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2007/01/31

『QED 百人一首の呪』 高田崇史

QED―百人一首の呪 Book QED―百人一首の呪

著者:高田 崇史
販売元:講談社
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百人一首コレクターが殺害された-一枚の札を握りしめた状態で。

解き明かすは奇人変人・桑原タタル。

百人一首に隠された壮大な謎が、殺人事件をも解き明かす!

2月の河童伝説発売を前にして、そろそろQEDのおさらいをしておかないと…と手に取りました、QEDシリーズ第一弾『QED 百人一首の呪』でございます。今日から数日、当ブロ愚ではQED祭を開催。私がこっそり拝見しておりますQED(タタ奈々)サイト様では、河童伝説発売に向けて不穏な動きもあるようですが…同意せざるを得ない動きです。

さて、QEDシリーズの最大の特徴と云えば“歴史薀蓄とミステリの融合”でございます。最近のQEDシリーズは融合どころかまるまる薀蓄本と化しておりますが…頼むよ、河童伝説!それはさておき、ミステリとして本シリーズをお手に取った(メフィスト賞受賞作という事前知識しかお持ちで無かった)方は、約半分を占めるある意味どうでも良い歴史薀蓄に閉口されたのではないでしょうか?

歴史大好き!を自認する私(大学も歴史専攻でした)ですが、QEDの薀蓄世界にはついてゆけません。百人一首?そんなもの、ひとっつも諳んじることはできません。そんな似非歴史好きでも、充分について行けるように(嘘つき!タタルさんと奈々ちゃんが百人一首並べに奔走するシーンなんて、殆どスルーだったくせに!)本作は親切設計されております。でも、本当に最近のQEDシリーズに比べれば、本作『百人一首の呪』は懇切丁寧に指導してくださってるのよ、タタルさん。奈々ちゃんが可愛く小首を傾げれば、タタルさんはその偏った薀蓄を惜しげもなく披露してくれます。奈々ちゃんは読者のバロメータですので(最近は奈々ちゃんすらも読者を置いてけ掘ですが…)奈々ちゃんと一緒に学習する気分で本作に取り組んでいただけたら。

というわけで、百人一首に藤原定家が秘めた壮大な謎。率直な感想を申しますと…

よくやるよ!!

定家もタタル&奈々コンビもです。ただ、平安という時代が私たちが想像するような華やかで優雅な時代ではなかったという事実からは目を逸らせません。この前提の下、定家の仕事を眺めれば…それは職人の仕事。歌を生涯の生業とし、歌を以ってして生きた・生きてゆくしか無かった定家を思えば、このくらいの情熱ものともせず、と云ったところでしょうか。このQEDで提示される解答は、あくまでも高田崇史氏オリジナルのものですので、これが正解というわけではない。もしかすると、タタルさんでも気付くことのできなかったさらに深い解釈ができるかもしれない。定家、深い。

さて、ミステリ部分。本作の中でミステリが占める割合は役3割といったところ(これでも多い!)なのですが、よくできてると思います。登場人物の中で、ちょっとした思い違いをしている人間がいるのですが、そのボタンの掛け違いをタタルさんが直してあげるだけで、巧い具合に謎は解けます。ただね、そのくらい岩築さん警視庁一同は10ヶ月もかけずに裏とってくれよ…とは思う。

それでは最後に狐憑きとなったタタルさんが、奈々ちゃんにはたらいたセクハラを訴えて終了と致しましょうか。

手を握る
そして、並んでベッドに腰かける

一行目と二行目には時間的隔たりがあるのですが、こう並んで書き出すとセクハラ風味倍増ですね。このセクハラがシリーズが進むにあたってどう進化してゆくのか…それも見物です。しかし、このふたりはこの程度の進捗しかしていかないっていうんだからもどかしい。

そうそう、「3年ぶりですね」と声をかけた奈々ちゃんに対し、「2年6ヶ月ぶりだ」と訂正したタタルさんですが、貴方は西之園萌絵かなんかですか?って、それだけ奈々ちゃんに逢うのを待ち望んでいたのだと好意的に解釈させていただきますね。

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2007/01/30

『スロウハイツの神様』 辻村深月

スロウハイツの神様(上) Book スロウハイツの神様(上)

著者:辻村 深月
販売元:講談社
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憧れの神様と過ごすひとつ屋根の下。

まるで“ときわ荘”のようなスロウハイツに訪れる波乱の日々。

辻村深月の描く青春群像。

漸くレビューが叶いました辻村深月新作『スロウハイツの神様』。前作『ぼくのメジャースプーン』を大絶賛した私ですが…

本作、失速?

辻村作品の魅力は、細部まで描かれ活き活きと動く登場人物たちと、ラストに仕掛けられたどんでん返し。でも、本作『スロウハイツの神様』はそのどちらもがおざなり。

スロウハイツに住む未来のクリエイターたちは8人。いつもの辻村作品であれば、これでもか!これでもか!とまでに繰り返される過去のトラウマが本作には登場しません。過去が詳細に描かれるのは家主でありスロウハイツのNO2でもある環と、スロウハイツの神様・チヨダコーキのみ。他のメンバは…書かれて無いと断言することはできないまでも、2本柱との関係を描くことが重視され、なおざり感あり。

まぁ、タイトルからして神様・コーキを押し出した直球勝負だから、ちょっと違和感を感じました~くらいで我慢できるんですけれど…

今回のストーリー展開はぬるい!

上巻を読み終えた時点で下巻の展開の95%が読めたと云っても過言ではありません。

チヨダコーキの偽者・鼓動チカラとは何者なのか?チヨダコーキを越える評価を受ける幹永舞は誰なのか?そしてコーキの天使ちゃんは?このあたりの謎が上巻を読み終えた時点で見渡せてしまう。それがとにかくとにかく残念で。

いつもの辻村作品なら「そんな記述どこにあったよ?」と読者を唸らせる巧妙さで伏線を隠してくるのですが、今回はあからさま過ぎる。奇人・チヨダコーキがぶつ切りで語る、嘘か真かエピソードがラストで巧いこと回収される様は綺麗でしたが…ねぇ?

本作はこれまでの辻村作品と比べてキレに難アリ。ただ、辻村氏の狙ったところはそこじゃないのだとも思う。スロウハイツの名の通り、神様を取り巻くスロウな生活を、神様の新しい家族を、神様の復活を描きたかったのだと思う。

そうそう、理帆子(by『凍りのくじら』)の登場は嬉しかったですね!スコシ-なんとかをsuper-なんとかに持ち替えた理帆子。伊坂幸太郎作品にも見られるこういうリンクは、ひとつひとつの作品をひとりひとりの登場人物を大切にしている感が存分に伝わってきて、本当に嬉しい。芹沢光これからの活躍を祈って。

蛇足ですが、チヨダコーキに西尾維新を被せて読んだのって、私だけでしょうか?

スロウハイツの神様(下) Book スロウハイツの神様(下)

著者:辻村 深月
販売元:講談社
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2007/01/29

『レインツリーの国』 有川浩

レインツリーの国 Book レインツリーの国

著者:有川 浩
販売元:新潮社
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あなたに惹かれる心を止めることができない。

でも、あなたに逢うことはできないのです。

だって、あなたに切られることが怖いから。

『図書館内乱』に於いて重要な役割を果たした『レインツリーの国』。鞠江ちゃんが自分を投影して読んだというラヴストーリーを読まないわけにはいかない!と早速入手した次第です。

『図書館内乱』では健常者(小牧教官)が聴覚障害をもつ少女(鞠江ちゃん)にレファレンスする作品として相応しくないとメディア良化委員会からいちゃもんをつけられたこの作品。実物の『レインツリーの国』を読んで、いかにメディア良化委員会が作品そのものの良さを理解せずに、うわべだけで検閲を謀っているかが浮き彫りに。

基本的に恋愛小説は読まない私ですが、この作品は純粋に好き。しあわせな現在と、不安を感じながらも立ち向かおうとする未来に、清々しい余韻を感じました。終わらないものなんて無いのに、それを敢えて隠し、恋は盲目とばかりに突き進む恋愛小説もある中、終わる未来もしっかりと見据えたこの作品の真摯な姿勢が好き。

メールで愛を育むふたり。ブログやメールは送信ボタンを押す前に、文章を推敲することができる…それって本当の自分?逢ったときのクイックレスポンスにこそ、その人のリアルが見える。逢って尚、メールで感じていたその人とは違う一面が見えて尚、逢いたいと感じる気持ち。苛々しても声を荒げることになってしまっても、切れて欲しくないと感じる想い。そんな矛盾する想いをしっかりと受け止めたふたりには、死がふたりを分かつまで終わらない未来があることを祈って。

鞠江ちゃんがこの作品を純粋に楽しんで、小牧教官が図々しくも登場人物と自分とを重ねて。ひとみと伸が一歩ずつ歩み寄ってゆくように、鞠江ちゃんと小牧教官にもまっすぐな道が見えますように。

薄さ(いろんな意味での)に若干の難ありですが、『図書館内乱』とのコラボ作品としては合格点だと思いたい。有川氏の過去作品にも手を出したい、出さなくては!

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2007/01/28

『使命と魂のリミット』 東野圭吾

使命と魂のリミット Book 使命と魂のリミット

著者:東野 圭吾
販売元:新潮社
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最愛の父を失ったあの日。

あの日から拭い去れないでいる恩師と母への疑惑。

その疑いは今日のオペで晴れるのか?それとも深まるのか?

最愛の加賀刑事モノ『赤い指』を飛び越えて、東野圭吾氏最新刊『使命と魂のリミット』レビューです。『赤い指』の図書館予約件数は900件…完全に出遅れました。発売から半年以上経過しているのに、件数が増えることはあっても減ることはない。私が加賀刑事に再会できるのはいつの日か…。

というわけで、最新作です。『チーム・バチスタの栄光』(まだ読めていない!)以降、医療モノへの関心が随分高まってきたように思う最近の出版界。そこに巨匠の域に達した東野圭吾氏が殴り込みです。東野ブランドには絶大なる信頼を寄せている私。本作も…

無難にまとめてきました!

って、これは褒め言葉でもあり、褒め言葉ではない。根底に流れる安心感はさすが東野氏…といったところですが、その安心感がどうも医療現場(ないしは手術室)の臨場感を消してしまっているように感じたのは私だけでしょうか?

本作は、自分の父を殺したのではないか?という疑いを恩師に抱く研修医・夕紀と、恋人を殺された恨みを抱える男・譲治の思惑が、手術室でぶつかるお話。(ここから数行、ネタバレします)その日、手術室で恩師への疑惑を完全に晴らす夕紀と、個人的な復讐のために見ず知らずの人間を巻き込むことができなかった譲治。描かれるすべてが予定調和的で、スリリングやサスペンスといった要素をうまく感じ取れなかったのが残念。

譲治の方は良いんです。人は前に、未来に向かって歩み続けることしかできないのだから。でも、夕紀の方はどうでしょう?この結末が大団円なのはよくわかっているつもりです。でもね、ミステリ好きとしてはもう少し捻りを加えて欲しかった!!あそこまで疑わせて疑わせて疑わせて、でもやっぱり勘違いでした!じゃ、物足りない!違う結末を読ませることも容易だっただけに、そこに着地しなかった(させなかった)歯痒さを感じてしまう。

大団円に落ち着かせなくてはならないことが巨匠の使命ならば、東野氏にはそんなものにはなって欲しくなかった。『秘密』や『容疑者Xの献身』で魅せた“やりきれないながらも救われた感”を、この作品でも描いて欲しかった…というのが個人的な感想。

東野氏の作品を読んで「無難」と思ってしまうことはままありますが、無難を越える作品こそが心に残るのだと改めて思います。ハイペースで新刊を私たちに届けてくれる東野氏に、これからも期待を込めて。

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2007/01/27

『独白するユニバーサル横メルカトル』 平山夢明

独白するユニバーサル横メルカトル Book 独白するユニバーサル横メルカトル

著者:平山 夢明
販売元:光文社
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日本推理作家協会賞とこのミス二冠を達成した2006年最大の問題作。

大量放出される脳内麻薬様物質が魅せる悪夢とは?

全然ダメか、諸手を挙げてカモン!のどちらかの評価になると思われていた『独白するユニバーサル横メルカトル』。まさか両方の評価が混在することになろうとは…。

前半は「あぁ、やっぱりダメだったか…」的作品が続きます。その評価が一転したのが「オペラントの肖像」。「オペラント~」も最初はよーわからん用語の連続で、“置き去りにされた感”満載だったのですが、ラストのどんでん返し(結局それかい、自分)で「おっ、読ませてくれるじゃん!」と。ああいう展開は諸手を挙げてカモン!ですね。

その次の「卵男」もまた良かった。こういうのも好き好き!カモンカモン!です。この2作で『横メルカトル』自体の評価をかなり押し上げておりますね。ラスト数行でこれまで読んできた世界観の再構築を無理矢理迫られる形の作品が好き。他の作品も、もっと深く読むことでこの感覚を味わうことができるようになるのかもしれませんが。時々現れるグロイ表現が深い読書の邪魔をします。

絵空事の世界だからこそ、キレイなものばかりを読んでいたい…というのが私の正直な気持ち。「怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男」なんかは、正直読むのを止めたくなりましたし。あと数ページだから良いかな?って。この「怪物のような~」もラストでキレイにまとめてくれたので、まだ救われましたけれども。

そして表題作「独白するユニバーサル横メルカトル」。ユニバーサル横メルカトルが地図投影法の一種であることは事前知識として持っておりましたが、まさか本当に独白をかますとは想定外でございました。こういう手法も好き。ただ、作品として一番完成されているだろうこの一編が、無難すぎると思ってしまう(思わせてしまう)あたりは、どうなのかな?と。短編集のド頭にこの一編が収録されていたならば、もっと取っつきやすいのではないかと。

そうそう、「すまじき熱帯」の似非日本語のユーモアにはすっかりやられてしまったことを、ここに記しておかなくては。

というわけで、3勝5敗で負け戦の方が多かった『独白するユニバーサル横メルカトル』。この作品がこのミスの1位を飾ることの方がミステリだ…とまでは云わないにしても、読者を選ぶ作品であることは確か。少なくとも私は選ばれなかった。帯に書評を寄せている綾辻氏や京極氏にリスペクトしております私としては、共にこの作品の良さを味わえなかったことが残念でなりませんが。

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2007/01/26

『終末のフール』 伊坂幸太郎

終末のフール Book 終末のフール

著者:伊坂 幸太郎
販売元:集英社
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8年後、小惑星が地球に衝突し、人類は滅亡する。

そんなタイムリミットを宣言されたとき、貴方はどうする?

最期のとき、貴方の隣に居るのは誰ですか?

いまさら?とまではいかないまでも、入手までに予想以上の時間を費やした『終末のフール』。単に図書館予約を忘れていた(というか、予約したと思い込んでいた)だけなんですけれども。

さてさて、ようやく伊坂氏の出版ペースに追いつくことができました。伊坂作品(現在のところ)コンプです(でも、ブロ愚開始前に読了した作品もあるので、レビューはコンプできてないです)。既に直木賞常連の伊坂氏。第ニの東野圭吾化しておりますが、次の次くらいには受賞できるのではないでしょうか?文芸春秋から出版すれば良いのに…。

って、上記は伊坂氏のレビューを書く際の枕詞だと思っていただければ幸いです。肝心の内容はここから。

本作は小惑星が地球に衝突することが発表され、破綻してしまった社会が描かれております。タイムリミットまでの時間を思い思いに過ごす人たちのお話。伊坂氏特有のあっさり感と虚無感が存分に味わえます。

8つの“終末の過ごし方”が描かれておりますが、一番グッときたのは「太陽のシール」。えっ?意外性の欠片も無いって?そうさっ!私はこのベタベタな展開が大好きなんだよ!!歩く優柔不断の富士夫君が為した一世一代の決断。自分ならどうするか…なんて、考えるのは不可能です。だって、想像力には限界がある。どうしてもどうしても楽観視してしまう自分が居る。落ちるわけが無いと思っている自分が居る。だから、そんな想像に価値は無い。でも、富士夫君のように勇気ある決断ができる人間であれば良いなと思った一作。

同じくベタベタな展開で私を喜ばせてくれたのが「演劇のオール」。似非家族が寄り合って、真の家族が出来上がれば素敵。終末だからって、失うものばかりではない。得るものもきっとある。ただ、得るために普段より多くのエネルギーが必要なだけで。倫理子のエネルギーが結びつけた、その結びつきを終末まで育んで欲しいと切に思った一作でした。

ただ、印象に残ったのはこの2作(「深海のポール」で描かれていたお父さんにも泣けたけれども)だけで、あとはパンチが弱かったかも。やっぱり底抜けに明るくて救えない作品を伊坂氏には期待。

終末までに伊坂氏が直木賞を受賞できますように。

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2007/01/24

『キス』 西澤保彦

キス Book キス

著者:西澤 保彦
販売元:徳間書店
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えっ?これが西澤作品?

西澤保彦が描くエロスとSFの融合体。

西澤作品だというだけで手に取った本作。西澤氏、こんな作品も執筆されていたんですね…知りませんでした。本作は森奈津子シリーズと銘打たれた作品集第3弾。

西澤氏の破天荒ぶりはチョーモンインシリーズを読んで、ある程度理解していたつもりだったのですが、矢張り“つもり”だったようです。こんな作品群まであったなんて…。ちなみに、本作『キス』を☆で評価するならば☆1.5です(もちろん☆5満点)

エロスがどうとかじゃないんです。SFがどうとかじゃないんです。読了後、「だから?」と思ってしまった本作は痛い!!4つの短(中)編が収録されているのですが、「うらがえし」だけはまぁまぁでした。「うらがえし」だけで☆1つ。あとの3作で☆0.5ですね。「勃って逝け、乙女のもとへ」なんかは、ちょっとしたミステリテイスト(「キス」もか?)になっているのですが、やっぱり「だから?」と思ってしまった。うーん、なにが原因だ?

本作は実在の森奈津子氏へのオマージュ的要素が多大に含まれているのですが、その森奈津子氏に全く興味が無い(むしろ知らなかった)のが最大の原因でしょうか?内輪ネタ、あるいは楽屋落ち的な内容に感じてしまうからでしょうか?

まぁ、どの作品読んでもサイコー!なんて作家に出逢えるのはごくごく稀だということは、重々理解しているつもりですので、本作だけで西澤作品を見切ったりはしませんが、既刊の森奈津子シリーズには手をつけることは無いでしょう…。西澤氏はやっぱりチョーモンインシリーズ。保科さんと能解警部、そして嗣子ちゃんの関係が明かされるまで追い続けますよ!!

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2007/01/22

『図書館内乱』 有川浩

図書館内乱 Book 図書館内乱

著者:有川 浩
販売元:メディアワークス
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図書隊員・笠原郁の敵はメディア良化委員会だけとは限らない!

ついに最大最強の敵、襲撃の時が!?

山猿、ついに田舎に帰る?

すっかり魅了されております、有川浩氏の図書館シリーズ。プチ旅行の復路で読み終えました『図書館内乱』レビューでございます。

『図書館戦争』では図書隊VSメディア良化委員会の激しいバトルが描かれておりましたが、『図書館内乱』では図書隊ゴレンジャー(玄田を除く若手メンバのことです)の内側を掘り下げた内容となっておりまして、図書館シリーズにすっかり参っております私には、嬉しい内容となっておりました。

まずは小牧二正のピュアラヴストーリー「恋の障害」。正論を振りかざす笑い上戸・小牧二正は『図書館戦争』に於いて、巧く中庸の取れた悪くないが深い印象は残らないキャラ(私は大好きでしたが)だったのですが、この「恋の障害」で見事にやってくれました。

「もう子供に見えないから困ってるよ」

名言だ!私の名言集、持ってきて頂戴!!ちなみに、私はここでも号泣。行きと帰りのバスの中、しめしめと泣く女ってどうよ…。しかし小牧ニ正、あんた男だよ。その潔さ、堂上にも見習わせてやって!手塚、小牧ニ正の爪の垢を煎じて堂上に飲ませてやりなさい!!しかも、互いの気持ちを通わせた後(「兄と弟」)の「迷惑じゃないから困るの」発言にもうっとり。このあたりまでは、小牧にすっかりお鉢をとられた感のある堂上教官。

そして、クールビューティ毒舌家・柴崎の過去を描いた「美女の微笑み」。柴崎を慕う謎の青年・朝比奈の登場が柴崎を揺れ動かします。しかし、優秀過ぎる柴崎。すべての発言は計算づく、自分の発する波紋がどんな影響を周囲に及ぼすかリスクとリターンを照らしての一言。どんな思考回路してるんだ、柴崎。そんな柴崎も、郁の前では形無しなんですがね。からかわれる柴崎を郁が助けたところでも泣いちゃうっていうんだから、すっかり図書館ワールドに傾斜しておりますね、私。

しかし、この「美女の微笑み」のラストが、作品全体のオーラスにしっかり回収されてくるとは思っておりませんでした。う、巧いな。あの時点で柴崎がすべてのカラクリに気付き、自らその歯車になっていようとは。こういう楽しませ方をしてくれるとは想像していなかったので、大人しく感服。

そして「兄と弟」。手塚兄はこれからじゃんじゃんやってくれそうですねぇ。メディア良化委員会なんかより、よっぽど手強そうです。手塚はエリート意識バリバリのただ嫌な奴かと思ってたら、いっきなり郁に告白かまして(しかも思惑見破られて尚恥ずかしい)どんどん面白くなってきてますよね。小牧の思惑通りにすっかり堂上班に馴染んじゃって。本人は不本意やもしれんが(いや、きっと楽しんでるな)。そんな手塚がこれからの(兄との)闘いの中で、どんな風に活躍してくれるのか。

そんな堂上班に最大のピンチが訪れる「図書館の明日はどっちだ」。これがもう最高でした。萌えポイントが詰まりに詰まった章。まずは、審問会に挑む郁。副司令に「エスパーか何かか!」と絶妙ツッコミを入れる郁に爆笑!泣いたり笑ったり、忙しく楽しませてくれる本だわ。そして、審問会後のベタ甘トークに萌え。堂上がお馴染みのなでなでをかまし(笑)その様子がUSBレコーダに記録されているのを知るや否やフリーズ。あの舌戦もじゃれ合ってるようにしか読めんよ。しかし、USBレコーダ作戦も最高でしたね。玄田のセクハラ発言に「条件的に無理があります」と返す堂上班。あんたたち、最高だよ!手塚もすっかり馴染んじゃって、よよよ。

そして、手塚兄に攫われた郁を助け出す堂上。お得意のなでなでが出たときの「お前、なに踵の高い靴履いてんだ」は笑いを堪えるのに必死でした。そんなに気にしてるか、身長を!!郁はもう、ハイヒール履けないやね。さらに、唐突に訪れる衝撃の真実。私の妄想していた明かされ方とは大分異なっていたのですが(既にそこまで妄想していたか…)まさかあの場面で終わるだなんて!!続きが気になって気になって気になって!!

というわけで、2月10日発売の『図書館危機』が兎に角楽しみで仕方がない現在。発売日(北海道在住がこんなに恨めしく思ったことはそうそう無い)に即日購入決定でございます。郁は堂上を前にどんな反応を示すのか。そして『危機』とは?手塚兄がまたもや何かを仕掛けてきそうですが、妄想も程ほどに『危機』を楽しみたいと思います。

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2007/01/21

『図書館戦争』 有川浩

図書館戦争 Book 図書館戦争

著者:有川 浩
販売元:メディアワークス
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「メディア良化法」の施行により、読書の自由が奪われる現代。

すべての不当な検閲に反対するべく、団結する“正義の味方”それは…図書館!

武装化し、まるで軍隊化した図書館隊に現れたおバカで愛らしい女神とは?

ひっさびさに私のど真ん中きました!!!

昨日今日と、ちょっとした旅行に出ておりました私。お供に選んだ一冊は、図書館で借り受け、いまさら?本第2弾として紹介する予定だった、この『図書館戦争』だったのですが、見事にものの見事にハマりました。

往路(バスに揺られること6時間!!)ですっかりハマり、そして読み終えてしまった本作。いざ目的地に到着し、観光スポットに向かう前に私が立ち寄ったのは…本屋さん!もちろん続編の『図書館内乱』を購入するためです(次回レビューはもちろん『図書館内乱』復路で読みきりました。だって、6時間…)。

だって、オープニングもオープニング、37頁の郁(主人公)が王子様に出くわし、助けられる回想シーンでいきなり号泣ですもん。「(万引きの)汚名を着てまで君が守った。そう言われて手渡されたその本がよかった」もうこの文章読んだだけでボロボロ出てくる涙。有川浩氏は初読なのですが、無駄な装飾が削ぎ落とされたシンプルな表現にグサっときました。

って、いきなり自慰的レビューですね。自分を落ち着かせるために、ここらで『図書館戦争』の設定に触れておきましょうか。『図書館戦争』で描かれる現代は、「メディア良化法」により表現の自由が奪われた世界。公序良俗を乱し人権を侵害する表現を取り締まる法律…というのが建前ですが、要するにヤバイものは世に出すな、超法規的検閲で取り締まっちゃうぜ!ってことです。これは、その作品がどんな意味合いを持った作品なのかなんてことは一切介しない。とにかくNGワード(懐かしい!)がその作中に含まれているか否かが焦点という、無茶苦茶な法律です。

そんな、メディア良化委員会(検閲機関の元締)と闘うために立ち上がったのが図書館。彼らは「図書館の自由法」という良化委員会に唯一対抗できる根拠法を持ち、不当な検閲から本を、本を読みたいと願う人々を守るため…武装化します。ここが最高!図書館職員として採用された者たちは、すわっ軍隊か?という研修を受ける。そして、その研修期間のうちにその戦闘能力を見出された精鋭たちは図書特殊部隊(ライブラリー・タスクフォース)という戦闘特化部隊に派遣され、大規模な銃撃戦にも参加するわけです。この特殊部隊に女性隊員として始めて配属されたのが、本作の主人公・笠原郁一士です。

郁は(上記の)王子様に助けられた経験から図書隊への就職(入隊?)を決意。いつか王子様に再会できることを願って、鬼軍曹の不当なしごきにも耐えます。その鬼軍曹…

堂上教官に激萌え!!!!

私の王子様はここに居ましたか(笑)私好みのツボがグイグイ押されます。まずねぇ、報道記者に取り囲まれる郁を助け出し、「いい子だ喋るな」と囁きかける堂上教官。大人の男に「いい子だ」とか云われたら、もうそれだけでノックアウトです。しかも、郁の頭を何度と無く撫でるその優しい手。な、撫でられてぇ。

郁の探し求める王子様は実は堂上教官で、本人以外はみんな気が付いているのに郁だけが知らぬまま…というお約束な展開も良いです。恋焦がれる王子様だとは知らずに、素の堂上教官に郁が惹かれてゆくのがまた良い。っていうか、郁じゃなくても惚れるよ。有川氏は私の好みを良くご存知で(知らんわ!)

そして、個性的なキャラクタ陣が物語をより盛り上げます。郁&堂上教官のクマ殺しコンビはもちろんのこと、森博嗣の犀川&喜多コンビを彷彿とさせる正論信者・小牧教官に、郁のライバル…でも思考回路がぶっ飛んでる(いきなり告白するか?)・手塚、おっかない豪快オヤジ・玄田に、クールビューティ情報員・柴崎。とにかく魅力的。みんな、好きだもん。

そんな6人が織りなすエンタテイメント作品『図書館戦争』。とにかくオススメ。私のど真ん中。復路で読了した『図書館内乱』も素敵作品でした。いや、年明け早々こんな作品に出逢えるなんて、私しあわせだ。

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2007/01/18

『LOVE or LIKE』

LOVE or LIKE Book LOVE or LIKE

著者:石田 衣良,中村 航,本多 孝好,真伏 修三,中田 永一,山本 幸久
販売元:祥伝社
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6人の男性作家が男女の間に生まれる微妙かつ複雑な感情を描く。

アイシテル それとも スキ なだけ?

『I LOVE YOU』に続く恋愛アンソロジー。もちろん本多孝好氏が目当てです。本多氏、昨年はこの『LOVE or LIKE』に短編を寄せたのみ…本多氏にゆっくり書いてよいと許可を出した編集者、出て来い。

そんな冗談はさておいて。しょっぱなの石田衣良氏の作品が、いきなり際どいシーンから始まりまして、これはこういう作品集なのかと疑いましたが、そういうカラーの作品が多かったのも事実。本多氏の作品でも、そういう描写があったのですが、氏の作品ではいつもその辺りがぼやかしてあるので、新鮮と云うか戸惑いというか。

本多作品をレビューするならば、初恋の君が登場して…なんていうお安い展開にならなかったのは評価。でも、このお題で長編が読みたいかもしれない。彼女にどんな紆余曲折があって、どんな想いを持って、どんな環境で“今”を生きているのか。その中であの夏の想い出にどんな意味があるのか。彼らほど大切に想ってはいないかもしれないけれど、そんな想い出は捨て去ってしまったかもしれないけれど、彼女の“今”が知りたい。本多氏、よろしく。

一番好みだったのは、中村航氏の「ハミングライフ」でしょうか。逢いたい or 逢いたくないという気持ちの揺れの中で行われるハミング。こんなピュアな恋愛、してみたいようなしてみたくないような。もどかしさが、この作品のすべてであり、味です。

一番読ませたのは中田栄一氏の「なみうちぎわ」かしら。自分の所為で、時を失った彼女に自分がしてやれることはあるのか。そんな罪悪感からくる愛もまた、良い。

やっぱり恋愛小説は読み慣れてないため、レビューものりませんね。本多氏の作品もいまひとつでしたし。本多氏の最新作が今年こそ読めることを祈って。

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2007/01/17

『天使のナイフ』 薬丸岳

天使のナイフ Book 天使のナイフ

著者:薬丸 岳
販売元:講談社
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国家が罰を与えないなら、自分の手で犯人を殺してやりたい-そう告白した夫。

しかし、妻を殺害した少年たちが、何者かの手によって殺害されてゆき…。

果たしてこれは天罰か?罠か?

いまさら?本レビュー第1弾。今日から数日の間、いまさら?と思われるようなレビューが続くかと。私、図書館が好きでよくよく利用するのですが、予約数が10を越えるともう萎えちゃうんですよね。必然的に、話題作はほとぼりが冷めるまで待つため、年に数日はいまさら?本週間が出来上がるわけです。そして今週がその、いまさら本週間。

さて、『天使のナイフ』はご存知の通り江戸川乱歩賞受賞作。昨日発表されました直木賞(受賞作なし!!)なんかは、まったく信用していない私ですが、江戸川乱歩賞はかなり信頼しております。東野圭吾を生み出したのも乱歩賞ですし、『テロリストのパラソル』『twelve Y.O.』なんて私のフェイバリットも乱歩賞。本作『天使のナイフ』もフェイバリット作品に、堂々ランクインです。

いやぁ、12時に睡眠誘導本として読み始めた本作。読了は…真夜中3時。展開が気になって気になって気になって、すっかり興奮状態。眠れるわきゃねぇ。この展開は横山秀夫氏の『クライマーズ・ハイ』を読んだとき以来ですね。

二転三転するストーリーにすっかりやられました。こういうのに弱いんです。登場人物みんながみんな、そんなに少年犯罪に関わってるわけない…なんて冷静思考の私も居るには居るのですが、スピード感がその冷静思考を拭い去ってくれます。とにかく読ませる。

主題とした少年犯罪について、私の意見を述べるのは避けますが(とんでもないことになる。逃げだとは判っていても、今日は敢えて逃亡)作者が少年犯罪と真正面から向き合い描かれた作品だと感服。被害者側・加害者側、両サイドからのアプローチが作品を公正なものにしていて、中庸。加害者の少年が改心して、妙に良い人になっていたりしないところにもリアリズムがあります。

文章力などは、プロの目から見ると甘い箇所があるのかもしれませんが、ぐいぐいと読者を惹き込む作品の力がありました。やっぱり、江戸川乱歩賞はすごい。いまさら?本1作目にしてこのクオリティ。話題になるだけのことはあります。控えているいまさら?本にも期待が脹らみます。

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2007/01/16

『ηなのに夢のよう』 森博嗣

ηなのに夢のよう Book ηなのに夢のよう

著者:森 博嗣
販売元:講談社
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久しぶりの再会がもたらしたのは、過去の秘密と新しい事件。

見え隠れするあの天才の影。

最初に彼女へ追いつくことができるのは誰だ?

えっと…どこからツッコミますか?

毎度お馴染みのやつから読みたいですか?それとも新しいとこからゆきますか?久しぶりにネタバレ渓谷へとアタックするつもりなので、いつものやつからツッコむことにしましょうか。

C大三人衆(今回は四人衆)まったく存在価値無し!!

既に可哀相とかそういうレベルは超えてしまいました。これまでのシリーズ名はS&MやらVやら、登場人物の頭文字から取られるのが通例でございましたが、Gシリーズはどうやらgrecia(ギリシア)のG…もう彼らはモブ扱いです。なんのために彼らを登場させたのでしょうね。海月くんの正体が、過去の登場人物と繋がる大物でもなんでも無かった場合、本当にその存在意義も価値も無い。アイスクリームのウエハースよりもその価値がないかもしれない。不憫です。

ここらあたりからネタバレ渓谷へのアタックを開始します。

しかも、今回の探偵役は紅子さん。犀川先生にそのお鉢を取られるならまだしも、C大三人衆が遭ったこともない紅子さんが、知らないところで勝手に事件を解決してしまうっていうんだから。

そもそも、今回は事件なんてひとっつも起こってないんですよ!!

謎のネット集団がちょっと変わった方法で連続自殺を繰り広げるってだけで、事件性は欠片も無い。つまり、犯人も居ない。ミステリじゃ…無い。なんなんだろ、なにがしたいんだろ、森先生。

ラブちゃん&金子くんが再登場したと思ったら、金子くんは萌絵によからぬことを吹き込むし。S&Mを執筆していたころから、あの飛行機事故がテロだった…だなんて考えていたとは到底思えないので、後からとってつけた感が否めません。あの飛行機事故は、萌絵が成長してゆく過程を描くためのものでは無かったのですか?そうまでして四季を物語に絡めなくてはなりませんか?これまで好きだったものが瓦解してゆく感覚。

もう、赤柳さんの正体にしか興味を持てない。赤柳さんは森川くんか稲沢さんだと思いますが(稲沢さん好きですが、それだと保呂草さんと対面したときの会話が妙ですよね。同じ船…には乗ってるのか。でも阿“漕”荘だと思うんだよなぁ)確信が持てない。もし、稲沢さんならばキャラ変えは勿体無いです。あのクールな感じが最高だったのに。

そうそう、保呂草さんは事務所を移転してなにをやらかそうとしてらっしゃるんでしょうね?保呂草さんのダンディさがどんどん失われてゆくのにも、困惑。

そして、次回作予告『イナイ×イナイ』が

Gシリーズじゃないなんて!!

Gシリーズ放り出して新シリーズ開始ですか…そんなに人気ないですか?Gシリーズ。10作一シリーズとかもう守らなくても良いので、せめてGシリーズ完結させてから始めてくださいよ、新シリーズ。

でも、これだけ愚痴って読むんです、新シリーズ。願わくば四季とか萌絵とか、一切合財放り出して、本当に新しいシリーズを。お願いですからW大へと旅立つ萌絵のためのシリーズなんてのは止めてね。

最後に、トーマの件はそれでもほろっときてしまった、私なのでした。

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2007/01/15

『モロッコ水晶の謎』 有栖川有栖

モロッコ水晶の謎 Book モロッコ水晶の謎

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
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助教授の誘拐に始まり、連続殺人鬼の暗躍、殺人を予測できなかった占い師まで。

心躍る主題を料理するのは、有栖川有栖。

さぁ、国名シリーズ第8弾を召し上がれ。

本作『モロッコ水晶の謎』で“有栖川 国名シリーズ一気読みレビュー”企画も終焉でございます。読了のスピードにレビューが追いつかず、リアルな感想をお届けできなかったのが残念でございます。でも、やっぱり企画モノは好きです。楽しいです。またやりたい。次こそは「お館様!」こと綾辻氏の館シリーズですね。

いつ開催されるかわからない次の企画モノはさておき、『モロッコ水晶の謎』レビューです。本作は中編クラスの作品が3品と掌編が1品。それでは、どうぞ!

「助教授の身代金」

すわっ、火村誘拐!?

とタイトルだけで愕然とされた貴方、お仲間です。火村が誘拐に遭い、電話口で火村が遺した謎の暗号にアリスが挑む…というストーリーが一瞬にして出来上がった私ですが、もちろん火村がそんなドジを踏むわけが無く。誘拐されたのはテレビドラマの当り役から“助教授”とあだ名された元・有名俳優です。

誘拐を扱った作品は、本格ではなく社会派ミステリに多いので、あまり読んだことの無いジャンル。東野圭吾氏の『ゲームの名は誘拐』か貫井徳郎氏の『悪党たちは千里を走る』くらいしか思い浮かばないのですが、これらだって純粋な誘拐モノじゃなかったし。虚構の中でも成功し得ない、リスクの大きすぎる犯罪なのでしょうね。

本作で最も印象強いのが火村の次の言葉。引用しましょうか。

「一時間前に自分が話したことぐらいはっきり覚えている。あんた、他人がしゃべることばかりに興味を持つから、自分が何をしゃべったか忘れてしまうんだ」

すごい言葉ですね。犯人特定に至った火村の閃きは、かなり美しい。でも、一時間前に自分が話したことをはっきり覚えているだなんて、かなり特殊だと思います。私はこのレビューを書く間にも、上から下まで何往復してるかわからないというのに。

「ABCキラー」

アガサ・クリスティ『ABC殺人事件』へのオマージュ作品として生まれた本作。クリスティの『ABC殺人事件』を読んだのはもう数年前。「なんか納得いかねー」というあまり良くない印象だけが残されております。でも、クリスティのベスト3にこの作品を押す向きもありますよね。私的には『そして誰も』『アクロイド』『(不本意ながら)オリエント』という為るべきベスト3なのですが。

って、クリスティ談義はともかく、この「ABCキラー」も途中で謎解きの筋が入れ替わるという「なんか納得いかねー」な作品。判り易くできているのですが、やっぱり最初から最後まで一本道であって欲しいと思うのが本格ミステリファンとしての願い。でも、本家へのオマージュ感はたっぷりでしたので、嬉しい。

でも、実際にこんな事件が起こったら、どれだけの恐怖が社会を襲うのでしょうか?私も名字と市町村の頭文字が一致しちゃっているので、自分の番が来るまで恐恐として過ごすことでしょう。でも、Aから始まるアリスの「あがっちゃった感」はよくわかる。私もきっと、自分の番がくるまでは、興味津々でワイドショーに齧りつくのでしょう。

「推理合戦」

この掌編は好き。朝井女史がラストで電話を取り落とすシーンなんて最高。アリス、一矢報いる。

自分の子どもとも云える作品の登場人物に、どんな名前を付けるか。有栖川氏は自分の子どもに自らの名前を与えましたが、読者が嫌な思いをすることが無いようにと、犯人や被害者には実在しそうに無い名前を付けることにしている…と語った作家は誰だったでしょうか?思い出せない。私も母親を殺されたことがございますが(作品名は忘れました)なんとなくむずむずした思いを抱きましたね。

「モロッコ水晶の謎」

オーラスレビュー。でも、なんとなく好きじゃない本作。犯人の信念には感服いたしますが、そんな風に美しくないトリックは嫌です。

ある人物の協力を得て、犯人を嵌める火村。犯人を破滅させ、自白させるの好きね。極悪。しかし、犯人のように占いに全幅の信頼を置くことってできるでしょうか?私も占いは好き(星占いや血液型占いなどの大雑把なものは全く信じておりませんが。だって、恋愛運なんて同じグループに属してないと成立しないじゃないですか)なのですが、あくまでも指針や方向性を示す程度のものであって、そこから運命をどう切り開くかは自分次第ではないでしょうか。その一般論を逆手にとったのが、本作の面白いところなのですが、無茶苦茶やな…という第一印象は否めません。

ただ、あとがきで有栖川氏の語る「ありそうで、ない。なさそうで、ある。」そんな味わいは充分に感じられました。

というわけで、本作を持ちまして“有栖川 国名シリーズ一気読みレビュー”は終了!国名シリーズが発売されましたら、随時追加してゆきたいと思います。それは一体いつの日か…。次の国名シリーズの題名当てなんて、なかなか楽しそうなので、ちょっと思案した後追記しておこうと思います!!

それでは皆様、アデュー☆

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2007/01/14

『スイス時計の謎』 有栖川有栖

スイス時計の謎 Book スイス時計の謎

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
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作者・有栖川有栖をして「どこから見ても本格ミステリ」と云わしめる4作品を収録。

美しい論理をとくとご賞味ください。

有栖川 国名シリーズ第7弾!!

“有栖川 国名シリーズ一気読みレビュー”も本作『スイス時計の謎』と次作『モロッコ水晶の謎』で終了。既に『モロッコ水晶』も読了しているのですが、8作品しか無いにも関わらず、一月半ばになっても企画終了していないところが情けないですな。そうはいっても、残り2作品、張り切って参りましょうか!!

「あるYの悲劇」

本作はアンソロジー『「Y」の悲劇』のために書き下ろされた作品。『「Y」の悲劇』も所有しておりますが、あのアンソロは有栖川氏と法月氏の作品がかろうじて読める…といった感じでしたね。二階堂氏の作品なんて…アンチミステリとも云えない。

「Y」と読むことのできるダイイング・メッセージを扱った本作ですが、もちろん「Y」と読むのが正解!とはゆきません。この「Y」は別の文字記号を表しているのですが…あとがきで有栖川氏が述べているように、書き方はあれでOKでも、瀕死の被害者の手が一画目よりも上に上がったとはどうしても思えないですねぇ。でも、この作品の本質は「どこに書いたか?」ですから、まぁいっか。

この作品の被害者はバンドマンなのですが、彼を死に至らしめた凶器が“フライングV”(イメージが湧かない方は是非ググってみてください)だという、そのこだわり様に脱帽。まさに「Y」の悲劇。

そうそう、この作品は34歳独身者の独白から始まるのですが…アリスですよね?最初、この独白がアリスによるものだとは思わず、犯人によるものだと思ってました。だって、一瞬でもアリスがナンパを考えるだなんて!!寂しいなら、迷わず助教授に電話しなさい。休講にしてでも、彼はやってくるでしょう。

「女彫刻家の首」

この作品は死体から切り取られた首の消滅を扱った作品です。先程のダイイング・メッセージといい、主題からして本格の彩りですね。

さて、ミステリで死体の首が切られる場合、被害者の誤認や入れ替えを考慮するのが常套手段であり、大抵は“雪の山荘”か“嵐の孤島”が舞台で、警察が介入できないように意図されているものです。でも、本作は早々に警察が被害者を特定!では、撲殺に使われた凶器が特殊なもので、凶器の特定=犯人検挙か?というわけでもありません。凶器、転がってますから。というわけで、みなさんも犯人が首を持ち去った理由を推理くださいませ。

私はこの解釈、好きですねぇ。ただ、犯人が○○なんですよ。むしろ○○だったから、計画に綻びが生じたときにストップがかけられない。浅はかですこと。

「シャイロックの密室」

本作はタイトルからして本格。タイトルに「密室」と付く作品は、どんなにダサいと云われようと果てることが無いと私は信じております。スマート。

“ノックスの十戒”か“二十則”の中に、「一般生活で必要とされない特殊な知識や能力を用いたミステリは禁止(かなり意訳です)」というのがあるのですが、この作品はこれに抵触しているかも。しかも、解決編までその知識が登場することはないし。でも、この作品は倒叙形式(犯人視点で描かれている)だから、火村&アリスの推理の過程を覗けない→だからセーフってことなのかな?いまさら“十戒”や“二十則”を守っていては、ミステリは書けないとはいえ、やっぱりコンプされた作品を望んでしまうのが本格ミステリ好きなのです。

でも、こういった専門知識をふとしたきっかけでしったミステリ作家は、「これで一作書ける!」と神が舞い降りるが如く興奮するのでしょうね。私にもいつか神が降りてくることを祈って(ミステリを書こうと思ったことは一度もありません…悪しからず)

「スイス時計の謎」

表題作でござい。「ロシア」から「モロッコ」まで8作の表題作の中で、この「スイス時計」が個人的にいっとぅ好みです。最も本格、最も論理的ですよね。

それが端的に表現された箇所がこちら。引用です。

「いくら考えても火村先生のロジックは崩れないんだ。将棋で言えば詰んでるし、チェスで言うならチェックメイト。お前が犯人だ、と俺も思う。あの推理だけで裁判に懸けられるかどうかは疑問であるにせよ、俺にとっては動かぬ証拠に等しい」

最高ですね!!

物的証拠が無い中での犯人指摘。でも、あまりにも美しい論理は、動かぬ物的証拠に等しい。何度でも云いましょう、最高ですね!!本作で火村が披露した論理は、本当に美しいです。この論理だけで、国名シリーズ表題作中ベストだ!と云い切れるほど。是非、この美しい論理のフルコースを召し上がってください。

さて、本作では恋だの愛だのに無縁も無縁だった、アリスの忘れられない過去の恋愛に触れることができます。プロローグとエピローグで描かれるアリスの心情。この事件の中でどうやって変化していったのか。アリスはこれからも書き続けることができるのか。これもまた見所。

本格ミステリたる要素が詰まりに詰まった『スイス時計の謎』。『ペルシャ猫の謎』が番外ベストならば、本作は正統派ベストですね。

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2007/01/13

『マレー鉄道の謎』 有栖川有栖

マレー鉄道の謎 Book マレー鉄道の謎

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
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旧友との再会に喜ぶ火村&アリスの前に立ちはだかったのは…

やっぱり殺人事件!!

日本だろうが、マレーシアだろうが、犯罪は彼らを休ませてはくれないのだ!!!

「日本推理作家協会賞」に輝いた、バリ本格作品。と、とにかく厚い!!作家アリスシリーズ最長不倒ではなかでしょうか?そして、こんなに厚いのに、本棚で見つけることのできなかった私って…というわけで、わざわざ書店に向かい文庫版を購入して挑む本レビュー。ノベルス版が本棚のどこかに眠っているはずなのに…。

というわけで、『マレー鉄道の謎』を読むのは今回が2度目です。本棚のどこに収納してあるのかもわかりませんし、犯人が誰だったのかもトリックがどんなだったのかも、誰が殺されるのかもさぱーりです。初読の心持ち。でも、日本を脱出しても火村&アリスは殺人事件に見舞われるわけね…と哀れに思ったことだけは、鮮明に思い出せます。

今回、火村とアリスは大学時代の旧友・大龍がキャメロン・ハイランド(マレーシアの軽井沢)で経営するホテルに婚前旅行へ向かう。見慣れぬ景色と新しい出逢いにリフレッシュする間もなく、遭遇するのは殺人事件。しかも、旧友・大龍が犯人として目されたとあっては、火村&アリスは黙っちゃいられない!!密室の謎に、飛び立つ飛行機というタイムリミット、ふたつの枷が彼らを束縛する。果たして、火村は旧友を助け、犯人を裁くことができるのか?

という内容です。まず、火村&アリス夫婦に共通の友人が居たとは驚き。彼らはもう、自分たちのコミュニティでよろしくやってたと勝手に思っていたので(これまで、アリスの作家友達は何人か登場しましたが、大学時代からの共通の友達というのはお目にかからなかったものですから)ちゃんと大学生ライフを楽しんでいたとは。まぁ、恋だの愛だのとは無縁だったご様子ですが。

さて、今回の火村の推理ですが…結構泥臭かったですね。犯人挙げるまで、難産でしたし(それじゃなきゃ、こんな厚さにはなるまい)。死体の発見されたトレーラーハウス内がガムテで目張りされていて…というオーソドックスな密室だったのですが、このトリックは容易に想像できました(きっと、前回読んだ際の記憶が奥底にあったためだと思いますが)。このトリックは手を変え品を変え、いくつかの作品で発表されておりますよね。一番印象深いのは三毛猫ホームズのアレです。アレは無茶苦茶だけど忘れられない。

そして、犯人と対峙し、最大のピンチを迎える火村&アリス。犯人の構える銃がモデルガンだと知りつつも飛び掛らずに、とにかく犯人を追い込んで追い込んで追い込んだ火村。あの姿勢こそ、犯罪あるいは犯罪者に対して、火村が取り続けてる狂気的なスタンス。火村は一体、どんな罪に苛まれているのでしょか?

そうそう、この『マレー鉄道の謎』は異国の地で起こった事件を扱っておりますので、登場人物の会話の約半数が異国語です。もちろん、異国語表記されているわけではないので普通に楽しめるのですが、なんとなく火村に(そしてアリスにも)後光が射している様に見えるのは、英語すらまともに習得できない私のやっかみでしょうか?いいもん、日本から出ずに一生を終えるもん。

というわけで(どういうわけだ?)、やっぱり作家アリスシリーズは短編だな…と、再確認した一作。美しすぎる推理に酔いしれたいヒムラーな私としては、もがき苦しむ助教授(アリスが助教授という英単語が浮かばず、プロフェッサーに勝手に昇格させた件が好きです)なんて、見たくない!本企画も『スイス』と『モロッコ』で終了。この2作は名推理目白押しですので、楽しみだがん!!

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2007/01/09

『ペルシャ猫の謎』 有栖川有栖

ペルシャ猫の謎 Book ペルシャ猫の謎

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
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正統なる国名シリーズにして、番外編色強き第5弾。

「買いなさい。損はさせないから」

私は既刊の国名シリーズの中で、この『ペルシャ猫の謎』が一番のお気に入り。しかも…むにゃむにゃむにゃ。この先は各作品レビューで!

「切り裂きジャックを待ちながら」

なんかもぅ、このタイトルだけでご飯三杯イケます!みたいな秀逸さ。タイトルだけで傑作!みたいな雰囲気漂う本作は、内容もイケてます。

本作は有栖川氏と法月綸太郎氏、綾辻行人氏が競演し、それぞれの原案をミステリドラマ化するという夢のような企画のために描かれた作品。このドラマ、リアルタイムで見た記憶があるのですが、綾辻氏の「意外すぎる犯人」の印象が強過ぎて、他の2作品をまったく覚えておりません。綾辻氏の「意外すぎる犯人」はいろんなところでリメイク(?)され、違う役者が登場するものを3回くらい見たような気がします。最初はテレビ局でしたよね?あとは無人島と…とにかく、物語が始まった瞬間に「これかぁ~」という感じ。

って、すっかり「意外すぎる犯人」話に!そうそう「切り裂きジャックを待ちながら」のレビューでした。この作品は死体の登場から火村の登場までの描写に鳥肌が立ちます。有栖川氏の作品の中で、シーン毎にランキングをつけるならばベストかも。そのくらい気に入っております。

そして、火村は犯人を追い詰めるシーンも圧巻!「Mary!」と犯人が叫んだシーンでも鳥肌立ちます。まさに舞台や映像化向け。

「わらう月」

本作も『英国庭園の謎』に収録されていた「完璧な遺書」と同じく、犯人(今回は共犯者か)サイドより事件を捉えた作品。しっかし、容疑者と対面する際の火村は極悪人ですねぇ。まぁ、犯罪者の肩を持つこともないのですが。ちょっと可哀想になります。

しかし、本作で共犯者を追い詰める(嵌める?)火村のキザ台詞には参りました。い、云われてぇ!ちゃんと(ちゃんとか?)女性を褒めることもできるんじゃないですか。なぜ彼女(妻)ができない。やっぱりアリスが…。

そうそう、この「わらう月」の中に、学生アリス・作家アリスの関係性を解き明かす重要なヒントが!作家アリスの作品には『月光なんとか』という作品が多いそうな…『月光ゲーム』ですね!でも、『月光』と名の付く作品は『ゲーム』しかないので、これからどしどし発表されるのでしょうか?『海奈良』の中でも、作家アリスの作品タイトルがひとつ明かされてましたよね?『セイレーンなんとか』だったように記憶しているのですが、それはいつ出るのでしょうか?(←きっと出ないと思ふ)

余談ですが、私は小さいころから月が大好きで、夜道、どこまでも付いてくる月が頼もしかったものです。

「暗号を撒く男」

朝井小夜子女史登場!私は朝井女史が登場し、ちょっとしたミステリバトルの起こる作品が大好き。確か『モロッコ水晶の謎』にも掌編が収録されておりましたよね。『モロッコ』の中では、あの掌編が一番好みだった気がする…なんちゅー作家泣かせな。

本作の中では朝井女史の「人殺し関係です」発言がとにかく好き。自分の職業を問われて、こんな素敵な切り替えしをしてみたいものです。

って、こんなに朝井女史の話ばかりをするのは、ミステリとして語るところが少ないからです。

「赤い帽子」

『ペルシャ猫の謎』最大の番外編(なにせ、火村もアリスも登場しない!)にして、私が本短編集の中で最も気に入っている作品(←おいっ!)それが「赤い帽子」。

本作は“はりきりアルマーニ坊や”が主人公。しかも、発表媒体が大阪府警…社内雑誌(笑)で有栖川氏の作品が読めるんですか!(そういえば、東野圭吾氏の昔働いていた会社の社内広報誌に連載していたことがあったみたいですね。うちの会社からもミステリ作家が誕生してくれないかしら)とにかく羨ましい。

というわけで、「赤い帽子」はアルマーニ坊やの活躍がふんだんに描かれております。作家アリスシリーズに登場する警察関係者の中では、アルマーニ坊やが一番好きですね。野上刑事部長の、あのつっけんどんな感じも捨てがたいけれども。鮫やんも好きです。そんな鮫やんがアルマーニ坊やをスカウトしてくれた…なんて件にしあわせなものを感じました。

そして、森下が犯人にどんどん肉薄していく様に、こちらまで興奮。「こいつが犯人だ!」と雷に打たれる瞬間に、私も出逢ってみたい…って、その前に本物の殺人事件と出逢わないと…それは嫌だな。

「悲劇的」

この「悲劇的」は完全なる番外編、ショートショートです。ある学生が火村に提出したレポート。そのレポートの最後に火村が付け加えた18文字。火村の最初にして最後の執筆作品です。

火村の無神論者ぶりは、数々の作品で描かれておりますが、この作品もそんな火村の一面を知ることのできる一作。火村くらい徹底していると気持ちよいものがありますね。苦しいときの神頼み…いるかいないかわからない神に祈る時間があるならば、苦しみから脱却する努力に努める。それが合理的なことは良くわかっていても、そこまで思い切れないのが人間ですよね?

「ペルシャ猫の謎」

表題作にして問題作。あとがきで有栖川氏自身も語っておりますが、この結末を読まされた読者は、一体どうしたら良いものか。これを表題作にしちゃうっていうんだから、有栖川氏も図太くなったものです(あくまでも本人談です)

というわけで、ミステリとして成立していない本作。でも、私の愛するシャーロック・ホームズの決め台詞「あり得なかった仮説を消し去っていって、最後に残ったものは、どれだけありそうになくても真実だ」がうまいこと(弁解として?)用意されております。でも、この決め台詞は“偶然という奇跡”が作用したときに、効果を発するものだと個人的に思っているので、心霊現象までカバーしてくれないと思うのですが(でも、コナン・ドイルも心霊現象好き?だったからなぁ)

「猫と雨と助教授と」

ボーナストラックとして収録されている本作。語るべきポイントは唯一つ。

「婆ちゃん。猫、もう一匹増えてもいいかな」

もう、これだけ。猫を猫可愛がりする火村も見物です。犯罪を憎む助教授も、猫の前では形無しです。もしも、猫が犯罪を起こしたら(三毛猫ホームズクラスの天才猫)火村は果たして犯猫を裁くことができるのか?(笑)

やっぱり『ペルシャ猫の謎』が私の中で国名シリーズのベスト。国名シリーズは未読でこれから読もう!という方は、もちろん『ロシア紅茶』から読むのがベストだと思いますが、とりあえず一冊…と仰るならば、是非『ペルシャ猫』を手に取ってくださいませ。

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2007/01/08

『英国庭園の謎』 有栖川有栖

英国庭園の謎 Book 英国庭園の謎

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
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不思議の国のアリスよろしく、英国庭園を彷徨えるアリス&火村。

ジャバウォッキーまで登場し、まさにアリス尽くしの一冊。

有栖川 国名シリーズ第4弾!

この『英国庭園の謎』は有栖川 国名シリーズでも異質な一作。何故って?それはタイトルの国名が日本語表記だからですよ!イギリス庭園とせずに、英国庭園と表記するあたり、私の超好みです。では、その内容はというと…?

「雨天決行」

この作品はタイトルからして読者をミスリードしておりますねぇ。有栖川氏の作品はかなりの数を読んでいて、タイトルを読んだだけでは内容を思い出せないものも幾つか存在しますが、この「雨天決行」は別ですね。

しかし、被害者の白石女子。めちゃくちゃこだわりもってますねぇ。この手のこだわりは、森博嗣のお得意とするところなのですが(私もかなり森作品の影響受けております)テレビはテレビじゃないとゾワゾワっとしませんか?

あとね、この作品に登場するぬかるみに遺された足跡の件なんですが…必要でしたか?火村の推理のとっかかりも、足跡とはまったく関係ないところからだったような気がするのですが?まさに蛇足だったような気が致します。

「竜胆紅一の疑惑」

この作品は有栖川お得意の犯人指摘しない系ですね。私は結構、こういう結末も好きなのですが、ズバットやってくれないと気持ち悪い方もいるのではないかなぁ?と思います。

本作のアリスの役割はとにかく不憫。火村を紹介して欲しい-ただそれだけのために駆り出された哀れな推理小説家。アリスの存在意義(雑学データベース?)が発揮された作品をそろぞろ読みたいものです。

でも、好きな作家の新作が読みたい!という読者の気持ちは本当によくわかります。有栖川氏の学生アリスシリーズの新刊を待ちに待ち望んで早○年。もうすぐ二桁に到達しようか…年上だったアリスたちがすっかり年下に。江神さんは…まだセーフ?でも、彼らは大学生ですからねぇ、ウラヤマシイ。新刊を待ち望んでいるといえば、小野不由美氏もそう!せめて自分が死ぬまでにシリーズ(十二国記)の完結を!!

「三つの日付」

アリスがその存在意義を~と書いたばかりですが、この「三つの日付」がありましたか。この作品はアリスが容疑者のアリバイ証人で…というかなり異色な作品。鬼・火村の追求を受ける犯罪者や共犯者の気持ちが少しはわかりましたか?アリスよ。

この作品には今は亡き赤星氏が登場しており、『海奈良』も再読しないとなぁと思わせた一作。火村シリーズは短編の方が好きなので、角川系の『海奈良』『ダリ繭』『朱色』あたりは国名シリーズに比べて読みが浅いんですよね。でも、レビューコンプのためにも、しっかり時間を作らないとね!

というわけで、アリスのように曜日にとらわれない生活に憧れます。毎週毎週、サザ○さんが怖いという今の生活からは早くおさらばしたいものです。

「完璧な遺書」

『英国庭園の謎』の中では、この作品が一番好きです。この作品は古畑系の倒叙形式でもって書かれているのですが、犯人側から見た火村がいかに怖いかが存分に描かれてる作品。犯人の考えたこと、為したこと、そのすべてが見破られる恐怖ったらないでしょうね。

しかも、最後に火村がかますハッタリ。私のPCは「こうさつ」と入力すると「絞殺」が一番最初に変換されるという、どういう生活送ってるわけ?PCなのですが。少し前に携帯の記憶機能バトンが流行りましたが、そんなおっそろしいバトン、受け取れねーっす。丸裸じゃないですか!!でも、「もりひろし」と入力して、きちんと「森博嗣」と変換してくれるこのPCは、やっぱり愛おしいです。そろそろ寿命ですが…。

「ジャバウォッキー」

実はルイス・キャロルのアリスシリーズをちゃんと読んだことの無い私。小学生のころにジュブナイル版で大抵の作品は読んでしまったので、いまさら感がどうしても拭えないのですよ。でも、ジャバウォッキーのジャバウォッキーぶりが知りたければ、ちゃんとしたの読まなきゃですよね。

さて、本作はかつて火村に捉えられたジャバウォッキーが、復讐あるいはSOSのために再度交信してくる…というお話。私はジャバウォッキーの思考回路、好きです。壊れていないのならば、是非ともコピーして欲しい。あの思考の飛躍は魅力的です。

そうそう、本作もアリス大活躍の回でしたね。ちゃんと、存在意義を示しておりましたアリス。でも、携帯で通話しながら暴走運転だなんて、今の世の中じゃ捕まっちゃうよ?アリス。しかも、千円札を投げつけて、改札を突破だなんて…アリスもなかなかやるわね。あとで火村にいっしょに謝ってもらってください。大の大人がふたりして、ペコペコ頭を下げる様…見物です。

「英国庭園の謎」

表題作。やっぱり表題作がラストだと落ち着きますね。国名シリーズ読んでるぞ!って感じで。

ただ、表題作は正統派であろうとする姿勢の現われか、如何せん地味な作品が多いのも事実。本作はポエティックな暗号モノなのですが、暗号解読のいくつかのパターン(ひとつ飛ばしとか、文字を削除して読むとか)を一通り試してゆけば正解に辿り着けるでしょう。電撃で打たれるかの如く、突如として脳裏に閃いた暗号の美しさにはやはり負けます。

本作も火村が犯人を嵌める型のオチが用意されているのですが、犯人は誰かわからないけど、この罠に嵌った人間が犯人だ!という解決の仕方は好きです。もっと臨場感があれば尚良し。アリスがお約束をかましてくれましたが、犯人と対峙しない名探偵だなんて勿体無くって。アリス、よくやったぞ。

というわけで、どんどんレビューという名の随筆の様相を為してきた企画レビュー。この『英国庭園の謎』で丁度折り返しでございますか。後半戦は『マレー』が厚いので、そこで数日を要するかもしれませんな…。

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2007/01/07

『ブラジル蝶の謎』 有栖川有栖

ブラジル蝶の謎 Book ブラジル蝶の謎

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
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最早お馴染みの火村&アリス夫婦が出逢った、風変わりな事件が集められた宝石箱。

その箱から今回飛び出すは…数々の蝶々。

美しい蝶と論理に酔う、国名シリーズ第3弾!

昨日はお休みさせていただきました“有栖川 国名シリーズ一気読みレビュー”企画でございますが、早くも飽きた…わけではございません。今日も一作一作丹念にレビューさせていただきますよ!

「ブラジル蝶の謎」

有栖川氏の短編構成は表題作がラストにくるものが多いような気がするのですが、本作は“蝶サンド”を果たすため、敢えてトップバッターにこの「ブラジル蝶の謎」が。

本作は瀬戸内海の小島に独りで暮らしていたロビンソン・クルーソーが、19年ぶりに本土に戻ってきたところ、蝶の舞う部屋で殺害され?というストーリー。犯人を指摘する火村の推理は、悪く無いけれども抜け穴も存在するよね?という感じで、ちょっと物足りない。19年と云えば、生まれたばかりの赤子が大学に入学するに至るほどの長い月日ですので、人も社会も大きく変わってしまうでしょうね。その変化が本作の推理の鍵です。

そうそう、蝶が天井に貼り付けられていた理由は非常にオーソドックスで、トリックがどんどん複雑化している中で、こういう作品を読むと原点に戻った感がして安心できます。

「妄想日記」

この作品は有栖川氏が創造した創作文字が面白くて好きです。この創作文字をなんとか解読しようと、数分にらめっこした過去が私にはございますが、まさかミスリードだとは…。しかも、床に描かれた○○○は、どうにらめっこしても浮かび上がってこないし。ぎゃぼ。

「妄想日記」は死体に何故火をかけねばならなかったのか、大オチのその理由が印象深いです。焼却された死体が登場するミステリは、被害者の身元を割れにくくするためか、犯罪自体を無かったものにするため、大抵この辺りが理由だったりするのですが、これは新説です。消えなかったのか?という疑問は敢えてスルーで。

「彼か彼女か」

この作品は『ブラジル蝶の謎』の中で一番気に入っている作品。それは何故って?もちろん<ミスター・マリリン>の蘭ちゃんですよ!私も「彼か彼女か」を読んだときには、有栖川氏に新キャラ出来たね☆と思ったものです。蘭ちゃんが<ミスター・マリリン>にやってきた訳ありな客の悩み事を快刀乱麻に解決する。そうね、シリーズ名はマリリン・シリーズでよろしいかと。有栖川氏、是非よろしく。

というわけで、本作のトリックは男性作家ならではないでしょうか?少なくとも女性はなかなか考え付かない(はず)。こういう、ちょっとしたとっかかりから、真相に辿り着く系のミステリって好きです(何度目だ、ナウシカ)。

というわけで、蘭ちゃんと資本主義と家父長制のふしだらでいかがわしい相互依存関係について、いつか蘭ちゃんと火村が語り合う様が見たいと願う一作。

「鍵」

この作品も好きですねぇ。ミステリの犯人どうこうでなく、被害者のそばに残されていた鍵は一体なんの鍵だったのか?という点に主題が置かれた本作。その鍵が玄関の鍵だったり、ただの宝石箱の鍵だったりしないのが有栖川流。最後にアリスがつまらない見栄と負け惜しみで横文字で解答するのが、夫婦っぽくて好き。そんなことで怒ってちゃ、夫婦生活やってけないわよ?

というわけで、火村は旅する先々で事件に遭遇しすぎではないかと思ったり思わなかったり。犯罪学者が犯罪を離れて、羽休めすることはできないのでしょうか?だって、次に控える「人喰いの滝」でも旅先でお呼びがかかってだたでしょ?最新作の『乱鴉の島』だってねぇ?ちょっと火村が不憫になってきました。

「人喰いの滝」

本作は漫画化されたものを読んだことがあって、ラストで犯人を嵌めた火村が極悪風だった(私がそう見えただけです~。漫画家さんに罪は無いです~)のが印象的でした。名探偵が犯人を嵌めて自供させる作品は数多くありますが、これって犯人が違うトリックを使ってたらどうするつもりだったんでしょうねぇ?だって、そんな大量の○○を購入している不審客がいたら、警察の足を使った捜査で浮かび上がってくるはずだもの。

でも、アリスの「人喰いの滝が、喰ったものを吐き出し始めたんです」は決まってましたね。火村に大抵美味しいところを持っていかれるアリスですが、そのセンチメンタルな物云いにうっとりさせられることもしばしば。

そうそう、トリックにも触れなくては。ネタ自体は『スウェーデン館の謎』と同じなのですが、こちらの方がスマートに感じるのは私だけ?人喰いの滝の精度の点だけリスクがともないますが、過去の実績から信頼おけるでしょう。

「蝶々がはばたく」

本作が“蝶サンド”のラスト作品。このトリックは一際印象に残りますね。ネタは人間消失モノなのですが、その現象が○○的なものでなく○○の力で為されたというところに、そのすごさを感じます(って、このフセ字はトリック知っている方もわからないのではないだろうか)今日みたいな日にも、そんな不思議な力が働きそうですよね。

しかし、今回もふたりで旅行ですか。三十路もとうに過ぎ去った大人が、そんなにそんなにいっしょには出掛けません。だーかーらー、あらぬ噂が立つんですよ。でも、蟹は私も食べたい。是非、ご一緒したい。

ラストの締め方がいかにも有栖川!なのですが、そこに書かれている情景はあまりにも重くって、読む度に胸がきゅんとします。

というわけで、これぞ!という光る作品が若干少ないかなぁと思ってしまった『ブラジル蝶の謎』。でも、安定したクオリティこそが有栖川スタイルなのかもしれません。

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2007/01/05

『スウェーデン館の謎』 有栖川有栖

スウェーデン館の謎 Book スウェーデン館の謎

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

次回作の取材のため、雪深い裏磐梯を訪れたアリス。

かの地で出逢ったのは、美しくも儚いルシアと、魅力的なカイバル海豹。

起こった犯罪のすべてを知るのは…降り積もる雪のみ。

“有栖川 国名シリーズ一気読みレビュー”第2作目はもちろん『スウェーデン館の殺人』でございます。国名シリーズは既に8作出版されておりますが、うち6作が短編、2作が長編となっております。やっぱり有栖川を読むなら、長編は江神さん(学生アリス)、短編が火村(作家アリス)ですね。学生アリスの方が執筆スピードは速いけれども、作品としての完成度は職業作家のアリスが上手でしょうか。

って、学生アリスシリーズは作家アリスが執筆した作品群で、作家アリスシリーズは推理小説家を目指す学生アリスが執筆したものだというパラドックス説はどこまで本当なのでしょうか?私はかなり信じているのですが、有栖川氏がオフィシャルでこのお話をされてるのを読んだことないものですから。情報求ム。

さて、肝心の『スウェーデン館の謎』レビューです。既にここまでお読みの方ならお判りかとおもいますが、火村モノの長編って苦手なんです。火村の怪傑ズバットぶりがうまく活かされていないような気がして。ただ、本作は物語の半分過ぎてからの登場ですから、中編として読むことも可能かも。

しかし、アリスの「きてくれ。嫌な予感がする」って呼びかけに、大の大人が何コマか講義休講にして駆けつけるかね?(休講にしたって記述はなかったような気がしますが、遣りかねないものですから)だから、あらぬ噂が立つんですよ。ねぇ?

さて、トリックのお話。本作はミステリの王道も王道、足跡の密室(?)を取り扱った作品なのですが、うまくまとまっている反面、リスクが大きすぎるような気がします。離れのログハウスと本館(スウェーデン館)をつなぐ足跡だけでなく、林なり森なりへと逃げる足跡でも偽装しておけば良かったのに。ログハウス内に明らかな他殺体があるんだから、その方が自然でしょう。あるべき足跡が無いから、本館の人物が必然的に疑われるわけです。って、そこまでのミスリードはいらないのか。

そうそう、作中に挿入されているパズルは皆さん、解けましたでしょうか?私はこういうのからっきしダメなんですよ。とにかく奇抜な解答を狙おうとしてしまって。あの微妙な違いがパスラー的なのでしょうね。

って、やっぱり長編はレビューがのらない。読むのにも時間かかったもんなぁ。せっかくの企画レビューでございますが、このくらいで許してください。

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2007/01/04

『ロシア紅茶の謎』 有栖川有栖

ロシア紅茶の謎 Book ロシア紅茶の謎

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

犯罪臨床学者・火村英生とミステリ作家・有栖川有栖の夫婦コンビが挑む新たな謎は…

エラリィ・クイーンのひそみに倣った“国名シリーズ”!

期待するなってのが、もう無理!!

あけましておめでとうございます!

年末年始はトドのように“食っちゃ寝読書しちゃ寝”を繰り返し、読了本と体重を順調に増やしてまいりました、まじょ。です。今年こそはミステリブロ愚の名に恥じないように、精進を重ねてゆく所存でございます。

皆様、今年も宜しくお願い致します!!

というわけで、新年一発目のレビューは有栖川有栖の『ロシア紅茶の謎』でございます。新年&そろそろブロ愚一周年企画ということで、“有栖川 国名シリーズ一気読みレビュー”を開催!企画モノ、本当に好きねぇ。もちろんバナも作成しました(ブロ愚タイトル下に企画ショートカットとして使用中)。本当はどこぞの国の国旗を使ったバナを作成したかったのですが、そういうのはなにかの権利にひっかかるのでしょうかね?どちらの素材サイト様でもお見かけしなかったものですから。

というわけで、企画レビューは短編一作毎に細かくレビューしてゆくのが慣わし。カンパリマス。

「動物園の暗号」

有栖川作品に結構な頻度で登場する○○○トリック。『マジックミラー』あたりがその代表格かな?と思いますが、その○○○トリックをちょっと捻った形で披露しているのがこの「動物園の暗号」でございます。私は○○○を片手にバーチャル旅行(あっ、旅行って云っちゃってるよ!)をする趣味は無いのですが、地理専攻の友人にそんな崇高な遊びで淋しい夜をやり過ごすという剛者がおりました。でも、百聞は一見に如かずだとやっぱり思うんですよねぇ。でも、○○○とにらめっこして、「ひとつ暗号できたぞ!」と喜ぶ有栖川氏は可愛い。

でも、この暗号、とても印象に残ります。最後のオチはどうかな?やりすぎでは?と思いますが、センチメンタル・アリス(作中の有栖川有栖はカタカナ表記で)にはぴったりかも。私は道産子なもんですから、北海道の地名(あっ、地名って云っちゃってるよ!)について勉強させられた(能動的)ことがあるのですが、地名にはしっかり由来が存在するんですよね。だから、最近の統廃合で市町村がころころと地名変更を繰り返すニュースを見ると、なんだか哀しくなります。その土地の情景やら、かつての意義やら、互いの関係やらを端的に現した地名。そんな地名がこんなに素敵に連鎖した暗号。うん、印象深いです。

というわけで、まったく作品の内容に触れてないわりに、ネタだけはバラすという最低のレビュー。

「屋根裏の散歩者」

この作品は秀逸!『ロシア紅茶の謎』に収録されている作品の中で一番好きです。ミステリ好きなら、そのタイトルを見ただけで触手が動くってなもんです。江戸川乱歩へのオマージュもオマージュ、その設定を借りて有栖川氏が新たに創造する「屋根裏の散歩者」。本作は現代の郷田三郎が作り出した暗号を犯罪臨床学者が解く(解いてないかもしれない)ことが主軸となっているのですが、私は散歩者のユーモア溢れるそのセンスが好きですね。下品だけど。

そうそう、アリスと火村が並んで美容室カット…って構図はなかなかおもしろいものがありますね。三十路をとっくにまわったおじさん(『スウェーデン館の謎』で火村自身がそう云ってるからセーフですよね?)ふたりが美容室…せめて床屋にしてくれ。でも、このさりげなく挿入された美容室も重要なファクターになるっていうんだから、二度美味しいぞ、有栖川氏。

「赤い稲妻」

この作品も好きです。最後に火村があがく犯人を追い詰めるために切り出す“事実”が好き。このカード切られたら、もうぐうの音も出ないわ!っていう詰みをみせてくれる作品はいつでも好きです。

トリックも面白い。この作品は「いかにして密室は創られたのか?」が推理のキーとなりますが、トリックを解いて犯人を追い詰めるのではなく、トリックを推理の糧にして犯人を追い詰めるという、その構造が好きです。でもね、客人が来てるのにドアチェーンはやっぱり無いと思うの。

「ルーンの導き」

どんどんと作品毎レビューが短くなっているのは、ご愛嬌で(笑)

この作品は私が火村英生をヒムと呼ぶようになった記念の作品です。ただ、私のヒムは愛称のヒムではなくて「him」なんですがね。わかる方だけ、楽しんでください。

さて、この暗号は無理矢理ですねぇ。私、就職するのにまったく使えない資格をいくつか所有していて、その中に図書館司書ってのもあるんですが、暗号を解くための知識を所有していても、閃きがそこに存在しなければ暗号は解けない(無理矢理だとしても)という典型的作品。未読の方は、司書資格というヒントも頭の隅に置いて取り組んでみてくださいませ。

そうそう、この作品を読んで久しぶりにタロット占いに行きたいなぁと思いました。気に入った絵柄のタロットに出逢ったら、いつか買おうと思って早○年。

「ロシア紅茶の謎」

表題作です。この作品の火村はいつにも増してキザったらしい(トリックを明かしたあとの決め台詞が)のですが、そんなヒムも素敵。でも、すでにトレードマークとなりつつある白いジャケットについては、いつもどうかと思います。

さて、この作品は毒殺に用いられた青酸カリ容器はどこに消えたのか?という、ミステリ的お約束ネタです。でも、斬新。私が犯人なら怖くてできないところです。だって、容器の保管場所の○○によっては…ねぇ?最近、異常気象ですし。私は生まれて初めてこんなに雪の無いお正月を過ごしました。

そうそう、DNA鑑定の件なんですが、私の認識では○○ではDNAの検出ってできないはずですよね?血液型は検出可能ですが。火村の仕掛けた罠。その罠に犬猿の野上刑事が阿吽の呼吸でのっかった、あの瞬間が私は好きです。

あと、有栖川氏も仰っているように、あの歌詞はダサいと私も思います。作家は作詞には向いていないのでしょうか?森博嗣氏の『詩的私的ジャック』で披露された歌詞も超微妙だったし。

「八角形の罠」

レビュー、最後の作品です。本作はミステリーステージツアーと銘打たれた犯人当てゲームのために書き下ろされた一作。う、うらやましい。一度はミステリーツアーに参加したいと常日頃願っている私。ちょっと前には名探偵コナンのミステリーツアーなんてのもありましたよね。超参加したかった。関西の方が、そういった企画が多いような気がしませんか?是非、北海道でも。

というわけで、私としては作中アリスの執筆した「八角館の殺人」(探偵役は江神さんじゃなくて島田潔ですか?)にも興味ありありなんですが(笑)

本作のネタは「消えた凶器」です。私の嫌いな○○ネタなのですが、しっかりと口封じしてくれている(それでもって、ボロを出す)という王道なので許す。でも、凶器が跳ね返ってピックアップできなかったらどうするつもりだったんだろう?とこの作品を読むといつも思ってしまいます。まぁ、解けなかったひがみでしか無いんですけれど。

というわけで、えらく長いレビューとなってしまいました。次回『スウェーデン館の謎』は長編なので、息抜きにさっぱりとしたレビューにしよう。そうしよう。それでは、皆さま、スパシーボ!!

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