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2006/10/10

『陰の季節』 横山秀夫

陰の季節 Book 陰の季節

著者:横山 秀夫
販売元:文藝春秋
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警察内人事を素晴らしき采配で操る“エース”二渡。

県警内で起こった問題のすべては二渡の前を通過し、人事の形でアウトプットされる。

警察小説を新しい切り口で描いた連作短編集。

二渡警視、好みです。

いきなり告白です。中年男性にはこれっぽっちも興味なかったのですが、横山秀夫氏の描く中年オヤジは常にセクシィですね。この連作短編集に通して登場する二渡警視は、とにかくキレる。絡みに絡まった“人事のパズル”をひとつずつ紐解き、どこから見ても見事な人事に組み直す。それが二渡警視の仕事です。D県警最年少で警視に昇進…という見事に私のツボを付いた設定はもちろん、そのストイックな性格がこれまた萌える。どこで二渡警視が見ているかわからない、まるで市原悦子のように県警内のすべての事象に通じています。

そんな二渡警視をも唸らせたのが、第一話「陰の季節」に登場した尾坂部部長。警察内部での口約束は掟に相当する。そんな掟を破ってまで、現在のポストにしがみつこうとする尾坂部部長の真意とは?結末から云えば、この尾坂部部長に二渡警視は一杯食わされるのですが、尾坂部部長が勝ったのかと云えば…そうしないところが横山秀夫氏の憎いところ。刑事は犯人に手錠を掛けるからこそ、刑事でいられる。その精神、アツイですね。

この短編集で私が一番好きなのは二話目の「地の声」なのですが、主人公の新堂が最後に二渡警視の真意を人事名簿で知ったときの絶望と云いますか、どこにも向けることのできない憤りが良かったですね。自分の信念で助けた男に、足元を掬われた新堂。そんな新堂が第四話「鞄」で“エース”二渡に助けを求めたらどうだと持ちかけるところでさらにぐっときました。あぁ、認めてるんだなぁと。

なんか、読んだことのない方にはまったくわからないレビューで申し訳ないです。

人事制度というのは、警察に限ったことでなく外部の人間にはわからないようになっているものですが、この『陰の季節』で描かれているような足の引っ張り合いはどこの会社でも行われているのでしょうね。それを警察で描くというのが、新しい。秩序を司る警察内部ですら、秩序を守りきれていないのですから。

そうそう、この『陰の季節』は月曜ミステリー劇場でドラマ化されていたようですね。二渡警視は上川隆也さんですか…悪くないんだけど上川さんではちょっと優しすぎるような気がする。なんかもう“見るからにナイフ”みたいな切れ長の、ミッチー(及川光博さん)なんてどうですか?

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コメント

これ先日BOOK OFFで購入しました やはりおもしろそうですね 
イメージとして渋すぎる警察ミステリを持ってたのでなかなか手つかずだったんですけど 読むのが楽しみです

投稿: きりり | 2006/10/10 11:20

こんにちは。市原悦子で爆笑しました。確かに権力を持った市原悦子ですね。しかも言葉少なという端から見ると恐ろしい二渡警視。素敵です。私はオヤジスキーなので横山作品はたまらないです。これ、ドラマ化されてたんですね。見たかった。そういえばクライマーズ・ハイは録画したんですがまだ見ていないんです。好評だったようで楽しみ。あれも軒並みオヤジなキャスティングですね。

投稿: ソラチ | 2006/10/10 11:21

こんばんは
「陰の季節」は私が一番最初に読んだ横山物です。
二渡のキャラがいいですよねー。
当時面白すぎて衝撃を受けました。
その後は、おきまりの横山モード一直線。
一ヵ月間、横山作品の合宿になってました。

横山シリーズで私が一番すきなキャラは「臨場」の倉石検視官です。
シリーズ化してもらいたいぐらいの作品です。

投稿: うだじむ | 2006/10/10 22:21

☆きりりさん☆
私が当初、横山秀夫氏に持っていたイメージは「極渋の年配向け社会派」というものでした…あぁ、なんて馬鹿な自分!
本から醸し出る雰囲気を良い意味で裏切る、読み易い作品ですので、きりりさんも是非どうぞ!

投稿: まじょ→きりりさん | 2006/10/11 00:10

☆ソラチさん☆
扉の陰からこっそりと覗き見をするのが趣味の二渡警視…彼の持つ黒皮の手帳はD県警が特別配布した超高性能マイクロデータベースだったのだ!とちょっと悪乗り。
土曜のお昼くらいに再放送してくれないかなぁと期待しております、ドラマ。
「クライマーズ・ハイ」良かったですよ~。ちょっと根気が要りますが(なんてったって3時間)魅力的なオヤジにうっとりのひとときです!

投稿: まじょ→ソラチさん | 2006/10/11 00:17

☆うだじむさん☆
コメントありがとうございます!
私も「クライマーズ・ハイ」を読んでからというもの、横山秀夫プチ合宿中です。どれもこれもはずれなし!だなんて、なんて稀有な作家さんなのでしょう。まだ読んでいない作品がある幸せを感じております。
うだじむさんのオススメは『臨場』でございますね!今、『第三の時効』を読書中ですので、次は『臨場』にトライします!

投稿: まじょ→うだじむさん | 2006/10/11 00:21

上川さんはちょっとイメージ違いますね もう少しシャープさがあったほうが.. いつも思うのですが、現実あまりそういう人いないでしょうが
二渡は陰の季節のイメージと2話以降のイメージが、ちょっとずれますね それが彼を外から見たときのイメージなのか興味をそそられました

投稿: きりり | 2006/10/16 11:33

☆きりりさん☆
『陰の季節』読まれたのですね!上川さんはちょっとイメージ違いますよねぇ。実際に二渡警視のような方がいらっしゃったら、生き難くてしょうがないのでは?と心配になってしまいます。
でも、冷たくて切れる男は私の超ど真ん中で好みだったりします。

投稿: まじょ→きりりさん | 2006/10/19 21:32

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主役は二渡真治 警務課調査官  警察内の人事を素案作りをする若き警視 エースである エースの意味は、若くて秀でてると言うのではなく、 まさに人事のカードのエースを握っているからである 不祥事を起したものを目立たせず どこかへ飛ばしたり、 勇退の先の天下り先...... [続きを読む]

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