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2006/02/26

『クドリャフカの順番 「十文字」事件』 米澤穂信

クドリャフカの順番―「十文字」事件 Book クドリャフカの順番―「十文字」事件

著者:米澤 穂信
販売元:角川書店
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ついに文化祭を向かえた古典部の4人。

しかし、文集の「氷菓」を予定の7倍も刷ってしまった!

果たして「氷菓」を完売させることはできるのか。

『氷菓』『愚者のエンドロール』に続く古典部シリーズの第三弾です。『氷菓』の短編集の趣と「氷菓」に込められた謎を解くという趣向、『愚者~』の名作ミステリをオマージュしたエンターテイメント性から比べると劣るかな、と。

古典部4人のキャラクタを前面に押し出すことで、キャラ小説になってしまったことが残念。怪盗「十文字」が残した暗号だって、ちょっと苦しい。ただ、ホータローひとりではあの暗号を解くことができなかった=古典部4人の協力が必要だった=それが「氷菓」完売に繋がったという、当たり前ではあるが美しい図式が描かれていたことが共感できますでしょうか。

あとは、これまでの作品は主にホータローの一人称だっため見えてこなかった、古典部他メンバーの心情がうまく描かれていて新鮮でした。ちゃんと摩耶花に気があるんじゃん、データベースくん。

もうひとつ注目すべき点はホータローの姉貴がついに登場といったところですね。この古典部シリーズの神でもある姉貴がついに日本に帰ってきましたか。

米澤穂信氏のHP(汎夢殿)によると、古典部の新作が今年中にも発売されるようなので、次回作での古典部の活躍と神の暗躍にも期待です。

ただ、その前に『犬はどこだ』。次のレビューは『犬』でお逢いしましょう。

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『神様ゲーム』 麻耶雄嵩

神様ゲーム Book 神様ゲーム

著者:麻耶 雄嵩
販売元:講談社
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猫殺しの犯人究明へと乗り出す探偵団。

そして彼らに突きつけられる友の死。

これは神様が仕組んだゲームなのか。

「このミス2006」第五位にランクインした「かつて子どもだったあなたと少年少女のための」ミステリーランド第七回配本です。

なんだか夢見が悪くなりそうな。

少年少女よ、これはフィクションですからね。

麻耶雄嵩氏の作品だけあって、トリックは申し分ございません。納得。

ただし、そこに描かれる人間関係が泥臭いですね。(ここからネタバレします。危険です。私はこの本のネタバレ被害にあってからこの本を読みました。いちおうフセ字ですが、警告!)

まずもぉ、お○さん!小学生相手にエッチなことしちゃダメですよ!いや、神様が天誅下したのはお○さんだから…嗚呼、夢見が悪い。

この作品の問題点は全知全能の神様が登場して、親友殺しの犯人と共犯者に天誅をくだしますが、その神様の描き方が巧い。ラストまで彼が神様であることを疑わせません。

ただ、親友殺しのトリックを信じるならラストのオチで彼は神様ではないし、彼を神様だと信じたいのなら自分で親友殺しのトリックを再構築させるしかない。

仕掛けてくれますね、麻耶氏。

ただ、もうひとつの解釈は神様も間違えることがあるということ。作中で神様自信が「間違えることなどない」と断言しておりますが、はてさて。そこにあるのは本当に真実なのかな?

ミステリーランドでここまで考えさせてくれるとは。

因みにミステリーランドの他のオススメは『探偵伯爵と僕』と『虹果て村の秘密』です。来月には綾辻行人氏の『びっくり館の殺人』(なんと、正式な「館シリーズ」)が配本予定ですし、なかなか侮れませんな。

少年少女よ、あくまでもフィクションですからね…。

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2006/02/25

『亜愛一郎の転倒』 泡坂妻夫

亜愛一郎の転倒 Book 亜愛一郎の転倒

著者:泡坂 妻夫
販売元:東京創元社
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亜愛一郎シリーズ第二弾。

スラリ・サラリ・パサリの好青年・亜愛一郎の推理が冴え渡る!

間に一冊挟んでの亜愛一郎シリーズ第二弾。

上質な作品は何年経っても残されるものなんですよね。この作品集の初出は1977年~1980年の「幻影城」ですから。

血みどろの連続殺人も殺人鬼も出て来ないけれど、ちょっとした謎をトリッキーに魅せる手腕は健在。

何よりも主人公である亜愛一郎が私を癒してくれます。スラリ・サラリ・パサリなのに、どじでのろまな癒し系。家に一人置いておきたい感じです。

この作品集の第一話「藁の猫」は、完璧主義者の画家が残した謎がテーマになっています。完璧なものは壊れるしかない…この言葉は亜愛一郎のことを指しているのでしょうね。

完璧な名探偵は誤ることが許されないから、壊れるしかないのです。

肩から力を抜いて、急かされることなく楽しむ読書ができるって良いことですね。

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2006/02/24

『殺人ピエロの孤島同窓会』 水田美意子

殺人ピエロの孤島同窓会 Book 殺人ピエロの孤島同窓会

著者:水田 美意子
販売元:宝島社
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避難勧告の出された孤島に彼らは同窓会のため戻ってきた。

そこに登場した殺人ピエロ。殺人ピエロに魔の手にクラスメイトたちが落ちてゆく。

驚異の12歳が描く連続殺人ミステリ。

まんまと出版業界の策略に乗ってしまいました。

言いたいことが山の様にあるのですが、まずは作品の感想から。

解説で大森望氏がこの作品は『バトロワ』を下敷きに書かれたものではないとおっしゃっておりましたが、どう読んだって『バトロワ』としか読めません。しかも、同級生一人ひとりの個性が充分に描かれていないため、彼らが殺人ピエロの手に次々と落ちてゆくのに、どんな気持ちも生まれてこないんですね。ただのカウントダウンでしかない。その点、やはり『バトロワ』は巧みだったなぁと再認識。

さて、肝心のミステリの本質部分ですが、12歳の作品なら満足、普通の作家の作品ならそんな使い古された手を…と肩を落とすところ。容易にトリックが読めるし、最近のミステリで重視される犯人の意外性もありません。落ちることろに落ちるべくして落ちた感じ。

ときどき登場するバーチャルな会話も、思ったほどの意味や効果がなかったし。

ただ、その成熟と知識と挑戦には拍手。「三セク」なんて言葉がすらっと出てくる12歳なんてまさに驚異。私だって「三セク」をきちんと解説しろって言われたら「出来ません」って即答するよ。私が12歳だったころなんて、まだジュブナイルのホームズやらルパンやらしか読んでいませんでしたもの。ドイルもクリスティもクイーンもカーもまだ知らなかったお年頃です。

まさに「このミス大賞」での品評通り、12歳という作者の年齢を勘案しなければ、出版するには及ばない作品だと思います。15歳なら不可。手厳しい言葉かもしれませんが、それはきちんとこの本を購入した人間なら行って良い行為だと思いますので。

12歳という枕詞がこの作品には付きまとうのでしょう。褒めるのも批評するのもまずは12歳という言葉が付いて回る。それが彼女にとって幸か不幸か。これからの彼女の成長に大きな期待を寄せつつレビューを締めたいと思います。

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2006/02/23

衝撃

のあまりついつい記事にしてしまいます。

いま、高田崇史公認ファンサイトを拝見していたところ、どでかい雷に撃たれました。

高田氏が幻冬舎で4月から始める連載は『伊勢物語』をテーマにしたものになるようですが、主人公が「御名形史紋」くん…

御名形史紋!!!!!!!!!!

嗚呼びっくりした。読まなきゃ…。

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『亜愛一郎の狼狽』 泡坂妻夫

亜愛一郎の狼狽 Book 亜愛一郎の狼狽

著者:泡坂 妻夫
販売元:東京創元社
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亜愛一郎シリーズ三部作の第一短編集。

青年カメラマン亜愛一郎が遭遇するトリッキーなミステリとは?

名探偵図鑑(日本語編)なるマニアなら垂涎ものの図鑑が発刊されることになったら、トップバッターは間違いなくこの人でしょう。その名も亜 愛一郎(あ あいいちろう)。

亜愛一郎はスラリ・サラリ・パサリの好青年(あれ?どこからか高田崇史氏が)。ただし、運動神経はどうやらつながっていないようですが。

そんな亜愛一郎がトリッキーな事件に遭遇する作品集がこの「亜愛一郎シリーズ」です。

先日本屋さんに行ったら、この「亜愛一郎シリーズ三部作」が棚に納まっているのを見て、ついつい大人買いをしてしまいました。だって初めて見たんですもの。この三部作が揃っているのを。三部作揃っているのを見たら買おうと決めて早3年。ようやく出逢えることが出来ました。マイナなのね、やっぱり。

このシリーズの作者である泡坂妻夫氏はマジシャンでもあり、マジシャンらしい(?)遊び心がシリーズ通して描かれております。実は亜愛一郎の正体は…これは三部作の最後のお楽しみ。

本当は一気に三部作読むつもりだったのですが、一部のマニアで話題の一冊を購入したので、間にその本をはさむことと致します。その一冊がなんなのかは、次回のレビューをお楽しみに~☆

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2006/02/20

『好き好き大好き超愛してる』 舞城王太郎

好き好き大好き超愛してる。 Book 好き好き大好き超愛してる。

著者:舞城 王太郎
販売元:講談社
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「好き好き大好き超愛してる」の意味不明な創作部分を除いた部分は読めないことは無い。

ただ、もう舞城王太郎を読むことは二度とあるまい。

「ドリルホール・イン・マイ・ブレイン」が掲載・出版される出版業界が最大のミステリ。

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2006/02/19

『ニッポン硬貨の謎』 北村薫

ニッポン硬貨の謎 Book ニッポン硬貨の謎

著者:北村 薫
販売元:東京創元社
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北村薫がエラリー・クイーンの幻の遺稿を翻訳。

エラリー・クイーンが来日時に遭遇した2つの事件とは?

「このミス2006」においてバカミス大賞を受賞した本作。

作中の注釈やハヤカワミステリの装丁にぐっときます。

本の厚さの割りに行間が広くとられているので、実際の事件は非常にコンパクト。ただ、内容は熱い!北村薫氏のエラリー・クイーンへの愛が所狭しと描かれております。

私がエラリー・クイーンを読み漁ったのは高校生の頃なので、作中の『シャム双子』論について芯から理解することが出来なかったのですが、その内容が非常に面白い。シリーズミステリについては作中の謎だけでなく、シリーズであることを活かした謎というのがあるとまた良いですね。

「後期クイーン論争」という問題がよく本格ミステリの中で取り沙汰されます。私もその骨子の部分しか理解しておりませんので、その内容を記述することは避けますが、ミステリはこういった読み方があるのかと読み始めだったころに驚いた記憶があります。

私にとってミステリはエンターテイメントであって、そこまで深く読み込むものではなかったのですね。今だって数はこなしておりますが、そこまで深く読み込めているかというと否。ただ、そういったミステリ理論を面白いと感じることができるようになりました。

また今回非常に興味深かったのが、北村薫氏がこういった形で「五十円玉二十枚の謎」にひとつの解答を寄せてくださったこと。

アンソロジー『五十円玉二十枚の謎』において、法月綸太郎氏の解答「土曜日の本」が私のお気に入りなのですが、あの北村氏がアンソロジー発刊から10年以上経ってついにひとつの解答をここに提示してくださいました(アンソロジーを読んだことがある方なら、この記述ににやっとしてくださるはず)。

この「五十円玉~」の謎はミステリマニアの方には有名な逸話のひとつですので、興味を持った方は是非アンソロジーを手にとってみてください。

競作五十円玉二十枚の謎 Book 競作五十円玉二十枚の謎

著者:若竹 七海,依井 貴裕,有栖川 有栖,笠原 卓,法月 綸太郎
販売元:東京創元社
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とにかくミステリ好きにはたまらない二冊。是非お読みください。

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『工学部・水柿助教授の逡巡』 森博嗣

工学部・水柿助教授の逡巡 Book 工学部・水柿助教授の逡巡

著者:森 博嗣
販売元:幻冬舎
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この作品は小説である。

水柿助教授がミステリ作家になった経緯が森博嗣という作家が生まれた経緯を酷似しているが、あくまでもこの作品は小説である。

若手研究家はこうして小説家になった。

森博嗣氏がお送りするファンのファンによるファンのための作品。

この作品を最後まで読むことができるのは、森博嗣氏のファンだけでしょう。

そうでなければ、飛ぶ跳ねる成層圏突破のこの作品に途中で嫌気が差してしまい、投げ出すことになるのは必死。

この作品に登場する水柿助教授と須摩子さんは、どこぞやの作家夫婦を容易に想像させます。水柿を縦に並べてくっつけると、あら別の名字に?

しかし、森博嗣氏のファンならきっと楽しむことが出来るし、飛ぶ跳ねる表現もななめに読むことでクリアできなくもない。

隠されているさりげないジョークが10あったとして、1つでも発見することができたのなら、それはきっと幸せなことなのである。多分。

というわけで、森博嗣氏の人となりや生活に興味が無い人がこの本を読破しようと思ったら、かなりの苦行を強いられることでしょう。だって、ファンだって苦しいもの。

天才の考えていることは理解不能。

文系読者の前には厚い防火シャッタが現れることでしょう。

でも、ファンなら森博嗣氏誕生の秘話を是非ご賞味ください。

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2006/02/18

『蛇にピアス』 金原ひとみ

蛇にピアス Book 蛇にピアス

著者:金原 ひとみ
販売元:集英社
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言わずと知れた第130回芥川賞を受賞作。

スプリットタンと刺青を熱望する少女を取り巻く喪失の物語。

図書館で目に止まり、「そういえば読んでいなかったな」とそのまま借りてきました。

思ったより良かったです。

芥川賞を受賞したときはそのフィーバーぶりに閉口しちゃって読む気にもなれませんでしたが(芥川賞自体の権威を信じていないとも言う)予想外に良かった。

ちょっとミステリ仕立てだったのが良かったのかもしれない。

ただただ、少女が肉体を改造し、手を加える度になにかを失ってゆくだけの物語なら、つまらなかったでしょう。

そこにミステリ要素(あくまでも要素)が加わって、劇的に場面が動いたため、少女の喪失がうまく印象に残った感があります。

ちょっと見直したよ。

しかし、性の描写なんかを読んでいるとよく芥川賞を受賞できたなと思います。

綿矢りさの『蹴りたい背中』もまだ未読なのですが、一般的には『蛇にピアス』よりも高評価でしたよね。同じく綿矢りさの『インストール』もテーマは女子校生のバーチャル詐欺だったように記憶しているのですが。

純文学(にカテゴライズされるんですよね?)は苦手でめったに読まないため、最近の主流はまったく知りませんが、純文学も過激になったなぁ、と。

私がもうちょっと若かったころの純文学といったら堅くてカチンコチンだったのに。破天荒っていっても山田詠美氏の『ぼくは勉強ができない』くらいのレベルで、学力テストの問題文になる程度のものだったのに。

やっぱり純文学は奥が深すぎて理解に苦しみます。

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『邪馬台国はどこですか?』 鯨統一郎

邪馬台国はどこですか? Book 邪馬台国はどこですか?

著者:鯨 統一郎
販売元:東京創元社
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バーのカウンターで展開される歴史バトル。

これまで明かされることのなかった真実がここに!?

この作品は宮田六郎という怪しげな歴史研究家がこれまで謎とされていた(あるいはされていなかった)歴史に爆弾を放り投げるというスタンスで描かれております。

この作品集で爆弾を投下される歴史テーマは「仏陀」「邪馬台国」「聖徳太子」「本能寺の変」「明治維新」「イエス・キリスト」の6点。

うーん、残念。

テーマはどれも魅力に富んでいて、興味をそそるのですが…。

この手の作品の傾向として、ちょっと知っている知識に爆弾を投下されるとうっかり真実だと思い込んでしまう、というものがあります。あるいは滑稽なものほど真実だと感じてしまう。

この作品はこのあたりを狙っているのかもしれません。

私は一応大学で史学を専攻していたので、若干多少歴史の知識を多く持ち合わせていますが、ちょっと頷けない爆弾がこの作品には多い。

確かに魅力的だし、歴史が本当にこの通りだったら面白いだろうなぁと思います(邪馬台国の○○説なんかは、案外いけると思います)し、事実は小説より奇なりなんて言葉もありますが、やっぱり頷けないんです。

それは、私が教科書より多少つっこんで歴史を学ぼうとしていたから。

つまり、頭がすっかり堅くなっているんですよ。突飛な意見を受け入れることができない。

上記の残念はそういった意味で。

話を少し戻すと、私が好んで読んでいる歴史ミステリシリーズに高田崇史氏の「QED」シリーズがあります。このシリーズは「記紀」で描かれる神話をベースにした歴史の謎が描かれるケースが多いのですが、この神話ベースの話になるとその神話自体が嘘臭いので、すっかり信じてしまうという傾向が現れます。

ちょっと知っている知識に爆弾を投下されると~のパターンに一番陥っているのは私かもしれませんね…。

今夜は戦国マニアの同居人とこの本をベースにした「本能寺の変」で議論を交わしてみようかな、と思います。

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2006/02/17

『MISSING』 本多孝好

Book MISSING

著者:本多 孝好
販売元:双葉社
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「このミス2000」で10位ランクインし、いきなり脚光を浴びた本多孝好の珠玉の短編集。

私が愛して愛して愛して止まない一冊。

私と『MISSING』の出会いは大学受験を終え、禁読書の反動からか活字中毒に陥っていたとき。図書館から借りてきた『人狼城の恐怖』や『死鬼』の中に『MISSING』はひっそりと混ざっておりました。

読後の感想は「なんなんだ、これは」。

『MISSING』のような本には、それまで出会ったことがありませんでした。

どう表現したら良いのかわからない感情がどわーっと溢れ出してきて、この本に出逢えたことを心の底から感謝しました。

本当にすごい。

私の陳腐な言葉では、この本の良さを的確に表現することはできません。

ただ、読んでください、と。

本多孝好氏は“ミステリ界の村上春樹”と評価されることがあるようですが、村上春樹氏は『ノルウェイの森』しか読んだことの無い私でも、そう評価されることがどんなに高評価であるかはわかります。

その世界観とスマートな表現で他を圧倒する存在。

本多孝好氏はそういった作家です。

執筆スピードはあまり速い方ではなく、締め切りに追われて作品を書くような仕事はされない方なので、新刊が出る度に「いよっ!待ってました!!」と拍手喝采。そして、作品を読んでまた拍手喝采。

『MISSING』のような雷に打たれたような感覚に出逢えることは少なくなりましたが、いつも独特の世界観と趣のある表現で私をうっとりさせてくれます。

私が愛して止まない作家の一人です。

因みに『MISSING』に収録されている「瑠璃」が本多氏の全作品の中でいっとぅ好きです。

右のサイドバーにある“UNION”の中の「honda fan union」は本多孝好氏のファン同盟です。本多氏が好きな方は是非訪れてみてください。

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『名探偵はもういない』 霧舎巧

名探偵はもういない Book 名探偵はもういない

著者:霧舎 巧
販売元:原書房
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閉ざされたペンションで起こった連続怪死事件。

この謎に挑むのは刑事?犯罪学者?あの名探偵?

あれ?こんなにまわりくどい作品だったっけ?というのが再読での感想。

もっとスマートに推理合戦を楽しませる作品だったと認識していたのですが。

3年前の自分もまだまだだったな、と恥ずかしく想ふ。

さて、この作品にはかの有名な名探偵が登場します。そして、霧舎氏の「あかずの扉」シリーズからもゲストが。ミステリ好きにはたまらない競演なのですが、私が注目したのは犯罪学者。

犯罪学者の人間臭さがこの作品の鍵となるのですが、私の好みです。歪んだ精神と歪んだ人間性が好きですね。

充分シリーズものの探偵をはれるだけの才能と変態性を持っていると思います。

名探偵には変態性が必須だと思っているのですがいかがでしょうか?

ミステリとしては最初に感じたように、いろんなことを書こうとするが故のまわりくどさが気になりますが、このまわりくどさは霧舎氏のどの作品にも言えますでしょうか。

霧舎氏の作品は好き嫌いがはっきりと分かれてしまうでしょうね。

そういったまわりくどさを排除するべく「霧舎学園」シリーズがあるのでしょうが、最新刊の『九月~』は元々「あかずの扉」で使用するはずだったトリックを使っているため、すっかりまわりくどくなってしまっていたのが残念。

いや、私は霧舎氏好きなんですよ。

タイトルまで明かされている「あかずの扉」の最新刊を今か今かとかれこれ3年近く待ち望んでおりますから。

そういえば、この「名探偵」シリーズの最新刊が3月に発売というネタをどこかで読んだような気がするのですが、気のせいだったのかしら?文庫化の情報を間違って記憶しているという可能性を突如として思い付きました。

いまからチェックしにゆきます。

『名探偵はどこにいる』が発売の運びとなっております。レビューはこちらから。

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2006/02/15

『そして誰もいなくなった』 アガサ・クリスティ

そして誰もいなくなった Book そして誰もいなくなった

著者:アガサ クリスティー
販売元:早川書房
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インディアン島に集められた10人の男女。マザーグースの通りに発生する殺人事件。

そして最期には誰もいなくなる…。

果たしてこの殺人計画を立てたのは誰なのか?

『アクロイド殺し』に並ぶクリスティの名作。あとひとつは『オリエント急行の殺人』だと思いますが、『オリエント~』については私は否定的でございます。

この『そして誰もいなくなった』についても『アクロイド殺し』と同様に、ミステリ界に与えた影響が大きいという点が評価されます。

綾辻行人氏の『十角館の殺人』だって、この作品がなければ生まれなかったかもしれない。

クリスティはそのチャレンジ精神と執筆スピードによって“ミステリの女王”にまで上り詰めました。

古典ミステリの作家の中では、私はクリスティが一番好きです。

まだミステリは初心者で、どんな作品を読んだら良いのかわからないとお思いの方は、是非手にとってみてください。

さて、本編とは関係ないところで気になった点があります。

私が所有しているのはアフィリで表示しているクリスティ文庫版ではなくて、赤い背表紙で御馴染みのハヤカワミステリ版ですが、この解説で各務三郎氏が次のように述べています。以下、解説より抜粋。

『そして誰もいなくなった』では、読者にとって信憑性のある描写を意図的に避けている。この手法が『アクロイド殺し』で失敗し、『そして誰もいなくなった』で成功したのは…(以下省略)

何事ですか!?

私の大好きな『アクロイド殺し』がここではアンフェアだと否定されているわけですが、まぁそこに目くじらを立てるのは止めましょうか。

ただ、『アクロイド殺し』に比べて『そして誰もいなくなった』の方がキレイにまとめられているのは確かです。

それはクリスティが用意したインディアン島という舞台設定と、巧みなマザーグースの演出によるものだと感じます。

薦められて『アクロイド殺し』読んでみたけど、アンフェアでやってられないよ!という貴方。是非とも次は『そして誰もいなくなった』をお読みくださいませ。

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『アクロイド殺し』 アガサ・クリスティ

アクロイド殺し Book アクロイド殺し

著者:アガサ クリスティー
販売元:早川書房
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村の名士・アクロイド氏が殺害された。

灰色の脳細胞ポアロがこの謎に挑む。

フェアかアンフェアか論争を巻き起こした不朽の名作。

フェアです。

いきなりの宣誓。私はバリバリのフェア論者でございます。

私がこの『アクロイド殺し』を読んだのは中学生のとき。この有名な結末のネタバレ被害には遭わずに読むことができました。

純粋な気持ちでこの本を読むことができたことを、私は神に感謝しています。

今でもあのときの興奮を忘れることができずに、「好きな本3冊」なんかを選ぶ場面では必ずこの本をチョイスするようにしています。あとは「ミステリ初心者に薦める一冊」とかいう場面もこの本。

結末を知らずにこの本を読めることの幸せを感じて欲しいんですよ。

そこの中学生、いますぐ読みなさい(笑)

たとえアンフェア論者であっても、この『アクロイド殺し』が発表されたことで生まれた名作がいくつもあったことは認めざるを得ないと思います。

その意味でもこの作品は素晴らしいのです。

結末の特異性からこの本については内容について触れることはできませんが、読んで損をしない貴重な一冊です。

騙されたと思って是非お読みください。

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帰省中ビデオ三昧

休暇をもらって実家に帰省し、ビデオ三昧の日々を過ごしておりました。

今回観たビデオは以下の5点。

交渉人 真下正義 スタンダード・エディション DVD 交渉人 真下正義 スタンダード・エディション

販売元:ポニーキャニオン
発売日:2005/12/17
Amazon.co.jpで詳細を確認する

あずみ 2 DVD あずみ 2

販売元:アミューズソフトエンタテインメント
発売日:2005/09/22
Amazon.co.jpで詳細を確認する

ハサミ男 DVD ハサミ男

販売元:東宝
発売日:2005/11/25
Amazon.co.jpで詳細を確認する

約三十の嘘 特別版 DVD 約三十の嘘 特別版

販売元:角川エンタテインメント
発売日:2005/06/10
Amazon.co.jpで詳細を確認する

オーシャンズ 12 DVD オーシャンズ 12

販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ
発売日:2005/07/01
Amazon.co.jpで詳細を確認する

普段暮らしている土地は都会のためかレンタル料金が高いため、実家で借りて一気に観るようにしております。

都会は競争が激しい割りに、ある程度値段が高くてもレンタル回数をさばけるんでしょうね。皆さん、ハイソだ。

さて、感想。

『ハサミ男』は原作が大好きでしたので、非常に期待をして観ました。

批判されていた割には良かったような。

『ハサミ男』のトリックは小説だからできるネタですから、映画はどうしてもオリジナルのトリックで仕掛けなくてはならないのでしょう。

ラストの10分くらいは蛇足だと感じましたが、オリジナルトリックとして充分に足る内容だと感じました。

あの部屋の仕掛けは意図したものが伝わり難かったと思いますが。

あとは詐欺師ものの『約三十の嘘』と『オーシャンズ12』ですね。

『約三十の嘘』については、前評判の割りに微妙だと感じてしまいました。

詐欺師という仕事のプロフェッショナル性が描かれる人間ドラマですっかり消え去ってしまっているのが残念。

その意味では『オーシャンズ12』の方が巧い。

ただ、出演者が楽しむための映画という評判を超えることはできませんでしたが。

『真下正義』と『あずみ2』については特にコメント無しということで。

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2006/02/11

『陽気なギャングが地球を回す』 伊坂幸太郎

陽気なギャングが地球を回す Book 陽気なギャングが地球を回す

著者:伊坂 幸太郎
販売元:祥伝社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

陽気な銀行強盗4人組が銀行からの逃走中に「売上」を盗まれた!

それをきっかけに彼らが巻き込まれる(飛び込む?)事件とは?

映画化もされる伊坂ワールド3作目!

面白かった!非常に映画向けですね。テンポがすごく良くて。伊坂氏もあとがきで述べているように、1時間半の映画を観せられた感じ。実際に読むのは1時間半以上かかったけれど。

4人のキャラクタがまた良いんですよ。その4人を取り巻く家族も。1人ろくでもない親がいるけど。

映画のキャスティングもまた良くて、是非鑑賞したい一作です。

伊坂氏の作品を読むのはは『オーデュボンの祈り』『ラッシュライフ』『重力ピエロ』『グラスホッパー』に続く5作目。この中ではこの作品が一番好きかも。次点は『重力ピエロ』。

軽い語り口と気の利いたジョークが光る作品が好きです。逆に『グラスホッパー』のような作品はちょっと苦手かも。

しかし、あの若さで直木賞常連ですからね。今回の直木賞は東野圭吾氏に花を持たせましたが、次の直木賞ノミネートで受賞しなければ東野圭吾氏に続く「直木賞はなにをしているんだ」クレームが沸き起こるのは必死。ってもう起きてますか。

今回2作受賞でも良かったのではないでしょうかね。

陽気な4人組が地球を回す作品をまだまだ読んでみたいけれど、こういった作品は続きが発表されないほうが良いのでしょうね。読者が各々彼らの活躍を胸に描いているでしょうから。 続編が発表されるそうですね。いや、楽しみなんですが…。

とにかく5月にロードショーされる映画を観て、生の彼らを楽しみたいと思います。

そうそう、やはり伊坂氏は伏線の張り方がうまいなぁと感じました。すべて回収されてましたね。

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『密室の鍵貸します』 東川篤哉

密室の鍵貸します Book 密室の鍵貸します

著者:東川 篤哉
販売元:光文社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

一晩で二件の殺人事件の容疑者となってしまった戸村流平。

しかもひとつは完全なる密室!

流平が頼れるのは、もう元・義兄であり私立探偵の彼しかいなかった!

こちらでは昨日書店に並んだばかりの新刊(文庫)です。発売日に本が購入できるようにしてくださいよ、出版&運送業者さん。

さて、肝心の中身ですが、解説で有栖川有栖氏が述べているようにれっきとした本格ミステリ。

本格ミステリの代名詞とも言える“密室”がタイトルになってるところが、東川篤哉氏の本気度を示しているとも言えるでしょう。ミステリに興味ない人は、この本を手に取ろうとも思わないはずですから。

トリックについては、しっかりと伏線が回収されて落ちるべきところにきちんと着地した感じ。ただ、伏線が「こんにちは!僕、伏線です!!」と言わんばかりに自己紹介しているため、事件が起こる前からトリックが読めてしまいました。残念。

東川氏の作品はユーモアミステリにカテゴリされますが、この作品はユーモアの量も質も良いバランスで保たれていると感じました。

『交換殺人には向かない夜』はユーモア…というよりギャグが多すぎて、私的にはうんざりの読了となったのですが、このくらいの量なら充分に楽しんで読めます。

オチ(動機)が良いよね、この作品は。

東川氏の作品は他に『学ばない探偵たちの学園』を読みましたが、あちらの作品はユーモアが他のミステリ作品を題材にしたものが多かったので、ミステリ好きなら笑えるけど、知らなければそこにユーモアが潜んでいることも気付かないといった趣でした。ミステリ好きなら『学ばない~』の方がユーモアミステリを体感できると思います。

これからの活躍が期待される東川篤哉氏の一冊でした。

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『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』 桜庭一樹

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない Book 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない

著者:桜庭 一樹
販売元:富士見書房
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戦う手段としての実弾を持つことを願う少女と、自分を人魚だと主張する少女。

このふたりが出会ったとき生まれるものは?

あらすじの文句をお借りすると、この作品は“青春暗黒ミステリー”だそうです。

この作品を読むきっかけは、「このミス2006」。ランクインした『少女には向かない職業』に興味を持って、ハードカバーはちょっとねという理由から別の作品を読んでみよう、と思い立ちました。

「かつくら」で綾辻行人氏が印象に残った一冊に『砂糖菓子の~』を挙げていたのも要因のひとつかしら。

さて、問題の“青春暗黒ミステリー”といカテゴリについて。

すんごい文句のカテゴリ…。青春と暗黒って相反するべきものなのに。堂々と煽っちゃってますよ。ただ、乙一氏あたりにはぴったりくるカテゴリかもしれない。

ただね、私の理論から言えば、この作品はミステリではないんですよ。このミステリ理論は『容疑者Xの献身』にみられる本格か否か論争のように、個人の主観によるものなのですが、少なくとも私のなかではミステリにはカテゴライズされないんです。悪しからず。

ただ、この作品の“テーマ”は充分に重いし、考えるべき問題だと思います。

私個人としてはこの手の“テーマ”は苦手です。先述のミステリ理論と併せて言えば、この作品はミステリではなく非常に文学的な作品。ライトノベル形式で発表されていなければ、どこぞやの文学賞(文学賞に対して否定的観点)にノミネートされそうな。

実弾を望む少女と砂糖菓子の弾丸を撃ちまくる少女。

現代の少女たちは常に戦っていなくてはならないのでしょう。問題の大小は問題ではなく。

ページ数や薄さに関係なく、最期まで一気に読ませる作品だったことが高評価です。『少女には向かない職業』で、どこまでミステリを読ませているのかに非常に期待。

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2006/02/10

『5分間ミステリー』 ケン・ウェバー

Book 5分間ミステリー

著者:ケン・ウェバー
販売元:扶桑社
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その名の通り5分間で読めるミステリーが37編収録されています。

通勤時間や、ちょっとした息抜きにミステリが読みたい方に。

ちょっと頭の体操がしたくなって読んでみました。

このシリーズは右脳左脳で書いたような読書の仕方はできないので、まさに頭の体操。

知識がないと解けない問題は無視したとして、ちゃんと読んでいれば解ける問題が解けたときには、ちょっとだけ嬉しくなりますね。

シリーズが重なってゆくにつれて、古典や名作ミステリで使われたトリックが問題になっていることや、同じトリックが二度三度と出てきてしまうのが残念。

トリックが無限ではないことが証明されてしまいます。

ただ、1年くらい間を空ければ何度も楽しめる一冊ですので、一冊くらい本棚に入っていて損のない作品だと思います。私の本棚にはこのシリーズが5作目くらいまで入っていますが。一時期ハマっていたもので。

類似品に『2分間ミステリー』という作品がありますが、こちらは2分間というだけあって一編一編が短いため、本当にトリック重視。作品に奥行きがないんですよ。ですので、私は『5分間』の方が好みです。『2分間』と違ってお決まりの探偵役がいないのも、また一興。

ちょっと頭のリフレッシュをしたい方、是非。

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2006/02/08

『怪盗ニック登場』 エドワード・D・ホック

怪盗ニック登場 Book 怪盗ニック登場

著者:エドワード・D. ホック
販売元:早川書房
Amazon.co.jpで詳細を確認する

ニックは2万ドルの報酬と引き換えに“価値の無い(ようにみえる)モノ”を専門に盗む怪盗。

ニックが仕事を請け負うと、なぜか必ず事件が巻き起こる。

怪盗ニックシリーズ第一弾。

エドワード・D・ホックは「サム・ホーソン」シリーズから読み始めましたが、いまやすっかりニックシリーズの方が好みです。

サム・ホーソンは田舎派、ニックは都会派なんですよね。

ニックは腕も報酬も一流。しかし、盗むのは“価値の無いモノ”ばかり。

そんな奴に盗みを依頼する人間が、悪い事を考えていないはずがないんですよ。

まぁ、ニックも自分が楽しむために盗みを請け負っている感じ。じゃなきゃ、恋人とバカンスを過ごしている最中にも関わらず、ゴミを漁ったりしませんよ。

ニックシリーズは既に短編集が4冊出版されていますが、どれも上質です。

ちょっとした短編を読みたいときに最適。日本でいうと東野圭吾みたいな?

因みに、ちょっとした翻訳長編を読みたいときはデヴィット・ハンドラーを読むようにしております。

参考までに、今回ニックが盗んだものを紹介しておきましょう。虎。文字。野球チーム。カレンダー。木馬。恐竜の尾っぽの骨。陪審員。棺。埃。くもったフィルム。時計。手紙とゴミ。

うーん、変な泥棒。

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2006/02/05

『成吉思汗の秘密』 高木彬光

成吉思汗の秘密 新装版 Book 成吉思汗の秘密 新装版

著者:高木 彬光
販売元:光文社
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名探偵・神津恭介が源義経=成吉思汗を証明するべく、一人二役の大トリックに挑む!

歴史推理小説の傑作。

この『成吉思汗の秘密』について書かれた記事を、ここのところ立て続けに読んだので、なにかの運命だと思って手にしてみました。

うん、おもしろかった。

なぜか「この伝説知ってる」「この文献読んだことがある」と不思議に思っていたら、大学生のときに史学ゼミのレジュメのネタにならないかと思って調べたことがあるという、自分の過去にぶち当たりました。

大学生だったころなんて、まだそんなに昔の話じゃないのに…。

それだけに、この『成吉思汗の秘密』に書かれている内容が嘘八百ではない、信憑性のあるものだと確信できて面白かったです。

私自身としては、源義経≠成吉思汗だと考えていますが、この作品で描かれている通り決め手はないのです。考察する人によって結末はそれぞれ。この説のここまではとれるけど、ここからはちょっと…なんてね。

夢のある話ですね。

歴史推理ものは最近では『QED』シリーズがありますが、1959年という何十年も前から、こんなにも素晴らしい作品が書かれていたことを嬉しく思います。

「歴史なんて勉強する意味ない。」という言葉をよく聞きますが、私はこの言葉を聞くたびに悲しくなってしまうんです。私はただの歴史好きにしか過ぎませんが。

確かに意味はないかもしれません。でも、この作品のが取り上げているテーマのように、歴史にはまだ判明していない、判明するかどうかもわからない数々の謎が残っています。

これらの謎を解くことができるのは、私かもしれないし、貴方かもしれない。

意味のないことだとは言わずに、楽しんでみてはいかがでしょうか?

謎が解けたときには、きっとそこに隠された意味が浮かび上がってくるでしょう。きっとね。

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2006/02/04

ミステリ既読調査

ミステリ既読調査というのがあったのでやってみました。

結果は以下の通り。

あなたのチェック合計: 21冊 (全331冊)

  • 春期限定いちごタルト事件(米澤穂信)
  • 容疑者Xの献身(東野圭吾)
  • 扉は閉ざされたまま(石持浅海)
  • ネコソギラジカル(上 )(西尾維新)
  • θは遊んでくれたよ(森博嗣)
  • モロッコ水晶の謎(連)(有栖川有栖)
  • 猫丸先輩の空論(連)(倉知淳)
  • セリヌンティウスの舟(石持浅海)
  • τになるまで待って(森博嗣)
  • 交換殺人には向かない夜(東川篤哉)
  • QED鬼の城伝説(高田崇史)
  • QED~ventus~熊野の残照(高田崇史)
  • 生贄を抱く夜(連)(西澤保彦)
  • 黒笑小説(短)(東野圭吾)
  • fの魔弾(柄刀一)
  • パズル自由自在(連)(高田崇史)
  • 子どもたちは夜と遊ぶ(上下)(辻村深月)
  • 見えない人影(氷川透)
  • 九月は謎×謎修学旅行で暗号解読(霧舎巧)
  • 時限絶命マンション(矢野龍王)
  • 胡蝶の鏡(篠田真由美)
  • トップが『春期限定いちごタルト事件』だったのが驚き。5位までに3作品ランクインさせてますよ、米澤氏。すごいよ。

    『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』はすでに購入してあって、これから読む本本棚に入っているので、近々一冊増えるでしょう。

    しっかし、ノベルスばっかりだなぁ。

    そうそう、平均既読数が20.4冊でしたので、私はまさに平均なのですね。

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    『クラインの壺』 岡嶋二人

    クラインの壺 Book クラインの壺

    著者:岡嶋 二人
    販売元:講談社
    Amazon.co.jpで詳細を確認する

    ヴァーチャルリアリティゲーム「クラインの壺」の製作に原作者として関わることになった上杉彰彦。

    しかし、ゲームも製作会社もどこかがおかしい。

    その秘密を暴くべく、行動を開始した上村であるが…。

    決して薄い本ではありませんが、一気に読んでしまいました。

    まさにクラインの壺。

    まぁ、最初にクラインの壺というタイトルを見た時に、頭に浮かんだ映像はルビンの壺だったという無知振りなんですが。メビウスの輪と同理論ということで間違いはないはずなので、クラインの壺については深く考えないことにします。検索してみたけれどよくわからなかったなんて、内緒。

    さて、感想。

    後半の急展開が素晴らしいと感じました。主人公がとある事実に気付くのですが、前半に伏線がしっかりと張ってあって、よくぞ出てきてくれました!真相。といった感じ。

    そこからラストまでの読ませ方もすごい。世界はクラインの壺の内側なのか外側なのか。どちらなのか限定させないその書き方が好きです。読者に委ねるその姿勢が。

    私としては外側なんですがね。「クラインの壺」はあまりにも危険過ぎますね。

    それを考える時間を与えてくれただけでも、この本を読んだ甲斐があったというものです。

    あとはクラインの壺の理論自体を理解するのみだわ。

    岡嶋二人氏の作品は今作と『99%の誘拐』しか読んでいないのですが、どちらもコンピュータを前面に押し出した作品でしたね。しかし、書かれた時代が90年前半ですから。驚愕です。発刊当初にこれらの作品を読んで、しっかりとイメージできたはずが無い。

    たった10年ちょっとの間に、世界は随分とデジタルなものへと変貌してしまったのですね。

    人間の労働力無しに世界が構築される日もすぐそこなのかもしれません。

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    右脳左脳

    いつものように読書をしていたら、同居人にこう言われました。

    「貴方、文章を映像化して読んでいるでしょ?そうじゃないとそのスピードで読めない。」

    えっ?みんなそうじゃないの?

    私は目で追っている文章を脳内で映像に変換して本を読んでいるんですが、同居人はそうじゃないと言うのですね。

    まさに文章を読むんだそうです。一文字一文字噛み砕いて理解して読む、と。

    別に私が文章を理解せずに読んでいるわけでは無いのですよ。

    ただ、私は本は読めども言葉を知らないんですね。

    それは、ここに理由があったのかもしれません。

    文章を映像化してニュアンスで読むから、言葉そのものが脳内に残らない。

    同居人はそれを「作者への冒涜だ!」なんて笑っておりましたが。

    確かに作者は自分の表現したいものを最適な言葉に代えて一冊の本を書いているわけで、選び抜かれた言葉で一冊の本ができているのでしょう。

    それをニュアンスで読むとは!という同居人の指摘も納得。

    ただ読書はエンターテイメントだと思っているので、それを自分なりの方法で楽しめればどんな読み方であっても良いのではないかと思います。

    ニュアンスで読んでいたって、ストーリーは立派に理解できるし、伝えたいことだって伝わってきますよ。

    作品が一人称で書かれているものだと、映像化することによって自分がすっかりその登場人物になったように感じることもできるし。登場人物と同じものを見て楽しむことができるって、結構素敵なことだと思いますよ。

    みなさんはどうやって本を読んでいますか?

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    2006/02/03

    『幽霊刑事』 有栖川有栖

    幽霊刑事(デカ) Book 幽霊刑事(デカ)

    著者:有栖川 有栖
    販売元:講談社
    Amazon.co.jpで詳細を確認する

    理由もわからないまま殺されてしまった神崎達也は幽霊となって再びこの世に舞い戻ってきた。

    イタコの孫をパートナーに自分を殺した犯人と、その真相に迫る。

    ミステリとラブストーリーを融合させた傑作。

    感動した!

    再読にもかかわらず感動いたしました。

    ミステリとしては多少ご都合主義といいますか、実行犯がむざむざと犯行に及んだ理由がよくわかりません。

    黒幕としては恩を売っておいただけで、殺人を犯させるほどの強制力はなかったような。

    でも、ラブストーリーとしては秀逸です!

    最後なんて涙が止まりませんでしたよ。

    ラストの白紙ページも印象的かつ効果的。ちょっと量が多いような気はしますが。非常に斬新な手法だったと思います。

    有栖川有栖の作品というよりも、東野圭吾の『秘密』や『トキオ』あたりを読んでいたような余韻に浸れます。

    本格の旗手としてだけだなく、作家としての有栖川有栖を見直した感じです。

    この作品はイタコの孫として幽霊刑事のパートナーを務める彼がすごく良い味出しております。彼の存在がこの作品を光らせていると私は感じました。彼にもしあわせがやってきますように。

    しかし、この作品では警察の不祥事が次々と出てまいりますが、現実の警察でこんなにも不祥事が続いて、なおかつ隠されていたなら嫌だな。でも、警察だって人間なんだから、ひとつの警察署でこれだけの不祥事が起こることは無くても、どこかで似たようなことが起こっているんだろうなぁ。

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    2006/02/01

    『博士の愛した数式』 小川洋子

    博士の愛した数式 Book 博士の愛した数式

    著者:小川 洋子
    販売元:新潮社
    Amazon.co.jpで詳細を確認する

    80分しか記憶がもたない数学者と、数学者の世話をすることになった家政婦、家政婦の息子・√。

    3人が織り成すあたたかく不思議な関係。

    映画化もされ、いま最も話題の一冊。

    “泣ける”とあまりに話題となっているので、興味を持ちました。

    私がこの文庫を購入したのが、ちょうど100万部報道があった日でしたね。流行に遅れて乗ってる…とちょっと恥ずかしくなってレジまで。

    さて、氷の女王と評判の私は泣けたのか?泣けなかったのか?結論から言えば、泣けなかったんですよ。

    いつでも泣く準備はできていたのですが、ここだ!という落とし所がなかったものですから、あれ?このまま終わってしまうの?といった感じで。

    でも、すごく良かったと思います。あったかい感じがすごく。

    映像化されたものを観たら、間違いなく泣くでしょう。この本は行間に描かれる博士や家政婦や√が素晴らしい。それを映像化されたらイチコロです。

    博士の寺尾聰はハマリ役だと思います。そういう微妙な表情をさせたらピカ一ではないでしょうか?はかなくてあたたかい表情。氷の女王ではできますまい。

    『容疑者Xの献身』を読んだときも同じように感じたんですが、数学者っていうのは住む世界が崇高な感じがしますね。

    私はnot理系=文系の典型なので、数学は高一で脱落したのですが、博士に数学を教えてもらえたら、もっと数学が好きになっていたかもしれません。きっと私は数学のおもしろいところをまったく知らないまま落伍者となってしまったのでしょう。

    それが無念で残念。

    ちょっとだけ数学の専門書でも紐解いてみようかと思わせる、素敵な一冊でございました。

    たまにはミステリじゃない本も良いものですね。

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