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2006/09/16

『そして、警官は奔る』 日明恩

そして、警官は奔る Book そして、警官は奔る

著者:日明 恩
販売元:講談社
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幼い少女の監禁から発覚した、密入国外国人と国籍を持つことのできない子どもたちの今。

法で守ることも、裁くこともできない彼らの苦悩を救えるのは?

日明恩の警官シリーズ第二弾。

『それでも、警官は微笑う』でメフィスト賞を受賞した日明恩氏の「警官シリーズ」第二弾です。正直『それでも~』は私には合わなくって酷評したのですが、この『そして、警官は奔る』は良かった。

登場するのは不器用で、自分の気持ちをうまく言葉にのせることの出来ない「鬼畜」武本。そして、犯罪者を自らの手で“壊す”ことを望む「冷血」和田。そして、犯罪者を優しく見守り続けることを心情とする「温情」小菅。この3人がそれぞれのアプローチで、密入国外国人と彼女らが産み落とした幼き子どもたちの現状を、それを守ろうと犯罪を犯す人間を追います。

前作『それでも~』と比べ、問題が明確化されているため物語にうまく入り込めます。『それでも~』はいろんな要素を詰め込もう詰め込もうとしていて、どうにも収拾が付かなくなってしまった感があったので、それが改善されただけでもう満足。キャラクタについても『それでも~』では各々が自分勝手に動き回って事件を複雑にさせていたのに対し、本作ではキャラクタに「鬼畜」「冷血」「温情」といった名称をつけることで役割に差別化を図っているので、どのキャラクタの心情を追ってゆけばよいのか判断し易い。帯で(マイブームが起こりそうな)横山秀夫氏が「他のどのヒーローでもなく、私は「武本」を相棒に選ぶだろう。」と仰られている通り、武本がとにかく良いです。

事件についてもラストの大オチが良いですね。情状酌量の余地がある犯罪者を「冷血」に裁くべきなのか、「温情」で許してやるべきなのか。やっぱり武本の不器用な言葉が真なりだと思います。なんどでも捕まえれば良い。そうしてゆくうちに、なにかがどこかで変わってゆくのだと思います。

そして、来年からはキャリアとして警視庁に入庁することが内定している潮崎。『それでも~』が出版された際には「踊る大走査線」が比較対象として挙げられておりましたが、本作の方がその対象としては相応しいですよね。潮崎がキャリアとして入庁することで、武本のような不器用な刑事をひとつの部品として輝かすことができるのか。本作の出来がとても良かったので、これからもウォッチャーしてみようかな、と思います。

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コメント

これは面白そうですね。
鬼畜に冷血、大好きな言葉です( ̄ε ̄;)
オチつきの物語も大好きですしね。

投稿: シン@偽哲学者 | 2006/09/18 20:36

☆シン@偽哲学者さん☆
「鬼畜」と云いつつも、「鬼畜に見える」という中途半端さではあるのですが…。でも、ひとつの物語として充分にまとまった一冊だったと思います。
オチもなかなか。劇的なオチでは無いのですが、「おおっ!こう来たか!」とそれまでの伏線が見事に回収された納得のオチでした。機会があれば是非。

投稿: まじょ。@管理人 | 2006/09/18 23:12

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