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2006/09/13

『クライマーズ・ハイ』 横山秀夫

クライマーズ・ハイ Book クライマーズ・ハイ

著者:横山 秀夫
販売元:文藝春秋
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下りるために登るんさ。

そう云い残して死んでいった同僚の真意を知るため、衝立岩アタックを決意した新聞記者。

登り終えた先に彼が見たものとは?

おんもしろかった!

睡眠導入本として読み始めた『クライマーズ・ハイ』ですが、ページを捲る手が止まらずにそのまま読了してしまいました。朝の4時。

登山モノだと思っていたら、日航機墜落事故を追った新聞記者ストーリーで驚き。でも、ずんごい良かった。元・新聞記者の横山氏が書くだけあって、新聞社内の葛藤とか派閥とか嫉妬とか、とにかくリアル。でも、帯に“文春ミステリ1位”“このミス7位”って書いてありますが…ミステリじゃないよね?

良い作品に出逢ったときって「とにかく読んでみてください」としか云えないですよね。このレビューをどんな風に始めようかと、画面を眺めること10分が経過しております。書いては消し、書いては消し。こんなレビューを読んでもらうよりも、実際に『クライマーズ・ハイ』を読んでもらった方が嬉しい。そんな思いにさせてくれる作品に出逢ったのは、本当に久しぶりです。

上と下の板ばさみになりながらも、日航機事故の真実を伝えたいと全権デスクに座り続ける悠木。死に物狂いで送った雑記が掲載されなかったにも関わらず、悠木を信じ続ける佐山。事故現場に足を踏み入れたことによって、記者人生の大きな転機を迎えた神沢。後輩記者が大きな飛躍を迎えようとしている様に嫉妬せずにはいられない等々力。悠木を影ながら支える同期の岸。そして、くも膜下出血で目を開けたまま動きを止めた安西。

とにかく、登場人物全員が輝いていて、誰が欠けても『クライマーズ・ハイ』は完成しなかったと思います。とても濃密で、一生の経験となった一週間。17年という時が経過し、念願の衝立岩に登山することができたからこそ、冷静に振り返ることのできた一週間。多くの尊い命が失われた影で、手に入れることのできた一週間。最後の日、全権を下りることとなった悠木に、仲間たちがかけた言葉につい涙が零れました。

とにかく読んでくださいとしか云えない名作。

横山氏の他作品も絶対に読もう。あとは、NHKが製作したというドラマも絶対に観よう。睡眠導入本だなんて扱おうとしたことは許してください。素晴らしい3時間をありがとうございました。

クライマーズ・ハイ DVD クライマーズ・ハイ

販売元:角川エンタテインメント
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コメント

連日通いつめてスミマセン。でも黙っていられない。横山秀夫サイコーですね!!わたし、こんなにハマった作家は本当に久しぶりでした。本当に、とにかく読んでくれ、としか言えないですよね。主人公の悠木は組織では生き難そうだけれどカッコイイおじさんだった。

投稿: ソラチ | 2006/09/13 22:03

これは素晴らしい小説でしたね~。ミステリーと呼ぶのは疑問ですが、筆者の実力を如何なく発揮した作品だと思います。
よろしかったら山崎豊子さんの「沈まぬ太陽」をお読み下さいませ。ミステリではなく企業小説ですが、御巣鷹山の墜落事故も別の視点から扱っており、非常に面白いです。

投稿: たいりょう | 2006/09/14 07:15

☆ソラチさん☆
実は『クライマーズ・ハイ』を手に取ったきっかけは、ソラチさんのブログで横山氏が大絶賛されていたからなのですよ!ソラチさんに大大大感謝です☆
中年のおじさんが主人公の作品で、こんなにも夢中になった作品は本当に久しぶりです。中年の弱音なんて聞きたくないわい!なんて、いつもなら思ってしまうところなのに、その弱音までが素敵に見えました。
横山氏の作品、どんどん読むぞぉ!

投稿: まじょ。@管理人 | 2006/09/14 20:57

☆たいりょうさん☆
この作品で横山氏にすっかり魅了されてしまいました。これまでは“とにかく暗い作品を書く作家”という印象しかなかったのですが、自分の認識の甘さを痛感。
『沈まぬ太陽』ですね!オッケーです。どんな視点で描かれた作品なのだろう…まさか飛行機内の?うん、楽しみです☆

投稿: まじょ。@管理人 | 2006/09/14 21:01

こんばんわ。また来ました。
『クライマーズ・ハイ』は私も先日読んだばかりです。
最後まで決して人生の勝者にはなってない、でも負けてもいない悠木に共感しまくりました。

あえて言うなら、安西の言葉の謎がミステリだと思いますが、傑作はジャンル分け不能、または傑作はミステリに分類するということかもしれません(「面白いSF作品はミステリの棚に入れられてしまう」という言葉もあったりなかったり)。

横山さんの作品では『半落ち』が一番有名だと思いますが、この作品の方がはるかにレベルが上だと思います。

投稿: mangayomi | 2006/09/17 04:23

☆mangayomiさん☆
コメントありがとうございます!
悠木が激動の一週間に終止符を打ったあと、安西の「下りるために登るんさ」に対して送ったアンサーメッセージも、本当に素敵で涙してしまいました。
作者の意図したそのままに、共感を覚えてしまうなんてほとんどないことなのに(天邪鬼な私)。

>傑作はジャンル分け不能

まさにその通りですね。ジャンルなんて通り越して、みんなに読んでもらいたい傑作です。

投稿: まじょ。@管理人 | 2006/09/18 15:14

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クライマーズ・ハイ 横山 秀夫 最近、本が読めない――などと思っていても、いい作品はひとたびページを捲ると止まらないようです。 横山秀夫の『クライマーズ・ハイ』。通勤用と思っていたのに一気に読まされました。ひとこと、最高!! 部下を死なせてしまった過去をもつ地方紙の記者が主人公。役職を拒み、万年遊軍記者として記者人生を全うする。そんな記者人生の中で覚えた登山。同僚である友人と谷川岳の難所に登山を決めていた矢先、未曾有の航空機墜落事故が起きる。全権デスクとして指揮を執ることになった... [続きを読む]

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