« 『独白するユニバーサル横メルカトル』 平山夢明 | トップページ | 『レインツリーの国』 有川浩 »

2007/01/28

『使命と魂のリミット』 東野圭吾

使命と魂のリミット Book 使命と魂のリミット

著者:東野 圭吾
販売元:新潮社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

最愛の父を失ったあの日。

あの日から拭い去れないでいる恩師と母への疑惑。

その疑いは今日のオペで晴れるのか?それとも深まるのか?

最愛の加賀刑事モノ『赤い指』を飛び越えて、東野圭吾氏最新刊『使命と魂のリミット』レビューです。『赤い指』の図書館予約件数は900件…完全に出遅れました。発売から半年以上経過しているのに、件数が増えることはあっても減ることはない。私が加賀刑事に再会できるのはいつの日か…。

というわけで、最新作です。『チーム・バチスタの栄光』(まだ読めていない!)以降、医療モノへの関心が随分高まってきたように思う最近の出版界。そこに巨匠の域に達した東野圭吾氏が殴り込みです。東野ブランドには絶大なる信頼を寄せている私。本作も…

無難にまとめてきました!

って、これは褒め言葉でもあり、褒め言葉ではない。根底に流れる安心感はさすが東野氏…といったところですが、その安心感がどうも医療現場(ないしは手術室)の臨場感を消してしまっているように感じたのは私だけでしょうか?

本作は、自分の父を殺したのではないか?という疑いを恩師に抱く研修医・夕紀と、恋人を殺された恨みを抱える男・譲治の思惑が、手術室でぶつかるお話。(ここから数行、ネタバレします)その日、手術室で恩師への疑惑を完全に晴らす夕紀と、個人的な復讐のために見ず知らずの人間を巻き込むことができなかった譲治。描かれるすべてが予定調和的で、スリリングやサスペンスといった要素をうまく感じ取れなかったのが残念。

譲治の方は良いんです。人は前に、未来に向かって歩み続けることしかできないのだから。でも、夕紀の方はどうでしょう?この結末が大団円なのはよくわかっているつもりです。でもね、ミステリ好きとしてはもう少し捻りを加えて欲しかった!!あそこまで疑わせて疑わせて疑わせて、でもやっぱり勘違いでした!じゃ、物足りない!違う結末を読ませることも容易だっただけに、そこに着地しなかった(させなかった)歯痒さを感じてしまう。

大団円に落ち着かせなくてはならないことが巨匠の使命ならば、東野氏にはそんなものにはなって欲しくなかった。『秘密』や『容疑者Xの献身』で魅せた“やりきれないながらも救われた感”を、この作品でも描いて欲しかった…というのが個人的な感想。

東野氏の作品を読んで「無難」と思ってしまうことはままありますが、無難を越える作品こそが心に残るのだと改めて思います。ハイペースで新刊を私たちに届けてくれる東野氏に、これからも期待を込めて。

|

« 『独白するユニバーサル横メルカトル』 平山夢明 | トップページ | 『レインツリーの国』 有川浩 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/38084/5108118

この記事へのトラックバック一覧です: 『使命と魂のリミット』 東野圭吾:

» 『使命と魂のリミット』 [眠り猫の憂鬱]
 著者:東野圭吾  出版社:新潮社  初版:2006年  作品発表年:2004年〜2005年 「週刊新潮」にて掲載 心臓外科医を目指す夕紀は、誰にも言えないある目的を胸に 秘めていた。その目的を果たすべき日に、手術室を前代未聞の 危機が襲う。あの日、手術室で何があったのか? 今日、何が起き るのか? ... [続きを読む]

受信: 2007/01/28 12:32

» 【使命と魂のリミット】 東野 圭吾 著 [じゅずじの旦那]
最初の「疑問」が、「疑惑」になり、そして条件が重なっていくことにより、「確信」になる… そのとき、氷室夕紀は、、、 《心臓外科医を目指す夕紀は、誰にも言えないある目的を胸に秘めていた。その目的を果たすべき日に、手術室を前代未聞の危機が襲う。心の限界に挑む医学サスペンス。》 「医学サスペンス」、「氷室」、「姫」… といえば、田口&白鳥コンビ!? と、思わせるような出だしには、もちろん「笑い」はない。 だって、海堂さんじゃなく、東野さんだから! 過去の真相を探る女、復讐を考えて... [続きを読む]

受信: 2007/02/04 14:48

» 使命と魂のリミット 東野圭吾 [粋な提案]
装幀は新潮社装幀室。 週刊新潮2004年12月30日・2005年1月6日合併号から2005年11月24日号連載。 「人間というのは、その人にしか果たせない使命というものがある…」氷室健介の娘への言葉。 主人公の氷室夕... [続きを読む]

受信: 2007/02/22 02:10

» 使命と魂のリミット [Akira's VOICE]
東野圭吾 著 [続きを読む]

受信: 2007/02/25 15:00

» 使命と魂のリミット [本を読もう]
病院が舞台になっているけれど、ミステリーとして捉えるより、 人の胸の内を描いたヒューマンものと思った方がいいと思う。 ある大手術を軸に、胸の内に拭えない疑惑や悔しさがある研修医夕紀と穣治が、 ラストに向けて心を揺らしていく。 人を恨んだままとか、疑ったままでいるのは、相手を許すより楽だけど、 胸にわだかまる苦しさは消えることが無い。 ... [続きを読む]

受信: 2007/03/23 10:21

« 『独白するユニバーサル横メルカトル』 平山夢明 | トップページ | 『レインツリーの国』 有川浩 »