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2006/09/07

『顔のない敵』 石持浅海

顔のない敵 Book 顔のない敵

著者:石持 浅海
販売元:光文社
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『扉は閉ざされたまま』でミステリ界を震撼させた石持浅海の最新刊は「対人地雷」をテーマにしたミステリ連作短編集。

「対人地雷」というテーマとミステリとの融合は成立するのか?

積読本消化期間中です。ようやく読めました、石持浅海の最新刊『顔のない敵』。

お恥ずかしい話、「対人地雷」について私が意識したことはこの『顔のない敵』を読むまで全くございませんでした。小渕元首相の時代に対人地雷全面禁止条約なるものに日本が調印していたことも知りませんでしたし、「対人地雷」を除去するために活動しているNPOについても認識しておりませんでした。地雷=踏めば爆発するものという知識のみ。お恥ずかしい話です。

私は完全に“戦争を知らない子どもたち”の世代ですので、戦争が残した傷跡や影響について、考えることや痛ましく思うことはあっても、なにかをしなくてはならないという積極的なアクションを行ったことはありません。完全に“対岸の火事”状態。お恥ずかしい話です。

ミステリで「対人地雷」のようなテーマを取り扱うことは非常に珍しく、本書は石持氏のねらい通り、新しい世代にその深刻さや重要性を認識させるきっかけに成りえる物だと思います。

ミステリとしてもなかなか秀逸。私は短編集最初に収録されている「地雷原突破」がこの作品集の中では一番のお気に入りですが、通常避けるべきである地雷をいかにして踏ませるか…という着眼点が素晴らしいと思います。地雷を本来の目的である凶器として使用する。殺人という行為がそもそも許されないものですが、その殺人の道具として地雷を使用することでその行為をさらに悪なるものにしている。深いです。

この短編集はあくまでも「対人地雷」をテーマにした作品ですので、地雷そのものが登場しない・使用されない作品もあります。ですが、地雷の被害が深刻であるカンボジアを舞台にした作品の方が、より深みがあって考えさせられる。ここでも“対岸の火事”状態を意識せずにはいられません。人はその状況下に置かれない限り、深く物事を思考できないものなのでしょうか。単に私の想像力不足なのかもしれませんが。

ラストに納められている石持氏の処女作も、そのトリッキーな舞台設定が良いです。なぜあの状況下で殺人を起こさなくてはならなかったのか。必然性としてはかなり薄いですが、パニックになった犯人の心境ならばもしくは…といった感じです。

石持氏はこれからがとても楽しみな作家さんのお一人です。『扉は閉ざされたまま』クラスの名作をまた期待しております。

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» 石持浅海「顔のない敵」に見る彼の原点 [ipsedixit assembly]
石持浅海という作家をご存知だろうか?私が昨年末に嵌ったミステリー作家なのだが、こ [続きを読む]

受信: 2007/01/21 18:53

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