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2006/12/10

『子どもたちは夜と遊ぶ』 辻村深月

子どもたちは夜と遊ぶ(上) Book 子どもたちは夜と遊ぶ(上)

著者:辻村 深月
販売元:講談社
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虚数であり、存在しない数「i(アイ)」。

見えない「藍」の姿を追い求め、浅葱が犯してしまった罪。

子どもたちは遊び疲れた後、救われることができるのか?

辻村深月強化週間…とか云いながら、まったく“週間”になってないことを、誠に遺憾に思います。だって、読むのに気力も時間も必要なんだもの、辻村深月。

本作『子どもたちは夜と遊ぶ』は、魅力的なキャラクタとその設定に惹かれるものの、最期の落とし方があまり好みではなくて、初読時にがっかりした記憶がございます。さっそくネタバレレビューに早代わりいたしますが、よろしいでしょうか?

そうそう、このレビューでは月子や孝太くんと同じ時を過ごした彼を「浅葱」、浅葱が捜し求める兄を「藍」として扱うことに致します。その部分まで正確に記すと、混乱必至ですので。だって、まだ私の中でも充分に消化しきれているとは云い難いですし…。

まず、兄である「藍」が浅葱の作り出した(二重)人格だった…という点。はっきり云って「やっぱりそれかよ~」と思ってしまいました。二重人格ネタって、確かに落とし易いし描き易いのかもしれませんが、あれだけ「藍」に逢いたがっていた浅葱に、もっと救われるエンディングは用意してあげられなかったのか…と哀しい。恭司が「藍」だったネタの方がよっぽど素敵に思った、私。ラストの恭司なんて、充分にその資格があったし。最期に恭司として月子に再会した彼は、自分が壊してしまった最愛の彼女を見て、どう思ったのか。「不幸にならないで」と自分が不幸を与えてしまった彼女に、どんな願いを込めたのか。浅葱は幸せになる道をどこで間違ってしまったのか。

確かに、浅葱に日常を与えてしまうことは「破綻」を意味しますよね。殺人という罪を犯してしまった彼に、もう日常に戻ることは許されない。道から外れてしまった浅葱に、文字通り生死をかけて手を差し伸ばした月子。その月子の手を振りほどいてしまった彼に、もう道は無くなってしまいました。浅葱と対峙した月子の決意…それは『ぼくのメジャースプーン』でも語られていて、『ぼくの~』を読んだときに改めて驚嘆させられたものですが、もし月子の手を浅葱が離さなかったら…未来は変わっていたのかな?それとも、自分の知られてはならない過去を握る彼女を、浅葱はいつか手にかけてしまっていたのかな?未来は可変でしょうか?

そして、本作での仕掛けられている叙述トリック(?)月子と孝太くんの関係を差して私はそう呼びますが、これは初読の際には全く気付けませんでした。再読した今回も、「うわぁ、際どい書き方してるなぁ」と思いましたね。ただ、フェアかアンフェアかと聞かれれば、フェアかな、と思います。ただ、変わった家庭(日向子さんが絶対的な原因だ)だとは思いますが。浅葱がこの事実をもっと前から知っていたら…とここでも悔やまれる。

ダメだ、浅葱が好きすぎる自分がいる…。女性受けを狙った漫画キャラクタのような彼にすっかり惚れている…。

本作は浅葱をはじめとする“魅力的なキャラクタ”に引っ張られるかのように成立している作品。月子も孝太くんも恭司も秋先生も、みんな魅力的。『冷たい校舎の時は止まる』でも感じたことですが、「こんな奴等いねーよ」と思わせる反面「あぁ、いるいるこんな奴」とも思わせる、そんな微妙な中庸感を持ち合わせたキャラクタ作りが、辻村氏は巧いです。彼らがどうやっても合わない…という方は辻村作品がどうあっても合わないし、それは人間のエゴと向き合うのが辛いという危機感がそうさせるのかもしれない。

とにかく辻村作品はとても面白い反面、連続で読むのは辛すぎる。強化週間と銘打ってしまった以上『凍りのくじら』まで読みますが…日々こういった小説を書き続けている辻村氏の精神状態がちょっと心配になったりならなかったり。

子どもたちは夜と遊ぶ(下) Book 子どもたちは夜と遊ぶ(下)

著者:辻村 深月
販売元:講談社
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