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2006/08/19

『月は幽咽のデバイス』 森博嗣

月は幽咽のデバイス Book 月は幽咽のデバイス

著者:森 博嗣
販売元:講談社
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オオカミ屋敷と噂される篠塚家のパーティに参加した阿漕荘メンバ。

そこで発見される血まみれの死体。しかし、死体のあったオーディオルームは密室状態で。

Vシリーズ第3弾。

も、ちょっと夏バテ気味です。

「デバイス」とは回路・システムの構成単位のことですが、日本語にしたって意味はよくわかりません。森作品のタイトルは得てして理解し難いものですが、日本語としての意味もよくわからないのはこの『デバイス』が筆頭でしょうか。

この『デバイス』は個人的感想として、あまり好みの作品ではなかったりします。や、館モノですか?綾辻行人氏の「館シリーズ」だと、こういう作品がくる!と事前に心構えができているので、すんなりと物語に入り込むことができるのですが、いきなりこの趣向の作品を読むとなんだか裏切られた気がするのです(あくまでも木の精。wood fairy)

このVシリーズには表の探偵と裏の探偵が居て、表は瀬在丸紅子、裏は保呂草潤平なのですが、彼らは解決へのアプローチ方が異なります。紅子が静であれば、保呂草は動。紅子がミス・マープルなら、保呂草はエルキュール・ポアロ(ポアロは違うだろ…ポアロは。ミス・マープルからの勝手な決めつけ)とにかく、解決編が始まる段階で、どちらも真相に気が付いているのですが、紅子は全員が観察した(できた)事象から真相を掴むのに対し、保呂草はやくざな仕事から知りえた独自の情報を活かして真相を掴みます。保呂草方式はアンフェア。でも、一人の探偵が起こった事象のすべて(表と裏)を把握できるとは思えず、読者に対してサービスする姿勢として生まれたのが裏の保呂草ではないかと、勝手に推測しております。

この『デバイス』で、保呂草さんのやくざな仕事の目的が明かされましたが、自分好みの作品を一時でも所有し、鑑賞できるというのは大変至福なことだと私も思います。私には美術品を鑑賞するという趣味は全く無いのですが、その作品を自分の思うまま、誰にも咎められることなく、余すことなく鑑賞できるという行為の崇高さや幸福感は想像することができます。その幸福を手に入れるために為す行為は犯罪ですが、保呂草さんにとっては法と危険を犯してまで手に入れたいものなのでしょう。一度くらいなら、お仕事をお手伝いしても良いのよ、保呂草さん。

さて、『デバイス』にはへっ君登場シーンが多くて嬉しい。へっ君が現在最も興味関心を抱いているのは植物の導管に関することです。紅子に聞くと「自分で調べなさい」と怒られるため、独り図書館に残って資料をあたるへっ君。めんこい。しかし、小学生に気圧と真空の仕組みを教える紅子も紅子ですが、それを正しく理解しているへっ君もへっ君です。聡明すぎます。そこが魅力的なのですが。独り閉じ籠ってなにかを考察する姿勢は、このころに築かれたものなのですね…。

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