« 『図南の翼』 小野不由美 | トップページ | みんなの読書癖○体育の日はオリンピック開催式の記念なんだから10月10日じゃなきゃダメでしょ編 »

2006/10/31

『黄昏の岸 暁の天』 小野不由美

黄昏の岸 暁の天―十二国記 Book 黄昏の岸 暁の天―十二国記

著者:小野 不由美
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

泰王登極わずか半年にして、戴国に起こる惨劇。

反乱鎮圧に向かった地で行方知れずとなった驍宗、その後を追うように泰麒までもが姿を消す。

隻腕の将軍が最期に頼ったその人とは…慶国新女王・陽子。

泰麒にあの木漏れ日のような微笑をカムバック!!

はぁはぁ、ぜぃぜぃ。なんかもぅ、お姉さんは切ないです。『風の海 迷宮の岸』で悩み苦しんで、ようやく唯一無二の王を選びきった泰麒。そんな泰麒の幸せが半年足らずで終焉を迎えようとは。

驍宗が反乱鎮圧に向かった先で行方不明に…そんな悲報に幼い胸を痛める泰麒に忍び寄る魔の手。驍宗ならびに泰麒に手をかけ、王座の簒奪を企む者が。そんな悪意から己の身を守るために、泰麒はこれまで起こすことのできなかった蝕を起こす。鳴蝕-麒麟の悲鳴が起こす最小の蝕を。

王も麒麟も居ない国の政治が軌道に乗るはずも無く、簒奪者の手によって荒廃の一途を辿る戴。そんな戴を見ることが、戴のために何もできない自分が、なにもかもが歯がゆくて、最愛の友と共に決死の覚悟で慶国・金波宮まで辿り着いた戴国将軍…それが李斎。李斎の望みはただ一つ、かつての戴を取り戻すこと。

その望みを叶えるため、李斎は陽子にひとつの罪を唆す。軍を他国に侵入させる-覿面の罪を。覿面の罪は国氏(国の号)すらをも変えさせるほどの大罪。もちろん、王も麒麟の命も…無い。胎果であり、王様業の経験も浅い陽子はその故事を知らず…って、そこは長寿なことだけが誇り・雁国主従がいつものように仲睦まじく、唐突に起こしになられて陽子を止めるのですが。

王がすべきことは、まず自国を着実に導くこと。王の登極間もない慶国に他国を救う余裕はなく、陽子が悩んだ末に出した結論とは…十二国が団結し蝕によってあちらの世界に流れ着いた泰麒を捜索すること。麒麟であれば最小の蝕を起こすことができ、麒麟の気配を感じることもできる。まさにナイスアイディアなのですが、こちらの世界では十二国が共同でなにかをするという習慣そのものがありません。そこは胎果出身の陽子の柔軟な思考が物を云います。「所詮は他国のこと、なるようになれ、というわけだ?」という超ドS発言で延王を挑発し、なんとか重い腰を上げさせることにも成功します。

あちらの世界では泰麒がどのような生活を送っていたのか。そのあたりは『魔性の子』に詳しいのですが、それは本作とはまた別の話。『魔性の子』は読むのが本当に辛いんですよね。いつかきちんとレビューしたいと思ってます。

さて、物語の骨子は以上のような感じです。ここからは本作初登場の各国主従について書きましょうかね。

まずはナルシスト主従・範国。いやぁ、範国主従は最高ですね。自分の気に入った召し物が揃わないと着替えなんてしてやらないっ!と駄々をこねる氾王(注意:男)。そして、氾王に嬌娘(ひめ)と可愛がられ、温室育ち我侭放題の氾麟。雁国主従なんて山猿小猿呼ばわりですからね。最強です。

そして漣国。今回廉王は畑仕事が忙しくて参加できなかったのですが(笑)、最愛の廉麟を今回の大事業に遣わしてくれました。廉国主従はあんたら中学生かっ!ってなくらいピュアラバーなのですが、そんな廉麟に延王の魔の手が。尚隆、あんた廉麟くどいたね?くどいてるね?そんな尚隆も廉麟ののろけにやられて一発ノックアウトです。「私たちは、王がお側にいなければ生きていられないのですもの」「王のものなんだもの…」こうまで云われて引き下がれなかったら尚隆、男じゃないです。

そんな各国主従の協力もあって、ようやく泰麒を発見。泰麒を迎えに行く大役を買って出たのは…傷心の尚隆。「泰麒、と言って分かるか」と強き光をもって手を差し伸べる尚隆。もう二度と戻ることはないと誓ったかの地に、因果によって戻ってきてしまった尚隆。彼は弔いに代えて軽い目礼を…

やっぱり、キメることろはバキッとキメますね、尚隆。

そして、麒麟としての力と長い月日を失いながらも戻ってきた泰麒。泰麒は李斎と共に戴国へと戻ることを決意する。なにもできない麒麟であっても、戴国国民に希望の光を与えることができるなら…と。泰麒の生活はこれまでの充分苦しいものでありましたが、ここからが泰麒の正念場。これからもっと苦しい道が彼の前には敷かれているのでしょう。早く驍宗に出逢えると良いね、泰麒。

最期に、私が『黄昏の岸 暁の天』で最も好きなシーンを紹介しましょうか。それは421頁、世の中すべてが憎いのではないかと思わせる浩瀚の長台詞。あまりの長さに引用するのは避けますが(というか、したくない)きっと浩瀚はこれを息継ぎ無しに云ってのけるのでしょう。あれだけ捲し立てられて「何か間違っておりますか」と聞かれたからって「間違ってるよ、あんた」と云えるほどの度胸は、陽子にもなかった模様です、はい。ただ、この長台詞で一気に私の心を鷲掴みした浩瀚はやっぱり間違ってなかったのだと思います。

|

« 『図南の翼』 小野不由美 | トップページ | みんなの読書癖○体育の日はオリンピック開催式の記念なんだから10月10日じゃなきゃダメでしょ編 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/38084/4010798

この記事へのトラックバック一覧です: 『黄昏の岸 暁の天』 小野不由美:

« 『図南の翼』 小野不由美 | トップページ | みんなの読書癖○体育の日はオリンピック開催式の記念なんだから10月10日じゃなきゃダメでしょ編 »