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2007/01/09

『ペルシャ猫の謎』 有栖川有栖

ペルシャ猫の謎 Book ペルシャ猫の謎

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
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正統なる国名シリーズにして、番外編色強き第5弾。

「買いなさい。損はさせないから」

私は既刊の国名シリーズの中で、この『ペルシャ猫の謎』が一番のお気に入り。しかも…むにゃむにゃむにゃ。この先は各作品レビューで!

「切り裂きジャックを待ちながら」

なんかもぅ、このタイトルだけでご飯三杯イケます!みたいな秀逸さ。タイトルだけで傑作!みたいな雰囲気漂う本作は、内容もイケてます。

本作は有栖川氏と法月綸太郎氏、綾辻行人氏が競演し、それぞれの原案をミステリドラマ化するという夢のような企画のために描かれた作品。このドラマ、リアルタイムで見た記憶があるのですが、綾辻氏の「意外すぎる犯人」の印象が強過ぎて、他の2作品をまったく覚えておりません。綾辻氏の「意外すぎる犯人」はいろんなところでリメイク(?)され、違う役者が登場するものを3回くらい見たような気がします。最初はテレビ局でしたよね?あとは無人島と…とにかく、物語が始まった瞬間に「これかぁ~」という感じ。

って、すっかり「意外すぎる犯人」話に!そうそう「切り裂きジャックを待ちながら」のレビューでした。この作品は死体の登場から火村の登場までの描写に鳥肌が立ちます。有栖川氏の作品の中で、シーン毎にランキングをつけるならばベストかも。そのくらい気に入っております。

そして、火村は犯人を追い詰めるシーンも圧巻!「Mary!」と犯人が叫んだシーンでも鳥肌立ちます。まさに舞台や映像化向け。

「わらう月」

本作も『英国庭園の謎』に収録されていた「完璧な遺書」と同じく、犯人(今回は共犯者か)サイドより事件を捉えた作品。しっかし、容疑者と対面する際の火村は極悪人ですねぇ。まぁ、犯罪者の肩を持つこともないのですが。ちょっと可哀想になります。

しかし、本作で共犯者を追い詰める(嵌める?)火村のキザ台詞には参りました。い、云われてぇ!ちゃんと(ちゃんとか?)女性を褒めることもできるんじゃないですか。なぜ彼女(妻)ができない。やっぱりアリスが…。

そうそう、この「わらう月」の中に、学生アリス・作家アリスの関係性を解き明かす重要なヒントが!作家アリスの作品には『月光なんとか』という作品が多いそうな…『月光ゲーム』ですね!でも、『月光』と名の付く作品は『ゲーム』しかないので、これからどしどし発表されるのでしょうか?『海奈良』の中でも、作家アリスの作品タイトルがひとつ明かされてましたよね?『セイレーンなんとか』だったように記憶しているのですが、それはいつ出るのでしょうか?(←きっと出ないと思ふ)

余談ですが、私は小さいころから月が大好きで、夜道、どこまでも付いてくる月が頼もしかったものです。

「暗号を撒く男」

朝井小夜子女史登場!私は朝井女史が登場し、ちょっとしたミステリバトルの起こる作品が大好き。確か『モロッコ水晶の謎』にも掌編が収録されておりましたよね。『モロッコ』の中では、あの掌編が一番好みだった気がする…なんちゅー作家泣かせな。

本作の中では朝井女史の「人殺し関係です」発言がとにかく好き。自分の職業を問われて、こんな素敵な切り替えしをしてみたいものです。

って、こんなに朝井女史の話ばかりをするのは、ミステリとして語るところが少ないからです。

「赤い帽子」

『ペルシャ猫の謎』最大の番外編(なにせ、火村もアリスも登場しない!)にして、私が本短編集の中で最も気に入っている作品(←おいっ!)それが「赤い帽子」。

本作は“はりきりアルマーニ坊や”が主人公。しかも、発表媒体が大阪府警…社内雑誌(笑)で有栖川氏の作品が読めるんですか!(そういえば、東野圭吾氏の昔働いていた会社の社内広報誌に連載していたことがあったみたいですね。うちの会社からもミステリ作家が誕生してくれないかしら)とにかく羨ましい。

というわけで、「赤い帽子」はアルマーニ坊やの活躍がふんだんに描かれております。作家アリスシリーズに登場する警察関係者の中では、アルマーニ坊やが一番好きですね。野上刑事部長の、あのつっけんどんな感じも捨てがたいけれども。鮫やんも好きです。そんな鮫やんがアルマーニ坊やをスカウトしてくれた…なんて件にしあわせなものを感じました。

そして、森下が犯人にどんどん肉薄していく様に、こちらまで興奮。「こいつが犯人だ!」と雷に打たれる瞬間に、私も出逢ってみたい…って、その前に本物の殺人事件と出逢わないと…それは嫌だな。

「悲劇的」

この「悲劇的」は完全なる番外編、ショートショートです。ある学生が火村に提出したレポート。そのレポートの最後に火村が付け加えた18文字。火村の最初にして最後の執筆作品です。

火村の無神論者ぶりは、数々の作品で描かれておりますが、この作品もそんな火村の一面を知ることのできる一作。火村くらい徹底していると気持ちよいものがありますね。苦しいときの神頼み…いるかいないかわからない神に祈る時間があるならば、苦しみから脱却する努力に努める。それが合理的なことは良くわかっていても、そこまで思い切れないのが人間ですよね?

「ペルシャ猫の謎」

表題作にして問題作。あとがきで有栖川氏自身も語っておりますが、この結末を読まされた読者は、一体どうしたら良いものか。これを表題作にしちゃうっていうんだから、有栖川氏も図太くなったものです(あくまでも本人談です)

というわけで、ミステリとして成立していない本作。でも、私の愛するシャーロック・ホームズの決め台詞「あり得なかった仮説を消し去っていって、最後に残ったものは、どれだけありそうになくても真実だ」がうまいこと(弁解として?)用意されております。でも、この決め台詞は“偶然という奇跡”が作用したときに、効果を発するものだと個人的に思っているので、心霊現象までカバーしてくれないと思うのですが(でも、コナン・ドイルも心霊現象好き?だったからなぁ)

「猫と雨と助教授と」

ボーナストラックとして収録されている本作。語るべきポイントは唯一つ。

「婆ちゃん。猫、もう一匹増えてもいいかな」

もう、これだけ。猫を猫可愛がりする火村も見物です。犯罪を憎む助教授も、猫の前では形無しです。もしも、猫が犯罪を起こしたら(三毛猫ホームズクラスの天才猫)火村は果たして犯猫を裁くことができるのか?(笑)

やっぱり『ペルシャ猫の謎』が私の中で国名シリーズのベスト。国名シリーズは未読でこれから読もう!という方は、もちろん『ロシア紅茶』から読むのがベストだと思いますが、とりあえず一冊…と仰るならば、是非『ペルシャ猫』を手に取ってくださいませ。

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