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2007/01/15

『モロッコ水晶の謎』 有栖川有栖

モロッコ水晶の謎 Book モロッコ水晶の謎

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
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助教授の誘拐に始まり、連続殺人鬼の暗躍、殺人を予測できなかった占い師まで。

心躍る主題を料理するのは、有栖川有栖。

さぁ、国名シリーズ第8弾を召し上がれ。

本作『モロッコ水晶の謎』で“有栖川 国名シリーズ一気読みレビュー”企画も終焉でございます。読了のスピードにレビューが追いつかず、リアルな感想をお届けできなかったのが残念でございます。でも、やっぱり企画モノは好きです。楽しいです。またやりたい。次こそは「お館様!」こと綾辻氏の館シリーズですね。

いつ開催されるかわからない次の企画モノはさておき、『モロッコ水晶の謎』レビューです。本作は中編クラスの作品が3品と掌編が1品。それでは、どうぞ!

「助教授の身代金」

すわっ、火村誘拐!?

とタイトルだけで愕然とされた貴方、お仲間です。火村が誘拐に遭い、電話口で火村が遺した謎の暗号にアリスが挑む…というストーリーが一瞬にして出来上がった私ですが、もちろん火村がそんなドジを踏むわけが無く。誘拐されたのはテレビドラマの当り役から“助教授”とあだ名された元・有名俳優です。

誘拐を扱った作品は、本格ではなく社会派ミステリに多いので、あまり読んだことの無いジャンル。東野圭吾氏の『ゲームの名は誘拐』か貫井徳郎氏の『悪党たちは千里を走る』くらいしか思い浮かばないのですが、これらだって純粋な誘拐モノじゃなかったし。虚構の中でも成功し得ない、リスクの大きすぎる犯罪なのでしょうね。

本作で最も印象強いのが火村の次の言葉。引用しましょうか。

「一時間前に自分が話したことぐらいはっきり覚えている。あんた、他人がしゃべることばかりに興味を持つから、自分が何をしゃべったか忘れてしまうんだ」

すごい言葉ですね。犯人特定に至った火村の閃きは、かなり美しい。でも、一時間前に自分が話したことをはっきり覚えているだなんて、かなり特殊だと思います。私はこのレビューを書く間にも、上から下まで何往復してるかわからないというのに。

「ABCキラー」

アガサ・クリスティ『ABC殺人事件』へのオマージュ作品として生まれた本作。クリスティの『ABC殺人事件』を読んだのはもう数年前。「なんか納得いかねー」というあまり良くない印象だけが残されております。でも、クリスティのベスト3にこの作品を押す向きもありますよね。私的には『そして誰も』『アクロイド』『(不本意ながら)オリエント』という為るべきベスト3なのですが。

って、クリスティ談義はともかく、この「ABCキラー」も途中で謎解きの筋が入れ替わるという「なんか納得いかねー」な作品。判り易くできているのですが、やっぱり最初から最後まで一本道であって欲しいと思うのが本格ミステリファンとしての願い。でも、本家へのオマージュ感はたっぷりでしたので、嬉しい。

でも、実際にこんな事件が起こったら、どれだけの恐怖が社会を襲うのでしょうか?私も名字と市町村の頭文字が一致しちゃっているので、自分の番が来るまで恐恐として過ごすことでしょう。でも、Aから始まるアリスの「あがっちゃった感」はよくわかる。私もきっと、自分の番がくるまでは、興味津々でワイドショーに齧りつくのでしょう。

「推理合戦」

この掌編は好き。朝井女史がラストで電話を取り落とすシーンなんて最高。アリス、一矢報いる。

自分の子どもとも云える作品の登場人物に、どんな名前を付けるか。有栖川氏は自分の子どもに自らの名前を与えましたが、読者が嫌な思いをすることが無いようにと、犯人や被害者には実在しそうに無い名前を付けることにしている…と語った作家は誰だったでしょうか?思い出せない。私も母親を殺されたことがございますが(作品名は忘れました)なんとなくむずむずした思いを抱きましたね。

「モロッコ水晶の謎」

オーラスレビュー。でも、なんとなく好きじゃない本作。犯人の信念には感服いたしますが、そんな風に美しくないトリックは嫌です。

ある人物の協力を得て、犯人を嵌める火村。犯人を破滅させ、自白させるの好きね。極悪。しかし、犯人のように占いに全幅の信頼を置くことってできるでしょうか?私も占いは好き(星占いや血液型占いなどの大雑把なものは全く信じておりませんが。だって、恋愛運なんて同じグループに属してないと成立しないじゃないですか)なのですが、あくまでも指針や方向性を示す程度のものであって、そこから運命をどう切り開くかは自分次第ではないでしょうか。その一般論を逆手にとったのが、本作の面白いところなのですが、無茶苦茶やな…という第一印象は否めません。

ただ、あとがきで有栖川氏の語る「ありそうで、ない。なさそうで、ある。」そんな味わいは充分に感じられました。

というわけで、本作を持ちまして“有栖川 国名シリーズ一気読みレビュー”は終了!国名シリーズが発売されましたら、随時追加してゆきたいと思います。それは一体いつの日か…。次の国名シリーズの題名当てなんて、なかなか楽しそうなので、ちょっと思案した後追記しておこうと思います!!

それでは皆様、アデュー☆

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