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2006/03/30

『水の迷宮』 石持浅海

水の迷宮 Book 水の迷宮

著者:石持 浅海
販売元:光文社
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水族館に送られてくる脅迫メール。

果たして脅迫を仕掛けているのは誰なのか?そして脅迫者の真意は?

そこから浮かび上がる過去の事件の真相とは?

水族館に行きたくなりました。

この作品は石持氏お得意の閉鎖空間で起こった事件と、そこに渦巻く人間の感情や感傷が主題として描かれています。

水族館という舞台設定を最初にこのストーリーを考えたのか、ストーリーを元に舞台を水族館に設定したのか。もし後者なら石持氏天才ですよ。水族館の描き方、魅せ方が巧い。そこで冒頭の言葉なのです。

しかし、いくつか感情的に納得の行かない部分があるのですね…(ここから激しくネタバレします。この警告文も久しぶり)

まず、ミステリにおいて犯人が捕まることなく、登場人物たちもそれを容認するという結末に喝!

犯人が特定されているのにですよ?グレーではなく、犯人自ら自白しているのにですよ?有り得ない…。いくら犯人がこれからの水族館にとって必要な人物だったとしても、その人間と以後心を交わして、心から犯人を信じて仕事をしてゆくことってできるでしょうか?少なくとも私には無理。

仮想の世界に限らず、罪を犯した人間は法によって裁かれなくてはならないと私は考えます。それは罪を犯した本人にとって一番良いことなのではないでしょうか?法に裁かれることによって、その人間はもう後ろめたい思いをしなくてよくなると私は考えます。

つまり、犯人が裁かれない=犯人はいつまでたっても許されないという方式が成り立つのですね。それって本人にとって良いことなのでしょうか?いくらその後の水族館の発展に貢献したとしても、それが罪滅ぼしになるのでしょうか?

石持氏もそのあたりのことは考慮して、あの結末になったのでしょうが、私個人的にどうも納得のゆかない箇所なのです。

あとはこれも石持氏特有の探偵の論理の飛躍。もちろん無理のない程度ではあるのですが、どうしてそれが唯一の解答となり得る?という場面で、探偵が断言してしまうのですね。その他の箇所ではことごとく可能性を潰して描いているのに。ここも非常に気になりました。

それでも読んでいて、何度か胸を熱くさせる場面に出会いました。ミステリとしては納得のゆかない部分もあるけれど、良い作品だったなぁと感じます。

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2006/03/28

『謎は解ける方が魅力的』 有栖川有栖

謎は解ける方が魅力的―有栖川有栖エッセイ集 Book 謎は解ける方が魅力的―有栖川有栖エッセイ集

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
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“Alice in movieland”“Mystery cafe”“Eye of the tiger”からなる有栖川有栖エッセイ集。

映画、ミステリ、そして虎。貴方はどの有栖川有栖がお好みですか?

有栖川有栖氏はこのくらいの長さの文章を書くのがすごく巧いといつも思います。

これまで読んだショートショートでいっちばん好きなのが有栖川氏の「幸運の女神」(『ジュリエットの悲鳴』収録)だったりします。

今回のエッセイ集も有栖川氏の良さが随所に出ていて、存分に楽しむことができました。

エッセイ集というのは作者の思想がどうしても滲み出てしまうものですが(ブログもまた然り)、有栖川氏のエッセイは押し付けるでもなく、しかししっかりと主張するというそのスタンスが好きです。自分の考えがいかにも正しいと言わんばかりのエッセイには絶句してしまうものです。

ミステリについて書かれた“Mystery cafe”はもちろんですが、思いの他楽しめたのが“Eye of the tiger”。私は野球は見るよりやる派のアンチ巨人ファンを自称しておりますが、裏を返せばただのアンチ野球人間でございます。でも、有栖川氏をはじめとする虎ファンの方々の当時の熱気といいますか、盛り上がりが短かな文章ながらも滲み出ていてちょっと胸を熱くしました。

なにかを一途に想うのって切なくて幸せなことですね。

このエッセイ集でなによりも素晴らしいと思うのがタイトル。『謎は解ける方が魅力的』なんてなんと魅力的な言葉なのでしょうか。

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2006/03/27

『真夜中の五分前 side‐B』 本多孝好

真夜中の五分前five minutes to tomorrow side-B Book 真夜中の五分前five minutes to tomorrow side-B

著者:本多 孝好
販売元:新潮社
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五分ずれた世界に住み続ける彼。

彼女はもうそこにはいない…のだろうか?彼女は本当は彼女ではないのだろうか?

side‐Aより続く衝撃の後編。

side-Bの仕事のできちゃう彼が好きです(告白)。

side-Bは心の動きが主なので、ストーリーとしてなにか大きな山場があるというわけではありませんが、ここまでダークな感情をそう読ませない本多孝好氏の才能が好きです。

side-Aで彼を取り巻いていた人物が次々と去ってゆく中、彼はなにを想い、なにを背負って生きているのか。

本当はこういった重たい話は好きではないのですが、それを複雑にさせない手法というか作風に本多氏らしさをとにかく感じます。

重たいテーマを重たく書くのは案外簡単。それを如何に噛み砕いて、なんでもないかのように読ませるか。あくまでも選択するのは読者なのですね。

それの最たる例はラストのシーン。彼女は彼女であって彼女ではないのか。

ずれた五分を彼女のために使い、残りをいまの大切な彼女のために使う。なんてグッとくるラストなのでしょうか。

早く本多氏の最新作が読みたいです。次の新作は『MOMENT』でしょうか?

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2006/03/25

『真夜中の五分前 side‐A』 本多孝好

真夜中の五分前five minutes to tomorrow side-A Book 真夜中の五分前five minutes to tomorrow side-A

著者:本多 孝好
販売元:新潮社
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五分遅れた世界に住む彼が出会った一卵性双生児の彼女。

彼女は彼の五分遅れた世界を元に戻してくれるのだろうか。

本多孝好が描く恋愛小説。

私の愛して已まない本多孝好氏ですが、この『真夜中の五分前』は本多節はそのままに、主題は恋愛という、本多氏の新境地でございます。『FAIN DAY』は恋愛小説にカテゴリしておりませんので、当方。

さて、『真夜中の五分前』の主人公ですが、本多氏の作品の中で「瑠璃」の彼に続く好感度2位にランクインしております。本当はside‐Bのさらにひねくれた彼の方が好みなのですが。

いやぁ、本多氏の作品に登場する“3回は角を曲がって、あれ?元に戻っちゃった?”っていうくらいひねくれた性格している登場人物がとにかく好きです。こんな人物描けるのは本多氏か森博嗣氏くらいだと勝手に思っているのですがいかがでしょう?本多氏を理系にしたら森博嗣氏が出来上がると思っております。とにかく好き。

この『真夜中の五分前』はside-Aとside-Bに分かれていて、前編後編としても読めるし、独立した作品としても読めるという、二度美味しいシステムとなっております。私としては前編後編と定義して読むのが好きなのですが。どちらがより好きかと問われればside-Bなのですがね。side-Bはこのあと読みますので、いい加減感想を書きなさい、自分。

恋愛小説としてこの『真夜中の五分前』をレビューするのであれば、あまり好みではないと答えざるを得ません。恋や愛に自分を見失ってしまう様子を見せられるのがあまり好きではないからです。

恋愛に対し興味や情熱を持ち合わせていないかのように見える彼(世の中すべてに対してと言い換えることができる)が、どのような傷を負い、どのように出来上がってしまったのかが今回の主題ではありますが、私の興味を惹きつけるのはあくまでも無機質無感動な彼なのですね。

“無”って何よりも下層の最悪の状態と言われるからこそ、惹きつけられてしまうのです。

やっぱり冷たい人間だなぁ。と改めて自己確認。これからside-Bのより“無”な彼に出会うことに致しましょうか。

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2006/03/23

『ダ・ヴィンチ・コード』 ダン・ブラウン

ダ・ヴィンチ・コード(上) Book ダ・ヴィンチ・コード(上)

著者:ダン・ブラウン
販売元:角川書店
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ダ・ヴィンチの名画に隠されたキリスト教の秘密とは。

言わずと知れた大ベストセラー。

実は未読だったこの大ベストセラー。鬼のような特番合戦を見せられたため、ほとんどのネタについてはご存知。

まず感じたのは具が大きいもとい字が大きい。

文庫で3冊…二日はかかると踏んでいたのですが、期待を裏切り一日で読破。もちろん内容が惹きつけてくれるからこその一日読破なのですが。翻訳もあの特有のニホンゴナミウッテマスヨ感がなくて、あっさり読むことができました。

特番合戦でダ・ヴィンチの仕掛けた暗号が鬼のように報じられていたので、どれだけダ・ヴィンチの薀蓄ばかりなのかと思っていたら、あくまでもダ・ヴィンチは演出にすぎず、しっかりとしたミステリを走ってくれました。

如何せん、登場人物が少ないので導師(黒幕)が誰なのか看破し易いのが難点でしょうか?カタカナ名前はさっぱり覚えられない私には適した処方量でございましたが。

5月20日に全世界同時ロードショーされるようですが、きっと映画館まで観には行かないと思います。でも、ソフィー・ヌヴーのオドレイ・トトゥはハマり役だと思います。あの眉毛が意志の強さを滲み出しております。オドレイは非常に楽しみ。

映画が公開になったら、また特番をやるんだろうなぁ。今度は読了後の楽しみ方でそれらを見たいと思います。

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2006/03/21

『館島』 東川篤哉

館島 Book 館島

著者:東川 篤哉
販売元:東京創元社
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六角形の館で起きた謎の墜落死。

その事件の後、再び館に集められた関係者と刑事と探偵。

そこで繰り返される連続殺人とは。その殺人事件を解くのは刑事か探偵か?

この『館島』は図書館で借りてきたものなのですが、検索機を利用してもなかなかヒットしない。何故か。それは私がこの作品をてっきり『館男』だと思っていたからです。しかも読みは…

だ・て・お・と・こ

なんですか?今業平ですか?

さて、ここからがレビューです。

本格ミステリの要、トリックについては最初の屋敷図や描写であっさり解けました。これは屋敷図が俯瞰した状態で描かれているからなのですが。だからといって屋敷図を省くわえにはいかないし…といったジレンマが感じられます。

あとは解けたトリックを意識しながら、そのトリックを使用できる該当者を絞り込めば良いだけですので、かなり簡単に推理できるのでは。

アイデアは面白いのだけれど、難易度はかなり低いと言わざるを得ません。残念。

さて、東川氏といえばユーモアミステリの代名詞ですが、今回はユーモア控えめでエッセンス的な役割となっております。より純粋な本格と言えるでしょう。このくらいが好みです。

しかし、この作品はなんだかシリーズ化しそうな趣ですね。探偵志望の助手もできたことですし。よこしま号な刑事がこれからも活躍することを祈りつつ。

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『切れない糸』 坂木司

切れない糸 Book 切れない糸

著者:坂木 司
販売元:東京創元社
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アライクリーニング店に持ち込まれる数々の謎。

町の生物委員と魔法の言葉を紡ぐ二人がその謎に挑む。

ひきこもり探偵を完結させた坂木司待望の新シリーズ。

ひきこもり探偵シリーズ完結から間を措かずに挑戦してみした新シリーズ。

坂木氏お得意(?)のほんわかした雰囲気の中で展開される生活のちょっとした謎。今回はそのちょっとした謎を町の生物委員であり、アライクリーニングの跡取り息子の新井くんが拾ってきます。

この『切れない糸』を読んで、職人っていうのは本当に良いなぁと感じました。「別にその業界で一番じゃなくても、経験と知識があって、自分の判断で動くことの人材が各店にいる。それって、実は結構贅沢な状態だぜ。」という台詞があります。納得。

現在自分の判断で動くことのできる人間って少ないと思うのですよ。会社勤めならなおさら。上司にほう・れん・そうして、上司の判断さえ仰いでいればもしなにか問題が起きても自分の責任にはならなくて。めんどくさくても、結局は自分の責任をどれだけ軽くするかに夢中。「自分で自分を守るんだ」なんて言われますが、それってただの責任転嫁でカッコ悪いったらありゃしない。

だからこそ自分で考えて、自分で責任を取る。そういった職人気質の仕事に憧れるのです。皆、自分の仕事が好きで、自信を持つことができたら、きっと社会は上手に回ってゆくのに。商店街は理想の社会のミニ模型なのかもしれません。

さて、今回の探偵役は魔法の言葉を紡ぐ沢田くん。沢田くんは人からの相談には親身になって受けるけれど、決して自分から心を開くことのない人物。そういった人間関係を作ることで安心している人物といえるでしょうか。

前作ほど困っちゃった感はありませんが、困っちゃった人であるのは確か。そこで町の生物委員の登場というわけです。生来のお人良しである町の生物委員は、果たして困っちゃった生物達をその天然で救うことができるのか。

現在魔法使い(もう省略)が旅に出ておりますので、シリーズ次回作はいつのなるのやら。楽しみにしております。また職人技が見たいのさ!

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2006/03/19

『動物園の鳥』 坂木司

動物園の鳥 Book 動物園の鳥

著者:坂木 司
販売元:東京創元社
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動物園に紛れ込む野良猫にいたずらをする犯人は誰なのか?

ひきこもり探偵初めての長編にして、シリーズ最終巻。

鳥井は果たして檻から飛び立つことはできるのか?

なぜかアフィリが報奨対象外で挿入できない。残念。現在、坂木司フェアを開催中でございます。

ページを開いて目次を確認し、長編であることにびっくり。ひきこもり探偵シリーズの良さは、短編集でありながら連作であり、一冊の本として完結していることだと思っていたので。

内容としては短編の謎を長編用に引き伸ばした感が否めませんが、シリーズ最終巻として登場人物の内面を深く掘り下げているため、なんとか長編としての体裁を整えている感じ。

今回は鳥井がひきこもりになる契機となった中学時代のいじめを隠し(?)テーマに持ってきているのですが、個人的にはもっと加害者を非難して欲しかった。だって、救えないじゃないですか奴は。苛々するんですよ、彼の話を聞いていると。ただ、こういった本を読んで苛々してしまうということは、自分の中にもそういう意見を持った人格がいるということなんですよね。ぎくり。

残念だったのは、鳥井のお母さんについてもうちょっと掘り下げることなくシリーズが終了してしまったこと。一応この最終巻で、鳥井はひきこもりから飛び立つ第一歩を踏み出したわけですが、本当の解決には彼のお母さんについてのトラウマを克服する必要があると思うのですよ。

そこまで期待するのは鳥井にとっても酷というものですかね?

人間は表には出さずとも必ず辛い思いを抱えているものですが、このシリーズに登場する人たちは鳥井や坂木に出会って、その悩みを良い方向のベクトルに変えておりますね。ひきこもりという負のベクトルを持つ鳥井が、どうして彼らに光を射すことができるのか。興味深いテーマですよね。

この『動物園の鳥』で最終巻と言わず、これからもまだまだ書き続けて欲しいものです。また彼らの登場があることを祈って。

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『仔羊の巣』 坂木司

仔羊の巣 Book 仔羊の巣

著者:坂木 司
販売元:東京創元社
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僕と鳥井の関係が徐々に変化してきている?

本当は喜ぶべきことなのに、素直に良しとすることができない。

そんな二人の関係を描く、ひきこもり探偵シリーズ第二弾。

今週は坂木司フェアを実施します!

ひきこもり探偵シリーズ第一弾『青空の卵』を読んだのがちょうど10日前のこと。やっぱり坂木と鳥井の関係が気になって、手を出してしまいました。

第二弾の『仔羊の巣』は前作を読まなくては二人の関係も周りの人間との関係もよくわからないという不親切設計となっております。まぁ、シリーズものだからね。

二作目で二人の関係には若干の変化が認められます。本当に少しの変化なのだけれど。塵も積もれば山となるの諺どおりに、良い方向へ二人は進んで行くのでしょうか。

一腐女子としては、変わって欲しくないと感じるのだけれど。

オンリーワンとしての坂木か、ナンバーワンとしての坂木か。某ヒット曲はオンリーワンであれば良いのさと歌っておりますが、果たして人間関係においてそれが許されるのか。皆がオンリーワンの人間だけと付き合って生活していたら、あっという間に社会は崩壊してしまいますよ。

まぁ、そこまで極端に考える人間の方が少数派なのであって、間違ってもそのようなことにはならないのだけれど。でも、そう考えてしまう環境そのものが危険なのでは?

うまく言葉にすることができませんね。もどかしい。

今回の『仔羊の巣』はミステリとしては標準。登場する人物は皆自己中で異常。坂木氏(作家の)は自己中で思い込みの激しい人物を描かせたらピカイチかもしれませんね。

登場する中学生や女子校生の話し方に腹が立っちゃって、もう。

ひきこもり探偵シリーズはこれから読む『動物園の鳥』で最終巻とのことですが、果たして二人にはどんな結末が待っているのか。楽しみです。

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2006/03/18

柄刀一氏にお会いして来ました

今日はくすみ書房の主催する「ソクラテスのカフェ本談義」というのに独り潜入し、特別ゲストである柄刀一氏の講演を聴いてまいりました。

勝手に開催していた柄刀一フェアはこの日のためだったんですね。

会場であるカフェにはおよそ30人くらいの参加者が狭い店内にひしめきあっておりました。時間ギリギリに到着したものですから、当然良い席は取れず、隅っこのほうで縮こまって聴講。

くすみ書房の店長と柄刀氏の対談形式で行われたのですが、店長が柄刀氏のプロフィールを誤る誤る。

「柄刀さんは45歳で…」「47歳です」

「東区にお住まい…」「厚別区です」

「奥様は…」「独身です」

といった感じ。ちゃんと調べとけよ、店長!

さて、最初は柄刀氏のペンネームの由来から。音で聞いたら普通だけど、字で読むときに変わったものにしたかったと柄刀氏。自身の好きなディクスン・カーを捩って、ペンネームの中にカーを入れたという徹底ぶり。ふむふむ。

あとは処女作『3000年の密室』が出版されるまでの経緯なんかを話してくださったのですが、そこに島田荘司やら鮎川哲也やら有栖川有栖やら、ミステリ好きにはたまらないビックネームが登場するわけです。もうこれだけで行って良かったというもの。

でも、参加者の大半はミステリは読まないであろうおじさんおばさんだったので、果たして彼等は楽しめたのだろうか。少なくとも私は楽しめましたのよ、柄刀氏。

あとね、笑っちゃうのがひとつ。参加者からの質問というコーナーで「柄刀さんが子どものころ読んだ本はどんな本ですか?」という問いが。柄刀氏は「ホームズとかルパンとか一般的なミステリですよ」と答えていらっしゃたのですが、なにを思ったのか店長が「ルパンってそんなに前からありましたっけ?」と言ったわけです。

モンキーパンチじゃねぇよ!ルブランだよ!

と心の中で超高速ツッコミをさせていただきました。

その後、現在ミステリが若干下火になってきていることとか、本格ミステリと新本格ミステリの定義を柄刀氏なりの言葉で話してくださいました。アツい。ミステリ好きにはたまらない時でございました。

しっかりと自前の本にもサインをいただきまして、もう思い残すことはないといった感じです。

7月に新刊が発売になるそうです。4月までに原稿をあげなくてはならないとか。頑張ってください!柄刀先生。

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『4000年のアリバイ回廊』 柄刀一

4000年のアリバイ回廊 Book 4000年のアリバイ回廊

著者:柄刀 一
販売元:光文社
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4000年の時を越え発見された“高千穂ポンペイ”。

火山灰で覆われた集落が現在に語りかけるものは何なのか。

現代の殺人事件と歴史の謎を絡めたミステリ。

柄刀一氏フェア第二作目です。といっても今日でフェアは終わりになる予定ですが。当初の予定では、『400年の遺言-龍遠寺庭園の死』まで読む予定だったんですが。読書ペース落ちましたね。

この『4000年のアリバイ回廊』は再読だったのですが、前回読んだのが高校生のときだったので、ミステリの内容もまったく覚えておらず、初読の気持ちで挑めました。

やはり現代の殺人事件より、歴史ミステリの方に興味が。現代の殺人事件はいわゆるアリバイもの。陸海空いずれの時刻表も掲載されているのですが、こんな時刻表をじっくり読む読者なんているのだろうか…。しかもトリックには時刻表関係ないときてるし。雰囲気を味わうってやつですか。

時刻表トリックといえば西村京太郎氏ですが、私の両親は読書=西村京太郎というステレオ人間なので、実家には西村氏のノベルスがびっしりあります。そんな同じテイストの作品ばっかり読んでも…と思うのですが、両親には言えない。

閑話休題。

歴史のミステリに関しては先が読めるといいますか、かなり推理し易いです。なぜ専門家が雁首そろえて、もっと早くその結論に達しないのか謎。まぁ、歴史学者というのは総じて頭が堅いものですから。私の師事した教授もそうでした。

『3000年の密室』に比べると現代の殺人事件との区切りがあやふやで、さっきまで歴史(遺跡)の話をしていたのに、あっという間にアリバイ確認ですか?という唐突感は否めません。

しかし、殺人者の独白には充分ミスリードの茶目っ気がありますので、楽しめるのではないかと。

『400年の遺言-龍遠寺庭園の死』はフェア終了後にでもゆっくり取り掛かりたいと思います。

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2006/03/16

『3000年の密室』 柄刀一

3000年の密室 Book 3000年の密室

著者:柄刀 一
販売元:光文社
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3000年という長い旅路を終えた、縄文人ミイラ・サイモン。

サイモンは何者かに殺害されており、しかも発見されたのは内側から意図的に塞がれた密室だった。

柄刀一デビュー作にして、歴史ミステリの金字塔。

とある理由から柄刀一氏フェアを開催しております。

柄刀一氏の『3000年の密室』を最初に読んだのは高校生のとき。日曜版の新聞に記載された本の紹介コーナーで興味を持ち、図書館でハードカバー版を借りて読みました。

高校生の頃の私は、この本に登場する天才プログラマ・佐々木晃くんに萌え。理系not文系の典型である私は、佐々木くんの言っていることもよくわかりませんでしたが、そこからあふれ出す理系パワーにノックアウト。

この『3000年の密室』は歴史ミステリであり、理系ミステリでもある。絶妙なバランスのとれた傑作です。柄刀氏の作品の中では、この処女作が一番好きです。

サイモンが発見された洞窟がいかにして密室となったか、というトリックが最高なんですね。普通のミステリでこれをやられると、なんてご都合主義的な…と感じてしまうところなんですが、そこで行われた殺人が3000年前のものであるという、この作品の味を最大に活かしたトリックとなっております。

生涯忘れられないトリックのひとつ。

再読してみると、地の文にいきなり重要な情報が紛れ込んでいたりと、アレ?と思わせる記述も少なくありませんでしたが(知っているからこそ気付く記述と言いましょうか)それはデビュー作ということで、ね。

現在とある理由から柄刀一氏フェアを開催中ですので、次は『4000年のアリバイ回廊』を。いきなり1000年も増えちゃってますね。『3000年の密室』はそのトリックの素晴らしさから忘れられない一作ではありますが、『4000年~』はもうすっかり内容を忘れてしまっているので、初読の気持ちで挑みます。

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2006/03/14

『それでも警官は微笑う』 日明恩

それでも、警官は微笑う Book それでも、警官は微笑う

著者:日明 恩
販売元:講談社
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軟派なおぼっちゃまと現場一本槍の刑事コンビが挑む違法拳銃と麻薬を取り巻く事件とは?

第25回メフィスト賞受賞作。

ずいぶんメフィスト賞らしくない作品でしたね。ノベルスじゃなくて、ハードカバーでの出版となったのも頷ける。だって、メフィスト賞好きな読者が受け入れるジャンルじゃないもの。

メフィスト賞に重い信頼を寄せる私ですが、この作品についてはまったく受け付けられませんでした。

まず、随所に見られる倫理観とか人道とかを説いた箇所に虫唾がはしる。ラストにどっと読ませるならまだしも、捲るページ捲るページで小出しにそんなもの説かれても。

凸凹コンビを主人公に持ってきたのは良いと思いますが、その二人の動きにも躍動感がないし、突然絡んでくる麻薬捜査官の方々もちょっと。視点をもう少し安定させて、どこか中心を持ってくることはできなかったのでしょうか?

しかも、銃や警察内部の説明箇所が、なにかの書物をそのまま書き写したのではないかと思うほど、説明くさいんですね。もうちょっと内容と絡めてうまく説明することはできなかったのかしら。

社会派ミステリとしても微妙、ハードボイルドとしても微妙。もちろん本格ミステリでもない。途中からかなり斜め読みをしてしまいました。こんなに読むのが苦痛だった作品は本当に久しぶりです。本を読んで、こんなに憤ったのも本当に久しぶり。

かなり辛口のレビューとなりましたが、これが正直な気持ちです…。

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2006/03/13

『水の時計』 初野晴

水の時計 Book 水の時計

著者:初野 晴
販売元:角川書店
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医学的には脳死と判断されていながらも、特殊な装置によって生かされている少女。

月明かりの下、装置からもれる彼女の本当の望みとは。

第22回横溝正史ミステリ大賞受賞作。

装丁の美しさとタイトルの響きに惹かれて読んでみました。

横溝正史の名を冠するミステリ大賞にも関わらず、ミステリミステリしてはいませんが、その筆力は圧巻。

脳死状態の彼女の望みを叶える少年の動きが、途中からバッサリと消えてなくなってしまうのが残念。途中から視点が入れ替わり、いくつかのショートストーリーが展開しますが、ちょっぶつ切り感がありました。行間を読めってことですかね。私の一番苦手な作業だ。

ただ、うまく行間をつかんで、隠されている(描かれていない)ストーリーを想像して補うならば、素晴らしい感動が詰まっております。

こういう切ない話は好きです。

途中から横溝正史ミステリ大賞受賞作だなんてことは、すっかり頭から消えてしまいました。どういう趣旨の作品賞であるかなんて、関係ないくらい良い作品。なんとしても受賞させなくてはならないと感じる作品。

また、『幸福の王子』との結び付けが最高なんですよ。あの『幸福の王子』の記述があるからこそ、あのラストでも納得することができるんですよね。

もうちょっと少年の内面が描かれていれば、もうちょっと少年の動きが描かれていれば、きっと号泣したことでしょう。それが本当に残念。

初野氏の他の作品を是非読んでみたいなぁと思いました。

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2006/03/12

『さよなら妖精』 米澤穂信

さよなら妖精 Book さよなら妖精

著者:米澤 穂信
販売元:東京創元社
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ユーゴスラヴィアからやってきた少女・マーヤ。

マーヤと過ごした時間が思い出深ければ深いほど、ある想いが彼らに襲い掛かる。

マーヤ、君はいまどこにいるのか?

米澤氏の作品で出版されているものはこの作品ですべて読んだことになりますが、この『さよなら妖精』が一番苦手です。初めて×をつけなくてはならないかも。

まず、この作品をミステリであるという認識で読み始めたのが失敗。確かにミステリ的要素も兼ね揃えているのだけれど、米澤氏が読ませたかったのはきっとそこではないのだろうな、と。

そうなると、文学的な方向からのレビューをしなくてなはらないんだけれど…苦手なんです文学が。

難しい主題を扱っているわりに、さらっと読ませるあたりがさずが米澤氏!といった感じですが、さらっと描き過ぎてテーマの重さが分散してしまった感じ。マーヤとの心の触れ合いを通して異文化コミュニケーションや、若者の心の葛藤を描きたかったのだと推測しますが、それだと肝心なところでミステリ要素が邪魔を入れている感じ。

うまく表現できないのですが、私の好みにはちょっと合わなかったです。残念。

ただ、当時のユーゴのことに興味を覚えたことは確かです。基本的に私は作中の文原の考え方に近いのですが。「自分の手の届く範囲の外に関わるのは嘘だと思っているんだ」というコレです。嘘だと思っていても、知りたいという欲求。これは安全な場所でぬくぬくと過ごしている人間のエゴでしかないのですが。

そう判っていても、欲求を抑えられないのが人間。駄目な人間ですね、全く。

☆追記☆本日、旧ユーゴ・ミロシェビッチ元大統領死去のニュースが。なんてタイムリーなニュースなのでしょうか。

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2006/03/11

『風味絶佳』 山田詠美

風味絶佳 Book 風味絶佳

著者:山田 詠美
販売元:文藝春秋
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職人の域に達しようとしている男性との恋愛を食を絡めながら描く短編集。

山田詠美作家デビュー20年作品。

恋愛小説といえば山田詠美氏と江國香織氏だった時代があったものです(遠い目)。

私は根っからの山田詠美派だったのですが。江國氏の小説ってどれも狂気を孕んでいて苦手なんです。怖さを感じてしまうんですね。これは個人的な感想ですが、江國氏の小説に登場する女性は恋愛に溺れている感じ。山田詠美氏の小説に登場する女性は恋愛を楽しんでいるイメージ。

「恋愛なんてしていなくても独りで生きていけるけど、人生のスパイスとして楽しんでいるの」という個人的な理想を山田詠美氏の作品には投影しやすいんですよ。

そういった意味で私は山田詠美派なのでございます。

今回の短編集で一番好みなのはタイトルにもなっている「風味絶佳」。不二ちゃんがたまらなく好きです。何故か私の中で不二ちゃんのビジュアルは『逆転裁判』のオバチャンなのですが…。カタカタカタカタカタカタカタカタ。

不二ちゃんを見ていると、良い女に年齢なんて関係ねぇ!と本当に思います。良い女はいくつになっても良い女ですし、いくつになっても駄目な女は駄目な女なんですよね。だから、私も良い女になりたいと心から思うわけです。

ただ、良い女の定義は個人の主観によって変わってくるので、せめて自分で良いと感じられる女になりたい。自己満足でしかありませんが。そこで描かれる良い女ビジョンのひとつに不二ちゃんがびしっとハマってくるわけです。

清清しいですよね、歯に衣着せぬ物言いとか。ああなりたいものです。

やっぱり恋愛小説は山田詠美だな、と思った一冊。

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『BG、あるいは死せるカイニス』 石持浅海

BG、あるいは死せるカイニス Book BG、あるいは死せるカイニス

著者:石持 浅海
販売元:東京創元社
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男性化候補筆頭で誰からも好かれていた姉が死んだ。

特異な世界を舞台に描かれる特異なミステリ。

『扉は閉ざされたまま』で脚光を浴びた石持浅海渾身の一作。

男性化候補筆頭なんて言葉をいきなり読まされても…とお思いの貴方!わかりますよ、その気持ち。でも、この『BG、あるいは死せるカイニス』を是非お読みください。

舞台となる世界は女性しか生まれてこないパラレルな日本。この世界では優秀な女性がある時期を経て自然と性転換を男性となります。もうその設定だけで、なんじゃこりぁ。

ただ、事件の動機がまさにその世界観を根底として作られているので、否応無くその世界観にのめり込まされます(アァ、ニホンゴムズカシイネ)。好き嫌いは分かれるでしょうが、私はこういうパラレルな設定好きですね。

だって、創作の中で無ければ出会えないじゃないですか。

この設定を受け入れられるのは男性より女性が多いのではないかと考えます。男性になってみたいと思ったことのある女性って多いと思うのですよ。それに、パラレルに対する許容度って女性の方が広いでしょ?

例えば戦国時代好きって圧倒的に男性の方が多いですが、三国志好きってことになると半々くらいの確率ではないかと。三国志にまで遡ってしまうと、もうファンタジーなんですよね。現存する文献が少ないため、伝説が入り込む余地が多すぎて。そのあたりが嫌いな男性って結構多いと思うのですが。かくいう私も戦国より三国志の方が好きです。

さて、脱線した話題を元に戻しましょうか。

ミステリとしてはまぁまぁ納得のゆく出来上がりかと。ただ、論理の筋道があくまでも動機をベースにしているため、世界観に納得できない場合はミステリ自体にも納得できないでしょうね。

動機をベースにした作品というのは、その動機に納得できるか否かにすべてがかかっているため、リスクが大きいと感じます。同じく浅持氏の『扉は閉ざされたまま』だって、登場人物ふたりの理論的なやり取りには好感持てますが、動機の面では不満を感じてしまいましたもの。その立場に陥ったものでないと感じることの出来ない感情を動機と位置づけてしまうのは作品の成立にとって大きな障害。『扉は~』はもちろん上質なミステリだと思っておりますが。

浅海氏の作品は動機を主題とした作品が多いため(『月の扉』なんかもそうですかね)読む読者を選ぶかもしれませんね。『アイルランドの薔薇』はトリック重視かと思いますが、根底に流れるテーマが難しいし。

これからが楽しみな作家さんのお一人であることは変わりありませんが。

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2006/03/09

『青空の卵』 坂木司

青空の卵 Book 青空の卵

著者:坂木 司
販売元:東京創元社
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平々凡々坂木司には一風変わった親友がいる。ひきこもり探偵・鳥井真一。

今日も坂木はひきこもり探偵の下に不思議を持ち込む。

ちょっぴり変わった二人が織り成す、ちょっぴり感動の短編ミステリ集。

なんですか!

この腐女子が狂喜乱舞しそうな記述の数々は!!

ついつい絶叫から入ってしまいました。

ノーマルに読めばちょっと異常な親友関係。アブノーマルに読めばBLかもしれない…それがこの「ひきこもり探偵」シリーズの特徴です。

ミステリ的な側面からレビューすると、最近流行りの日常のちょっとした謎をちょっとした手掛かりから解いちゃいましたミステリ。最近のミステリはこの手のものばかりで、ちょっと物足りない気がするけど、楽しめるから良しとしましょう。

そのちょっとした謎がこれまた独特な風味を醸し出していて好印象です。この手のミステリの場合、街で見かけたちょっと変な行動とか行為なんかをテーマにしていますが、この作品の場合そこになんらかの悪意が絡んでくる。

その悪意がひきこもり探偵・鳥井真一には深く突き刺さったりするわけですが。それはシリーズを通して語られる謎。

まだまだ続きが読みたいと思わせる、上質の謎だと思います。

そして、その謎の他にも腐女子の皆々様が興味を持つであろう坂木と鳥井の二人の関係。この二人は異常とも言える強固な繋がりで、離れられない運命の階段を着々と登りつつあります。

二人はその階段を登り詰めることができるのか。それとも落伍してしまうのか。腐女子でなくとも気になってしまうこの関係。

この「ひきこもり探偵」シリーズは全くノーチェックだったのですが、ミステリ創作のサーチエンジンでやけに作品を見かけるようになったので気になって手にとって見ました。創作にはうってつけだね☆

ということで、きっと腐女子の私は、この二人の関係が気になって次回作にも手を伸ばすことになるでしょう。ぎゃふん。

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2006/03/08

『アヒルと鴨のコインロッカー』 伊坂幸太郎

アヒルと鴨のコインロッカー Book アヒルと鴨のコインロッカー

著者:伊坂 幸太郎
販売元:東京創元社
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「一緒に本屋を襲わないか」

隣に住む謎の男・河崎からこう誘われたのは、新しい街に引越してきたその日のことだった。

そして、椎名は3人の物語に途中参加することとなる。

うーむ、これはあんまり。

この作品はどちらかというと『オーデュボンの祈り』や『グラスホッパー』系でしょうか。私の好みの系統ではなかったか。タイトルから言って『陽気なギャングが~』系だと思っていたんだけれどなぁ。残念。

過去と現在の二つの物語がラストでひとつになるのですが、そこまでの物語が苦痛。

悪くはないけれど、登場人物が皆後向きなので、読んでいて頁が進まないのですね。一人でも痛快な人物がいれば…椎名の独白は比較的爽快ではありましたが。

ただ、椎名も時の流れに身をまかせ系だからなぁ。

ただ、「僕たちは神様を閉じ込めてみたんだ」この台詞はすごく好きです。この一言にあらゆる切なさがつまってますね。

『ラッシュライフ』のように練りに練りこまれた作品とも言えず、『チルドレン』のようにキャラクタがぶっ飛んでいるわけでもない。

人気作家は期待が大きいだけに、その反動として評価が厳しくなってしまいますね。

伊坂氏の作品で未読は『死神の精度』『魔王』『砂漠』の3作ですか。次は私好みの痛快な語り口の作品に出逢えますように。

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ショック!

綾辻行人・有栖川有栖原作の

安楽椅子探偵の新作見忘れた!!

私の住んでいる地域では、今週の月曜日深夜に放送だったのです。

やっぱりアラートとか設定しておけば良かった…。

自分を信じた己の甘さに悔やむ。

来週の解決編だけ見てもなぁ。

綾辻行人・有栖川有栖からの挑戦状(5) 安楽椅子探偵と笛吹家の一族 DVD 綾辻行人・有栖川有栖からの挑戦状(5) 安楽椅子探偵と笛吹家の一族

販売元:メディアファクトリー
発売日:2006/04/28
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『結婚なんてしたくない』 黒田研二

結婚なんてしたくない Book 結婚なんてしたくない

著者:黒田 研二
販売元:幻冬舎
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“結婚なんてしたくない”5人の男性が出逢った女とは?

5人が遭遇した事件があるときひとつに交わる。

結婚なんてしたくない貴方に。

黒田研二氏はいつもラストに大どんでん返しを用意する、そのサービス精神が好きです。

今回はどんでん返しはありませんでしたが、落とすところに落として円満に解決させておりましたね。

まぁ、ツッコミ所はいくつかありましたが…。

まずねぇ、最初の最初。ネタバレになるのでオブラートには包ませていただきますが…

気付くだろう!普通!!

気付いていてやってたのと、気付いてないのでは落とし所が全く違ってくるのでは?

まぁ、そこまでストーリーに関与してないから良しとするか。

さて、今回は黒田研二氏の異色作との位置づけのようですが、話の筋は読めてしまうもののぐいぐい読ませる手法が良かった。

視点が5人の男性の間で入れ替わるため、実際の厚さよりもあっさりと薄く感じます。男性のタイプが違うのが良いね。

一番好印象だったのがゲイの彼。彼らの同棲生活がそこまでうまくゆくか?とのツッコミは封印するとしても、二人の関係性が良かったね。一番救われた感じがしました。彼にも良い彼氏が出来ると良いですね。

一昨年の黒田研二強化月間(という時期があった)からかなりの時間が経っているので、未読の作品もかなりたまってまいりました。例の合作は除外するとして(あの二人が組んであんな作品しかできないでか!)また強化月間やろうかなぁ。

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2006/03/07

『ルパンの消息』 横山秀夫

ルパンの消息 Book ルパンの消息

著者:横山 秀夫
販売元:光文社
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15年前に自殺と処理された女性教師の墜落死は実は殺人事件だった…。

時効寸前にタレ込まれた極秘情報から、3人の高校生が決行したルパン計画へと物語は迫ってゆく。

墜落死は本当に殺人事件だったのか。

そして、その犯人は一体誰なのか?

横山秀夫氏は社会派ミステリの旗手であり、社会派ミステリは私の苦手とするジャンル。楽しめるかどうか不安の読み始めでしたが、一気に引き込まれてしまいました。

この作品は社会派ミステリというよりも、どちらかと言えば本格ミステリ寄り。私の中の社会派ミステリのイメージはミステリと銘打ってはいても、謎の全く登場しない、人間が犯す犯罪に内面からスポットを当てるというもの。桐野夏生氏の『OUT』とか?

それが、どうですか。この『ルパンの消息』はしっかりとラストまで謎を残しつつ、逆転劇までやってのける。いいですねぇ。

この作品は横山氏の幻の処女作とのことですので、現在の横山氏の作品とは系統が大きく異なっているのではないかと想像しますが(横山氏の他の社会派ミステリは読んだことが無いのです…。オススメはなんですか?)このテイストの作品なら、もっと読んでみたいと感じました。

さて、肝心の内容。

果たしてこれだけの内容が時効目前の一日に凝縮できるのか!というほど、盛り沢山に描かれていて、読者を飽きさせません。

15年前の回想と現在の事件の進行がうまい具合に交じり合って、よくぞここでその情報を明かしてくれた!と思わず膝を打ってしまいます。

そして、スパイスとして描かれるかの有名な3億円事件。

この3億円事件がこれまたいい味付けをしてくれるのです。いつの間にか、主役の食材を食っちゃったりして。

とにかく、描かれるすべてが絶妙に絡み合って、最高の一品に仕上がっております。是非、ご賞味ください。

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2006/03/05

『チルドレン』 伊坂幸太郎

チルドレン Book チルドレン

著者:伊坂 幸太郎
販売元:講談社
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ばかばかしくて恰好よい、ファニーな「五つの奇跡」の物語。(帯より)

第131回直木賞候補作。

いつもは帯や作品紹介文を読んで内容紹介は自作するのですが、今回はちょっと困ってしまいました。「短編集のふりをした長編小説」というのは伊坂氏御本人談なのですが、どうも良い内容紹介が思い浮かばない。五つの短編により構成されているのですが、視点の変更はあるものの、どの作品にもとある人物が登場し、ちょっとしたキーパーソンとなってきます。

そのキーパーソンが破天荒・陣内。

まずちょっと尋常ではない思考力の持ち主。それが意図的であるのか無意図なのかは別として。その陣内の巻き起こす騒動が主軸かと思いきや、ちょっとしたミステリテイストに落ち着く、それが本作です。

語彙が私に不足しているのも原因ですが、本作は紹介できるような主題となる内容が無いのですよ。どれもちょっとした奇跡(?)について描かれていて、読んでいてちょっと爽快になる。この“ちょっと”というのが肝心。

伊坂氏の作品はどっしりとした不思議な主題が用意されているか(『オーデュボンの祈り』『ラッシュライフ』など)、本作のようにさらりとやってのけるかのどちらかですね。個人的には後者の方が好みです。よって『チルドレン』はなかなかの好印象。

でも、印象に残りづらいのが難点。3年後にこの作品についてどれだけ思いだせるか…自信ありません。

描かれてる短編のひとつ「バンク」は『陽気なギャングが地球を回す』を容易に想像できてしまうのが(この短編が元ネタかもしれませんが)ちょっと残念。『陽気な~』を最近読んだばかりなのが原因かもしれませんが、同じ作家にこれをやられてしまうともう消化不良です。

ただ、永瀬の見えないからこそ見えるもの、感じるものから推理を組み立てる手法というのは感心。

ミステリテイストといってもどれもちょっとしたものなのですが、そのポイントの押さえ方はさすが直木賞候補作といった感じでしょうか。飛躍の仕方も想定の範囲内。無難です。

ちょっとした時にちょっと読んでみたいちょっとした一作でした。

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『犬はどこだ』 米澤穂信

犬はどこだ Book 犬はどこだ

著者:米澤 穂信
販売元:東京創元社
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犬探し専門(希望)の調査事務所に舞い込んできた最初の仕事は失踪人捜しと古文書の解読。

しかし、この二つの依頼は調査の途中で奇妙にリンクする!

紺屋S&Rシリーズ第一弾。

「このミス2006」で見事8位にランクインした本作。

ライトノベルで活躍していた米澤氏がいよいよ本格的にミステリ界に殴りこみです。

このブロ愚で米澤氏の作品をレビューするのは3作目です。私的な運営規定において、同作家の作品を3作レビューしたら作家カテゴリを新設すると決められているため、初のカテゴリ製作作家となりました。

おめでとうございます♪

さて、肝心のレビューでございますが、これまで読んだ米澤氏の作品(レビュー済の3作品+『氷菓』『春季限定いちごタルト事件』)の中で個人的に一番好きです。ライトノベルで取り扱っていた内容よりも、本格的にミステリミステリしている作品だからでしょうか。

あのラストの後味の悪さが最高!

ちなみに紺野さんのあの営業ボイス変貌ぶりに萌え☆

米澤氏の主人公は概ね、小市民省エネひきこもりといったネガティブ傾向が強く、社会性には乏しいと読者に思わせるように描かれております。実際には彼らには彼らにしかわからない理論や理屈で行動しているわけですが、今回の紺野さんもその例を踏襲。

ただ、これまでの主人公層(=高校生)から社会人ドロップアウトへと大人への階段をひとつ登った紺野さんの登場は、ほぼ同年代の私に非常になじみ深い主人公となりました。思考がトレースし易いと言いますか。

やはり高校生主人公だと、今日びの高校生ってこんなことまで考えるのか?と若干のとっつき難さを感じてしまっていたのですね。

肝心要のミステリ部分も、二つの依頼が読者の前にはこんなにも明らかに提示されているのに、登場人物がそのリンクに全く気付かない(おい!ハンペー、君だよ)という神の視点からのジレンマがありましたが、そのジレンマが解消されてからの紺野さんの推理の飛躍には目を見張るものがあったと思います。

多少ご都合主義的な展開(友人の登場やチャットの部分)があったかなぁと思いますが、それは許容範囲内ということで。

この紺野S&Rシリーズの次回作予定も既に発表になっており、ますます読書の楽しみが増えました。米澤氏の作品で未読なものは『さよなら妖精』のみとなりましたが、これは面白い作品が読みたくなった時のストックとして大切にとっておきましょうかね。

次回のレビューは『さよなら妖精』あるいは『夏季限定~』でお会いしましょう!

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