2008年5月28日 (水)

『天帝のはしたなき果実』 古野まほろ

天帝のはしたなき果実 (講談社ノベルス) Book 天帝のはしたなき果実 (講談社ノベルス)

著者:古野 まほろ
販売元:講談社
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天帝がこの世に堕としたはしたなき果実を

齧ってしまったが運の尽き

さぁ、矮小な人間の行進を御覧あれ

ついに禁断の果実に手を伸ばしてしまいました…古野まほろ氏“天帝三部作”。京極夏彦級の、これで殺人犯せますよね?と云わんばかりの、総頁2000越えのこの三部作と私はどうお付き合いをすれば良いのか。もういっそのこと枕にして…管理人行方不明の暁には天帝の裁きが下ったものと推察ください。

というわけで、エスプリと云えなくもないルビの洪水に戸惑うばかりであった冒頭。途中からはルビを追うことは諦め、それどころか意味を反芻することも諦め、雰囲気だけ掴めれば良いや読みになってしまった本書。古野氏だって、読者がすべてを理解してくれるとは思ってないでしょう…それは傲慢というもの。とにかく、ルビの洪水から逃るるべくノアの箱舟に乗船できた読者だけが終末に到達できる、“読者を選ぶ”作品が本作かと。

でも、その選ばれた読者が到達する終末(頸草館高校七不思議の件から一連の○○まで)があれでは…完全に蛇足だったと思うんですよね。その直前(アンコン)までは本格ミステリだと断言できたのに。空想科学劇なんて誇示し過ぎの絵空事。あれをやるなら、絵空事の日本帝国についてもっと饒舌に語ってくれないと。バックグラウンドが解らないと理解のしようが無い。読者置いてけ堀。

個人的には嫌いじゃないんですよ!三部作、きっちりお相手するつもりですし。でも…『果実』(個人的)蛇足ネタを『御矢』『孤島』まで引っ張られたら辛い。あくまでもあのメンバで本格ミステリやりますっ!ってのを希望…ナントナクムリッポイデスネエエソンナキハシテイタンデス。

揃いも揃って超高校生級という類友キャラ設定は個人的ツボなんですが。ここまで突き抜けてるとある意味清々しい。中途半端に賢いふりをする(私のような)中途半端な人間が居ないだけ安心感と安定感があります。彼らはマイノリティだけれど、彼らが形成する矮小な世界の中ではマジョリティだから。マジョリティは民主主義の原則です。マイノリティの私はもうなにも云うまい。

『果実』を読了するのに休日まるまる使った私が、『御矢』『孤島』まで読了するのに幾日費やすのか。ブロ愚更新が滞った暁には、やはり天帝の裁きが管理人に下ったと…以下略。

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2008年5月27日 (火)

『チョコレートゲーム』 岡嶋二人

チョコレートゲーム (講談社文庫) Book チョコレートゲーム (講談社文庫)

著者:岡嶋 二人
販売元:講談社
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息子が死んだ。しかも殺人犯の汚名を着て

思えば眼を見て息子と話したことなってあったのだろうか

だから…俺は息子の無実を信じる

ノベルス刊行は昭和60年…名作は名作、良い作品はいつ読んでも良い、というお手本のような一冊でした。

殺人犯の汚名を着て死んでいった息子。その汚名を晴らす、否、無実を信じて不徳の父親が立ち上がる。唯一の手掛かりは『チョコレートゲーム』。息子が、その同級生たちがひた隠しにする『チョコレートゲーム』とは一体どんなゲームなのか?本当に息子は無実なのか?真犯人は誰?

描写や用語の古さは当たり前として、この主題、現代でも充分に通用しますよね。自分の子どもについて何も知らない知ろうとしない親。子どもを失って、事件に遭遇して、初めて気が付く…俺は今まで何をしてきたんだ?と。むしろこの作品が出版された1985年より、現代の方が扱う主題として正しいような気すらしてきました。岡嶋二人、さすが!!

そして唯一の手掛かり『チョコレートゲーム』。どんなヤヴァイゲームかと思いましたが、かなり現実的。中学生にして、社会というものがどれだけ汚いものか思い知らされるなんて…不憫な仔たち。でもまぁ、自分たちで蒔いた種ですしね。自分たちで回収してください。殺人以外の方法で。この殺人は舞台が中学校だったから起こった事件なんだろうなぁ、と思います。中学生のゲームだったから、途中の逃げ道が見つからず、殺人まで一直線に向かってしまった。子どもは残酷ですから。

それにしても、文庫版の表紙はいただけないですね。『チョコレートゲーム』がなんたるか、ヒントが出ちゃってます。それが本作の醍醐味だと思ったのですが…私だけ?

とにかく、良い作品は年月を経ても良い。岡嶋二人の作品を読むといつもそう思います。いつの時代も子どもが、親が、抱える問題は根っこのところで同じ。ミステリ読者が求める謎だって、いつの時代も同じ。何十年経ってもミステリを読んでいたいと思った一作でした。

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2008年5月26日 (月)

『四神金赤館銀青館不可能殺人』 倉阪鬼一郎

四神金赤館銀青館不可能殺人 (講談社ノベルス) Book 四神金赤館銀青館不可能殺人 (講談社ノベルス)

著者:倉阪 鬼一郎
販売元:講談社
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金赤館と銀青館

互いにいがみ合い憎しみ合う二つの館で

千畝将軍の命日に起こる殺戮の嵐

「袋小路と笑わば笑え。これも新本格だ!」という著者のことばが痛い。タイトルだけはまごうことなき新本格なんですがね。

新本格に必要とされる要素は存分に詰まっているのですが。館とか叙述トリックとか密室殺人とか。でも、どれもこれもが中途半端なんですよ。なによりも中途半端なのが叙述トリック。叙述トリックってのは、読者に悟られないようにするからこそ旨味があるのであって。序盤のト書き描写は読んでいて痛かったです。

そして、場面描写が…いかん、また毒吐くところでした。でも、何が起こったのかわからない箇所がままありました。ト書き描写の所為と云い切ることのできない頻度で。えっ?今、誰か死んだ?みたいな。

倉阪氏はこの作品でなにが書きたかったんだろう?犯人当て…じゃないよね?血の匂いをぷんぷんさせた犯人なんか居てどうする。叙述トリック…でもないよね?あの阿呆みたいな序盤の展開がミステリ○○○だと気が付かない読者がいるわけない。少なくとも、倉阪氏の著作を手に取る読者の中には。じゃあ、館トリック…なわけない。だって、本作の中で最もバカミスな箇所じゃないですか!?あっ、そうか、動機か…って私の中で最もどうでも良い部分!!

うーん、深いですねぇ。ナナメ読み1時間読書じゃなかったら怒り狂うところでした。倉阪氏は殆ど読んだこと無いのですが、50冊近い作品の中に名作もあるんですよね??今度は作品の評価を調べてから挑んでみることにします。合掌。

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