2016/09/30

『推理は一日二時間まで』 霧舎巧

霧舎巧の新刊が出ると聞いてとても楽しみにしていたのですが、ただただ残念な読了です。

レンタルスペース「秘密基地」で起こる日常の謎を愉快な利用者たちと解決する短編集なのですが、個性的()なキャラクタたちに最後まで馴染めませんでした。会話中心に物語が進んでいくのですが、つまらない小ネタが入ってくるのでテンポは悪いし、分かりにくい。それでも謎の方におもしろみがあればまだ読めるのですが、正直ひとつもおもしろいと思う謎はありませんでした。

最後の謎であり、タイトル『推理は一日二時間まで』の元にもなっている高左右くんの正体も個人的には微妙で、もっと魅力的な結末を期待していました。というか、高左右くんの活躍が中途半端なんですよね。彼が○○だとしても、「秘密基地」の面々が右往左往している横で名探偵気取って謎を解けたはずなんです。そうしないと高左右くんという存在を作った意味がない。それなのにいつもヒントを出す程度の登場しかしないのでオチのカタルシスがないんですよね。

どこを褒めたらいいかわからない、期待していただけにとても残念な1冊でした。やはりガチガチの本格ミステリを読みたい。霧舎巧は今の時代にそれができる貴重な作家のひとりだと思っています。あと、霧舎学園シリーズをなんとか終わらせて欲しいです。

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2016/09/22

『ダンガンロンパ十神 (中) 希望ヶ峰学園VS.絶望ハイスクール』 佐藤友哉

ダンガンロンパが好きで白夜さま推しなので読んでいますが正直キツイです。物語として絶望的につまらない上に、キャラクタのコレジャナイ感が半端ない。『ダンガンロンパ霧切』を期待して読むと絶望間違いなしです。

白夜さまが108人の兄弟を蹴落として十神財閥の御曹司となった「十神一族最大最悪の事件」が本作で描かれていますが、なぜこんな中途半端なミステリにしたのか。もっとガチな本格でやるか、駆け引きをメインにしたゲーム性の高い事件にはできなかったのか。できなかったんだろうな。白夜さまの凄さがまったく伝わってこないよ。凄さを書くつもりがないならカマセに徹して欲しい。

中編の展開がすべて「じゃじゃーん、実は○○だったのです」というオチで驚きもなにもないです。ラス前で白夜さまが仲間を信じている云々というシーンがあるのですが、あまりに唐突で薄っぺらく、まったく信憑性がありません。茶番か。

ラストではWHOの使者としてあるキャラクタが登場し白夜さまは拘束されますが、だからどうしたという感じでしょうか。やっぱり鏡家サーガキャラ含めてオリジナルキャラに興味がわきません。公式キャラじゃないとツマラナイ。ここまで読んだら(下)も読みますが、なんとなく白夜さまが解放され、なんとなく青インクが死に、なんとなく事件が収束して白夜さまが世界征服宣言をするのだろうなあと絶望的な予想をしておきますね。

表紙も(上)に比べればよかったですが、やっぱり小松崎絵で見たいです。

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2016/09/21

『ダイガンロンパ ゼロ』 小高和剛

 

大好きダンガンロンパの公式前日譚(ゼロ)。2では本作の内容がゲームの核心部分に関わっていたのですが読むのはこれが初めて。

ファンから絶賛されるのがわかる、とても良い作品です

もっと早くに読んでおけば良かった。少なくともネタバレ前に読むべきだった。だってミステリとしても優秀。私は○○トリックの伏線が回収されて世界が回転してしまうような感覚が大好きなのですが、まさにそれ。この快感は絶望なのか希望なのか。私様の術中にまんまとハマってしまったようです。

とりあえず、いまから読む方はパラパラめくって挿絵を見たりしないように。これ以上ないくらいネタバレです。あのイラストは好きですが、扱いはなんとかした方がいいですね。

あと、ゼロオリジナルキャラの松田くんはいいですね。善悪はともかくとして行動原理が一環している。そして最期にとことん感じたであろう絶望。あれは良い絶望でした。

ゲームへの繋がりも見事で本当に素晴らしい作品でした。ダンガンロンパのノベライズは『ダンガンロンパ霧切』を始めとしてクオリティが高いものが多くて(強調)ファンとして嬉しい限りです。

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2016/09/16

『切り裂きジャックの告白 刑事犬養隼人』 中山七里

切り裂きジャックというサイコでキャッチーな犯人像と臓器移植という真面目なテーマを掛け合わせた犬養隼人シリーズ第1弾。

中山七里なのでどんでん返しはもちろんありますが弱め。(ネタバレします)というか、最初に捕まった真境名(夫)の動機が理解不能で犯人だとは思えなかったため、もうひとり真犯人がいるんでしょう?と身構えてしまったのがいけませんでした。結局のところ真犯人の動機も弱い(ほぼほぼ同じというかトレース)だったのでこの点に関しては納得できないままなのですが。

だって、このミッシングリンクはどうしたって暴かれるでしょう。臓器移植経験者ばかりが狙われるだなんて、関係者を疑ってくれと言っているようなものじゃありませんか。合間合間に別の殺人を挟んでめくらましをしているというのならまだしも。つまり犯人にとって医療ミスの隠蔽>殺人だったということ。そんな倫理観がありますか。

犬養と古手川(『連続殺人鬼 カエル男』に登場)のバディはとても良かったのでまた読みたいものです。

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2016/09/13

『聖女の毒杯』 井上真偽

奇跡を証明するため考えられるすべての可能性(トリック)を否定するという趣向の『その可能性はすでに考えた』シリーズ第2弾。

今回は飛び石毒殺の謎ですが、前作に比べるとややスケールダウンか(前作がぶっ飛びすぎという可能性もあるが)。まあ、すべての可能性を検討し否定するという趣旨にはこのくらいの事件の方が相応しいと思いますが。

言いがかりレベルの可能性であっても論理的に否定しなければならないという業を背負った上苙ですが、今回は弟子も頑張りました。ベーシックな可能性は弟子がコツコツと否定し、ややアクロバティックなものは師匠である上苙が解決していましたね。格の違い。

それにしても船上でのやりとりは必要でしたでしょうか。(ネタバレします)殺○の犯人を登場させるのはあの場が必要だったのだと思いますが、もっと違う人間関係で描けなかったのか。読みづらい個所や分かりにくい設定が入ってくる割に効果が薄いと感じるので、やや疑問ですね。

そして真相ですが…正直大したことないですよね。いや、真相は大したことなくても良いのです。ただ「その可能性はすでに考えた」とまで言い、奇跡を証明しようとしているなら、このレベルの真相をすくに看破できなくてどうすると思ってしまうわけです。奇跡が絡むと視野狭窄になるというのはフーリンの談ですが、まさしくですね。事件は地味でもいいのです。むしろすべての可能性を作中で提示して欲しいので、このくらいの事件の方がいいのです。でも、上苙が奇跡を宣言した後に明かされる真相はそれなりのものであって欲しいと私は思います。

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