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2006/09/30

『影踏み』 横山秀夫

影踏み Book 影踏み

著者:横山 秀夫
販売元:祥伝社
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家人が寝静まった横で窃盗を働く“ノビ師”真壁。

塀の中から娑婆に戻ってきた途端に降りかかるいくつものトラブル。

真壁は中耳に住まう弟ともに、トラブルを解決することができるのか。

ミステリブロ愚のはずなのに、右サイドバーで開催中のゲームプレイ日記にばかりで夢中で申し訳ないです。BOOKレビューは…5日ぶりですか。お恥ずかしい限りです。

さて、只今プチ祭が開催されている横山秀夫氏。この『影踏み』は“ノビ師”の真壁を主人公に据えた連作短編集です。もちろん本作も良かった。どうして主題の異なる作品ばかりなのに、こうも良い物語をつむぐことができるのでしょうか?

窃盗で警察に捕まったことを恥じた母親によって業火に焼かれた双子の弟を中耳に住まわし、弟と助け合うことで降りかかる火の粉を掃う真壁。二重人格とは少し異なるこの関係が、この作品の肝です。死んだ弟が本当に真壁の中耳に居るのではないか?と思ってしまうほど、このふたりの関係は自然です。同じDNAを持ったもうひとりの自分、その絆があればこのくらいのこと出来てしまうかもしれないと思わせてしまうところが、横山氏の筆力の素晴らしいところです。

いくつかのトラブルに巻き込まれ(そのトラブルも完成度の高いミステリテイストに仕上がっていて満足)互いの能力を最大限に活かし、危険を回避し続けた彼らにも終わりがやってくるのですが、その終わり方も切なくて最高。なぜ弟は中耳に住み続けたのか、住まわしていたのは兄なのか弟なのか。ああいった終わり方をするとは思っていなかったので驚愕。すごいね、横山氏。

なんかもう、横山氏の作品というだけで手放しで褒めているような感覚に陥って参りましたが、そうじゃないんですよね。なにか面白い本が読みたいときの横山氏…ということで、ポイントポイントで横山氏の作品をチョイスしてゆきたいと思います。

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2006/09/25

『真相』 横山秀夫

真相 Book 真相

著者:横山 秀夫
販売元:双葉社
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一つの事件が終わった後に、人の心の事件が始まる。

事件のあとに加害者、被害者、密告者の心の中に残るものとは何なのだろう。

横山秀夫が描く事件後の人間の心の深層とは?連作短編集。

右サイドバーに納められております掲示板をご覧いただければお解かりかと存じますが、すっかりゲームに夢中です。でも、ちゃんと読書もしてます…寝る前だけだけど…

今回のレビューも、ゲームに勝るとも劣らず夢中になっております横山秀夫氏の連作短編集でございます。いやぁ、横山氏は本当に安定した読書を私に与えてくれますね。ただ、主題は違えど作品全体に流れるリズムなんかがどれもこれも一定なものですから、立て続けに読むのはどうかと思ってまいりました。あ、飽きそう…。

この『真相』は一つの事件が終わったあとに、関係者の人間に残される虚無感や罪悪感なんかを深く描き出しております。私のベストは「18番ホール」でしょうか。疑心暗鬼にならざるを得ない人間の心理や焦りに手に汗握りました。そしてあの悲しい結末。短い短編の中に、よくあれだけの要素を詰め込めたなぁと感心してしまいます。短編集ラストの「他人の家」なんかも良かったですね。“情けは人の為ならず”ってちょっと用法が違っておりますが、真の善意だけで親切にしてくれる人間なんてそうはいないのです。そこには必ず何らかの思惑があって然るべきであって、純粋な親切の方がある意味怖いかもしれない。“タダより高いものはない”ってやつですか?

私はこれまで幸いなことに、平々凡々な人生を送ってきております。“注意一秒、怪我一生”ではありませんが、一瞬の判断ミスがその後の人生に大きな影響を与える。これまで事件や事故に巻き込まれたことがないからといって、これからも巻き込まれないという保証はないのです。“病気になったときに健康の素晴らしさに改めて気付く”のように、事故や事件に巻き込まれたときに、平々凡々であった人生が素晴らしいものであったと気付くような、情けない人生は送りたくないと切に思いました。

今日はずいぶんと格言っぽいものを多用してのレビューと相成りましたね。

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2006/09/23

達成感?

テンプレートの小カスタマイズを施してから一週間も経過していないのに、今度は大カスタマイズに挑戦してしまいました。

基本パーツはこれまでとほとんど変わらないのですが、以前から試したくて試したくてうずうずしていた、全画面背景をついに施行。読み難いことこの上ないですが、これからいろいろと調整してゆきたいと思います。

今回の大カスタマイズでお世話になった素材サイト様はこちら!

AhLeuCha
空に咲く花
webcitron
Free Wall Paper

ありがとうございました!

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2006/09/21

『出口のない海』 横山秀夫

出口のない海 Book 出口のない海

著者:横山 秀夫
販売元:講談社
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“魔球”を生み出すことを熱望した青年が、乗り込んだ「回天」。

それは脱出装置無しの海の特攻兵器、人間魚雷であった。

彼はなぜ「回天」の乗り込むことを志願したのか。

『クライマーズ・ハイ』を読んで惚れ込んでしまった横山秀夫氏。またしてもやられました!

この『出口のない海』は第二次世界大戦下の日本で、海軍の最終兵器であった人間魚雷「回天」に乗り込んだ、青年の姿が描かれております。甲子園で優勝投手をつとめ、“鶴の舞”とまで評された美しい投球フォームを持った青年。そんな彼が野球という道を諦め、愛する人たちのために選んだ新たな道が人間魚雷。

切な過ぎます。

でもね、読了後なぜか清々しい気持ちになりました。戦争を主題として扱う作品は、その素材のデリケートさ故に目を逸らしがちだったのですが、こんな作品に出逢えるならば、ミステリという戒めを解いても良いかな、とさえ思います。

横山氏はこの『出口のない海』を執筆するにあたり、どれだけ多くの取材をされたのでしょうか。戦争経験の無い私でも、あの時代の異常さがリアルに感じられました。そして、そんな状況下に置かれた青年たちの苦しみも。学校で教える、教科書に書かれている歴史なんて、本当に薄っぺらなものだと実感します。社会科の授業で、皆にこの作品を読ませてあげたい。真珠湾攻撃は何年に起きたか…そんな暗記だけを繰り返してなんになると云うのか。もっと、私たちは考えなくてはならないのだなぁ、と思います。

“魔球”を生み出すことを熱望した青年が、“魔球”をその手から放ることはできたのか。青年はどんな想いで人間魚雷に乗り込んだのか。青年を送り出した仲間はその背中にそんな言葉を無言で送ったのか。とにかく読んで欲しい。横山秀夫にハズレなしとは良く云ったものです。

『出口のない海』このタイトルは本当に秀逸だと思います。

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2006/09/20

『鏡の中は日曜日』 殊能将之

鏡の中は日曜日 Book 鏡の中は日曜日

著者:殊能 将之
販売元:講談社
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14年前に起こった殺人事件の再調査を依頼された名探偵・石動戯作。

現在と過去が錯綜する名探偵最後の事件とは?

『ハサミ男』の殊能将之が贈る水城優臣シリーズ、ここに開幕。

「名作!」と思っていても、再読すると「あれ?」って思うことは皆さまありませんか?叙述モノと呼ばれるジャンルにその傾向が強く現れるのは、仕方の無いことなのでしょう。だって、罠がどこにどうやって仕掛けられているのか、その地図を再読の読者は既に所有しているのですもの。

この『鏡の中は日曜日』再読も、私をそんな気持ちにしてくれた一作。アガサ・クリスティの『アクロイド殺し』くらいになると、最初の衝撃が大きすぎて何度読んでも良いものですが。

実は私『鏡の中は日曜日』は所有しておらず、文庫化を待ち望んでいた一作なのですが、いざ文庫となると『樒/榁』が同時収録ということで、『樒/榁』をノベルスでリアルタイム購入した(この作品で密室本5冊目=非売品のアレを手に入れることができた)私にとってはがっかり。それ以来古本屋『鏡の中の日曜日』ジプシーを続けているわけです。

って「お前のことはどうでも良い」というお叱りが聞こえてきそうなので、愚痴はこれくらいにしましてレビューです。

本作はとにかく初読で楽しんでもらいたい一作。初読の際は「名作だ!」と本気で思いました。『黒い仏』がとにかく問題作過ぎたという噂もちらほら聞こえてきますが…。この作品にはふたりの名探偵が登場しますが、私は水城優臣が大好きでね。「梵貝荘事件」が水城優臣最後の事件と云われておりますが、その後『樒/榁』にも『キマイラの新しい城』にも水城が登場することから、読者人気もなかなかだと想像されます。でも、『鏡の中は日曜日』があるからこそ、その後の事件が生きてくるのであって、是非とも出版順にお読み頂きたいと所望。

作中作として語られる「梵貝荘事件」の物理トリックは拍子抜けと申しましょうか、全く重要ではございませんので割愛。とにかく叙述トリックです。先程から「叙述トリック叙述トリック」と連呼しておりますが、これってネタバレなんじゃあ…。でもまぁ、『ハサミ男』をお読みの方なら「殊能将之はそういう作家だ」という下準備もあろうかと思いますので…ご、ごめんなさいぃ。

でも、殊能氏の作品をランキング化するならば『ハサミ男』の次にはこの『鏡の中は日曜日』が来るのが順当だと思います。とにかく初読で!が合言葉。『ハサミ男』は何度読み返しても良いんですけれどね。

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2006/09/18

『乱鴉の島』 有栖川有栖

乱鴉の島 Book 乱鴉の島

著者:有栖川 有栖
販売元:新潮社
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命の洗濯と題して休養旅行に出掛けた火村&アリス。

ふたりが迷い込んだ孤島で起こる殺人事件とは?

作家アリスシリーズ4年ぶりの長編にして、初の孤島もの!

このブロ愚を始めてもう8ヶ月になりますが、作家アリス(火村)シリーズのレビューを書くのはこの『乱鴉の島』が初めてになりますか。初のレビューが新作だなんて嬉しい限りです。というのも、最近の有栖川氏(漢字表記の有栖川有栖が現実世界の有栖川有栖氏です)はどうにも遅筆で(良心の小文字)このミスの「私の隠し玉」に毎年毎年掲載される『砂男』だって…それを云うなら学生アリス(江神二郎)シリーズだって…。でも、こうして『乱鴉の島』を読めたんだから、もう何も云うまい(もう既に散々云っちゃってるYO!)

下宿の婆ちゃんにお膳立てしてもらい、アリスと共に“命の洗濯”旅行(何度目の婚前旅行だ?)に出発することとなった火村。とある島で下宿の先輩が営む民宿に身を寄せるはずであったが、手違いのため“烏島”と呼ばれる絶海の孤島に迷い込むことに。“烏島”に住まう往年の大翻訳家と翻訳家を慕う面々がひた隠しにする秘密と、IT企業家殺害の謎とは?要約するとこんな感じでしょうか。

その殺害されるIT企業家なんですが、いくらなんでも“ハッシー”の呼び名はどうかと思います。ミダス・タッチなんて素敵な呼称があるにも関わらず“ハッシー”って。シリアスな場面で「ハッシー」「ハッシー」連発されると、どうにもテンションが下がります。どう考えてもホリ○モンがプロトタイプだし。

とにかく本作は事件の発生までが長くって。事件の発生に時間が掛かる本格ミステリは、往々にしてトリック自体に目新しさが無いものです(おいっ!)本作は殺人事件のトリック・犯人当てがメインではなく、“烏島”に集まった面々が抱える秘密とはなんなのか?がメインでしょうか。クローン技術の大家に、早くして愛する妻に先立たれた大翻訳家。ならばその秘密とは?

その秘密も、かなり丁寧に描かれているために想像の範囲内に落ち着きます。ヒム(私は火村のことを“ヒム”と呼んでいます。him)がその秘密に辿り着くまでにあんなに時間が掛かったのが不思議なくらい。まぁ、いつものようにアリスが重要な事案を“些細なこと”としてヒムに話さなかったのが主たる要因なのですが。さすがアリスです。4年ぶりであっても、お約束ごとは決して忘れません。

本作はヒム&アリスVS登場人部全員という図式だったために、アリス以外にも足を引っ張る人間がいっぱい居て、展開がゆるゆるだったのが非常に残念。ページを捲る手が止まる止まる。ミステリが主軸で無かったのも原因ですが、ちょっと物足りない読了となりました。やっぱり“読者への挑戦”が挿入されるバキッと本格・作家アリスシリーズが読みたいものです。

短編の作家アリス、長編の学生アリスで有栖川有栖は楽しむに限りますね。

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ちょっとだけ

タイトル画像など、ちょっとだけテンプレート変更を施しました。

もともとはガーベラをメインにしたテンプレートだったのですが、サイドバー等に使っている薔薇画像の方が目立ってしまっていたので、それに合わせた形になります(なんと本末転倒な心意気)

本当は“和”をテーマにした大掛かりな変更がしたいのですが…じ、時間がない。そして気力もない。

今回の変更で素材をお借りしたサイト様

空に咲く花
webcitron
veil

どうもありがとうございました!

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2006/09/16

『そして、警官は奔る』 日明恩

そして、警官は奔る Book そして、警官は奔る

著者:日明 恩
販売元:講談社
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幼い少女の監禁から発覚した、密入国外国人と国籍を持つことのできない子どもたちの今。

法で守ることも、裁くこともできない彼らの苦悩を救えるのは?

日明恩の警官シリーズ第二弾。

『それでも、警官は微笑う』でメフィスト賞を受賞した日明恩氏の「警官シリーズ」第二弾です。正直『それでも~』は私には合わなくって酷評したのですが、この『そして、警官は奔る』は良かった。

登場するのは不器用で、自分の気持ちをうまく言葉にのせることの出来ない「鬼畜」武本。そして、犯罪者を自らの手で“壊す”ことを望む「冷血」和田。そして、犯罪者を優しく見守り続けることを心情とする「温情」小菅。この3人がそれぞれのアプローチで、密入国外国人と彼女らが産み落とした幼き子どもたちの現状を、それを守ろうと犯罪を犯す人間を追います。

前作『それでも~』と比べ、問題が明確化されているため物語にうまく入り込めます。『それでも~』はいろんな要素を詰め込もう詰め込もうとしていて、どうにも収拾が付かなくなってしまった感があったので、それが改善されただけでもう満足。キャラクタについても『それでも~』では各々が自分勝手に動き回って事件を複雑にさせていたのに対し、本作ではキャラクタに「鬼畜」「冷血」「温情」といった名称をつけることで役割に差別化を図っているので、どのキャラクタの心情を追ってゆけばよいのか判断し易い。帯で(マイブームが起こりそうな)横山秀夫氏が「他のどのヒーローでもなく、私は「武本」を相棒に選ぶだろう。」と仰られている通り、武本がとにかく良いです。

事件についてもラストの大オチが良いですね。情状酌量の余地がある犯罪者を「冷血」に裁くべきなのか、「温情」で許してやるべきなのか。やっぱり武本の不器用な言葉が真なりだと思います。なんどでも捕まえれば良い。そうしてゆくうちに、なにかがどこかで変わってゆくのだと思います。

そして、来年からはキャリアとして警視庁に入庁することが内定している潮崎。『それでも~』が出版された際には「踊る大走査線」が比較対象として挙げられておりましたが、本作の方がその対象としては相応しいですよね。潮崎がキャリアとして入庁することで、武本のような不器用な刑事をひとつの部品として輝かすことができるのか。本作の出来がとても良かったので、これからもウォッチャーしてみようかな、と思います。

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2006/09/14

こんなの作ってみました

怪しいサイトには繋がっておりませんので、まずコチラをクリックしてみてください。

このブロ愚にお越しの方なら判ってもらえっるはず。自分、ギャグセンス皆無ですが…。

いまこのルパン風タイトルメーカーに夢中☆

猛者の参戦、お待ちしております。

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TBSドラマ「カクレカラクリ」

み、観ました「カクレカラクリ」。原作読まずに食べた…もとい観たのですが、原作読んでたら最後まで観ていられなかったかも。

OPからして「金田一少年の事件簿」を連想させる作り。チープな作品のにほいがプンプンするな!と思ったら、予想通りの出来映え。

いきなり登場したゴスロリ女子。スウィングボーイこと平岡祐太くん演じる栗本くんがプレイしていたPSPの恋愛シュミレーションは実在するゲームなのでしょうか?気になる木。

そして、ゴーゴー夕張こと栗山千明ちゃんの登場。あそこで『銀河鉄道の夜』ではなく、夢野久作の『ドグラ・マグラ』あたりを読んでくださると“魔女”って感じで良かったのに。せめて『注文の多い料理店』で。栗山千明ちゃんはメルヘンじゃないよ、魔女だよ(栗山千明ちゃん好きです。鼻高っ!)ひざをちょこんと折って切符(?)を置く様が可愛かったです。

さらに、デビット伊東。なぜか背中に“真心”を背負っておりましたが、あれにはなにか意味があったのでしょうか?べんばあとんで出逢った謎の三兄弟も数字背負ってたしな。加藤成亮くん演じる阿部ちゃんも“プラネタリウム”って書かれたTシャツ着てましたね。でも、同じくTBSドラマ「STAND UP!!」で釈由美子が着用していたおもしろTシャツには負ける。やっぱり、奇才・堤幸彦じゃないと。

さらに風見おぼっちゃま(腰低っ!)と花山次女(彼女のファッションは可愛かったです)も登場し、冒険へ赴く5人が勢揃い。そういえば、銃を構えたおじちゃんの意味もどこへ?

カラクリ自体は3分もかからずに看破。花山家に伝わる石碑なんて、

まったくカクレてないじゃない!

原作の方でもあの難度なのでしょうか?もしそうなら森博嗣作品随一の低難度。120年もあの程度の謎が解かれなったなんて、説得力に欠けます。もちろん誰も本気で取り組んでいなかったってことだよね?と思ったら、泉谷しげるがチャレンジしておりましたか。うん、彼なら解けなかったかもしれない。

事前の妄想では、村全体にとんでもないカラクリが仕掛けてあって、いきなり巨大な建造物が飛び出してくるくらいのことは予想していたのですが、単なるカラクリ人形でしたか。でも、あのカラクリ人形素敵でしたね。あれがこのドラマの中で一番素敵でございました。

主要登場人物5人もみんな常識人で、森作品特有の天才肌がひとりもいませんでしたね。気の利いた台詞がひとっつも出てこない…森博嗣ファンとしては意味なしジョークのひとつもかましてほしかったです。原作ではそこのところどうなのでしょうか?

総括としては、もうちょっと森博嗣カラーを全面に押し出して欲しかったです。このドラマで森博嗣に初めて触れた方に、森博嗣の実力があんなもんだと思われたらショックです。原作読まないと解らないネタがあったと信じて、原作読んでから再度ビデオを観直したいと思います。

そうそう、コカコーラ社製品連発のCMですが、キムタクと渡哲也のジョージアCMの「ぼくはきみのシンデレラボーイ♪」のメロディが現在頭から離れてくれません。これが一番私の中に残ったものかも…。

TBS「カクレカラクリ」公式ページはコチラ

カクレカラクリ―An Automation in Long Sleep Book カクレカラクリ―An Automation in Long Sleep

著者:森 博嗣
販売元:メディアファクトリー
Amazon.co.jpで詳細を確認する

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2006/09/13

『クライマーズ・ハイ』 横山秀夫

クライマーズ・ハイ Book クライマーズ・ハイ

著者:横山 秀夫
販売元:文藝春秋
Amazon.co.jpで詳細を確認する

下りるために登るんさ。

そう云い残して死んでいった同僚の真意を知るため、衝立岩アタックを決意した新聞記者。

登り終えた先に彼が見たものとは?

おんもしろかった!

睡眠導入本として読み始めた『クライマーズ・ハイ』ですが、ページを捲る手が止まらずにそのまま読了してしまいました。朝の4時。

登山モノだと思っていたら、日航機墜落事故を追った新聞記者ストーリーで驚き。でも、ずんごい良かった。元・新聞記者の横山氏が書くだけあって、新聞社内の葛藤とか派閥とか嫉妬とか、とにかくリアル。でも、帯に“文春ミステリ1位”“このミス7位”って書いてありますが…ミステリじゃないよね?

良い作品に出逢ったときって「とにかく読んでみてください」としか云えないですよね。このレビューをどんな風に始めようかと、画面を眺めること10分が経過しております。書いては消し、書いては消し。こんなレビューを読んでもらうよりも、実際に『クライマーズ・ハイ』を読んでもらった方が嬉しい。そんな思いにさせてくれる作品に出逢ったのは、本当に久しぶりです。

上と下の板ばさみになりながらも、日航機事故の真実を伝えたいと全権デスクに座り続ける悠木。死に物狂いで送った雑記が掲載されなかったにも関わらず、悠木を信じ続ける佐山。事故現場に足を踏み入れたことによって、記者人生の大きな転機を迎えた神沢。後輩記者が大きな飛躍を迎えようとしている様に嫉妬せずにはいられない等々力。悠木を影ながら支える同期の岸。そして、くも膜下出血で目を開けたまま動きを止めた安西。

とにかく、登場人物全員が輝いていて、誰が欠けても『クライマーズ・ハイ』は完成しなかったと思います。とても濃密で、一生の経験となった一週間。17年という時が経過し、念願の衝立岩に登山することができたからこそ、冷静に振り返ることのできた一週間。多くの尊い命が失われた影で、手に入れることのできた一週間。最後の日、全権を下りることとなった悠木に、仲間たちがかけた言葉につい涙が零れました。

とにかく読んでくださいとしか云えない名作。

横山氏の他作品も絶対に読もう。あとは、NHKが製作したというドラマも絶対に観よう。睡眠導入本だなんて扱おうとしたことは許してください。素晴らしい3時間をありがとうございました。

クライマーズ・ハイ DVD クライマーズ・ハイ

販売元:角川エンタテインメント
発売日:2006/05/12
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2006/09/12

『λに歯がない』 森博嗣

λに歯がない Book λに歯がない

著者:森 博嗣
販売元:講談社
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密室状態の研究所で発見された、身元不明の射殺死体×4。

死体が所有していた「λに歯がない」と書かれたカードの意味は?

Gシリーズ第5弾。あのお方も再登場。

「カクレカラクリ」O.A.目前にして、なんとか読了できました『λ』。この数日のうちに、“λ、保呂草”というキーワードで当ブロ愚にご来場くださる方が幾人かいらっしゃって、非常にボルテージが上がっておりました。

保呂草様、お逢いできて嬉しゅうございます☆

なんかもう、Gシリーズの様相とか真賀田四季とか“?”は山のようにあるのですが、最善とは云えないまでもso-soといった感じ。

この『λ』についてもこれまでのGシリーズと同様に、西之園萌絵がアクションパートを、犀川先生が探偵パートを、Gシリーズ新キャラ3名が頭脳パートを担当。Gシリーズキャラにもうちょっと日の目を見せてあげてもよいのではないか…という愚痴は語り尽くしましたので、くどくど申し上げませんが、ね。海月くんなんて、存在していないのと同じですよ。彼が居なくとも事件は解決してしまうわけですから。もし彼が活躍する場面に遭遇するとしたら、それは犀川先生や保呂草さんが真賀田四季に近すぎて、客観性を維持できないという舞台に上がったときのみだと思います。そのラストのためだけに登場させたキャラだとしたら、哀しすぎます。

と「くどくど申し上げない」と宣言した割に、数行費やしちゃって。得てして前置きというものはそういうものです。「簡単に」と前置きの付いたスピーチが簡単だった試しは無いというマーフィーの法則です(読んだことすら無いのに、適当なこと云っております)。

前作『εに誓って』が非常に消化不良だったわけですが、この『λ』で再び加速した感じ。密室状態での不可解な死という、ミステリのお約束事項がとてもセクシィに描かれていたと思います。解決に至るキーが、他所から唐突に得られる新情報であるというのが、若干物足りなさを感じる要因ですが。まぁ、Gシリーズに於ける犯人は、S&Mシリーズよりも蔑ろにされている項目ですからね。『τになるまで待って』がその点については詳しいです。ただ、シリーズ以降の巻に余韻を残す犯人(ラスト)でしたので、シリーズを通して一作の本に見立てるつもりではないかという漠然とした印象は強くなりました。Gシリーズは基本的に一作一作で完結していないですよね。また森マジックが見られるのでしょうか。本作の物理トリックは派手ではありませんが、『封印再度』を読んだときの読了感に近かったですね。

犀川先生と萌絵の関係も、どんどん加速。歳を重ねることによって、人間は馬鹿になるというのは犀川先生の談ですが、彼の変貌については西之園萌絵という外的なファクタだと思いたいです。犀川先生の不器用さは父親譲りの相変わらず加減でございますが。

さて、保呂草さん再登場に触れてもよろしいでしょうか?Gシリーズ最大の関心事は赤柳探偵と保呂草さんと真賀田四季の関係です。今回、公安が保呂草さんと接触を取りたいと赤柳探偵を通して申し出て参りました。一体、保呂草さんはどんな危険に足を突っ込んでしまったのでしょうか?あの日、あの場所で各務さんと再会して、第二の人生を歩き始めたのでは無かったのですか?彼はなにを掴んでしまったのでしょうか?それはVシリーズあたりで既に登場している情報ですか?謎が謎を呼ぶ保呂草さん再登場。ときどき思い出したように保呂草さんがGシリーズに登場してくださると、期待感が加速して個人的には良い傾向になります。

次回作『η(イータ)なのに夢のよう』はどんな作品になるのか。新展開はあるのか。保呂草さんの再登場は?定番の1月発売になるものと想像しますが、非常に楽しみです。やっぱり森作品からは離れられない私。

それでは明日の「カクレカラクリ」感想レビューでお逢いし魔性☆

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2006/09/10

『I LOVE YOU』

I love you Book I love you

著者:伊坂 幸太郎,石田 衣良,市川 拓司,中田 永一,中村 航,本多 孝好
販売元:祥伝社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

さまざまな断片から生まれるストーリーを、

現在もっとも注目を集める男性作家たちが紡ぐ、至高の恋愛アンソロジー

(帯より)

やっぱり伊坂幸太郎は巧いですね。

伊坂幸太郎と本多孝好目当てでこの『I LOVE YOU』を手に取りました。やっぱり最初と最後を飾ったこの二人の作品が良かった。もちろん波長もあるのだと思いますが、小説として最も完成されていたであろう石田衣良の作品よりも、この二人の作品にぞくっときました。

私は基本的に恋愛小説って読まないのですが(山田詠美のみ例外)、嫌いではないのです。ただ、恋愛こそ全て!と云わんばかりの小説が苦手で。恋愛って確かに大切なものだけれど、恋愛と同等、もしくはそれ以上に大切なものがあると思うのです。「恋愛!恋愛!」と声を大にして訴えている作品は、人生のごくごく一瞬を捉えているのみで、どうしても深みに欠けるような気がして。その意味でも『I LOVE YOU』は「これ恋愛小説?」とつい聞き返したくなる強者揃いで、安心して読めました。恋愛小説らしかったのって、石田衣良と本多孝好くらいでしたね。

伊坂作品はいつもの伊坂節が炸裂です。恋愛小説のはずなのに、テーマはシロクマです。伊坂作品お馴染みのちょっと冷めた主人公が奇天烈な姉を思い出すお話。物語の半ばで登場した伏線がラストで綺麗に回収されるという、短編でも力抜きませんなぁ、な一作。

そして、本多作品。本多孝好の恋愛小説は『真夜中の五分前』で既に経験済なのですが、やはり本多孝好は短編でこそ力を発揮する作家だと、改めて確信しました。最後の「ごめんなさいごめんなさい」が胸にぐっと突き刺さる。あのラストが無ければ、大人のキレイゴトに見えてしまう雰囲気が、キュッと引き締まった感じ。やっぱり本多孝好は良いなぁ。好きだなぁ。

そうそう、中村航氏の作品を読んでいて、伊坂幸太郎の『砂漠』に登場した“平和(ピンフ)を作り続ける彼”を思い出しました。全然関係ないけれど。

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『輪違屋糸里』 浅田次郎

輪違屋糸里 上 Book 輪違屋糸里 上

著者:浅田 次郎
販売元:文藝春秋
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文久3年9月18日、芹沢鴨暗殺。

この暗殺劇に潜んだ、女の物語があった。

『壬生義士伝』の浅田新撰組、再び登場。

はぁ、新撰組はやっぱり良いわぁ☆

『女信長』に続いての歴史モノです。個人的な歴史小説好き好き度は“新撰組>三国志>戦国時代”ですので、沖田や斎藤さんが登場するとなれば、それだけで満足だったりするのですが、さすが浅田次郎。そこいらの新撰組モノとは違います。

『壬生義士伝』は号泣に継ぐ号泣で、家族への思慕と男の世界を描き切りましたが、この『輪違屋糸里』は転じて新撰組に翻弄される女の世界を描いております。島原で芸を為す天神たちと、新撰組屯所として彼らを住まわす女将、そして云わずと知れたお梅。新撰組小説といえば、むさっくるしい男どもが遊女を誑かし弄ぶものと相場が決まっておりますが(決まって無い無い。断じて無い)この『輪違屋糸里』はどこまでもピュアです。

物語は新撰組の初期も初期、芹沢鴨暗殺までが描かれておりまして、新撰組全盛期の剣呑とした雰囲気とはまた違った趣があります。芹沢鴨はとにかく極悪非道な手の付けられない奴…というイメージが先行していたのですが、最近になって芹沢鴨像が大きく見直されてきているように思います。個人的にはあまり好きじゃないんですけれどね。ただ、お梅といっしょに死ぬことができたことだけは、不幸中の幸いだったといつだって思います。

そして、本作で大きくクローズアップされたのが永倉新八。新撰組が京に上った経緯や、人物相関図などはすべてこの永倉の視点で描かれます。この部分がまた丁寧で丁寧で。新撰組を全く知らない人でも、永倉の語りを読めば大よその新撰組初期像は掴めるのではないでしょうか。『風光る』の影響か、永倉と云えば原田・藤堂と並ぶ三馬鹿トリオのイメージなのですが(し、失礼…)Wikipediaから引用するならば「剣の腕は、一に永倉、二に沖田、三に斎藤一ともいわれた程だった」というのだから、驚きです。私の勝手なイメージだと“沖田>一之太刀が外れた斎藤>永倉”という感じなのですが。斎藤の一之太刀が決まったならば、最強は斎藤ということで。

そして、本作を語る上で外せないのは女性たち。島原の天神として登場する“おいと”がおぼこくて。土方みたいな百戦錬磨に本気で惚れちゃ駄目だYO!女癖の悪さも含めての土方なのですが、あんなおぼこい(=うぶな、くらいの意味です)娘を自分の策略のために騙くらかすなんて、非道な。浅田先生はそのあたりにもきちんと配慮されているのですが、それがフォローにしか読めない私は土方をどれだけ悪い奴だと思っているのでしょうか。いや、土方も好きなんです。近藤と組のためにどこまでも鬼であり続け、最後まで意志を貫き通した土方は好きなんですよ…。

あぁ、やっぱり新撰組は良いなぁ。新撰組ネタ妄想はどこまでも広がります。この度、新撰組カテゴリを作成したので、どんどん新撰組モノを再読してゆきましょうかね。あとは『風光る』のレビューもこのカテゴリで!

輪違屋糸里 下 Book 輪違屋糸里 下

著者:浅田 次郎
販売元:文藝春秋
Amazon.co.jpで詳細を確認する

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2006/09/09

『女信長』 佐藤賢一

女信長 Book 女信長

著者:佐藤 賢一
販売元:毎日新聞社
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大うつけと呼ばれながらも、天下への階段を着実に登っていった織田信長。

信長がそこまで大躍進した理由は唯一つ、“女”であったから。

直木賞作家・佐藤賢一が描く新しき織田信長像。

佐藤賢一氏は結構好きで、『王妃の離婚』とか『カルチェ・ラタン』なんかを読みふけった時期があります。佐藤賢一氏が『王妃の離婚』で描いた女性像なんかは、女性の本質を巧く突いていて感心したのですが、この『女信長』では巧く機能していないかも…。

信長は“女”だったからこそ、古きものをばっさりと切り捨て、新しきものを斬新に採用することができた。この発想はとても面白かったです。ならば、信長はとことん女であれば良かったのだと思う。女の武器である体を惜しげもなく差し出したかと思えば、女だからと馬鹿にするなと激昂する。この作品で描かれているのは“人間”なので、そう簡単に居直ることはできないって?それならば、天下にあそこまで近づくこともできなかったのではないでしょうか。読んでいて、常に中途半端な気持ちにさせられました。それが残念。

後半になると、“女”であることが利だったのではなく、“天命”があったからこそここまで大きくなることができたのだと信じる始末。“天命”がすべてなら、“女”であったことの意味が全くありませんよね。この人格の変遷も『女信長』のテーマだったのかしれませんが、私にはうまく馴染めませんでした。全然関係ないですが、“天命”=三国志に登場する人物たちが大好きな言葉という図式が私の中で出来上がっております。全然関係ないわね。

でも、基本的なストーリーは史実に即していて良かったです。パラレルであっても、史実は曲げて欲しくないというのが私の願い。史実に即して描くから、歴史小説のパラレルは難しいのであって、設定に合わせて史実まで曲げてしまったら、もうなんでもアリではないですか。まぁ、ラストの天海ネタはサービスとしても。ちなみに、私の戦国知識はおおよそが戦国無双から得た知識です。邪だな、おい。でも、『女信長』を読んでいて知らない言葉や出来事は無かったので、ストーリーに充分集中できて良かったですね。侮れません、戦国無双。

さて、ここからはかなり下世話な話になりますので、ご注意ください。

まずねぇ、信長の最初のお相手がマムシ(斉藤道三)だっていうんだから驚きです。しかも手管が素晴らしいですか…よ、読みたくねぇ。権六(柴田勝家)とも契っちゃうし(しかも一回きりなのに…権六って一途)、長政に至っては鬼畜プレイじゃないですか。しかも、かなりの鬼畜。戦国一の美男子・浅井長政は鬼畜プレイがお好きですか…。もう、あの鬼畜っぷりが頭から離れません。次に戦国無双をプレイするときに、長政を見て正気でいられるかどうか…。

あとはミッチー(明智光秀)ね。ある意味、ミッチーが主役とも云えるこの作品。私は個人的に信長はミッチーが嫌いで嫌いで仕方なかったのだと思っているので、あそこまで心酔されると困ってしまいます。あとはね、私の中でミッチーは長髪の麗人なもんで、金柑頭金柑頭と連呼されると、違和感がね…。

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2006/09/08

『聖女の塔』 篠田真由美

聖女の塔 Book 聖女の塔

著者:篠田 真由美
販売元:講談社
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カルト宗教に入信した友人を助けるために行動を開始した蒼。

頼りの京介は行方不明で…。

建築探偵シリーズ第何弾だ?

久しぶりの建築探偵シリーズ。シリーズも残すところあと3作ということで、終焉へのカウントダウンが着々と行われております。この『聖女の塔』のもシリーズの懐かしキャラが何人か登場いたしますが、

貴方、誰でしたっけ?状態

建築探偵シリーズを初めて読んだのは高校2年生のときでしたので、もう○年のお付き合い。そのころには名作『原罪の庭』が発表されておりましたので、年に一作のペースですね。建築探偵シリーズは読了後、必ず気分が落ちるので(間違いなく京介の所為だ)そうそう再読するわけにはゆきません→よって上記のような現象が発生するわけです。

これは完結までにシリーズ再読週間を設けなくてはならないかも。この『聖女の塔』を読んでいて、何度“?”に襲われたことか…。しかも『聖女の塔』あとがきで作者の篠田氏が「(次回作の)物語のラストで京介は**する」なんて不吉な予告をしておりますし。ついに京介、死亡ですか!?シリーズ通して京介には危うい影が付き纏っておりまして、私は非常に心配しているわけですよ、蒼を

名作『原罪の庭』を読んで蒼にとことん傾斜してしまった私ですが、蒼にはとにかく幸せな人生を歩んでいって欲しい。そのためには京介がどうしても必要な訳です。もちろん京介離れはしなくてはならないけれど、京介が居なくなることで物理的に離れる必要はないと思います。着実に蒼は京介離れをしているのに。翳という(邪な)親友もできたことですし。だから、京介死亡ラストだけは止めて欲しい。切なる願いです。

さて、『聖女の塔』ですが、ミステリとして申し上げることは特にございません。既に“建築探偵”シリーズでは無くなっておりますしね。今回はカルト宗教探偵シリーズとでも云いましょうか。こういうテーマは嫌いではないのだけれど、カルト宗教について頁数を割いた割には、対してミステリに絡んできていませんよね…。ミステリ作品とそのほかの大きなテーマの共存というのは本当に難しいのだな、と思います。

それでは、最後にどうしても云いたい。翳よ…「俺、カズミ(蒼)が来るならマンション買います」って

新居じゃないですか!?

どうして篠田真由美は蒼と翳のBLっぽい妄想を火のように非難する割に、こういうシーンを書くんでしょうね。理解できません。蒼と翳はどうしたって普通の親友であるように見えません。しかも、翳が蒼にキス未遂を起こした記述が有ったような、無かったような…。

蒼も翳も大好きな腐女子だから良いんですけどね!

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2006/09/07

『顔のない敵』 石持浅海

顔のない敵 Book 顔のない敵

著者:石持 浅海
販売元:光文社
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『扉は閉ざされたまま』でミステリ界を震撼させた石持浅海の最新刊は「対人地雷」をテーマにしたミステリ連作短編集。

「対人地雷」というテーマとミステリとの融合は成立するのか?

積読本消化期間中です。ようやく読めました、石持浅海の最新刊『顔のない敵』。

お恥ずかしい話、「対人地雷」について私が意識したことはこの『顔のない敵』を読むまで全くございませんでした。小渕元首相の時代に対人地雷全面禁止条約なるものに日本が調印していたことも知りませんでしたし、「対人地雷」を除去するために活動しているNPOについても認識しておりませんでした。地雷=踏めば爆発するものという知識のみ。お恥ずかしい話です。

私は完全に“戦争を知らない子どもたち”の世代ですので、戦争が残した傷跡や影響について、考えることや痛ましく思うことはあっても、なにかをしなくてはならないという積極的なアクションを行ったことはありません。完全に“対岸の火事”状態。お恥ずかしい話です。

ミステリで「対人地雷」のようなテーマを取り扱うことは非常に珍しく、本書は石持氏のねらい通り、新しい世代にその深刻さや重要性を認識させるきっかけに成りえる物だと思います。

ミステリとしてもなかなか秀逸。私は短編集最初に収録されている「地雷原突破」がこの作品集の中では一番のお気に入りですが、通常避けるべきである地雷をいかにして踏ませるか…という着眼点が素晴らしいと思います。地雷を本来の目的である凶器として使用する。殺人という行為がそもそも許されないものですが、その殺人の道具として地雷を使用することでその行為をさらに悪なるものにしている。深いです。

この短編集はあくまでも「対人地雷」をテーマにした作品ですので、地雷そのものが登場しない・使用されない作品もあります。ですが、地雷の被害が深刻であるカンボジアを舞台にした作品の方が、より深みがあって考えさせられる。ここでも“対岸の火事”状態を意識せずにはいられません。人はその状況下に置かれない限り、深く物事を思考できないものなのでしょうか。単に私の想像力不足なのかもしれませんが。

ラストに納められている石持氏の処女作も、そのトリッキーな舞台設定が良いです。なぜあの状況下で殺人を起こさなくてはならなかったのか。必然性としてはかなり薄いですが、パニックになった犯人の心境ならばもしくは…といった感じです。

石持氏はこれからがとても楽しみな作家さんのお一人です。『扉は閉ざされたまま』クラスの名作をまた期待しております。

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2006/09/06

『上手なミステリの書き方教えます』 浦賀和宏

上手なミステリの書き方教えます Book 上手なミステリの書き方教えます

著者:浦賀 和宏
販売元:講談社
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八木剛士シリーズ(?)第三弾。

浦賀和宏、衝撃の問題作。

内容紹介にこれだけ書くのが精一杯でした…。

問題作中の問題作ですよ。

chapterの扉に書かれたミステリのお約束が一番面白かった…。

まず、『上手なミステリの書き方教えます』のタイトルにやられました。絶対真っ当なミステリがくるものだと思っていたら…

いじめとエロと萌えとオタクの話しか出てこなかった…。

ミステリはどこに?確かにひとっつ、ミステリっぽい部分も有ったような、無かったような…。パーセンテージで云えば、1%くらいはミステリだったかもしれません。でも残りの99%がいじめとエロと萌えとオタクの話です。浦賀和宏…一体貴方になにが起こったのでしょうか?

『浦賀和宏殺人事件』を読まされたときの呆然。これが今の気持ちに一番近いですね。

確かに『上手な~』のラストは良かったです。背表紙あらずじに書かれた「結末圧倒的感動必読!!」は云い過ぎとしても、八木メェメェの青春への序章としてなかなか好感の持てる素敵なラストでした。

でもねぇ、そこに至るまでのいじめとエロと萌えとオタクの話がねぇ。講談社ノベルスは比較的なんでもあり…とは云いつつも、なぜこの作品が出版されるに至ったのかが謎。誰か止める人間は居なかったのかい!

浦賀作品には『時の鳥籠』や『彼女は存在しない』のような名作がいくつもありますので、この『上手な~』だけで浦賀和宏に見切りをつけてしまうことはできないのですが、八木剛士シリーズ最新刊『八木剛士 史上最大の事件』を手に取るかどうかは全くの未定です。きっと自分からアクションを起こすことは無いのだろうなぁ。

そうそう、ノベルス折り返しの浦賀和宏<主な著作リスト>に安藤直樹シリーズの初期作品がごっそり抜けているのが気になりました。絶対、初期作品の方が<主な著作>だと思うのですが…。

今日のレビューは唖然とした気持ちが“…”の多さによく現れておりますね…。

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2006/09/05

『情けは人の死を招く』 射逆裕二

情けは人の死を招く Book 情けは人の死を招く

著者:射逆 裕二
販売元:角川書店
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湯河原のリゾートマンションで起こった殺人事件。

強盗の仕業と思われたその事件が、内部の人間による犯行だと判明し…。

解決するのはもちろん、女装の怪人・狐久保朝志!

積読本消化第一弾は射逆裕二氏の『情けは人の死を招く』です。この『情けは~』は前作(『みんな誰かを殺したい』『殺してしまえば判らない』)までのドタバタミステリが一転、本格風に出来上がっておりますね。『殺してしまえば~』ほど狐久保さんがはっちゃけていなかったのが、かなり残念ですが。

まず、帯に書かれた

21世紀の名探偵最終兵器(ファイナル・ウェポン)

という狐久保さんの紹介に爆笑!確かにファイナル・ウェポンだよ。狐久保さんは検事という輝かしい過去が有りながら、なぜか自称オペラ歌手の相撲取りと行動を共にする、女装フリークのおっさんです。この説明だけでそのファイナル・ウェポンっぷりを感じていただけたら…。

ミステリのトリック自体は、犯人と思われていた人物が遺書を残して自殺をしたが、実は…という定番ものです。この展開は残りページ数の関係で、皆さん察するところがあると思いますので、ネタバレにはならないはず。これまでの射逆氏の作品を読んでいる方なら、いつもの「びっくり!」感も無いため、その落し方・オチ付き方に物足りないものを感じるのではないでしょうか。“名探偵、皆を集めて「さて」と云い”の場面で、読者が知りえなかった事実が山のように登場するし。最初に本格“風”と申し上げたのも、この一点に尽きます。

なにより、狐久保さんの活躍場面が少ないですし…。

次回作は『僕は死体にけつまづく』。9月リリース予定…って今月ではなかとですか!次回は狐久保さんが超はじけて登場してくれることを祈って。

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2006/09/04

閉幕宣言

開幕は7月26日のことでございまいた。

本日、無事閉幕を迎えることができ、感無量。

1ヵ月弱でS&Mシリーズ+Vシリーズ+四季の24作品を読み切ろう!というなんとも甘い考えで始めたこの企画。

来る日も来る日も森博嗣…しんどい時期もありました。積読本はまだかまだかとプレッシャーを与えてくるし。

でも、一気に読んだことで奥深さと云いますか、これまで気付かなかった伏線やポイントに気付くこともできました。結果的にはかなり楽しい1ヵ月でしたね。ブログジャックのお陰で知り合うことのできた方もたくさんいらっしゃいますし。

ここまでお付き合いくださいました皆様、どうもありがとうございました!

これからの私の予定としては積読本を解消した後に、有栖川有栖の「国名シリーズ」か綾辻行人の「館シリーズ」、小野不由美の「十二国記シリーズ」このいすれかのシリーズレビューをやりたいなと思っております。いずれも10作程度のシリーズなのが助かる。このシリーズのレビューが読みたい!というリクエストがもし万が一あれば、そのシリーズから取り掛かろうと思っております。

これからも当ブロ愚を何卒何卒よろしくお願い致します。

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2006/09/03

『四季 冬』 森博嗣

四季・冬 Book 四季・冬

著者:森 博嗣
販売元:講談社
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真賀田四季。

彼女が求め、描いた世界とはどのようなものだったのか。

天才を映し出す『四季』四部作ついに完結。

ついにラスト!

この『冬』についてはもう難しくって、物語の半分も理解できていないことを最初に表明しておきましょう。

『すべてがFになる』からこの『四季』まで、真賀田四季博士に共通するキーワードは“孤独”です。孤独な7をレッドマジックの中に潜ませ、外の世界を手に入れた彼女。外の世界で得られたものは、自由ではなく孤独。

天才と呼ばれ、天才であることを周囲から期待され強要された彼女。彼女が欲しかったのは普通の愛と生活。しかし、その普通を彼女は得ることができませんでした。その要因は…彼女を取り巻く環境?それとも彼女自身?

この『冬』は犀川や萌絵と出逢った世界から100年後の未来。プロローグで犀川と名乗る人物が登場しますが、犀川先生の子孫でしょうか?100年の時が経過しても、四季の肉体は衰えを知らない。スワニィ博士の研究の成果でしょう。しかし、彼女は大人になり、その精神は随分と衰えをみせています。果たして肉体的な死を拒むことが彼女のしあわせなのでしょうか?彼女が最後に流した雨が、その答えだと思います。

この『冬』を私はどう評価してよいか未だに悩んでいます。真賀田四季という天才を掴みきることができない。未来の四季が置かれている環境への理解が追いついてゆかない。これが『秋』で犀川や萌絵に遭遇した5年後くらいの未来であるなら、なんとなくその影を掴むことができたかもしれません。しかし、経過した時は100年。彼女の思考・思想・倫理観は私たちとそこまでの相違がありましたか。しかも、時代はまだ彼女に追いついていない。100年経った未来であっても。

四季のすべてを掴むためには、この『四季』四部作の他に『女王の百年密室』を読む必要があるかもしれませんね。なんてったって、ミチルとの再会が待ち構えているのですから。ミチルと再会することで起こった彼女の変化。それが最後のキーになるのかもしれません。

この『冬』が四部作最後にあることで、森博嗣という作家の大きさがわかるような気がします。決して媚びない。落ちるべきところに落さない。謎を謎のまま残す。評価はまだ保留ということで。

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『四季 秋』 森博嗣

四季 秋 Book 四季 秋

著者:森 博嗣
販売元:講談社
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「犀川先生は真賀田博士のことをどう思っているのだろう?」

これが西之園萌絵の専らの関心事。

そして、その答えがここに?

これまで四季サイドから物語が綴られていた『春』『夏』と趣向を変えて、西之園萌絵サイドから現在の四季像に迫るのがこの『秋』です。

すみません、さっそくですがこの『秋』も全面ネタバレレビューです。もう口を噤むことはできません。未読の方はとにかくとにかくご注意を!

「古いお友達なのですか?」萌絵は犀川に聞く。
「知り合い」彼は短く答えた。

「知り合い」…保呂草さん残念!!

『秋』を語る上で外すことのできないふたつの出逢い。そのひとつが保呂草&犀川の再会です。いやぁ、犀川先生が保呂草さんに駆け寄り(駆け寄ってないです。妄想です)「あれ?保呂草さん?」「本当に?」と声をかけるシーン。このシーンでは犀川先生はまさしくへっ君でございました。くそぅ、めんこいじゃないか。「ありがとう。覚えていてくれて」と返した保呂草さんも素敵。あの場面(萌絵にひっ捕らえられている)でそんな風に微笑むことは普通できません。いやぁ、ジェントル。

なんかもぉ、四季を追うとかどうでも良くって(おい!)とにかくS&MシリーズとVシリーズの関係を綺麗にしておきましょう!というのがメインではないかと疑ったり。もちろん、その役割もあっての『四季』なのですが、少なくとも私にとってはそれがメインです。

話は戻りまして保呂草&犀川の再会シーン。エンジェル・マヌーヴァの件でツー・カーぶりを発揮する二人。犀川先生がお母さん(紅子)から聞いてる話ってのは、どんな話なんだ、一体。紅子が保呂草さんについて正直に語るとは思えないし…でも、世津子の母親(七夏)が保呂草さんを追い続けていることは知ってるし…泥棒でも友人…あぁ、知り合いだったか。とにかく、いろんな妄想を膨らませるのに充分な再会でした。たった数頁の再会でしたが、その数頁だけでS&M+V=20作を読んだ価値があったというものです。

そして、重要な出逢いのもうひとつが紅子VS萌絵。なぜ“VS”なんだ、自分。堂々たる母親っぷりでした、紅子さん。それに比べて林さん…チキンなんだから。この二人が遭遇して初めて、紅子&萌絵はかなり気が合うかも…と犀川先生の身の危険を感じました。紅子が好きそうですよね、萌絵みたいな女の子は。レスポンスの速さやその思考の飛躍が紅子好み。そもそも、この二人は保呂草さんが『捩れ屋敷の利鈍』で指摘しているように似ている。この二人に迫られたら…犀川先生じゃなくてもタジタジです。「少なくとも、その場に僕はいたくない」と苦笑いした犀川先生の気持ちがよくわかります(よよよ…)

そうそう、出逢いといえば保呂草&各務っていうのもありましたね。逃げられた女を追いかける男…そんな保呂草さん見たくない!私的には各務さんがぞっこん(ふ、古っ!)で、保呂草さんも嫌ではないからいっしょに居る…というような妄想シュチュエーションだったものですから、まさか保呂草さんが各務女史を追いかけてゆくとは。武器を持っていると思った、と捻じ伏せるほどいっしょに居て危険なことは解っているのに、どうしても追いかけてしまう罠。これが恋ってやつですか?保呂草さんには『赤緑黒白』のラストでみせた紅子のナイトをずっとずっと続けていて欲しかったです。紅子と保呂草さんの関係って、本当に好きだなぁ私。

そういえばGシリーズの山吹くんが登場しておりましたね。こんなところに次シリーズへの伏線が。侮れません、森博嗣。さて、ブログジャックも次の『冬』で終了です。『冬』は『夏』『秋』の路線からは大きく逸れてしまいますので(しかも難しい)、こんなノリノリのレビューにはならないと思いますが、きっと今日中にレビューできると思います。

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『四季 夏』 森博嗣

四季 夏 Book 四季 夏

著者:森 博嗣
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14歳の夏、彼女はひとりの男性に恋をし、そして両親を殺した。

すべては計算し尽くされたこと。

天才に触れる『四季』シリーズ第二弾。

いきなりですが、『四季 夏』のレビューは全面ネタバレレビューとなります。こんな美味しいネタを語らずにはいられません。もちろん、未読の方はご注意くださいませ。

おかえりなさい、保呂草さん☆

この『四季』シリーズを通して、なにが一番びっくりしたかって、各務亜樹良がいつの間にか保呂草さん無しでは生きられない女になっていたことです。保呂草さんと各務女史の間になにがあったのか…それは決して語られることのない物語ですが、彼女が幼少のころに失ったなにかを保呂草さんが補うことができれば素敵だと思います。

しっかし、保呂草さん。四季を誘拐して自らの目的を達しようなんて、末恐ろしい男ですね。保呂草さんといえば「決断が遅く、行動が早い男」だったはずなのですが、今回の決断はとにかく早かった。数分ではないでしょうか?それだけ四季という存在が大きくて、成功率を跳ね上げるファクターに成り得たということなのですが。あのとき、四季に誘われるまま、四季の手を取っていたら、保呂草さんの人生は720°変わっていたと思いますが(結局元に戻ってますよ!)、瀬在丸紅子・各務亜樹良・祖父江七夏という3強女性と対峙を繰り返した軟派・保呂草の中でエマージェンシィコールが鳴り響いた結果が“逃げる”という選択肢だったのだと思います。

そして、3強女性のひとり瀬在丸紅子。今回は四季の精神形成に大きな影響を与えた人物として登場です。紅子から得たスタイルを元に、子どもを身籠った真賀田四季。そして、紅子から産まれたへっ君と死闘(?)を繰り広げるっていうんだから、萌えるなっていう方が無理です。しかし、紅子と林さんの間にどんな変化があったのでしょうか?Vシリーズの頃は指輪なんてしていませんでしたよね?七夏もなんとなく諦め気味と云いましょうか、仕事に没頭することで忘れようとしているように見える。へっ君は現在、林さんの元で生活をしているようですが。“子はかすがい”ってやつですか?

そうそう、へっ君&紅子シーンがようやく登場。へっ君、ちゃんと喜多先生にお母様を紹介しなくちゃ駄目ではないですか。もしこの関係を知らずにこのシーンを読んだら…あぁ、親戚だったのだなぁと思うかいな!絶対に怪しいと思うはず。それはそれで衝撃的だったなぁ。あれ?ん?あれれ?とか云いながら首を捻る自分…容易に想像できて怖いわ。

そして、真賀田四季。彼女のあの気持ちは本当に恋だったのでしょうか?天才と呼ばれ、普通の人間が踏み込むことのできない領域に立ち続ける彼女。そんな彼女にも恋と呼ばれる普通の感情があったのなら…ちょっと素敵かもしれない。彼女の中に存在するすべての人格が拒否しても、押し切らずには居られなかった感情。行動。そして結果。すべてが計算から導かれた結末だったとしても、想定された結果の中で最もバッドなものであったと思いたい。あれがハッピィな結末であったのなら、真賀田四季、貴女は哀しすぎる。

それでは次回は夢の競演が果たされる『秋』です。これがまた最高です。再びネタバレレビューでお逢いしましょう。

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『四季 春』 森博嗣

四季 春 Book 四季 春

著者:森 博嗣
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天才・真賀田四季。

『すべてがFになる』よりも前、幼い彼女の前に現れた透明人間。

真賀田四季の世界に触れる『四季』シリーズ第一弾。

ようやく『四季』まで辿り着きました。

『四季』は春夏秋冬の4作で構成されておりますが、基本スタンスとして4作すべてで1作という扱いであるため、レビューが非常に難しいですね。作品の根底に流れる謎については『冬』で取り扱うとして(『冬』は『冬』で独立していると個人的に思っているのですが)『春』『夏』『秋』では細かい細かいレビューをやってゆこうと思っております。

『四季』は2ヶ月に1冊ずつ刊行というスタイルだったため、私は4作揃うまで読まない!とそれを封印しいていたのですが…『秋』を購入し、鞄に納めようとしたときに飛び込んできた“保呂草”という文字に過剰反応し、その日のうちに『秋』まで読破したという苦い思い出があります。『冬』は独立しているため、まぁ支障なかったかな?とも思いますが、『冬』の発売まで本当に長かったですね。

この『春』は四季の幼少時代について描かれておりますが、Vシリーズのメンバが何名か登場。『赤緑黒白』に登場したNMIの佐織や、謎の組織に所属する各務亜樹良、そして瀬在丸紅子との出逢いが四季サイドから描かれております。

この四季サイドというのが、侮れません。真賀田四季といえばいくつのも人格を所有する要注意人物。『春』ではすべて栗田基志雄の視線で、幼少の四季が描かれております。基志雄は『すべF』でもコンピュータに署名を残しておりましたし、それだけ大きな存在であることがわかりますね。ただ、その基志雄とこの基志雄が同一人物なのかどうかは…うむ、侮れませんな。

そして、四季が自ら接近を試みる透明人間。この透明人間が『春』のキーパーソンなのですが、まさか四季にお○様が居ようとは…。こんなこと、これまでのシリーズのどこにも描かれていなかったと思うのですが。この透明人間を主軸とした密室殺人事件が1本収録されているのですが、これはまぁオマケですよね。この透明人間にまつわるラストが、四季が初めて感じた挫折ではないかと思います。世界はすべて彼女の手中にあったのに、彼女こそが世界の神であったのに、神ですら制御できない動きがあったこと。彼女にとって彼は、世界を構築してゆくのに無くてはならない存在だったのに、それを失ってしまったこと。この喪失によって、彼女の世界構築は何年…いや何ヶ月遅れてしまったのでしょうね。

とにかく、『春』1作だけでは『四季』シリーズを語ることはできませんね。さっそく『夏』と『秋』の萌えずにはいられない2冊を読破したいと思います。

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2006/09/02

イチキューイチキューイチキュー字牌

なんちゅータイトルやねん、自分。

Vシリーズのベスト10をやるのに、タイトルはどうしようかと悩むこと5分。阿漕荘メンバが揃ったならば、やっぱり麻雀!と麻雀の役の名前をつけることはすぐに決まったのですが、じゃあなんの役にするんだと。天和(テンホウ・配牌で上がっちゃった!)なんかもVシリーズらしくって良いなと思ったのですが、国士無双の響きと馴染み易さと故事そのものの意味を考えたときにこちらかな、と。そうそう、昨日脳トレ(DS)をやっていたら、四字熟語問題で国士無○(双の字を答える)が出たのも無関係とは云い切れません。

さて、前置きが長くなりました。Vシリーズベスト10の発表です。

 1. 恋恋蓮歩の演習(6作目)
 2. 人形式モナリザ(2作目)
 3. 黒猫の三角(1作目)
 4. 捩れ屋敷の利鈍(8作目)
 5. 魔剣天翔(5作目)
 6. 朽ちる散る落ちる(9作目)
 7. 赤緑黒白(10作目)
 8. 夢・出逢い・魔性(4作目)
 9. 六人の超音波科学者(7作目)
10. 月は幽咽のデバイス(3作目)

こんな感じでしょうか。『れんれん』の1位は不動なのですが、今回も『モナリザ』と『デルタ』は悩みましたねぇ。4~6位だって、どれも好き。S&Mシリーズに比べて、個人的に好みの作品が多い。デバイスはちょっと除外…としても、読む時期や状態によって順序が入れ替わるであろうことが容易に想像できます。

やっぱりVシリーズの良さはキャラクタの多様さにあるのだと思います。私は阿漕荘メンバ4人、みんな好きです。保呂草さんは別格としても、紅子もれんちゃんもしこさんも好き。林さんの前で少女のように微笑む紅子は誰よりも素敵だし、哀しいときにしっかりと涙することの出来るれんちゃんも、いつでもどんなときでもその関西弁で場を和ませてくれるしこさんも、本当に良い子。森川くんだって、七夏だって、立松くんだって、みんな素敵。ここまで憎めない奴等の登場するシリーズって、なかなか無いと思います。

そして、謎の有り方がとてもシンプルで、解かせようとする森先生の意図が感じられる。謎の見せ方は言葉で煙に巻かれていて、決して容易に見渡すことはできないけれど、紅子や保呂草さん、れんちゃんのちょっとした一言が風となり、謎を取り巻いていた雲が晴れたときに、思わず膝を打ってしまうシンプルな謎たち。ミステリを読んでいて、ぞくっとする感触(ぞっとする感触ではなく)が一番気持ち良いと思っている私ですが、このVシリーズはその感触を何度も味あわせてくれました。感謝。

もっともっとVシリーズを読んでいたかったけれど(本当は15作の予定だったと風の噂で聞きました)『四季』や短編、Gシリーズで垣間見る彼等の活躍でいまは満足しております。また彼等が阿漕荘で麻雀をする日が来ますように。

国士無双とかやってのけるのは、やっぱり紅子さんだと思います。

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『赤緑黒白』 森博嗣

赤緑黒白 Book 赤緑黒白

著者:森 博嗣
販売元:講談社
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死体にスプレー缶で色を着けてまわるペインタ殺人事件が発生。

赤、緑、黒、白と次々に死体が彩られてゆく。

Vシリーズ最終巻にして、衝撃のラスト。

ラスト5!!

ついにVシリーズ終焉まで辿り着きましたか。『四季』四部作については一段組な上、息もつかせぬスピード展開で、あっと云う間もなく読めてしまうことが実証済ですので、もうゴールテープが見えてきたと云っても過言ではないでしょう。今週末中に…は勿体無いから止しておこう。

さて、この『赤緑黒白』は衝撃的な出来事が多数起こっておりますので、そのあたりは後程、ネタバレ警告をしてからたっぷり語りたいと思います。たっぷり。このネタバレがやりたくて、ここまで読んできたと云い切っても良いです。

森博嗣作品は、シリーズ1作目と10作目がリンクするという特徴があります。S&Mシリーズの『すべF』と『パン』はかの天才が、Vシリーズでは特定の人物ではなく殺害の動機がリンクしています。殺してみたいという衝動がすべてのきっかけで、その衝動を一般レベルに広く理解させるためになされたオプションがぞろ目やペインタ。そもそも、そんなオプションを付けなければ、衝動的な殺人を続けていけば、彼等は一生捕まることなく快楽を享受することができたのに、なぜそのような理由付けをせずにはいられなかったのか。『デルタ』ではその理由を「自分自身を抑制するために」、『赤緑黒白』では「自分の存在が有益なものであるとアピールするために」と表現されております。この理由付けを考察するたびに、彼等ふたりの殺人者は「天才ではなかった」んだな、と思います。真の天才ならそんな理由付けすら必要ない。一般に理解してもらう必要は無いのです。かの関根朔太がそうでした。そして真賀田四季がそうなります。理由付けをしてしまう時点で、彼等の思想は一般レベルにまで堕ちてしまっている。「自分自身を抑制するために」…なぜ抑制しなくてはならないのか。「アピールするために」…アピールなどしなくとも、気付くべくして気付く真の天才が居るでしょう。彼等は柵を超えてしまったけれども、柵の向こうは必ずしも天才ではない。ならば天才とは一体なんなのか。森作品を読むと、どうしても天才について考察せずにはいられないようです。

さて、よくわからない考察で行数を稼ぎましたので、そろそろネタバレの時間を開始しましょうか。これで、当ブロ愚を開いた瞬間にネタが読めてしまうという心配はないでしょう。配慮が必要なほど、この衝撃は直に感じて欲しいものです。では、ネタバレです☆

犀川先生の少年時代が読めて、私は幸せでございました!

貴方の歪んだ人格もとい捻くれた…って、全く褒め言葉が思い浮かびませんが、とにかく犀川先生の人格形成に大きな影響を与えたであろうこの時期。そりゃ、両親が離婚して、引き取られた母親があんな奇天烈斎な人だったら、あんな風になるわ。喜多先生という友人が犀川先生に出来たことは、まさに青天の霹靂。最高の出会いだったと思います。

というわけで、へっ君=犀川先生。衝撃のラスト、林さんが持ってくる入学祝いに書かれた“○川 林”。○はもちろん犀。犀川林…『デルタ』で紅子さんが仰った「林さんって、変わった名前でしょ」の意味がここで!変わりすぎだよ!これまでの私の人生で、林さんというファーストネームの御仁にお会いしたことはございません。

シリーズを通してこのへっ君=犀川先生に気付くポイントは、瀬在丸紅子のイニシャルがC・Vなのに対し(『六人の超音波科学者』)へっ君が使っていたサッカーボールに書かれたイニシャルはS・S(『朽ちる散る落ちる』でしたか?)。瀬在丸のCでも、林のHでもないSって名字はなんなんよ?ってところでしょうか。

そして、Vシリーズの時代設定が過去であることについて。これは登場人物全員が携帯電話を所有していないことや、『超科学』『ちるちるちる』などで描かれる科学が古く、既に実現しているものがいくつか含まれていることなどで察することができます。つまり、シリーズで常に孤独な作品で有り続ける8作目『捩れ屋敷の利鈍』のみが現在。ダンディズム・保呂草☆と絶叫した私ですが、保呂草さんはあの作品のときに50歳くらいのおじさまだったことになります。そして、『捩れ屋敷』で登場した保呂草さんの古い友人とは犀川先生のこと。20歳近くお歳が離れておりますが、保呂草さんとへっ君の仲の良さはこの『赤緑黒白』でも証明されておりますし、これからレビューする『四季』でも描かれております。

この衝撃のトリックを私が知ったとき(『捩れ屋敷』のあとネットで)は、あまりのことに一晩寝られず、既刊のVシリーズを一気読みしました。指摘されてみると、どれもこれもおかしい。そんなこと全く気が付かなかった自分に嘲笑。皆様はVシリーズのどのあたりでこのトリックに気付いたのでしょうか?ぜひ、お聞かせください。

というわけで、愛しの保呂草さんが阿漕荘を去り、その後どのような世界を見てまわったのかはまた別のお話。『四季』に保呂草さんがメインで登場したときは衝撃だったなぁ。しかも彼女と一緒だっただなんて。れんちゃんとしこさんについても『レタス・フライ』収録の「刀之津~」で語られておりますので、彼等のその後が知りたい方は是非。

この大トリックと保呂草さんの存在が、私の中で「S&MよりもV!」と云い切るすべてになっております。是非、皆様もVシリーズ10作をお楽しみください。

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2006/09/01

みんなの読書癖○ろうそく出せよ編

最早、何月のランキング発表かわからないタイトル…。えっと、

8月編です。

当ブロ愚にお越しの皆様が、どんなページ・キーワードに興味をお持ちなのかを赤裸々に好評するのがこの企画。

さっそく○ACRWEBのページアクセスランキング○からご紹介!

1 ○名探偵コナン 55
2 『DEATH NOTE‐ANOTHER NOTE』 西尾維新 52
3 の、のだめで月9? 44
4 ●森博嗣 39
5 ●西尾維新 35
6 ○スレイヤーズ 34
7 森博嗣ブログジャック計画 32
8 書籍・雑誌 29
9 ●麻耶雄嵩 26
10 ●東野圭吾 25

ど、どうでしょう?相変わらずコナンカテゴリは強いですね。今月は『ベイカー街の亡霊』のレビューを1本書いただけなのに。実写化効果でもないようだし。実写化といえば『のだめ』。真澄ちゃんアフロへの熱い気持ちを綴った「の、のだめで月9」が3位ですか。そして、当ブロ愚をジャック中の森博嗣が4位。7位のジャック決意表明と併せれば、当ブロ愚で8月に最も読まれた記事は森博嗣ということになりますね。いや、森博嗣の記事しか書いてないといっても過言ではないのですが。

それでは○track wordランキング○で森博嗣の動向をチェック!

 1. 森博嗣(37)
 2. 名探偵コナン(18)
 3. death(17)
 4. 辻村深月(15)
 5. スレイヤーズ(13)
 6. 西尾維新(12)
 6. カクレカラクリ(12)
 8. コナン(10)
 8. かまいたちの夜(10)
10.  麻耶雄嵩(9)

このランキングを見る限り、『カクレカラクリ』の情報を求めて皆様がご来場してくださっていることになりますね…ブログジャックは?ようやくかまいたちの夜がここに登場ですか。やっぱりプレイ日記のタイミングが遅かったね。しかもまだピンクの栞未プレイだし…。今週末にでもやりましょうか。3位のdeathは間違いなくデスノですし、今月は森博嗣、デスノ、コナンの3強といったところでしょうか。

そういえば、森博嗣ブログジャック計画の一環で、S&Mシリーズベスト10という企画を「FROM INSIDER TO OUTSIDER」という記事でやったのですが、皆様からのアクセスランキング(ACRWEB)でS&Mシリーズベスト10をやってみようと思います。皆様の興味のあるS&Mシリーズはこちら!

1 『封印再度』  22
2 『詩的私的ジャック』  18
3 『今はもうない』 17
4 『笑わない数学者』  15
4 『夏のレプリカ』 15
6 『幻惑の死と使途』 14
7 『数奇にして模型』 9
8 『すべてがFになる』 4
8 『冷たい密室と博士たち』 4
8 『有限と微小のパン』 4

『封印再度』が1位ですか。私の大好きな『今はもうない』は3位ね。驚きなのは私がワーストで選んだ『詩的私的ジャック』が2位だっていうんだから。私、時代に乗れていないのかしら?

それでは来月、秋分の日が土曜日って許せないんだけど編でお逢いしましょう☆

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