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2006/09/02

『赤緑黒白』 森博嗣

赤緑黒白 Book 赤緑黒白

著者:森 博嗣
販売元:講談社
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死体にスプレー缶で色を着けてまわるペインタ殺人事件が発生。

赤、緑、黒、白と次々に死体が彩られてゆく。

Vシリーズ最終巻にして、衝撃のラスト。

ラスト5!!

ついにVシリーズ終焉まで辿り着きましたか。『四季』四部作については一段組な上、息もつかせぬスピード展開で、あっと云う間もなく読めてしまうことが実証済ですので、もうゴールテープが見えてきたと云っても過言ではないでしょう。今週末中に…は勿体無いから止しておこう。

さて、この『赤緑黒白』は衝撃的な出来事が多数起こっておりますので、そのあたりは後程、ネタバレ警告をしてからたっぷり語りたいと思います。たっぷり。このネタバレがやりたくて、ここまで読んできたと云い切っても良いです。

森博嗣作品は、シリーズ1作目と10作目がリンクするという特徴があります。S&Mシリーズの『すべF』と『パン』はかの天才が、Vシリーズでは特定の人物ではなく殺害の動機がリンクしています。殺してみたいという衝動がすべてのきっかけで、その衝動を一般レベルに広く理解させるためになされたオプションがぞろ目やペインタ。そもそも、そんなオプションを付けなければ、衝動的な殺人を続けていけば、彼等は一生捕まることなく快楽を享受することができたのに、なぜそのような理由付けをせずにはいられなかったのか。『デルタ』ではその理由を「自分自身を抑制するために」、『赤緑黒白』では「自分の存在が有益なものであるとアピールするために」と表現されております。この理由付けを考察するたびに、彼等ふたりの殺人者は「天才ではなかった」んだな、と思います。真の天才ならそんな理由付けすら必要ない。一般に理解してもらう必要は無いのです。かの関根朔太がそうでした。そして真賀田四季がそうなります。理由付けをしてしまう時点で、彼等の思想は一般レベルにまで堕ちてしまっている。「自分自身を抑制するために」…なぜ抑制しなくてはならないのか。「アピールするために」…アピールなどしなくとも、気付くべくして気付く真の天才が居るでしょう。彼等は柵を超えてしまったけれども、柵の向こうは必ずしも天才ではない。ならば天才とは一体なんなのか。森作品を読むと、どうしても天才について考察せずにはいられないようです。

さて、よくわからない考察で行数を稼ぎましたので、そろそろネタバレの時間を開始しましょうか。これで、当ブロ愚を開いた瞬間にネタが読めてしまうという心配はないでしょう。配慮が必要なほど、この衝撃は直に感じて欲しいものです。では、ネタバレです☆

犀川先生の少年時代が読めて、私は幸せでございました!

貴方の歪んだ人格もとい捻くれた…って、全く褒め言葉が思い浮かびませんが、とにかく犀川先生の人格形成に大きな影響を与えたであろうこの時期。そりゃ、両親が離婚して、引き取られた母親があんな奇天烈斎な人だったら、あんな風になるわ。喜多先生という友人が犀川先生に出来たことは、まさに青天の霹靂。最高の出会いだったと思います。

というわけで、へっ君=犀川先生。衝撃のラスト、林さんが持ってくる入学祝いに書かれた“○川 林”。○はもちろん犀。犀川林…『デルタ』で紅子さんが仰った「林さんって、変わった名前でしょ」の意味がここで!変わりすぎだよ!これまでの私の人生で、林さんというファーストネームの御仁にお会いしたことはございません。

シリーズを通してこのへっ君=犀川先生に気付くポイントは、瀬在丸紅子のイニシャルがC・Vなのに対し(『六人の超音波科学者』)へっ君が使っていたサッカーボールに書かれたイニシャルはS・S(『朽ちる散る落ちる』でしたか?)。瀬在丸のCでも、林のHでもないSって名字はなんなんよ?ってところでしょうか。

そして、Vシリーズの時代設定が過去であることについて。これは登場人物全員が携帯電話を所有していないことや、『超科学』『ちるちるちる』などで描かれる科学が古く、既に実現しているものがいくつか含まれていることなどで察することができます。つまり、シリーズで常に孤独な作品で有り続ける8作目『捩れ屋敷の利鈍』のみが現在。ダンディズム・保呂草☆と絶叫した私ですが、保呂草さんはあの作品のときに50歳くらいのおじさまだったことになります。そして、『捩れ屋敷』で登場した保呂草さんの古い友人とは犀川先生のこと。20歳近くお歳が離れておりますが、保呂草さんとへっ君の仲の良さはこの『赤緑黒白』でも証明されておりますし、これからレビューする『四季』でも描かれております。

この衝撃のトリックを私が知ったとき(『捩れ屋敷』のあとネットで)は、あまりのことに一晩寝られず、既刊のVシリーズを一気読みしました。指摘されてみると、どれもこれもおかしい。そんなこと全く気が付かなかった自分に嘲笑。皆様はVシリーズのどのあたりでこのトリックに気付いたのでしょうか?ぜひ、お聞かせください。

というわけで、愛しの保呂草さんが阿漕荘を去り、その後どのような世界を見てまわったのかはまた別のお話。『四季』に保呂草さんがメインで登場したときは衝撃だったなぁ。しかも彼女と一緒だっただなんて。れんちゃんとしこさんについても『レタス・フライ』収録の「刀之津~」で語られておりますので、彼等のその後が知りたい方は是非。

この大トリックと保呂草さんの存在が、私の中で「S&MよりもV!」と云い切るすべてになっております。是非、皆様もVシリーズ10作をお楽しみください。

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コメント

恥ずかしながら自分は最後まで気づきませんでしたww
時代的な描写がおかしいことには気づいてはいたのですが、
肝心のへっ君の部分が…。

読みおわったあとはいろいろと引っ張りだしてペラペラめくった記憶がありますww

投稿: あさり | 2006/09/02 19:02

☆あさりさん☆
私は時代描写の部分ですらも気付けませんでした…。物語を追うことに精一杯で、作品を読み込んでいない証拠ですね。
それにしても、S&Mシリーズで県警の皆様が林さんを全く知らないというのはどういうことなんでしょうね?三浦さんとか捷輔叔父様あたりは知っていてもおかしくない年代だと思うのですが…。

投稿: まじょ。@管理人 | 2006/09/02 21:30

こんにちは。私も後半まで本当に気づかなかったです。メフィストで「刀之津診療所の怪」を読んでハッと思ったのを覚えてますが、「赤緑黒白」の前あたりでしょうか。林さんがファーストネームだというのも「四季」で気づいたくらいダメダメですし。苗字がなんで3つもあるんだろうと思っていたくらいで(恥。気づかないと驚きも大きいので、その分楽しめていいですけれど。

投稿: ソラチ | 2006/09/02 22:42

☆ソラチさん☆
私は名字が3つだってことすらも気付きませんでした…。紅子があれだけCだCだといっていたのに、瀬在丸のSね!と思っておりましたし。「ぶるぶる人形にうってつけの夜」だって、完全にれんちゃんと萌絵が遭遇したものと思っていたくらいで。
森先生の思惑底なし沼に、どっぷり浸かっておりました。底なし温泉だったのかもしれません…。

投稿: まじょ。@管理人 | 2006/09/03 12:32

こんにちは。

本日、赤緑黒白を読み終わりました。

ところが、自力で気づいたのが
捩れ屋敷の利鈍だけが、時代が違うってことだけで、
この記事を読むまで、へっ君の謎には
まったく気がつきませんでした!

・・・・・・なるほどねえ。

超ビックリです!!!

じゃあ、世津子さんは、
七夏さんの子ってことになるのか。

あらあら。

いろいろ読み返してみないといけませんね(笑)。

ありがとうございました!

投稿: チャーリー | 2006/09/09 00:02

☆チャーリーさん☆
超ビックリですよね!
へっ君の謎については、森先生自身が『四季』の中で種明かし(?)をしておりますので、『四季』もお読みいただけると二倍三倍に楽しめると思います!
犀川先生と世津子さんがどうやって出逢ったのか、紅子と七夏は友好的な関係を築くに至ったのか…明かされない謎もたくさんありますが、このあたりを妄想するのがまた楽しいです。
それにしても、『すべF』で世津子さんに「創平君」と呼ばせた時点でここまで考えていたのなら、森先生は超人だ…。

投稿: まじょ。@管理人 | 2006/09/09 00:17

やっとVシリーズを全部読みましたよ~。まじょさんに遅れること数週間、まったくジャックじゃない状況失礼しました。
単体の作品としての出来は不満がありますが、まあへっくんの謎がわかっただけでも。
一応気付いたのは「六超」になりますかね~。時代設定が古いのはもう少し前に気付きましたが。

そしてあのラスト、これは「四季」を読まなくちゃいけませんわね~^^;;

投稿: たいりょう | 2006/10/03 09:00

☆たいりょうさん☆
Vシリーズ読破、お疲れさまでした!
たいりょうさんがどんどんと真相に近づいてゆく様に、手に汗握ってしまいました。『六超』で気付かれるとは…流石ですね!
ひとつのシリーズが終わって、気持ちをリセットしている読者に、森先生から投げられた爆弾…やっぱり侮れない森博嗣。
次は『四季』&Gシリーズですね!『四季 冬』がこれまた問題作なのですが、たいりょうさんがどんなレビューをされるのか気になります。『四季』の後には「百年女王シリーズ」を是非お読みください!

投稿: まじょ→たいりょうさん | 2006/10/04 19:54

捩じ屋敷に古い友人ってありましたっけ!ひ〜今日読んでみます
こんな過去を背負ってたらどんな子になるかって言うのが犀川先生なんでしょうね
取りあえずVシリーズ読了 なんだか寂しい感じですね
短編を読んでから、四季を読みます

投稿: きりり | 2006/12/06 15:15

☆きりりさん☆
Vシリーズ読了、おめでとうございます!
『捩れ屋敷』の古い友人云々はオープニングの保呂草さん独白に記載があります。たぶんそれがへっ君なのだと。でも、『四季』で大どんでん返しがあるんですけれどね。
S&M→Vまで読んだら『四季』はもうとにかくアツイ作りになっておりますので、是非ともお楽しみください~。

投稿: まじょ→きりりさん | 2006/12/07 00:26

ばか・・・ですか??
第一作目で気づいてましたが・・
森博嗣がいうところの一般人なんでしょうね・・・

投稿: f | 2012/04/28 21:25

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