« 『第三の時効』 横山秀夫 | トップページ | 『風の海 迷宮の岸』 小野不由美 »

2006/10/14

『月の影 影の海』 小野不由美

月の影 影の海〈上〉十二国記 Book 月の影 影の海〈上〉十二国記

著者:小野 不由美
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

-ゴゼンヲハナレズチュウセイヲチカウトセイヤクスル-

謎の男・ケイキのこの言葉に「許す」と答えたときから、女子高生・中嶋陽子の運命は激しく廻りだす。

小野不由美が描く十二国記浪漫、ここに開幕。

何度読んだって、いつ読んだって、泣いちゃうんだから!

ようやく開幕を迎えました“10000HIT御礼 十二国記レビュー”。右サイドバーで一方的かつ乱暴に投げかけておりました(現在は取り外しております)“読みたいレビュー”アンケートで、1位に輝きました十二国記レビューを10000HIT御礼として開始したいと思います。終幕までそんなに時間はかからないと思われます。だって、

何度読んだって、いつ読んだって、おもしろいんだから!

「十二国記シリーズ」は小野不由美主上の描く、成長と友情のファンタジーです。倭から月の影を通り抜け虚海を越えて辿り着いた先には、人道を具現化した麒麟と、麒麟が選んだ王が治める十二の国が。天命を持って王座に座す王は、その国と国民を守り、導く使命があり、十二国の一国・慶を統べるべく慶国の麒麟に選ばれたのが、中嶋陽子、本作の主人公です。

始めはわけもわからず、いつだって威圧的な(笑)景麒に拉致された恰好の陽子。「御前を離れず、詔命に背かず、忠誠を誓うと、誓約申し上げる」というあの、有名な台詞にたじろぐ陽子に、

「許す、とおっしゃい!」

と、ぴしゃり。景麒、貴方誰の麒麟よ?「愚かな!」「聞き分けのない」はまだしも、「私としてもこんな主人は願い下げだが、こればかりは私の意のままにならない」とは、なんたる不良麒麟(笑)いまなら景麒の不器用さを知っている私も、初読の際は「なんじゃ、この男!?」と苛っとさせられました。

襲ってくる妖魔から逃げ切ることができずに、景麒ご一行とはぐれ、独り孤独と戦う陽子。人を信じては裏切られ、遊郭にまで売られそうになり、もう希望も夢も未来も思い描くことのできなくなった陽子が出逢ったのが半獣・巨大ねずみ・楽俊です。

楽俊・LOVE!

ねずみ姿の楽俊の愛らしいことったら無いですNE!どんなドシリアスな場面だって、楽俊の髭がそよそよとそよげば、楽俊のしっぽがふりふりと揺れれば、にんまりとしてしまう楽俊フリークの私。垂涎、じゅるじゅる。『月の影 影の海』は下巻がもう感動の嵐で、何度読んだって号泣してしまうのですが、最初の号泣ポイントは雁国・烏号で楽俊と再会する場面です。

「おいらは陽子に信じてもらいたかった。だから信じてもらえりゃ嬉しいし、信じてもらえなかったら寂しい。それはおいらの問題。おいらを信じるのも信じないのも陽子の勝手だ。おいらを信じて陽子は得をするかもしれねえし、損をするかもしれねえ。けどそれは陽子の問題だな」

たっぷり引用させていただきましたが「殺そうと思った」と告白されて、こう云ってやれる楽俊はすごい。半獣として生まれ、上庠に進学することも、正丁として認めてもらうことも、田圃すら与えられず、ただただ辛い想いばかりを経験してきた楽俊。そんな楽俊が海客として途方に暮れる陽子を、真からの善意で助けてあげられるなんて。楽俊と出逢ったことが、陽子にとっての最大にして最高の奇跡です。

そんな楽俊と陽子も、陽子が慶国の王だとわかるとぎくしゃく。この場面が最高なのだよ!改まり、畏まる楽俊に陽子がかける言葉。ふたりの距離を一気に縮める言葉。

「楽俊はわたしを海客だからといって差別しなかった。なのに王だと差別するのか」
「わたしが遠くなったんじゃない。楽俊の気持ちが、遠ざかったんだ。わたしと楽俊の間にはたかだか二歩の距離しかないじゃないか」

そう云う陽子に心を打たれる楽俊。そして楽俊が発する言葉は、

「……おいらには三歩だ」

うぉぉぉぉぉぉ!感動!超感動!ダメだよ、もう前が見えないよ。このシーンは思い出しただけで涙が出てきます。感動し、(ねずみ姿の)楽俊を抱き締める陽子。ここで楽俊が陽子にかける、

「お前、もうちょっと慎みを持ったほうがいいぞ」

も最高。いや、素っ裸で往来をうろうろする楽俊もどうかと思うのですが…それはまだ陽子の知らないこと。

その後、延王・尚隆に保護され、玄英宮に案内される陽子。ここで陽子は“王になるかならざるべきか”を問われることになるのですが、このとき黙りこくっていたジュウユウ(冗祐)が主命に背き、陽子に声をかけます。

-王座を望みなさい。あなたになら、できるでしょう。

いつも独りだった陽子とともに、陽子をいつも見つめていたジュウユウの言葉だからこそ重い。主命に背いてまで陽子に伝えたかったその言葉こそが真実です。あぁ、ここでも号泣ですよ。ジュウユウ最高!それがまるでホイミンのような姿であっても(笑)

そしてラスト。延王の助力を得て、景麒を奪還する陽子。成長した陽子を見て、「本当にお変わりになった」と息を呑む景麒。そして二度目の誓約。薄く笑い「-許す」と陽子が決意したところで『月の影 影の海』は終焉を迎えます。でも、陽子の本当の戦いはここからなのですよ!あぁ、だから十二国記は止められない!!

ダメだ、もう力尽きた。とにかく最高、十二国記。

そうそう、私は一番笑ってしまう台詞で『月の影 影の海』レビューを締めくくりましょうか。

「振り向くなよ。今ちょっと障りがあるからな」

楽俊、やっぱりLOVE!!

月の影 影の海〈下〉十二国記 Book 月の影 影の海〈下〉十二国記

著者:小野 不由美
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

|

« 『第三の時効』 横山秀夫 | トップページ | 『風の海 迷宮の岸』 小野不由美 »

コメント

面白そうですね。
今度挑戦してみます♪

投稿: あさり | 2006/10/15 14:54

☆あさりさん☆
あさりさんは十二国記未読でございますか!手離しで人にオススメできる作品というのは、極々稀でございますが、この十二国記シリーズはその極々稀な作品のひとつです。
是非、お試しくださいませ。

投稿: まじょ→あさりさん | 2006/10/19 21:29

こんばんは。
おお、ついに「十二国記」レビュー開始ですね!
この記事読んでたら、また再読したくなってしまった。
何回読んでもまた読んでしまう、こんな本、他に無いです。
感激感激!
TBさせてね!
ではまた!

投稿: hoy. | 2006/10/21 00:32

☆hoy.さん☆
コメントありがとうございます!コメントのお返しがすっかり遅くなってしまいまして、申し訳ないです。
十二国記最高ですよね!年に一回、必ず読みたくなります。そして、いつも感動させられちゃう。本当にすごいシリーズです。
新しい感動を求めてもう…何年になりましょうか。小野不由美主上の新刊をただただ待ち望む民。何度読んでも感動なのですが、欲を云えば新しい彼らにまた逢いたいです。

投稿: まじょ→hoy.さん | 2006/10/29 17:04

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/38084/3800212

この記事へのトラックバック一覧です: 『月の影 影の海』 小野不由美:

» 「十二国記」に関する私的考察【その1】 [ふくらはぎの誘惑曲線PARTⅡ]
「十二国記」シリーズ 小野不由美 講談社X文庫 White heart および講談社文庫 1992年〜2001年 「十二国記」シリーズを初めて読んだのは、もうかなり以前のこと。 かれこれ現在まで、5〜6回は通しで再読したかな。 ストーリーも結末も、全部知ってるんだけど、読み返すたびにスルッと引きずり込まれてしまう。 この小さな文庫本のトビラを開けたとたんに、私の精神は「十二国記」の世界へとつながってしまうのだよ。 �... [続きを読む]

受信: 2006/10/21 00:24

« 『第三の時効』 横山秀夫 | トップページ | 『風の海 迷宮の岸』 小野不由美 »