議な、あやしい、ありそうにない-奇譚。

そんな奇譚話を集めた村上春樹短編集。

さぁ、春樹ワールドの調に身を委ねよう。

“普段の精神状態なら絶対に手に取らないであろう”作品群、第2弾は大御所・村上春樹氏です。「えっ?嘘!いまさら??」感満載の方もいらっしゃろうかと思います。実は私、村上春樹氏は『ノルウェイの森』しか読んだことございませんでしたの…うふっ♪

とくに苦手意識を持って避けていたわけではないんです。私のこれまでの読書遍歴は基本スタンスがミステリミステリミステリ・・・・・・ミステリ一辺倒だっただけで。ミステリではない作品を読むきっかけも、その殆どが“装丁が綺麗”とか“話題だし”ってなもんで。村上春樹氏くらい有名(ノーベル文学賞獲るかっ!ってくらい)だと、自然とその作品のあらすじとか結末が耳に入ってくるので、それで読んだ気になっちゃうっていうのも本音。

というわけで、『ノルウェイ』以来○年ぶりの村上春樹作品です。村上春樹氏の作品の特徴は細部まで亘る人物(あるいは料理、場所、空間)の描写だと思っている私。女性の身にまとっているものから、その立ち振る舞いまで読者に的確にイメージできるように描写する。でも、肝心のその中身はいつもビロードのベールがかかっていて、容易に覗くことができない…そんな素敵描写が村上春樹氏の特徴だと思っていました。どうでしょう?合ってます?

そんな“あやしさ”が文章の根底に流るる上に、作品集の主題まで奇譚(不思議な、あやしい、ありそうにない)だって云うんだから、どれだけあやしい作品がくるのかと思っていたら“妖しさ”でびっくり(笑)最後に収録されている「品川猿」は妖怪だと思い込んでいる私…って、春樹作品の読み方はそこじゃない!って怒られますか?

本奇譚集でもっとも好みだったのは「偶然の旅人」ですね。こういう偶然が起こることを常に待っています…って、それは意識しているかいないかの違いであって、いま私の側でも素敵な偶然が起こっていると氏は指摘しているのだけれども。この「偶然の旅人」はジャズの旋律を描いた部分が素敵でした。思わずジャズCDに手が伸びるくらい。日常的に好んで聴いているわけではないけれど、良質のカフェにはやっぱりジャズがかかっていて欲しいと思うくらいにはジャズ好きです。アドリブがアドリブを生む、無から有が生まれる最高の瞬間に最高の偶然に居合わせたいと感じた一作でした。

“春樹チルドレン”と評される本多孝好氏があんなに大好きな割に、そのお父さんを読んでないのもアレですしね。これからも(短いものから)春樹ワールドを自己の中に取り入れてゆこうかな…と思った、そんな“普段の精神状態なら絶対に手に取らないであろう”作品でした。

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2007/03/22

『永遠の出口』 森絵都

永遠の出口 Book 永遠の出口

著者:森 絵都
販売元:集英社
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<永遠>という響きにめっぽう弱かった少女の大人への物語。

描かれる10代の記憶と、永遠なんて無いという虚無感。

直木賞作家・森絵都が送る青春小説。

『暗黒館』ショック冷めやらぬ私が図書館で仕入れてきた本たちは、普段の精神状態なら絶対に手に取らないであろう作品ばかり。新境地を拓きたいのだろうか…自分。

というわけで、さっそく読んでみました“普段の精神状態なら絶対に手に取らない”森絵都作品。読了後、

なぜか女の一代記を見せられた気がした

のは、きっとウッドフェアリーだと思います。

そうねぇ、“普段の精神状態なら絶対に手に取らない”ってのは云い得て妙です。やっぱり私の読書遍歴とは違うんだよなぁ。直木賞受賞作ならもしかしたら…なんてキーボードを叩こうとした指も“普通の精神状態”ではない証拠だ。違うものは違うとはっきり云える自分だったはずじゃないか!!

というわけで、中学生くらいの少年少女が読んだら良い本だと思いました。10代をとうに終えてしまった私には、この作品は痒い。しかも古い。スカート引き摺って歩くヤンキーなんて居なかったです、私の青春時代には。時代がずれてるから違うと感じるのだろうか?ということは、現代の中学生が読むともっと違うな、うんうん。

森絵都作品は本作ではじめましてなのですが、基本的にこういうスタンスの作家さんなのでしょうか?『DIVE!!』は以前から若干気になっていたのですが…『暗黒館』の次にあんな4巻モノ(文庫だと上下巻モノ)読めないです…。

基本的に青春小説ってジャンルが苦手なのかも。青春時代って一人ひとりが違う風合いでもって大切に仕舞いこんでいるものであって、それがきっと誰にとってもベストだと思うから。だから、他人の青春時代を読まされてもピンと来ないのかも。でも、爽快感のある=私が青春時代にやり残したものたちが描かれている青春小説は好きです…って、どっちなんだ、自分!!

まぁ、たまには“普段の精神状態なら絶対に手に取らない”作品を読むのも良いかな、と。

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2007/03/21

『後宮小説』 酒見賢一

Book 後宮小説

著者:酒見 賢一
販売元:新潮社
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三食昼寝付き贅沢三昧…そんな偽情報に惑わされて宮女に志願した銀河。

そんな銀河が若き皇帝の正妃に!?

後宮哲学と果敢なく幼い恋愛を描いた傑作。

『暗黒館の殺人』を読了できたら、自分へのご褒美として絶対読むと決めた『後宮小説』。ちゃんと読めたことに感無量。

『後宮小説』は私のオールタイムベスト10にグイっと喰い込んでくる一作。その出逢いはこの『後宮小説』を原作としたアニメ「雲のように風のように」です。1990年に放送されたそのアニメをリアルタイムで見た当時○才(なんと一桁だ!)の私に、グサッとなにかが刺さりました。未だに大好きなアニメ。アニメの好き好き度なら「カウボーイビバップ」に並ぶかもしれません(いつかこのブロ愚で「カウボーイビバップ」について恍惚と語ってやるんだ…決めてるんだ…)。

というわけで、原作を読んでいるときに私の脳内で動いているのは、アニメの銀河やコリューンたちです。アニメと原作という関係はこの作品に限ることなく、大筋に変更はなくとも(時々「原作でもなんでもありゃしねぇ!」という作品に出逢うこともありますが)細部に違いが出てくるものですが、この『後宮小説』においてはコリューンのラストに大きな違いがあります。私は断然アニメ版のラストの方が好きなのですが…如何でしょう?アニメがあんなに心に残ったのも、コリューンのあの決断があったからだと未だに思います。それくらい、あのラストと銀河の泣きじゃくる姿が好き(←なんか残酷な物云いですが、感動必至)。

原作『後宮小説』では、角先生の後宮哲学がメイン(イリューダ達の進軍模様も厚く書かれてますね)なのですが、これもまたおもしろいです。なにがおもしろいって、角先生のどうでも良い後宮理論を(あぁ、角先生ごめんなさい。でも、コリューンも結局どうでも良いって云ってたし…)酒見賢一氏が堅っ苦しく真面目に解説してくれることが楽しい。まさに酒見節。普通なら読み飛ばし上等!なのに、読んでしまう読ませてくれる。酒見節、好きだなぁ。

でも、『後宮小説』の良さはやっぱりラストにある、と。銀河が道女となりコリューンと心通わせる(それを角先生に報告する)部分なんて、何度読んだって胸熱くなりますからね!(でもやっぱりコリューンの最期はアニメの方が好き)タミューンの最期も哀しくて好き。タミューンにとってあの最期はコミューンと漸く(心で)ひとつになれて、至極だったのだと思います。

派手さは無いけれど心に残る作品として、オールタイムベストに喰い込む一作。無性にアニメが見たくなってしまいました。

雲のように風のように DVD 雲のように風のように

販売元:バップ
発売日:2002/06/21
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2007/03/19

『暗黒館の殺人』 綾辻行人

暗黒館の殺人 (上) Book 暗黒館の殺人 (上)

著者:綾辻 行人
販売元:講談社
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ひょんなことから“中村青司の館”に関する情報を入手した江南。

暗黒館と呼ばれる館で江南が遭遇するのは…恐ろしい罠。

物理的にも精神的にも重厚感あふれる、館シリーズ第七弾!

おんまたせいたしました!!

もうこのまま無かったことにしてしまおうか…という誘惑に何度かられたことか。有耶無耶なままエイプリルフールを迎えて、冗談オチにしてしまおうかと何度悩んだことか。そのくらい難産だった『暗黒館』。漸くレビューをお届けできることに感無量です。

この『暗黒館』を読了するために、私がとって作戦は…カフェで缶詰め作戦。『暗黒館』には睡眠薬が盛られていると信じて疑わない私ですが(この缶詰め作戦を取るまでは、1日30頁が限度だった)、ベッドで読むから眠くなる→眠れない環境に身を置けば良いんだ!と気付くまで○週間。暖冬とは云え、北海道の3月に屋外での読書は自殺行為ですので、カフェに『暗黒館』と煙草だけを持ち込み、ひたすら読む読め読むんだ。この週末にカフェで分厚い新書を手に、恨めしい顔をして読書している女を見かけた方、それは私だったかもしれません。

さて、肝心の『暗黒館』の内容に触れておりませんねぇ。正直なところ、内容云々よりも読了までの難産っぷりの方が印象強いんですよ。まぁ、そうも云っていられないので、ネタバレ全開レビュー(しかも毒舌)にすることで、なんとか書き上げちゃいましょう。

えーっと、中村青司の原点、ここにあり!!

もうこのネタバレだけで良いような気もしないではありませんね。この『暗黒館』は“(中原)中也”と呼ばれる青年の視点を取って描かれているのですが、この“中也”が実は若き日の中村青司だというトリックです(←さらーっと、すべてをバラしたNE!)このトリックにいつ気付くか…が『暗黒館』の唯一の楽しみ方だと思うのですが(つまり、暗黒館内で行われる殺人は特に重要視する必要も意味も無いという毒舌です)、このトリック、なんともアンフェアな描かれ方をしています。

中也=中村青司が暗黒館に滞在していた“過去”と“現在”とを結ぶのは、十角塔(十角!)から墜落した江南某という青年なのですが、同じ同じ時刻同じタイミングで地震が起こり、同じ名字の同じような身なりをした青年が同じ塔から落ちるってどんな偶然やねん!同じが6回も出てきたよ。その偶然を起こせるのが中村青司の館だって云うんなら、そんな館はこっちから願い下げです。

というわけで、読者に誤認させよう感が満載で、興醒め。しかも唐突に挿入される“現在”を生きる江南の独白(?)がしつこい。同じような台詞を何度も何度も読まされて辟易してしまいます。あんな独白入れなければ、もっとスマートな(物理的にも精神的にも)作品になったと思います。

暗黒館に住まう浦登家の秘密はちょっと素敵でしたけれど…ミステリに有りがちな設定と云ってしまえばそれまでですね。その雰囲気を味わうには、『暗黒館』は厚過ぎるんですよ。せっかくの良い部分も、全体に横たわるダラダラ感と睡眠薬の所為で台無しです。そうそう、青屋敷で焼身自殺を遂げた中村青司ですが、彼の食した“ダリアの肉”はその不死性を発揮しなかったのでしょうか?実は檻の中で青司が惑っている…なんて設定が次のシリーズで当たり前のように出てきたら怒るけどね。

でも、ラストの征順の「家人に一人、優秀な医師がいるのです」には、若干ゾクッとしましたでしょうか。玄児よね?これって玄児のことよね?そして、檻へと向かう江南の耳に届いたピアノの調。これって美鳥よね?そんな“匂わせた”ラストは唯一素敵だったと思います。

さて、これで胸に痞えていた懸案事項も解決いたしました。これからはミステリブロ愚、通常営業です。リハビリも兼ね、薄くてさらっとした作品から読み始める予定。これからも当ブロ愚をどうぞよろしくお願いいたします。

20000HIT、本当にありがとうございました!!

暗黒館の殺人 (下) Book 暗黒館の殺人 (下)

著者:綾辻 行人
販売元:講談社
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2007/03/17

『二枚舌は極楽へ行く』 蒼井上鷹

二枚舌は極楽へ行く Book 二枚舌は極楽へ行く

著者:蒼井 上鷹
販売元:双葉社
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「妻を殺害したことを自白すれば、解毒剤を飲ませてやる」

身に覚えの無い、無実の罪を被せられたら…貴方ならどうする?

蒼井上鷹が贈る12編のコージーミステリ集!

す、すみません(3度目)

2度あることは3度ある…この言葉が今の私にはぴったり!しかも、前回レビューは3月5日、これだけ時間を空けといて更新されたレビューが『暗黒館の殺人』じゃないっていうんだから…お陀仏。

さて、本日も図書館返却エンドに迫られて手に取った一作。『暗黒館の殺人』はちゃんと読んでるんですよ!でも、本に睡眠薬でも盛られてるんじゃないかと思うくらい、読むと眠くなります。1日30頁が限度で、全く進んでゆきません。物語は未だ“ダリアの日”を迎えたところです…すみません。

さて、お口直し的意味合いもあった『二枚舌は極楽へ行く』。私がまだ蒼井上鷹氏の評価を決めかねているというお話は『ハンプティ・ダンプティは塀の中』でもさせていただいたばかりですが、今回も良いなぁと思う反面くどいなぁと思ってしまう作品集でした。

「おっ、おもしろいこと仕掛けてきたぞ!」と思う箇所と、「そんなに二転三転させなくても…全部なおざりだし」と思う箇所が半々。作品毎のビミョーな繋がりも、にやりとさせてくれる程度でなく、かなりあからさまでしたし。こういうのは「もしかしてあの繋がり?えっ?えっ?」と思わせてくれる程度で露出されるのが好きな私。確かにコージーミステリではありましたが…。

収録されている中で一番好きだったのは「値段は五千万円」でしょうか。「ラスト・セッション」の落とし方も好きね。「待つ男」に仕掛けられた本当の意味を知ったときには、にやりとさせられました。この3編は好き好き!やっぱり最後にオチの付いてる作品が好きみたいです、私。

作品のラストに<参考文献>が掲載されているのもおもしろいですね!「どこがどう参考文献やねん!」と思わせるものから、「なるほど~」と思わせるものまで。<参考文献>からその作品に思いを馳せるのも、なかなかおもしろい取り組みでした!

ということで、次のレビューこそ『暗黒館の殺人』をお送りしたい。今のところ図書館積読本もありませんし。でも、今月はブロ愚始まって以来の最低読書数を記録しそうな予感です。見捨てずにお付き合いくださいまし。

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2007/03/05

『墨攻』 酒見賢一

墨攻 Book 墨攻

著者:酒見 賢一
販売元:新潮社
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その哲学と戦術を以って戦国時代を生きた守りのスペシャリスト集団・墨家。

墨家からその城を守るために使わされたのは…たった独りの男。

男の指揮の下、自分たちの生活を守るための戦いが始まる。

す、すみません(2度目)

2度目ともなると、いきなりの謝罪も空々しくなりますね。最初から空々しかったというツッコミの声も聞こえてきますが。えーっと、もう忘れたい気持ちで一杯なのですが、現在20000HIT御礼館レビューの真っ最中でございまして、そのラストを飾る『暗黒館の殺人』が未だ読了しておりません。「どの辺りまで読み終わってるわけ?」というツッコミには強気で「答えたくありません」と逆ギレです。そして、今日も『墨攻』レビューでお茶を濁すわけです。(反省の色が見えないな、自分)

でも、『墨攻』はバスタイムのお供に連れて行って、そのままお風呂場で読了したわけでして、『暗黒館』の進行をそこまで邪魔す…むにゃむにゃむにゃ…もう云いません。でも、本当にあっという間に読めちゃいます。この薄さが潔いですね(←まだ云うか!?)

『墨攻』を手に取ったきっかけは、映画の宣伝の中で酒見賢一氏が原作者だと紹介されていたからです。酒見氏は“常に動向をチェックしているわけではないけれど、どこからか情報が入ってきたら読みたくなっちゃう作家”の一人。酒見氏の処女作『後宮小説』は私のオールタイムベスト10に食い込んでくるほど好きな作品です。『泣き虫弱虫諸葛孔明』も最高!どうやら『泣き虫~第二部』が刊行されたようでして、酒見氏マイブーム、来るかも!?

さて、肝心の『墨攻』レビューですが、この「すわっ、これは教科書か!?」ってくらい短いセンテンスと説明的文章が如何にも酒見節。普通ならガンガン批判するところなのですが、これが酒見氏の味でして、ラストはしっかり読ませてくれるから不思議とそんな気分にはならないんですよね。

映画は観てないので、ラストのあの落とし方にはちょっとびっくりしました。まさかあんな風に落ちるとは(二重の意味合いです)。純然たるハッピーエンドにしないところが、如何にも酒見節。『後宮小説』もね…って、それはまた別のお話。ヤバイですね、『後宮小説』読みたくなってきましたよ(←おいおいおいおいおいおい)

歴史物は唐突に意味不明な言葉が出てきて説明も無いから…と苦手意識をお持ちの方も、『墨攻』は安心して手に取っていただけるのではないでしょうか?とにかく平たく平たく墨家の思想(哲学や戦術)が描かれていて、すーっと頭の中に入ってきます。逆に歴史に詳しい人ほど物足りなさを感じるのでは?

というわけで、原作を読んで全然興味の無かった映画が観てみたくなった!という、宣伝効果バッチリの一冊。映画を御覧になった方も是非どうぞ。

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2007/03/04

『ハンプティ・ダンプティは塀の中』 蒼井上鷹

ハンプティ・ダンプティは塀の中 Book ハンプティ・ダンプティは塀の中

著者:蒼井 上鷹
販売元:東京創元社
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塀の中で交わされる推理合戦が迎える笑劇の真実とは?

既に作風を確立した感もある蒼井上鷹、ついにミステリフロンティアから登場!

す、すみません!!

いきなり謝罪からスタートです。20000HIT御礼館レビューのラストを飾る『暗黒館の殺人』、未だに読了しておりません。もうね、遅々として進まないのです。重くて長時間継続して読むことができないという物理的な理由に、中身も大して面白くないという精神的障害まで。予想はしておりましたが、やっぱり難産だ。そんなわけで、今日は図書館返却エンド本である蒼井上鷹氏の『ハンプティ・ダンプティは塀の中』レビューでお茶を濁すわけです。

蒼井上鷹氏は『九杯目には早すぎる』でデビュー。その後も『出られない五人』や『二枚舌は極楽へ行く』(この作品は現在積読中)そして本書など、量産型とも云えるハイペースで作品を届けてくれております。その作風は…読者を選ぶ痛快コメディ・ミステリでしょうか?

蒼井氏の仕掛ける痛快さ愉快さが、私にはうまく掴めませんのが実際のところ。テンポを重視した登場人物たちの会話などが“ウリ”として紹介されているのですが、テンポを重視するあまり「誰が喋ってるのかよくわからない」状態に私を追い込んでくれます。本作『ハンプティ・ダンプティは塀の中』は塀の内側で繰り広げられるドタバタ(?)劇に伏線を散りばめて、ラストで謎に解答を与えるというタイプの連作短編集なのですが、どうもその伏線が充分に活かされてないような気がするんですね。

うまい伏線の張り方というのは、そこに伏線があったことすら読者に気付かせないものです。伊坂幸太郎氏や貫井徳郎氏はそのあたりが巧くって、いつも私たちを清々しい読了に導いてくれる。「騙された!」と地団駄を踏んで、あんなに嬉しいことは無いです。でも、蒼井氏の作品にはその“清々しさ”が欠けているような…読了後に「で?」って思っちゃうんですよね。

それはコメディの要素が強いからなのか、単に私と波長が合わないだけなのか。この思いは『九杯目には早すぎる』を読んだときから感じていたことなので、それでもついつい手を伸ばしてしまうことからも、「いつか化けるかもしれない」とどこかで感じてることは明瞭なのですが。未だに評価に困っている作家さんではあります。

現在積読中の『二枚舌は極楽へ行く』で、そのあたりのもやもやに解決が付けば良いなと個人的に期待しております。って、その前に『暗黒館の殺人』を読め、自分。

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