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2006/09/21

『出口のない海』 横山秀夫

出口のない海 Book 出口のない海

著者:横山 秀夫
販売元:講談社
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“魔球”を生み出すことを熱望した青年が、乗り込んだ「回天」。

それは脱出装置無しの海の特攻兵器、人間魚雷であった。

彼はなぜ「回天」の乗り込むことを志願したのか。

『クライマーズ・ハイ』を読んで惚れ込んでしまった横山秀夫氏。またしてもやられました!

この『出口のない海』は第二次世界大戦下の日本で、海軍の最終兵器であった人間魚雷「回天」に乗り込んだ、青年の姿が描かれております。甲子園で優勝投手をつとめ、“鶴の舞”とまで評された美しい投球フォームを持った青年。そんな彼が野球という道を諦め、愛する人たちのために選んだ新たな道が人間魚雷。

切な過ぎます。

でもね、読了後なぜか清々しい気持ちになりました。戦争を主題として扱う作品は、その素材のデリケートさ故に目を逸らしがちだったのですが、こんな作品に出逢えるならば、ミステリという戒めを解いても良いかな、とさえ思います。

横山氏はこの『出口のない海』を執筆するにあたり、どれだけ多くの取材をされたのでしょうか。戦争経験の無い私でも、あの時代の異常さがリアルに感じられました。そして、そんな状況下に置かれた青年たちの苦しみも。学校で教える、教科書に書かれている歴史なんて、本当に薄っぺらなものだと実感します。社会科の授業で、皆にこの作品を読ませてあげたい。真珠湾攻撃は何年に起きたか…そんな暗記だけを繰り返してなんになると云うのか。もっと、私たちは考えなくてはならないのだなぁ、と思います。

“魔球”を生み出すことを熱望した青年が、“魔球”をその手から放ることはできたのか。青年はどんな想いで人間魚雷に乗り込んだのか。青年を送り出した仲間はその背中にそんな言葉を無言で送ったのか。とにかく読んで欲しい。横山秀夫にハズレなしとは良く云ったものです。

『出口のない海』このタイトルは本当に秀逸だと思います。

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